街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
by polarbearmaniac
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札幌・円山動物園で完成の「ホッキョクグマ館」が報道関係者に公開される
先日も投稿していますが札幌の円山動物園でホッキョクグマの新飼育展示場の建設が完了しています。そして14日に報道陣に対して公開されたそうです。そのニュース映像を見てみましょう。映像の中で同施設に「ホッキョクグマ館」という名前の表示がなされていますので正式名称は「ホッキョクグマ館」ということで決定したものだと考えてよいようです。
いくつかの報道を総合して要点をまとめてみます。
・新施設は約4100㎡ (旧施設は1600㎡)。ホッキョクグマが自由に動き回れる屋外の展示スペースは1400㎡である。
・地面は土と芝である。
・全長約20mの水中トンネルがある。
・同園飼育の4頭は12月から段階的に新施設に移動する。
・オープンは来年春である。
さらに同園の園長さんの発言で私が重要と思われる点を挙げておきます。
・世界的なホッキョクグマの飼育基準であるマニトバ基準に基づいている。
・いずれ新しい個体に来てもらうときに、基準を満たしていないと難しい。
ちなみに、「マニトバ基準」という言い方は俗称です。正しくは「マニトバ州の『ホッキョクグマ保護法 (Polar Bear Protection Act)』で定められた『ホッキョクグマ保護規定 (Polar Bear Protection Regulation) 』」というわけです。このマニトバ基準については以前の投稿である「アメリカ・ノースカロライナ動物園のアキーラが改修後の展示場に元気に登場 ~ 「マニトバ基準」 を考える」をご参照下さい。この円山動物園の「ホッキョクグマ館」は面積の観点では確かにマニトバ基準をクリアしてはいますがEAZAの基準(純粋な展示場で最低2000㎡)はクリアしてはいないと思われます。このEAZAの基準は関係者以外には非公開扱いとなっており「最低2000㎡」に付されている各種要件については要確認事項ですので今回は「クリアしていない」と100%断言することはやめておきます。私が興味のあるのはこの「基準」の問題よりも園長さんのいくつかのインタビューに対する答えであり、そういったことから明らかに感じるのは、海外との個体交換やら個体導入についての計画がうまくいっておらず現時点では進展がないといったニュアンスです。前回も述べましたが、そういったことが進行しているならば必ず欧州(あるいはロシア)にそういったことを前提とした何らかの個体移動の動きがあるはずですが、それが全くありません。ということは、欧州やロシアと日本の間での協力関係は構築されていないことを物語っていることになります。ですからララ、デナリ、リラ、キャンディの四頭が単純に「ホッキョクグマ館」に移動するだけということでしょう。私はララ、デナリは現在の旧展示場に留まるだろうと思っていましたが、新しい飼育展示所にララもデナリも移動するということになりますと札幌にやってくる個体はないということを意味しているわけです。現在モスクワ動物園ではWAZA主催の「アムールトラ生息数管理委員会」の会議が行われています。モスクワ動物園が述べるところによりますと、この委員会の構成組織は AZA, EAZA, EARAZA, JAZA の四つだそうです。こういった形でアムールトラについては日本(JAZA)も参加しているわけですがホッキョクグマについてはそうではありません。結局のところ、こういったことが問題なのです。
水中トンネルについては私は全く興味がありません。こういったホッキョクグマの泳ぎを見せる施設の機能は一般の来園者には重要だと思います。ホッキョクグマの泳ぎは、まさにホッキョクグマの特徴を種として理解してもらうためには重要だからです。つまり水中トンネルは「種としての展示」の極限なのです。そしてその一方で、「水中のホッキョクグマ」の姿は個体差がほぼ完全に放逐された彼らの姿なのです。私はホッキョクグマに対して「種」としてではなく「個」としての興味を持っているわけですから「水中のホッキョクグマ」には興味はありません。その証拠に私はこのブログで旭山動物園やら上野動物園の地階の観覧スペースで彼らの水中の姿の写真をアップしたことはありません。
ちょっとホッとしたのは人間とホッキョクグマを隔てるアクリルボードのようなものが存在していないように見えることです。この円山動物園の「ホッキョクグマ館」についてはやはり自分の眼で見てみないと自分なりの評価はできないと思います。
(資料)
北海道新聞 (Nov.14 2017 - 円山動物園「ホッキョクグマ館」完成 自然に近い姿間近に)
読売新聞 (Nov.16 2017 - 札幌市円山動物園、来春に「ホッキョクグマ館」)
NHK 北海道 (Nov.14 2017 - 新しい「ホッキョクグマ館」完成)
HBC 北海道放送 (Nov.14 2017 - 円山動物園の新施設「ホッキョクグマ館」公開)
北海道建設新聞 (Nov.15 2017 - 来春オープン「ホッキョクグマ館」 札幌市円山動物園)
ASSOCIATION OF ZOOS AND AQUARIUMS (Standardized Animal Care Guidelines – Polar Bear)
カナダ・マニトバ州 「ホッキョクグマ保護法」 - Manitoba ‘Polar Bear Protection Act’ (PBPA, 2002)
カナダ・マニトバ州 「ホッキョクグマ保護法」・ホッキョクグマ保護規定 (通称「マニトバ基準」) - Polar Bear Protection Regulation)
(過去関連投稿)
アメリカ・ノースカロライナ動物園のアキーラが改修後の展示場に元気に登場 ~ 「マニトバ基準」 を考える
札幌・円山動物園の「新ホッキョクグマ飼育展示場」が竣工 ~ その経緯と意義を考える
by polarbearmaniac
| 2017-11-16 15:00
| Polarbearology
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