街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・マニトバ州チャーチル付近で保護された二頭の野生孤児がアシニボイン公園動物園に到着

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シルカ (Белая медведица Шилка/Eisbärin Shilka)
(2015年7月14日撮影 於 大阪・天王寺動物園)

カナダ・マニトバ州のチャーチル付近で発見されて保護された生後11ヶ月と思われる二頭のホッキョクグマの孤児の幼年個体(性別が異なるそうです)についてチャーチル市長や市議会がアシニボイン公園動物園に送らずに自然の生息地に戻すことを主張している件ですが、この二頭は当初の予定通りウィニペグのアシニボイン公園動物園の「ホッキョクグマ保護・厚生センター (Leatherdale International Polar Bear Conservation Centre)」に火曜日の夜に無事到着したことが報道されています。これから30日間の検疫期間に入るとのことです。

ひとまずは胸をなで下ろしたわけですが、しかしこれを機会としてカナダにおけるホッキョクグマ孤児の保護政策が大きな転機を迎える可能性が無いとはいえない点で極めて注意して動向を追っていくことが必要になるでしょう。 事実、マニトバ州の持続可能開発省 (Ministry of Manitoba Sustainable Development Minister) の大臣であるスクアイアス氏は州におけるホッキョクグマに関する諮問委員会のメンバーを拡大し、そしてこの地域におけるホッキョクグマの孤児個体の管理 ("Orphan cub management") について新しい政策を考慮することを議題に上げることを指示したそうです。たとえば一案として現在はウィニペグのアシニボイン公園動物園にだけある保護施設をチャーチルにも建設できないかといった解決策を提案するようです。

チャーチル近郊に生息する多数のホッキョクグマはチャーチルにとっては一つの「資源」であり、そういった中から生じた孤児が動物園に運ばれてしまうのはおかしいというチャーチルのスペンス市長の意見に賛同する住民は少なくないそうで、諮問委員会ではスペンス市長にそういった声をあげている人々を諮問委員に任命させるべくスペンス市長を招致しているそうです。

持続可能開発相のスクアイアス氏もアシニボイン公園動物園のピーターセン博士もこのような年齢の孤児の幼年個体を生息地に戻せば生存していく可能性はないと認識している点では同じです。しかしスペンス市長は「それは単なる推量に過ぎず実際にそうなるかについての研究報告はない。」と語り、「今回の二頭の孤児の首に発信器のついたカラーを巻いて行動をモニターし、いったい彼らはどうなるのかについての研究をすべきである。」という提案をしています。「孤児になればただちに動物園へ」といった従来の方法からの脱皮を主張しています。しかしスペンス氏の主張には動物園という存在を終身刑の場所であるといった発言からもわかるように認識の背後に動物園への蔑視があるわけです。このことがスペンス氏の主張が持ついくらかの説得性を奪っていると私は感じます。アシニボイン公園動物園のピーターセン博士は、「動物園におけるホッキョクグマの存在は野生のホッキョクグマたちを救うより大きな計画の中の一部を成しているのです。」と語っていますが、私はその意見に賛成したいと考えます。

ただしカナダにおける野生孤児の保護政策が一つの転換点を迎えつつあるともいえるわけで、今後の動向については注視が必要でしょう。

(資料)
CBC (Dec.6 2017 - Churchill cubs now at Winnipeg's polar bear centre) (Dec.5 2017 - 'Enough's enough': Number of polar bear cubs shipped out of Churchill could be cut back)
CTV News (Dec.6 2017 - Orphaned polar bears arrive in Winnipeg)

(過去関連投稿)
カナダ・マニトバ州チャーチルの当局者がホッキョクグマ孤児の保護方針の転換を主張 ~ 科学と倫理の相克
カナダ・マニトバ州 チャーチルで保護された二頭の幼年孤児は生息地に戻さずにアシニボイン公園動物園へ
by polarbearmaniac | 2017-12-08 00:15 | Polarbearology

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