街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

カナダ・コクレーン、「ホッキョクグマ居住村」のイヌクシュクの14歳の誕生会 ~ 「価値ある男」の姿

a0151913_2334479.jpg
イヌクシュク Photo(C)Polar Bear Habitat

カナダ・オンタリオ州 コクレーン (Cochrane)にある「ホッキョクグマ居住村(Polar Bear Habitat)」で暮らしている雄のホッキョクグマであるイヌクシュクといえば現在北米の飼育下では屈指の繁殖能力を持つ評価の高いホッキョクグマです。その彼の14歳の誕生祝いが1月11日に行われました。彼は野生孤児としてハドソン湾岸で保護された個体ですので本来は誕生日がわからないのですが同施設は一応1月11日を彼の誕生日と設定してお祝いを行ってきたという経緯があるようです。その様子を見てみましょう。



彼が2003年に野生孤児として保護された時の状況は「カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語」という投稿でご紹介したことがありました。彼の所属はトロント動物園なのですがサンフェリシアン原生動物園やトロント動物園、「ホッキョクグマ居住村」などの施設の間をもう何度も移動しており、タイガ、ガヌーク、ハドソン、ハンフリー、ジュノーといった5頭の父親になっているわけですが、その他にペアの相手の雌(メス)が出産はしたものの育児に失敗して死亡した赤ちゃんが他に11頭もいたわけで、いかにイヌクシュクの繁殖能力が優秀であるかを示しているということです。彼を見ていると、ホッキョクグマの繁殖はやはり雄(オス)がカギを握っているということが痛感されます。サンフェリシアン原生動物園の雌(メス)のエサクバクなどは2009年11月にイヌクシュクとの間でタイガとガヌークの双子の出産・育児に成功したものの、イヌクシュクとのペアが解消されパートナーが他の雄となって以降は出産もしなくなってしまったというほどなのです。
a0151913_23592812.jpg
イヌクシュク Photo(C)Polar Bear Habitat

もともと飼育全頭数の数が少ないカナダの飼育下のホッキョクグマたちですのでイヌクシュクの血統が増えすぎることは次世代の繁殖に問題があると考えられ、イヌクシュクはまだこの若さにもかかわらずカナダにおける飼育下のホッキョクグマの繁殖計画からは引退させられてしまった形となっています。日本のホッキョクグマ界は本当ならばこのイヌクシュクの力を借りたいところなのですが、そうはできないことが残念です。
a0151913_10243.jpg
2003年にトロント動物園で保護された時のイヌクシュク
Photo(C) Animal Planet /Cochrane Polar Bear Habitat

日本では繁殖能力があるのかどうかもわからない雄(オス)に何年にもわたって淡い希望を抱き続けたといった状況もあり、実は日本においては繁殖における重要な要素として雄(オス)の能力を軽視しがちであるようにも感じる時があります。「夫婦間に子供ができないのは女性に責任がある」といったような、かつての封建的な誤った考え方が日本人のどこかにまだ潜んでいるような気がするわけです。人間において夫婦の間に子供ができない場合に実際にどちらに医学的・生物学的な原因があるのかの確率を私は知りませんが、しかし少なくともホッキョクグマの場合には人間の場合以上に雄(男)に原因がある確率がはるかに多いといった感じがします。世界の飼育下のホッキョクグマのペアの間に何年も出産がない場合に不妊検査といったものが行われた例はいくつかあるわけですが、多くのケースにおいて雄(オス)に原因があるという結果が出ているという現実があるからです。そういったことから私は繁殖の実績のないペアについては雄(オス)のホッキョクグマに対しては厳しい視線で見るという姿勢になってきたように思っています。
a0151913_1141.jpg
2003年にトロント動物園で保護された時のイヌクシュク
Photo(C) Animal Planet /Cochrane Polar Bear Habitat

それにしてもイヌクシュクは愛すべきホッキョクグマです。そして実に頼もしい男なのです。人間社会において「優しくて」、「思いやりがあって」、「人気がある」にもかかわらず仕事ができない男というのは実は無価値であるのですが、イヌクシュクは抜群に仕事ができるだけではなく、「優しくて」、「思いやりがあって」、「人気がある」というのですから、これこそ価値ある男と言えるわけです。
a0151913_19171.jpg
イヌクシュク Photo(C)Polar Bear Habitat

(過去関連投稿)
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村のイヌクシュク、繁殖への期待を担って再びトロント動物園へ
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村にイヌクシュクが無事帰還 ~ 息子のガヌークの近況
カナダ・オンタリオ州 コクレーンの保護教育生活文化村に暮らすイヌクシュクとガヌークの父子の近況
カナダ・トロント動物園に戻ったイヌクシュクのさらなる挑戦 ~ 優秀な雄の最後の課題は相性の克服
カナダ・トロント動物園のイヌクシュクが繁殖から事実上の「強制引退」か? ~ 同園の大胆な決断
カナダ・トロント動物園のイヌクシュクが無事にコクレーンの「ホッキョクグマ居住村」に到着
カナダ・コクレーン「ホッキョクグマ居住村」のイヌクシュクの近況 ~ 彼の貢献が必要な日本
カナダ・コクレーン、「ホッキョクグマ居住村」のイヌクシュク、繁殖の世界での「再登板」はあるか?
by polarbearmaniac | 2017-01-13 01:30 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ロシア・ロストフ動物園のコメ..
at 2017-04-29 22:30
ドイツ・ブレーマーハーフェン..
at 2017-04-28 22:30
フィンランド・ラヌア動物園の..
at 2017-04-28 02:00
アメリカ・コロンバス動物園の..
at 2017-04-27 11:00
ロシア極東・沿海州、ハバロフ..
at 2017-04-27 00:30
チェコ・ブルノ動物園の一歳半..
at 2017-04-26 00:30
ベルリン動物園 (Zoo B..
at 2017-04-25 00:30
モスクワ動物園の二歳半の雄(..
at 2017-04-24 01:30
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-04-24 00:30
オランダ・ヌエネン、「動物帝..
at 2017-04-23 00:30

以前の記事

2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin