街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・イジェフスク動物園のノルドが欧州へ ~ 水面下で始まっている欧露の協力体制の兆候

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ノルド (Белый медведь Норд)
Photo(C)"Я люблю Ижевск"

ロシア連邦・ウドムルト共和国のイジェフスク動物園(公式にはウドムルト動物園 - Зоопарк Удмуртии)で飼育されている雌の12歳のドゥムカと雄の11歳のノルドのペアはすでに二回繁殖に成功し三頭の子供たちをもうけているわけですが、このペアのうち雄のノルドがモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設から来園した野生孤児出身の7歳のアイオンに交代することになった件は先日ご紹介しています。このアイオンの来園について前回の投稿でご紹介したのとは別のTV局のニュース映像をご紹介しておきます。



実はこのニュースの中でペアを解消されてしまった雄のノルド(モスクワ動物園のシモーナの息子)について、彼はハンガリーの動物園への移動が報じられているのにはすっかり驚いてしまいました。(*後記 - これはメディアの誤報でありノルドはデンマークのコペンハーゲン動物園に移動となりました。イジェフスク動物園からハンガリーに移動するのはシェールィとビェールィの双子兄弟ということになったわけです。) ハンガリーといえば現在ホッキョクグマが飼育されているのはニーレジハーザのソスト動物園だけであり、ここには二歳になった雄のフィーテと30歳となった雌のシンバ(姫路のユキ、仙台のポーラの母)の二頭が飼育されており、やがてモスクワ動物園からシモーナの娘である二歳の雌がフィーテのパートナーとして来園することになっています。つまりこのノルドが入り込む隙などないはずなのです。となると以前ホッキョクグマが飼育されていたブダペスト動物園にノルドは移動するのかという気もしますがブダペスト動物園サイドにはそういった情報は読み取れないように思います。実に不可思議です。ドゥムカとノルドの間に2015年12月に誕生したもののドゥムカの体調不良によって人工哺育に切り換えられた雄の双子であるシェールィとビェールィについては果たしてまだこのイジェフスク動物園にいるのかどうかもわかりません。今回の報道の内容ではいることになっていますが、しかし今度はバルーとザバーヴァについては、同園にはいないことになっているようです。シェールィとビェールィにつぃては権利はモスクワ動物園にありますので、アイオンを運送してきたトラックでこの双子がアイオンと交代でモスクワに移動したということは考え得るのですが、同園からは何の言及もありません。これまた実に不可思議です。
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ノルドとドゥムカ  Photo(C)"Я люблю Ижевск"

このイジェフスク動物園というのはホッキョクグマの飼育展示場についてはロシアの動物園の中では最も広い面積を誇っているわけですが、しかしホッキョクグマの移動情報についてはまるで秘密主義でも採用しているが如く、全く発表しようとしないわけです。以前にもここで飼育されていた雄のプロメテイが密かに中国に売却されていたり、あるいはピリグリムとオーロラのペアが秘密裡にブラジルに移動していたりなど、何か非常におかしな雰囲気の漂う動物園です。このイジェフスク動物園は自らが所有権を持つホッキョクグマの個体は一頭もなく、同園が飼育しているのは全てモスクワ動物園、レニングラード動物園、カザン市動物園、連邦政府の自然管理局 (RPN)などが権利を持っている個体ばかりであり、イジェフスク動物園としてはそういった権利を保持している他園の指示によってホッキョクグマを移動させているにすぎないわけです。しかしまるでロシアの動物園の「マネー・ローンダリング」ならぬ「ホッキョクグマ・ローンダリング」が行われている舞台がイジェフスク動物園であるようにも私には見えます。そういったことから考えてもノルドが本当にハンガリーの動物園に移動するのかについても確実な話ではないかもしれません。
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ノルド (Белый медведь Норд)
Photo(C)"Я люблю Ижевск"

そういったことはともかくとして、野生出身個体の雌のドゥムカのパートナーがシモーナの息子であるノルドから野生孤児個体のアイオンへと変更になったことはモスクワ動物園が何としても「アンデルマ/ウスラーダ系」の血統をロシア国内の動物園から減らしたいと考えて行動していることを裏付けています。そしてこの「アンデルマ/ウスラーダ系」の個体であるノルドがハンガリーの動物園に移動する(らしい)という話の背景には欧州のEAZAのコーディネーターがノルドのパートナーを見つけるといったような話が背景にあるとみて間違いないかもしれません。つまり、欧露の協力関係は水面下ですでに動いていることをも示唆しているわけです。日本の動物園もこういった動きを注視していかねばならないと痛感します。何故なら、クラスノヤルスクやイジェフスクにおける野生出身個体ペアの繁殖の成果である「新血統」の個体はロシアから欧州へという方向で移動される計画が進行していることがうかがわれ、日本の動物園がそういった「新血統」の入手が不可能となる可能性が出てきつつある危険性を感じるからです。

札幌・円山動物園が来年秋に新飼育展示場をオープンさせ、そして幸運にも欧露の動物園と協力関係に入ることができたと仮定します。となれば、マニトバ基準であれEAZA基準であれ、それを満たしている国内の施設と閉鎖的な「囲い込み」体制を構築したほうがよいでしょう。具体的には円山動物園の他に男鹿水族館と上野動物園ということです。そしてこの「囲い込み」の輪を少しずつ拡大しながら(たとえば大阪の新施設など)、欧露との協力関係を日本国内の施設に拡大するという順序で進めるべきでしょう。

ロシアの地方都市の見えないところで、目立たない形で何かが確実に動いていることを予感させてくれるニュースです。当ブログの開設者はこういったニュースは小さくても決して逃さないということです。

(資料)
ГТРК «Удмуртия» (Dec.26 2016 - Новый питомец появился в зоопарке Удмуртии)
Я люблю Ижевск (Mar.5 2012 - В ижевском зоопарке белая медведица наряжается в вольере)

(過去関連投稿)
モスクワ動物園 ヴォロコラムスク附属保護施設のアイオンがイジェフスク動物園へ ~ 「新血統」への挑戦
「ホッキョクグマ計画推進会議」が大阪で開催 ~ 将来の方針と海外個体導入の可否は議題と無縁か
ロシア動物園水族館協会(RAZA)が設立 ~ ロシアでモスクワ動物園の主導的地位が一層強まる
by polarbearmaniac | 2016-12-28 00:30 | Polarbearology

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