街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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おびひろ動物園のアイラの6歳の誕生祝い ~ 来年2017年には同園よりの移動が必至の情勢

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アイラ (Eisbärin Aïra/Белая медведица Аира)
(2014年11月3日撮影 於 おびひろ動物園)

ララファミリー(Lara & Co.)のなかで最も直近の動向が注目されるのがアイラ (2010年12月25日生まれ)でしょう。そのアイラの6歳の誕生が祝われ、同園はその様子を映像で公開しています。以下です。また同園の公式ブログでもその様子が報告されています(「アイラ、お誕生日おめでとう!」)。


Aïra the Polar bear celebrates her 6th birthday at Obihiro Zoo, on Dec.25 2016

何故私が彼女の動向に注意を払う必要があると考えるかは、以下のようなことです。彼女は今年の春頃には体重が減少しているように見えるという印象から体調不良であるとの情報がいくつもあったわけですし、そのことについて担当飼育員さんも認めていたはずですが、私はこれは彼女の初めての「発情傾向(estrus)」が顕在化されたことであるという理解をしています。性別は異なってはいますが男鹿水族館の豪太もかつて今年のアイラとほぼ同年齢期にそういった体重の減少が伴っていたと思われる不調期を経験していますので、アイラの件もそれと類似したものだという理解でそう大きな間違いはないものと思われます。
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アイラ(2013年6月30日撮影 於 おびひろ動物園)

さて、こういう理解を前提としますとアイラはもう完全に繁殖可能な年齢となっており、パートナーが必要なことをは言うまでもありません。すでに彼女は預託個体としての意味は失っていると考えられ、パートナーを用意してやって繁殖のできる施設に移動させていやる時期に来ているというわけです。しかしララファミリー(Lara & Co.)の個体はララの第一子であるツヨシ(13歳)が「あのような状態」ですし、第二子のピリカ(11歳)は今回は初めての産室入り(?)といった程度の段階です。ざっと見渡してみてもアイラのパートナーとなる雄(オス)の若年個体はほとんどいないといった状態です(いることはいますが、全て一応は別のパートナーがすでに存在)。


Aïra the Polar bear holds her favorite buoy in the water at Obihiro Zoo, on Jun.30 2013

さて、こうなるともう海外に目を向ける以外にはないわけで、ここでもまた円山動物園の海外との個体交換計画という、非常に先行きの見えない展望の実現に寄りかかる以外にはないということです。アイラはすでに過去に一度、欧州との個体交換の該当個体としてドイツのハノーファー動物園に提示された個体でした。この件については「ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く」、及び「ドイツ・ハノーファー動物園に2012年夏に札幌・円山動物園が提示した交換候補個体はアイラだった!」という二つの投稿を御参照下さい。これが実現していればアイラは今頃ハノーファー動物園でシュプリンターをパートナーとしており、ドイツからはナヌークが札幌にやってきていたというわけです。当時ハノーファー動物園はこの個体交換の実現に極めて強い意欲を抱いていたわけですが結局、飼育基準を満たしていない施設(円山動物園)にEAZAのEEP対象個体を移動させることができなかかったということで、結局は失敗に終わってしまったというわけです。この欧州(ハノーファー動物園)との個体交換交渉の「仕掛け人」と協力者(日本とドイツ)に関する真相は時期が来れば明らかになるでしょう。
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アイラ (2012年10月20日撮影 於 おびひろ動物園)

2012年当時、この個体交換の対象となっていたナヌーク、シュプリンター、アルクトス(現 スコットランド・ハイランド野生公園)、アイラ(現 おびひろ動物園)などは不思議なことに4年経過してもまだパートナーがいないという状況です。となると考えうることは2012年の話を再び蒸し返すことは可能であるとも言えるわけです。来年に円山動物園の新飼育展示場がオープンして以降のこととなるはずですが完成予定図さえ先方に提示しておけば新飼育展示場オープンを待たずに欧州側との交渉を再開することは可能ではあります。ただし私は、そうやって一度消えた話を蒸し返すようなことにはならないだろうと思っていますし、そもそも欧州との協力関係の構築は無理だろうと考えている人間です。
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ララとアイラ (Белая медведица Лара и медвежонок Аира)
(2012年2月19日撮影 於 札幌・円山動物園)

