街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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札幌・円山動物園のリラが二歳となる ~ そのディオニソス的性格と今後の展望 ("Stay or Leave")

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リラ (Белый медвежонок Лилас)
(2015年4月1日 一般公開初日に撮影 於 札幌・円山動物園)


Lilas' social media debut on Mar.31 2015 at Sapporo Maruyama Zoo

もう数日前になってしまいましたが12月21日に札幌・円山動物園のリラが満二歳の誕生日を迎えています。これについてはやはり触れておかねばならないと思っています。 現在でもリラは母親であるララと同居しているわけですが、こういった親子が二年(あるいはそれ以上)にわたって同居するということは釧路でコロ/クルミなどの例はあったにせよ円山動物園ではかつて行われたことはありません。これは同園において進行中である新ホッキョクグマ飼育展示場建設工事に伴う事情が大きく働いているとみるのが一般的でしょう。しかし仮にこの工事が行われる予定がなかった場合、果たしてララとリラの親子の二年目の同居がなされたかについてはなんとも言えなかったようにも思います。これは、日本の動物園においてはこれまでホッキョクグマは二年サイクルでの繁殖が試みられ、三年サイクルの繁殖というものが基本方針としてまだ確立されていないと考えられるからです。浜松におけるバフィンとモモの二年目(そしてさらにそれ以降)の実現は、あくまでバフィンがこれ以上繁殖には関与しない年齢となっていることから実現したわけで、仮にバフィンがもっと若ければやはり二年サイクルの繁殖が試みられた可能性は十分あっただろうと思われます。日本の動物園関係者(及びロシアの動物園関係者)の二年サイクルの繁殖に対する信仰心の強さは恐るべきものだという感じを私は持っています。
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リラ (Белый медвежонок Лилас)
(2015年6月21日撮影 於 札幌・円山動物園)


Lara the polar bear and her 6-month-old cub play together in the water at Sapporo Maruyama Zoo, on Jun.21 2015.

ともかくリラは元気に満二歳を迎えたわけで実に喜ばしいことです。誕生日当日は特別のイベントなどは行われなかったようですが、それは現在のこの親子の暮らす場所においてそういったイベントを行うことにはいささか困難があるからだと理解しておくこととします。
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リラ(Белый медвежонок Лилас)
(2015年7月5日撮影 於 札幌・円山動物園)


Lara the polar bear and her cub enjoy themseives in the water at Sapporo Maruyama Zoo, on Jul.5 2015

私はリラにはもう一年ほど会ってはいませんが、しかし同好の方々の撮った映像などを拝見した限りでは、リラは "frenetic" とでもいいますか、一つのことにかなり熱中して忘我的に高揚する面を比較的強く感じます。つまりリラはポロロと同じディオニソス的性格を有するホッキョクグマであることは間違いないものと思います。そしておそらく彼女はララファミリー(Lara & Co.) の中で最もそのディオニソス的性格が強いホッキョクグマだろうと思います。2015年の春に一般公開されてしばらくのうちは私は彼女がいったいどうなっていくのかについてかなり心配していたわけですが、さすがにその年の夏以降のララの教育効果は素晴らしく、リラのいささか上滑りしたような高揚感を修正して正常な道にかなり引き戻したという点で実に興味深かったわけでした。リラの母親ララとの二年目についても観察対象としての大きな興味は持っていたのですが、一年目と違って二頭の生活スペースに大きな変更が生じてしまたっために、条件が大きく異なる親子を観察していく意義はあまりないと考えて札幌へは足が遠のいてしまったというわけです。
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リラ(Белый медвежонок Лилас)
(2015年10月24日撮影 於 札幌・円山動物園)


A variation in Lilas, the polar bear cub's facial appearance, at Sapporo Maruyama Zoo, on Oct.24 2015

さて、この二歳となったリラですが今後どのような展望があるかについては周囲の客観的状況が大いに関係してくるはずで私には何とも言えません。新飼育展示場のオープンは予定通りならば確か来年2017年の秋だったように記憶しています。その場合に二つのことが問題になってくるわけですが、(A)果たしてその翌年の2018年に旧展示場に留まるララが繁殖の舞台に復帰してくることになるのかということと、(B)完成した飼育展示場に登場するホッキョクグマはララファミリー(Lara & Co.)の、どの個体になるのかということです。しかしこのどちらの問題を考えてみたとしてもリラはララとは離れずに、少なくとも来年の秋までは親子の同居が行われそうな気もします。よく、「いったいいつまでリラ(モモ)は母親のララ(バフィン)から授乳を受けるのか?」という疑問を発せられる方がいらっしゃるようにも思うのですが、これについて過去の事例を投稿した「デンマーク・オールボー動物園のミラク(2歳8か月)に、まだお母さんが授乳! ~ 最年長受乳記録か?」を御参照下さい。リラ(モモ)が欲すれば、そしてララ(バフィン)の状態がそれを許せば、リラ(モモ)が2歳8か月になった段階、つまり来年の夏頃までは授乳シーンが見られる可能性があるということを述べておくに留めます。
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リラ(Белый медвежонок Лилас)
(2015年11月3日撮影 於 札幌・円山動物園)


Lilas the polar bear cub's hesitation in going into the water, at Sapporo Maruyama Zoo, on Nov.3 2015

さて、では上の(A)と(B)の問題は考察を加えなければ容易には答えの出ない問題のように思いいます。そういった客観的の状況のもとで円山動物園がこの二つをどう考えるのかについては、果たしてそれが本当に正しい結論なのかについても必ず異論は出てくる問題だろうと思うからです。これらを考える際に重要なのは、日本のホッキョクグマ界はあくまで飼育頭数維持を至上命題とし続けるのかということと、欧州(とロシア)との協力関係が構築可能なのかという二つの大問題があるわけです。リラの "Stay or Leave" の問題はまさにそういったことに大きな影響を受けるということです。"Stay" ならば彼女のパートナーはロシアのホッキョクグマでしょう。 "Leave" ならばマルル、ポロロ、アイラのうち1~2頭が札幌に帰還し、そして彼女(たち)のパートナーは欧州の「ロストック系」と考えるのが筋が通る話です。これらは年が明けてから十分に考察してみたいと思います。血統面を完全に無視すれば札幌のデナリの後継(つまり円山動物園の新飼育展示場に君臨する雄)となるのはノヴォシビルスク動物園のロスチクに決まりでしょう。しかしそうはできないから難しいわけです。
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ララとリラ (Белая медведица Лара и медвежонок Лилас)
(2015年11月3日撮影 於 円山動物園)

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by polarbearmaniac | 2016-12-25 01:00 | Polarbearology

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