街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・サハ共和国、ヤクーツク動物園がホッキョクグマ繫殖に一年サイクルを採用 ~ 理解不能な方針の背景

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コルィマーナお母さんと赤ちゃん (Белая медведица Колымана и медвежонок) Photo(C)Мичил Яковлев

いやはや、恐れ入ったと言いましょうか、正気の沙汰ではないやり方を採用しようとしているのがヤクーツク動物園、そしてその背後にいるレニングラード動物園であるようです。今頃こういったことを考える連中がいるというのはあきれた話です。昨年2016年の11月30日にロシア北東部サハ共和国のヤクーツク動物園で誕生した雌(メス)の赤ちゃんをコルィマーナお母さんからすぐには引き離さないように懇願する地元の子供たちを中心としたファンからの意見が出ていることは昨夜投稿しています。

この意見に対してサハ共和国の環境相は早速コメントを発表し、この赤ちゃんは生後半年はヤクーツク動物園に留まるものの、その後は直ちにサンクトペテルブルクのレニングラード動物園に移動させる方針は変わらないと本日語っています。そしてその理由についてはレニングラード動物園との契約条項を挙げるだけではなく、ヤクーツク動物園ではホッキョクグマの赤ちゃんは毎年("каждый год") 誕生する(誕生させる)からであるとも語っています。これですとつまりこの赤ちゃんは5月一杯までしかヤクーツク動物園にいられないというだけでなく、今年の繫殖シーズンにコルィマーナは再びロモノーソフとの間の繁殖を目指すということを意味します。そしてこれを毎年繰り返すということになりますから、つまりホッキョクグマの繫殖に「一年サイクル」を採用することを明言したことになるわけです。サハ共和国の環境相はヤクーツク動物園を管理する立場にいますからヤクーツク動物園の方針を代弁して語っているわけです。こういった「一年サイクル」での繫殖を事実上要求しているのはロモノーソフの権利を有するレニングラード動物園であることに疑う余地はありません。つまりコルィマーナに毎年どんどん出産させて生まれた赤ちゃんの権利を可能な限り取得したいという意図が明白なのです。思い出してみて下さい、昨年「ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園が静岡・日本平動物園に突き付けた法外な条件」という投稿でレニングラード動物園が静岡市との昨年の契約更改時に「繁殖した子グマ5頭をレニングラード動物園側に引き渡した時点でロッシーの所有権を日本平動物園に譲渡する」という条項が追加されたわけです。その時も述べましたが、レニングラード動物園は毎年次から次へとホッキョクグマの幼年個体の権利を可能な限り早いスピードで取得しようという明白な狙いを持っているわけです。それと同じ狙いをヤクーツク動物園で誕生する個体についても実現しようとしているわけです。「やはりなあ」という感じです。全てが読めました。全てがこうして繋がってくるわけなのです。日本平動物園でヴァニラが赤ちゃんを産んでもレニングラード動物園は今回のヤクーツク動物園の例と同様、生後半年で赤ちゃんを日本国外に持って行ってしまうということなのです。それに抗議しようとすれば私たち日本のホッキョクグマファンは大きな声をあげる必要があるでしょう。日本平動物園(静岡市)はレニングラード動物園に対しては無力なのです。何故なら日本平動物園(静岡市)はレニングラード動物園との契約の当事者だからです。

ホッキョクグマの繫殖の「一年サイクル」というのはかつて昔には行われたやり方です。日本でも1980年代に札幌・円山動物園がこれを試みたわけです。南アフリカのヨハネスブルク動物園で暮らしていた故ポロは、誕生後約3ヶ月ほどで「強制離乳」され同園内で一頭で展示されていたわけです。つまり円山動物園は「一年サイクル」の繁殖を狙って赤ちゃんだったポロをシロお母さんから引き離したわけです。これについては「南アフリカ・ヨハネスブルグ動物園のポロの不幸な幼年時代 ~ シロお母さん、そして栄子さんの時代」という投稿を御参照下さい。今回のヤクーツク動物園の赤ちゃんはモスクワ動物園が睨みを利かせていますので中国に売却されることはないでしょう。しかしロシア国外にある日本平動物園にはモスクワ動物園の睨みは利かないのです。

ロシアという国は一筋縄ではいかないのです。非常に繊細な心と乱暴なやり方が同居しているのが、あの国なのです。プーシキンやパステルナークのような繊細さとスターリン時代の恐怖政治・粛清を共に生んだ国がロシアです。人情家であり、そして「礼に始まり礼に終わる」柔道を心から愛するプーチン大統領が自分の政敵に対してどういうことを行ってきたかを考えてみて下さい。感情の豊かさ・感性の繊細さと肉体的な暴力性が同居しているのがロシアという国なのです。ですからロシアは興味深い国であり、そして実に魅力的な国だということです。私たちの側に懐の深さがないとあの国は理解できません。そしてさらに付け加えれば、そういったロシアという国の動物園に暮らすホッキョクグマたちは最高なのです。

(資料)
YakutiaMedia (Apr.12 2017 - Семейство белых медведей будет пополняться ежегодно – министр охраны природы Якутии)

(過去関連投稿)
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ロシア・サハ共和国、ヤクーツク動物園の赤ちゃんの早期移動に反対するヤクーツクの地元の人々
by polarbearmaniac | 2017-04-12 18:00 | Polarbearology

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