さて、そうなればアイラのパートナーはロシアに求めるしかありません。年齢的にも血統的にもアイラのパートナーにピッタリの野生孤児個体の雄がいます。ペンザ動物園のベルィです。しかし彼は野生出身個体ですのでロシア国外には出られませんからアイラがペンザ動物園に移動し、ロシアの他園から雄の個体を札幌に連れて来てマルルやポロロやリラのパートナーとすることになるわけですが、それは現時点では全く非現実的でしょう。ペンザというのはなにしろ地方都市なのです。ペンザなどに行くよりもペルミやカザンに行く方がよほどましといったほどの地方都市なのです。仮にロシアの動物園と個体交換を行おうとすれば、先日設立が宣言された「ロシア動物園・水族館協会」が本格的な機能を発揮するようになった以降のことでしょう。それ以前の段階では円山動物園としてはクラスノヤルスク動物園やイジェフスク動物園で誕生が期待されている野生出身ペアとの間に誕生する「新血統」の雄(オス)の個体を導入(つまり購入)するという方法で臨むべきでしょう。ただしその雄(オス)の個体はアイラとは年齢差が生じ、むしろマルル、ポロロ、リラのパートナーとしたほうがよいということになるでしょう。つまりアイラは年齢的に非常に微妙な立ち位置にいるというわけです。それを考慮すると、再び話は振出しに戻って2012年当時の交渉相手であったハノーファー動物園に再度話を持って行く....このようなことにしか活路は見いだせないのかもしれません。あるいはニュルンベルク動物園が権利を持っていて現在ワルシャワ動物園で飼育されている雄の双子であるグレゴールとアレウト(アイラと同じ年齢)もパートナーがいない状態ですので仮に話をニュルンベルク動物園に個体交換の話を持って行った場合は非常に興味を示してくれる可能性は大いにあります。しかしこの双子の母親は旭川のイワンのすぐ下の妹であるヴェラです。つまり「アンデルマ/ウスラーダ系」なのです。ですから交換個体としてこの双子のうちの一頭を日本に連れてくることは避けるべきでしょう。グレゴールとアレウトは、わざわざララファミリー(Lara & Co.)の個体の一頭を欧州に出してまで得るほどの、日本のホッキョクグマ界における「血統的孤立度」の高さのある個体ではないわけです。換言すれば日本のホッキョクグマ界(この場合ララファミリー)が欲しいのは、欧州においては「血統的孤立度」は低いが日本においては「血統的孤立度」が高くなるという個体なのです。


ララとアイラの母娘一緒の最後の姿 - The last moment when Lara and Aïra were seen together to the public, on Feb.19 2012, at Sapporo Maruyama Zoo

さて、このアイラについては間違いなく来年に移動の話が現実化するでしょう。彼女は早く帯広を離れるべき時に来ているのです。移動先は札幌か本州か、あるいはひょっとしてドイツかオランダか....なんとも言えません。

日本のホッキョクグマ界の雌(メス)の幼年・若年個体ではこのアイラと大阪のシルカが、その素晴らしさにおいて双璧でしょう。この二頭の対比については「アイラとシルカ、二つの光 ~ "Der Sonnenschein in Aïra" und "Das Mondlicht auf Shilka"」という投稿で述べた通りです。

(*追記)以前まだヴァニラが来日する前のことですが、アイラが日本平動物園に移動してピョートル(ロッシー)のパートナーになるのではないかと何人かの札幌のファンの方々は考えられていらっしゃったようです。しかしこれは当時としても全く有り得ない話です。何故ならピョートル(ロッシー)の権利はレニングラード動物園にあり、そしてアイラはBL契約でしか静岡に移動しないことは明白だったわけです。そこでピョートル(ロッシー)とアイラがペアで繁殖に挑戦した場合、子供の権利はレニングラード動物園と円山動物園(札幌市)でバッティングしてしまいます。アイラの権利を有する札幌市がピョートル(ロッシー)の権利を有しない静岡市とBL契約など締結できるはずなど無いのです。つまりアイラとピョートル(ロッシー)とは有り得ない組み合わせなのです。ペア組み合わせを考える場合には、血統問題と権利関係の両方にクリアする必要があるということです。

(資料)
おびひろ動物園公式ブログ (Dec.25 2016 - アイラ、お誕生日おめでとう!
アメリカ動物園・水族館協会 ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual) "Polar Bear Care Manual"

(過去関連投稿)
ノルウェーの極地動物園、ララの子供たちの入手を狙い円山動物園と接触か? ~ 報道内容の真偽を検証する
ドイツ・ハノーファー動物園のアルクトスとナヌークの双子兄弟に4歳のお誕生祝い ~ 将来への不安
スコットランドのハイランド野生公園、ウォーカーとアルクトスの近況 ~ 雌の伴侶欠乏世代の個体たち
ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (上)
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)
ドイツ・ハノーファー動物園に2012年夏に札幌・円山動物園が提示した交換候補個体はアイラだった!
札幌・円山動物園のマルルが熊本、ポロロが徳島の動物園に移動が決定 ~ ララの2年サイクル繁殖が継続へ
ララの子供たちの将来(下) ~ ドイツ・ハノーファー動物園のシュプリンターとナヌークのハロウィン
アイラとシルカ、二つの光 ~ "Der Sonnenschein in Aïra" und "Das Mondlicht auf Shilka"
by polarbearmaniac | 2016-12-26 00:30 | Polarbearology

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