街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワでの「国際ホッキョクグマの日」のホッキョクグマたちの光景 ~ 飼育下での二つの生き方

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Image :Первый канал

ロシアのTV局でなければ制作できない映像が2月27日の「国際ホッキョクグマの日」の夜のニュースの中で放送されました。それは、「国際ホッキョクグマの日」における首都モスクワのホッキョクグマたちというテーマでの映像です。それが下の映像です。



登場しているのはモスクワのボリショイサーカスに参加している四頭のホッキョクグマたち、つまりモーチャ (Мотя)、ウムカ (Умка)、クノーパ (Кнопа)、ドーラ (Дора)、そしてモスクワ動物園のシモーナ(Симона)と双子の子供たちという、実に鮮やかとも言える対比です。彼らの暮らしている世界は全く異なっているのですが、「飼育下」ということでは共通しているのです。

上の映像の前半に登場しているのは現在モスクワで公演中の調教師であるユリア・デニセンコ女史とその夫であるユーリ・ホフロフ氏が引率している四頭の雌のホッキョクグマたちで、彼らはロシア国内を移動しながら各地のサーカス団に加わる形で氷上でのサーカスの演技を行っているのです。彼らについてはその活躍を本ブログにおいても追い続けているわけですが「ロシアのサーカス団の4頭のホッキョクグマたち、首都モスクワのボリショイサーカスでの公演を開始」という投稿でご紹介していました通り、昨年暮れから彼らは首都モスクワで演技を行っているわけです。公演の本番をはさんでのリハーサルの様子が冒頭の映像の前半です。そして後半はその同じ日のモスクワ動物園の映像です。登場しているのはシモーナと彼女が2014年11月に産んだ雄(オス)と雌(メス)の双子の子供達です、ほんの瞬間的にムルマとウランゲリも映っています。飼育主任のエゴロフ氏がシモーナ親子のためにおもちゃを投げ入れているシーンがメインです。子供たちは2歳になっていますので体はもうかなり大きいのですが顔はまだ幼いですね。私は2015年の夏と秋に合計8回にわたってモスクワ動物園を訪問してこの双子に実際に会っているのですが、その時と比較すると顔付きは以前よりも母親のシモーナに似てきたような印象を上の映像からは受けました。シモーナの姿はやはり見ていて大きな親しみを感じます。それは私が札幌のララに感じる親しみと比較しても優るとも劣らないものです。シモーナは現在の世界の飼育下のホッキョクグマたちの中でも最高の母親としての存在であると言い切って間違いないと思います。放送ではシモーナを評して "настоящая мать-героиня"("ヒロインとしての母親の姿"とでも訳しておきましょうか)という言い方をしています。

さて、まさかこの現代で唯一サーカスで演技を行っているモーチャ、ウムカ、クノーパ、ドーラの四頭とモスクワ動物園のホッキョクグマたちが一つのニュース映像の中で同時に紹介されるとは思ってもいませんでした。以前に「極地で死ぬかサーカスで生きるか? - "Смерть на полюсе или жизнь в цирке?"」という投稿を行ったことがあるのですが、そのテーマは野生孤児となってしまったがために自然下で死亡することと、野生孤児で人間に救われてサーカスで演技を行うことのどちらが許容できるのかというテーマだったわけです。しかし上のニュース映像を見ていると、野生孤児として人間に保護された後でサーカスでの演技を行うことと動物園で飼育されることのどちらが許容できるのかという別のテーマが浮かび上がってきます。この二つの比較ならばいくらなんでも動物園で飼育されるほうが、よほどましでしょう。野生のホッキョクグマと飼育下のホッキョクグマではどちらが幸せかといった問いは、私に言わせればいささか意地の悪い問題設定のような気がします。何故ならそこには「尊厳」という命題が問いの中心に存在してくるからです。しかし飼育下でサーカスと動物園のどちらが幸せかという問いについては、やはり「尊厳」という命題は残るにせよ、答えは明白であると思います。

しかしこのボリショイサーカスでのホッキョクグマたちとモスクワ動物園のホッキョクグマたちというのは、どちらもロシアという国の人々の文化の中に風景として溶け込んで見えるというのは私だけでしょうか? ロシアという国は本当に不思議な国です。

(資料)
Первый канал (Feb.27 2017 - В гости к полярным мишкам. Доброе утро. Фрагмент выпуска от 27.02.2017)

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by polarbearmaniac | 2017-03-02 01:00 | Polarbearology

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