街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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いよいよ今年2017年のホッキョクグマの出産シーズンへ ~ 状況を簡単に展望する

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ゲルダ (Белая медведица Герда/Eisbärin Gerda)
(2014年9月13日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)
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トーニャ (Eisbärin Tonja/Белая медведица Тоня)
(2013年12月29日撮影 於 ベルリン動物公園)

そろそろ今年も10月下旬を迎えようとしており間もなくホッキョクグマの出産シーズンが始まります。実は来週あたりにその展望を投稿しようと思っていたのですが、昨日早々とベルリン動物公園からトーニャの産室入りのニュースなどが流れてきていますので思い切って本日の段階で世界のホッキョクグマ界における今年のシーズンの見通しなどをまとめておきたいと思います。

まず今年のシーズンの際立った特徴といえば、優れた実績を持つ大物の母親たちの多くが繁殖に挑戦していないシーズンであるということです。ですから確実な出産の計算といったものが成り立ちにくいシーズンになっています。欧州ではフギース、フリーダム、オリンカ、コーラといった大物たちが繁殖に挑戦していませんし、アメリカのクリスタルは今年は繁殖のサイクルではありません。ロシアではウスラーダは繁殖から引退しシモーナも事実上の引退状態、マレイシュカはパートナーが不在でした。日本ではララも新施設建設などの状況で繁殖には参加していません。となると、世界のホッキョクグマ界においては比較的年齢が若くてまだ実績の少ない雌(メス)たちが出産の成功を目指しているといったところです。ですから計算ができないということなのです。

こういったなかで比較的注目してもよい雌(メス)を何頭か挙げていけば、スコットランドのハイランド野生公園の20歳のヴィクトリアが筆頭に挙げられます。彼女には過去一度の出産・育児の成功経験があるわけで非常に有望と思われますがカギを握っているのは彼女のパートナーである9歳の雄(オス)のアルクトスでしょう。あとは何と言ってもベルリン動物公園の7歳のトーニャでしょう。彼女は昨年、出産に成功したものの息子のフリッツは一般公開を目前にして死亡してしまったということがありましたがトーニャのパートナーであるヴァロージャの繁殖能力は証明済みとなっています。プラハ動物園の13歳のベルタは過去に出産はしているものの育児にまでは至っていないわけで、そろそろ彼女が母親になってもおかしくはないと思います。欧州ではまだいくつものペアに繁殖が期待されてはいるものの有望とまでは言えないと思います。

北米ではカナダのサンフェリシアン原生動物園の14歳のエサクバクは出産と育児の経験はありますがパートナーがイヌクシュクではないために今年も有望とまでは言い切れないでしょう。アメリカの動物園には出産が期待されているいくつかのペアがおますが、あえて有望とまで言い切れる雌(メス)の名前を挙げることには苦労します。しかし敢えて挙げればシカゴのブルックフィールド動物園の22歳のナヌヤークとノースカロライナ動物園の17歳のアナーナでしょうか。特にナヌヤークには出産・育児の経験があるのが強みではあります。

次にロシアですが、なんといっても筆頭に挙げられるのはノヴォシビルスク動物園の9歳のゲルダでしょう。世界のホッキョクグマ界で今年繁殖に挑戦している雌(メス)の中ではゲルダが最も出産成功の確率が高いでしょう。そしてイジェフスク動物園の12歳のドゥムカですが彼女には出産・育児の経験はあるものの今年は野生孤児出身のアイオンが新しいパートナーですのでカギはアイオンが握っていると思います。さらにクラスノヤルスク動物園の7歳のオーロラも有望でしょう。さらにペルミ動物園の4歳のミルカ(ユムカ)にも是非期待したいところです。

さて日本ですが、これは何とも申し上げられないように思います。期待したい気持ちはあるのですが、それぞれのペアが血統的にも何か袋小路にでも入ってしまったような将来的な展望の描きにくい世界が拡がっているように私には思えます。その唯一とも言えそうな例外は男鹿水族館の豪太とクルミのペアではあるものの繁殖行為の有無は別にしても夏期におけるクルミの体調が万全とは言えなかった状態で8~9月期の implantation (着床)を考えることに楽観的にはなれないだろうということです。正直言って日本のホッキョクグマ界における繁殖に関心を持ち続けること自体が難しい状況になっているように私には感じます。

(過去関連投稿)
ホッキョクグマ出産統計から見た傾向を再確認する ~ 出産シーズンに向けての知識整理
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by polarbearmaniac | 2017-10-19 01:00 | Polarbearology

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