街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・トレド動物園で満一歳となったホープ ~ 飼育下の繁殖を野生個体保護の延長線上に位置付ける同園

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ホープ Photo(C)Toledo Zoo

一昨年2015年の繁殖シーズンに誕生した個体は全て満一歳まで成長を追いかけてきたつもろでしたが、実はまだ一頭残っていました。それはアメリカ・オハイオ州のトレド動物園で2015年12月3日にクリスタルお母さんから誕生した雌(メス)のホープです。このトレド動物園というのはアメリカのホッキョクグマの繁殖基地となっているのですが、たった一園で繁殖に奮闘しているといったような様相を示しています。ここ10年間にクリスタルとナヌヤークという二頭の雌が雄のマーティーと組んで7頭の赤ちゃんの成育に成功しています。しかしこういったこと逆から考えれば要するに近年のアメリカの動物園ではホッキョクグマの繁殖はあまりうまくいっていないということを象徴しているかのようです。

さて、このホープの昨年11月、つまり彼女が満一歳を迎えようとしている時点での映像を一つ見てみましょう。



そうですねえ....同じ時期のリラやモモのほうがこういったおもちゃの扱いは巧みだったように思いますが。 しかしこういったことはこの映像一つを見ただけでは判断はしにくいように思います。トレド動物園というのは確かにアメリカにおいて近年では唯一ホッキョクグマの繁殖に成功し続けているわけですが、そういったホッキョクグマの赤ちゃんの成長を追って情報をSNSなどで発信するということはほとんど行わない動物園です。こういった点は不思議ではあります。

さて、ここでトレド動物園が二カ月ほど前に公開したホッキョクグマの繁殖の意義について述べている映像を下にご紹介しておきます。クリスタルお母さんとホープの幼い姿も再び見ることができます。しかし一つ興味深いのは映像開始後55秒あたりから登場して話している女性です。この方は以前から何回かご紹介してきましたが、AZAのSSP推進委員会を主導しアメリカの飼育下のホッキョクグマの繁殖計画や再配置を決定しているトレド動物園のランディ・メイヤーソン女史です。この方は日本で言えばホッキョクグマの「種別調整者」にあたるわけです。また最近よくご紹介しています「北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録」の分析 (“Reproductive trends of captive polar bears in North American zoos: a historical analysis”) をまとめられたり、またAZAの「ホッキョクグマ飼育マニュアル (Polar Bear Care Manual)」の作成にも大きく関与されたのもこのメイヤーソンさんです。音声は必ずonにして下さい。



お聞きのように単に飼育下のホッキョクグマの繁殖という点に限定されず、視野を野生のホッキョクグマにも広げてホッキョクグマの保護を実践していこうという姿勢が明らかです。つまり飼育下のホッキョクグマと野生のホッキョクグマを合わせて、全体としての「種の保存」を「ホッキョクグマの保護」として統一的に理解するという姿勢なのです。その目的のためにあの Polar Bears International とパートナーシップを組んでいるというわけです。なかなか意欲的な姿勢だと思います。日本の飼育下のホッキョクグマの繁殖は現時点では「国内の頭数維持」といった観点に限定されているわけですが、アメリカやカナダなどは自国領土内にホッキョクグマの生息地があるために、飼育下のホッキョクグマを野生のホッキョクグマの延長線上に置くという理解がなされる素地があるということです。

(過去関連投稿)
アメリカ・オハイオ州 トレド動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ クリスタルの安定感
アメリカ・オハイオ州 トレド動物園の赤ちゃんの近況 ~ 一般公開に向け準備中
アメリカ・トレド動物園の赤ちゃんの性別は雌(メス)と判明 ~ 報道陣にのみ公開される
アメリカ、トレド動物園の雌の赤ちゃんの名前が「ホープ(Hope)」に決まる ~ 本日より一般公開開始
アメリカ、トレド動物園の赤ちゃん、ホープの一般公開開始のネット・ライブ中継が行われる
アメリカ・トレド動物園のクリスタル親子の近況 ~ 北米で最高との評価を持つクリスタルの育児を探る
アメリカ・オハイオ州のトレド動物園、活動的なホープと手慣れした育児のクリスタルお母さん
by polarbearmaniac | 2017-01-02 00:30 | Polarbearology

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