街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・ユタ州 ソルトレイクシティ、ホーグル動物園のリッツォが腎不全により終末期医療へ

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リッツォ(Rizzo) Photo(C)Chris Detrick/The Salt Lake Tribune

アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティのホーグル動物園が明らかにしたところによりますと、同園で一頭で飼育されている19歳の雌(メス)のホッキョクグマであるリッツォ(Rizzo)が腎不全の状態となっており獣医さんをはじめとするスタッフは懸命に彼女の終末期医療(end-of-life care)に取り組んでいることが発表されました。現時点では安楽死という方法は考慮に入れていない模様です。

このソルトレイクシティのホーグル動物園というのは札幌のデナリの生まれた動物園として私たちには知られているわけですが、ホッキョクグマに対して非常に独特な感じ方をする市民が多いことを私は以前からいくつもの報道その他で気が付いていました。「私たち(コミュニティ)のホッキョクグマ」という意識が非常に強いわけです。アメリカにおいてこうした感情は多かれ少なかれ存在しているのですがソルトレイクシティではそれがとりわけ強く感じます。今回のケースでも、こうしてリッツォの死期が迫っている状態で動物園から発表がなされ、そして地元のメディアもそれを大きく報じるといのはソルトレイクシティならではという感じです。地元のTVニュースをいくつかご紹介しておきます。リッツォの以前の映像も紹介されています。音声はonにして下さい。全て理解しやすい英語です。







地元のメディアは独自の取材によってホーグル動物園が発表していること以上の事実を報道しています。このリッツォの異変に気が付いたのは、好物を与えたにもかかわらず吐き出してしまったことに気が付いたスタッフであり、それによって獣医さんがリッツォの血液検査と腹部の超音波診断を行ったそうですが、それによって腹部の異常が認められ、そして血液検査からは腎臓の異常を示す数値が出たという経緯だったそうです。現在リッツォは室内のエリアにいて獣医さんやスタッフがその状態を完全にモニターしているそうで、リッツォが平穏にその最期の日を迎えられるようにと懸命の治療を行っているそうです。しかし場合によっては(つまりリッツォが非常に苦しむようならば)非常につらい選択をせねばならないとも述べ、安楽死の可能性を否定していないことも報道されています。

リッツォはまだ19歳であり決して老いたホッキョクグマではないのですが、こうした内臓の疾患となればなかなか治療は難しいのでしょう。リッツォにとって残された日々が苦しみのない日々であることを祈るばかりです。
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リッツォ  (Rizzo) Photo(C)Heather L. Tuttle, Deseret News

ちょっと思い出したことがありました。あの作曲家のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは彼の母親であるアンナを1778年にパリで亡くしたのですが、その母親の死の事実をその死の日の夜にザルツブルクに住む父親であるレオポルドに手紙で知らせる際にまず最初に手紙に「お母さんは病気です。("Meine liebe Mutter ist sehr krank")」という内容だけを書いたわけです。その時点ではすでに母親のアンナは亡くなっていたのですが、いきなりその死の事実を父親に知らせるとショックだろうと考えて「お母さんは病気です。」とだけ書いたわけです。そしてそれから6日後に今度は「お母さんは亡くなりました。」と父親に書いたわけです ("Ich hoffe, Sie werden bereitet sein, eine der traurigsten und schmerzhaftesten Nachrichten mit Standhaftigkeit anzuhören; Sie werden durch mein Letztes vom dritten in die Lage gesetzt worden sein, nichts Gutes hören zu dürfen. Den nämlichen Tag, den dritten, ist meine Mutter abends um zehn Uhr einundzwanzig Minuten in Gott selig entschlafen")。 一般的にはこの行為は「父親のレオポルドにショックを与えないようにした息子ヴォルフガングの心の優しさである」という解釈がなされています。(しかし別の解釈もあります。) さて、父親のレオポルドは実は息子のヴォルフガングから「お母さんは病気です」と書かれた最初の手紙を受け取ったときにすでにアンナの死を察していたというのが定説です。さて、私は今回こうして突然ホーグル動物園が発表したリッツォの終末期医療についてですが、実はリッツォはすでに亡くなっているのではないかという感じがしないでもないように思うわけです。ファンにいきなりショックを与えず、心の準備をしてもらうためにこの「終末期医療」の話を発表した......そういう感じもするわけです。なにしろこのリッツォは地元で非常に愛されているホッキョクグマなのです。欧米の動物園で土曜日にこうしたことを発表するというのもやや不自然な感じがします。 現地の月曜日、つまり日本では火曜日の早朝にリッツォの死亡のニュースを流すための伏線ではないかという感じがします。いやはや.....でもそういうのは考えすぎでしょうね.....。

(資料)
Deseret News (Apr.8 2017 - Polar bear at Hogle Zoo diagnosed with terminal kidney failure)
Salt Lake Tribune (Aug.8 2017 - Hogle Zoo to put polar bear Rizzo on end-of-life care)
KUTV 2News (Apr.8 2017 - Rizzo, Hogle Zoo's beloved polar bear, diagnosed with renal failure)
Good4Utah (Apr.8 2017 - End of life care started for 19-year-old polar bear at Hogle Zoo)
KSL.com (Apr.8 2017 - Polar bear at Hogle Zoo diagnosed with terminal kidney failure)
Fox13 (Apr.8 2017 - Hogle Zoo staff begins end-of-life care for beloved polar bear)

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2017-04-09 21:00 | Polarbearology

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