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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・オレゴン動物園を去るノーラへの人々の反応 ~ 移動の必要性を理解・納得した地元ファン

アメリカ・オレゴン動物園を去るノーラへの人々の反応 ~ 移動の必要性を理解・納得した地元ファン_a0151913_0562194.jpg
ノーラ Photo(C)Oregon Zoo

アメリカ・オハイオ州のトレド動物園のホープとオレゴン州のオレゴン動物園のノーラというどちらも一歳半の雌(メス)の幼年個体二頭が秋にユタ州のホーグル動物園に移動することになったニュースはすでに投稿しています。特にオレゴン動物園のノーラは昨年9月にコロンバス動物園からオレゴン動物園に移動してきたわけで地元ポートランドでは大変な人気となったものの、来園後に一年も経過せずに他園に移動することになったニュースについて地元のポートランドではSNSなどでいくつかの意見が出ています。まず、オレゴン動物園でのノーラの様子を見ておきましょう。



やはりこのノーラを見ていますと人工哺育で育てられた個体特有の、人間に対する関心の深さというものが見て取れます。続いて地元ポートランドのニュースです。





ノーラがポートランドを去ることについてはやはり何人ものファンが非常に悲しい思いを語っていることはよくわかるのですが、ノーラには遊び友達が必要であるという事実を多くの人々は受け入れて明るく彼女を送り出そうという感想のほうがずっと多いように思いました。日本ではとかくウェットな話になりがちなのですが、やはりアメリカでは物事をロジックで納得すれば不満を漏らす人は少なくなるというのが顕著な傾向のようです。ただし同じアメリカでも以前にカンザスシティーからニキータが移動する際には地元ファンは「往生際」が悪かったといいますか、全く感心できない態度を示したという悪い事例もあったわけです。上にご紹介した地元ポートランドのTVニュースでは何故ノーラが移動しなければならないのかについてその理由がきちんと述べられているのには感心します。

私はこのノーラの映像を見ているとやはり彼女の運命を気の毒に感じます。人工哺育となった経緯はいたしかたのないことでしたが、諸々の理由で生後10ヶ月ほどで環境の良かったコロンバス動物園からオレゴン動物園に移動させられ、そしてまた秋に他園に移動するということになるわけですが、人工哺育された個体にありがちな人間への関心の強さによって映像などでは逆に見栄えのする姿を見せてくれるといった形になっています。彼女の生まれたコロンバス動物園では三頭もの赤ちゃんが誕生したため人々の関心はそちらの方に映ってしまっており、人工哺育されたが故の一種の「哀しさ」というものをノーラに感じてしまいます。

ともかく今年の夏はノーラはまだオレゴン動物園に留まっていますので、その可愛らしい姿をポートランドの人々は存分に楽しめるでしょう。しかし彼女の現在の様子を見ていますと非常に心配に感じるのは事実です。遊び方は自由奔放で野放図なほどであり来園者は大いにその姿を楽しむわけですが、こういった彼女の行動は一刻も早く他の個体と同居させて抑制してやるのがやはりノーラのためには必要であることを痛感します。"Socialize with another polar bear" つまり「適応化(Socialization)」が必要だということです。

(資料)
KGW.com (May.24 2017 - Nora the polar bear leaving the Oregon Zoo)
KATU2 (May.25 2017 - Oregon Zoo's beloved polar bear Nora will be leaving for Utah this fall)

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2017-05-28 23:50 | Polarbearology

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