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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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シルカ (Шилка) の一日 ~ 授与物よりも授与者を重視するシルカと、正反対のララの娘たちとの関係

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すっかりプールの水が交換された今日の天王寺動物園の飼育展示場である。
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シルカ登場。
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まずは飼育員さんの存在の有無を確かめようとするシルカである。
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そうしてから、おもむろに朝に用意されたおやつに向かう。

朝のおやつ - The morning treat for Shilka the Polar Bear, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on May.17 2017.

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朝からリラックスしているシルカ。
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彼女にとっては急ぐ必要のない毎日である。


シルカの朝の表情(1) - Shilka the Polar Bear's morning profile (1), at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on May.17 2017.


シルカの朝の表情(2) - Shilka the Polar Bear's morning profile (2), at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on May.17 2017.

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しかし飼育員さんの姿は彼女の一日にとっては不可欠なものである。
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素早い反応と行動こそが命である。
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複数のおもちゃを同時に扱おうとするのはシルカの欲求の大きさなのかもしれない。
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おもしろいことに気が付いたのだが、シルカは飼育員さんから投げ入れられたもの、そのもの自体に必ずしも強く反応するとは限らず、飼育員さんが何かを投げ入れた時に、すでにもうプール上に存在していたものを相手にして遊ぶケースが結構多いということである。
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つまり、シルカはその時その時に与えられたおもちゃを使って遊ぶというよりも、飼育員さんが何かを投げ入れるという行為を行ったことに対して反応しているということなのだ。このことはつまり、シルカはその瞬間、瞬間に与えられたおもちゃそのもの自体よりも、飼育員さんの行為によって遊びのエンジンが始動するということを意味している。こういったことはララの子供達には全く見られない行動である。ララの子供たちは飼育員さんから与えられたもの、そのものが問題であり、そしてまさにそのものを相手に遊ぶのである。つまりララの子供達にとっては、飼育員さんの姿よりも与えられるおもちゃのほうが重要であるということである。ところがシルカはそうではない。これは実に興味深い話である。徳島のポロロは飼育員さんの姿を見ると喜んでそわそわし始めるのである。その理由は、ポロロはおもちゃやおやつをもらえるという期待からであり、飼育員さんの姿そのものが彼女を喜ばせているというわけではないのだ。ところがシルカはポロロとは期待の対象のベクトルの方向が全く異なるのである。
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私は前任者のシルカの担当者の方のやり方を100%支持する。しかし、あのやり方には「諸刃の剣」といった危険な要素がやはり存在していたと思う。そしてひょっとしたら今になって、あの剣のもう一つの刃が我が身の方向に接近した危険な状態になってきかねない予感を感じないでもない。
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午後のおやつタイムとなった。


午後のおやつタイム - Today's afternoon treat for Shilka the Polar Bear, at Tennoji Zoo, Oaska, Japan,, on May.17 2017.


シルカのおもちゃ遊び - Shilka the Polar Bear enjoys herself with toys, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on May.17 2017.

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私は段々と複雑な気持ちになってきた。やはりゲルダの育児には問題があったと言わざるを得ない。ゲルダとシルカという母娘の間の関係は複雑だった。私はノヴォシビルスク動物園でそのことに気が付いていた。あの不安定な関係がどこかでシルカが母親から離れて以降も彼女に何らかの形で投影しているように感じるのだ。来日後のシルカに対しては諸々の要素を考慮して格別の配慮が彼女に対してなされた。ところが、そうやって行われたいくつかのことはシルカに対して大いにプラスになったことは間違いないのだが、何か根本的なところで飼育員さんの手では克服できない重要なものが依然として存在しているように見える。それが重大な形で顕在化する不安の影が忍び寄ってきているように私には感じる。
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人工哺育された個体に対してホッキョクグマという種であることを植えつけさせるために「適応化(socialization)」というものが不可欠となっているのは欧米では常識なのだが、最近になって欧州では人工哺育された個体でなくても違った意味での「適応化(socialization)」が志向されてきている。一例を挙げればブレーマーハーフェン臨海動物園のリリーが一歳半でオランダのエメン動物園に移動して同じ年齢層の同性の若年個体と同居を行わせようという試みなどそうである。リリーも母親に問題があったのである。ホッキョクグマはその生態において単独生活を行うのが特性であるというのは事実である。そしてこれはまさに Zoological correctness である。ところが最近の欧州の飼育下のホッキョクグマ(特に若年個体)に対する先進的な考え方では、ホッキョクグマには「遊び友達」を与えるほうが良いという方向に移行しつつあるのである。日本の動物園関係者はこういった傾向についてはまだ知らないと思う。Zoological correctness という「絶対的正しさ」はもう通じなくなってきているのが欧州の先進的なホッキョウグマ飼育の考え方なのだ。そういったことを実践しているのがスカンジナヴィア野生動物公園などをはじめとした先進的な動物園のホッキョクグマ飼育の姿である。
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仮に私がスターリンのような独裁者だったら、思い切ってシルカに対して同じ性別の雌(メス)の若年個体と同居させてみたいと考え、熊本からマルルを有無を言わさず強制的に大阪に移してシルカと同居させるようにするだろう。私は天王寺動物園の飼育員さんがこれからも懸命の努力をし続けるよりも、シルカをララの娘たちと同居させるほうがよいと考える。シルカにとって必要なものは多くのおもちゃ以上に、同じホッキョクグマである同性の他者の存在だろう。多くのおもちゃを与えられ、そして遊んでいるシルカを見ていると私には何かペーソスのようなものを微かに感じるのである。
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人間という存在、特に特定の個人など信じるなというのがララが自分の子供たちに対する教育・育児の方針なのである。これは、ララにはどこかに厳しい環境の自然下における野生のホッキョクグマの母親の本能のようなものが宿っているからである。そしてこれはホッキョクグマとしては正しい教育・育児方針である。ところがゲルダは、自らが人間(来園者)が投げ与えてくれるものを求めるのである。ゲルダにとってはそうすることが育児よりも重要だったのである。ウスラーダは完全にララと同じ考え方である。いや、それどころかウスラーダは特定の個人はもちろんのこと、そもそも人間全般をバカにしていて我々を見下している態度をよく見せるのだ。 ゲルダはララとは非常に異なる母親である。だからゲルダの娘とララの娘は非常に異なる指向を見せるのは当然といってよいだろう。
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私は個人的にはこのシルカはマルル、ポロロ、ミルク、モモなどの同年代の若年個体のどれよりも素質の点で優れていると思っている。ただし、どこかの何かで問題があるとも感じている。そしてそれはやはり母親に起因しているのではないかと考える余地が十分にあるとも思っている。

Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
Panasonic HC-W870M
(May.17 2017 @大阪・天王寺動物園)

(*注 - このシルカには日本で新しい名前が付いていますが、彼女のロシアでの誕生から成長、来日、そして日本でのこれからの生活を一貫して捉え、本ブログでは引き続き彼女の名前をシルカ - Шилка - で統一して記載するのを方針としています。)

(過去関連投稿)
・ノヴォシビルスク動物園訪問二日目 ~ ゲルダお母さんとシルカの不安定な関係
・ゲルダの将来への道のりと課題 ~ 一頭の母親と一頭の雌の二役の演技の動機となっているもの
・ノヴォシビルスク動物園訪問三日目 ~ "Pour que Gerda et Shilka soient heureuse..."
by polarbearmaniac | 2017-05-17 21:00 | しろくま紀行

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