街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ドイツ・カールスルーエ動物園でのホッキョクグマの移動訓練 ~ 繁殖技術の一部としての欧州での位置付け

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フィトゥスへの移動訓練 Photo(C)ka-news

ドイツにおいてホッキョクグマの繁殖のために個体の再配置が予定されているケースとして先日、カールスルーエ動物園とノイミュンスター動物園との間の個体交換が実現することになった件は「ドイツのカールスルーエ動物園とノイミュンスター動物園の個体再配置 ~ 繁殖できぬ個体に迫った「退出」」という投稿でやや詳しくご紹介いたしました。カールスルーエ動物園から16歳の雄(オス)のフィトゥス (Vitus)と26歳の雌(メス)のラリッサ(Larissa)がノイミュンスター動物園に移動し、ノイミュンスター動物園からは16歳の雄のカップ(Kap)がカールスルーエ動物園に移動して同園の16歳の雌(メス)のニカ(Nika)とペアを組むという個体の再配置が決定したわけです。これを日本の場合に当てはめたアナロジーでいえば、豊橋で雄のチャッピーと雌のクッキー、キャンディの三頭が飼育されていた時代にチャッピーとクッキーを一緒に他園に移動させてキャンディを残し、そしてそのキャンディに他園からの雄をパートナーとして迎え入れるといったことにあたるわけです。豊橋の場合は現実にはキャンディが札幌に移動して繁殖を狙うということになったわけで、今回のドイツの場合とは逆の話として進行したわけでした。

三頭の移動が行われる今回の二園間の個体再配置は復活祭、つまり今年は4月16日のあたりに移動日が設定されているようです。しかしカールスルーエ動物園ではすでにフィトゥスとラリッサに対して移動のための訓練(トレーニング)が行われているそうです。雄のフィトゥスはすでに自ら移動用ケージに入ることに抵抗のない状態になっているそうです。そのフィトゥスの様子を見てみましょう。



一方で雌のラリッサについてはまだうまくいっていないそうです。この移動用ケージには警戒的な態度を見せているようです。最近はホッキョクグマの移動に際しては麻酔銃を使用しないやり方が一般的になっており、訓練によってホッキョクグマが自発的に移動用ケージに入るように時間をかけて訓練を行うというのが欧州では一般的な方針となっています。日本では多くの場合にホッキョクグマの移動作業のどこかの過程で麻酔が用いられる例が圧倒的に多いわけです。しかし以前にピリカが札幌から旭川に移動した際にはピリカには麻酔銃を使用する必要がなかったほど彼女は「協力的」なホッキョクグマだったというわけです。それから、以前の「ロシア・クラスノヤルスク動物園がフェリックスの園内移動に3週間も費やす ~ ロシア人の大陸的な悠長さ」という投稿でご紹介したことがあるのですが、ホッキョクグマを園内移動させるために三週間も費やしたロシア人の悠長さというのも印象に残る話です。

ともかく、ホッキョクグマの繁殖成功のためには個体の移動が非常に大きな要素であり、それを安全に行うためにも移動訓練(トレーニング)というものの必要性は非常に大きくなっており、そういったことのトータルが欧州では「繁殖技術」といったカテゴリーを形成しているということを我々は知っておくべきでしょう。

(資料)
ka-news.de (Mar.14 2017 - Eisbären-Tausch: So bereitet sich der Karlsruher Zoo auf den Umzug vor)

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ドイツのカールスルーエ動物園とノイミュンスター動物園の個体再配置 ~ 繁殖できぬ個体に迫った「退出」
ホッキョクグマの移動準備訓練の意義 ~ 麻酔使用の危険性の回避と移動時のストレス軽減の効用
by polarbearmaniac | 2017-03-15 00:30 | Polarbearology

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