街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2010年 11月 03日 ( 2 )

再びポリーニのリサイタルを聴く

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赤坂アークヒルズのカラヤン広場。
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先月17日に引き続いて今夜は19時より、ここ赤坂のサントリーホールにて現在来日中のイタリアの名ピアニスト、マウリツィオ・ポリーニのリサイタルを聴く。彼がバッハを弾くのを実演で聴くのは初めてだ。今夜は鍵盤奏者にとっての旧約聖書とも言うべきバッハの平均率クラヴィーア曲集、その第1巻を弾く。
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(曲目)J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 (全曲)
(Nov.3 2010 @東京・赤坂、サントリーホール 開演前に)


※(終演後)
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21時半に終演。いやあ、やはり凄い演奏でした。休憩前と後ではかなり印象が違いました。全体を通して純度が高く透明な音で弾かれていましたが、前半は非常に流麗、後半はダイナミックなスケールの大きさと構築性が感じられました。これは後半のみ譜面を見ながら弾いたことと関係があるのでしょうか? 詳しくは明日書きます。

※(後記)
休憩を挟んでの前と後での印象の違いというものを考えていますが、なかなかうまい説明がありません。前半はセーブ気味で後半に力を発散させたというのがやはり正しいのでしょうか。どの曲にもフーガの部分にそれが顕著だったようにも思いました。ポリーニの平均律はテンポが速くて快感さえ覚えさせるものでした。この流麗さというのは、あのギーゼキングの放送用録音を思い出したものです。しかしこういう流麗さはポリーニがかつて(今でも)指向していきた構築性や構造への切り込みとは折り合いをつけるのが難しいように思いましたが、後半においてダイナミックを大きくとって弾いていたためか、流麗よりも重厚さがもっと出ていたようにも感じました。

ポリーニはリーフレットのインタビュー記事のなかで、「ピリオド楽器の演奏が一般化するようになって、正直言ってピアノで(この曲集を)弾くことに躊躇していました。」と述べていますが、かつて(20年前?)この曲集を手がけたときにはまだ確固とした考え方に到達してはいなかったものと思います。しかし後年、そして最近になって曲のエッセンスはピアノで弾いても失われるものではないことに気が付いたという内容のことも述べています。どうもポリーニがこの曲集を最近になって再びてがけているのは、そのエッセンスをあくまで「調性」といったものに見ているようです。ならばこのような流麗さも理解できるところです。ただし、ちょっとペダリングに問題があるようにも感じました。全体の響きに埋没してしまう音が多い瞬間がありましたので。

ただし....ウーン...さすがのポリーニもあのリヒテルには及ばなかった...そう言ったらまずいでしょうか。 この曲集を単に聴くだけの立場で言えば、この曲集に何を求めるかによっていろいろな好みが出てくるでしょうね。 瞑想的な表現から激しさまで....リヒテルのほうが起伏があります。もっとも私はリヒテルが平均律を弾いたのを実演では聴いていませんが。

by polarbearmaniac | 2010-11-03 21:43 | Daily memorabilia

クルミ・ツヨシ・豪太に関する報道記事の深層を読み解く (前)

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クルミとツヨシ  Photo(C)共同通信

一見非常に不可解である報道がなされました。それは2010年10月30日版(下記資料参照)の毎日新聞の秋田版です。

>男鹿市の男鹿水族館GAOがホッキョクグマ・豪太(6歳)の“花嫁”として早ければ10月中に迎える予定だった北海道釧路市の釧路市動物園のメスについて、到着が来春以降にずれ込むことがわかった。(中略)釧路市動物園によると、2頭のうち優先される予定だったクルミは1月に同園のオスと繁殖行為が確認され、妊娠の兆候もみられた。このため11月4日に産室に移動させ出産に備える。これを受けて、無事出産し子育てをする場合など今後の様子を当面見守ったうえで、クルミとツヨシ(6歳)のどちらを秋田に送り出すかなどを再検討し、来春にも結論を出すとしている......

「早ければ10月中に迎える予定だった...」と記事に書いてありますが、「10月中」などというスケジュールがありえないことはちょっと考えたらすぐわかります。10月の段階ではクルミが「妊娠→出産」のプロセスに進むのか進まないのかは、まだ全く不明だからです。現時点において報道されているクルミの特異行動にしたところで、それが必ずしも妊娠の事実を証明するものではありません。そんな時期にクルミかツヨシのどちらかがGAOに行く決定があるはずがありません。まず、この「10月」という言葉が一人歩きしているらしいと考えるに十分な根拠があります。まず、釧路市の2009年12月分の定例市政記者クラブ・市長懇談会の正式な記録を参照してみて下さい(下記資料参照)。「ホッキョクグマの貸し出し時期がいつからになるか」という質問に対して釧路市の行政の最高責任者である釧路市長はこう言っています。

>「クルミ」の妊娠が確認された場合は、「ツヨシ」を男鹿水族館に貸し出すことになります。もし、自然繁殖がうまくいかなかった場合は、「クルミ」の繁殖を優先にすることから、「クルミ」を男鹿水族館に貸し出すことになります。貸し出し時期は、早ければ来年の10月ころになり、遅くても来年度中(平成23年3月まで)に決定することになると思います。

「早ければ10月ころ」と言っているだけです。いやそれだけではありません、「もし、自然繁殖がうまくいかなかった場合は、クルミの繁殖を優先にすることから、クルミを男鹿水族館に貸し出すことになります。」と言っています。「妊娠 → 出産 → 母乳による子育て」がうまくいったか否かの見極めを年度中の2011年3月末頃に設定しているわけです。これは、赤ちゃんの一般公開開始の時期に合わせた設定だといってよいでしょう。毎日新聞(秋田版)の記事で釧路市動物園の見解が以下のように引用されています。

>無事出産し子育てをする場合など今後の様子を当面見守ったうえで、クルミとツヨシ(6歳)のどちらを秋田に送り出すかなどを再検討し、来春にも結論を出すとしている。

この引用された釧路市動物園の見解が正しいとしますと、それは釧路市の定例市政記者クラブにおける釧路市長の発言と矛盾していないように思われます。

ですから今回のこの報道はクルミとデナリとの交尾が確認されて以降は、「10月」やら「10月中」やら「秋頃」などという、本来はあり得ない時期で言われていたGAOへのホッキョクグマの移動時期について、むしろ具体的なスケジュールが見えてきたことを意味します。ですから。「延期」ということとは性格がかなり異なるように思われます。この記事で引用されている釧路市動物園の見解で一見不可解とも思える内容のこの記事に、むしろ私にはなんだかもやもやしていた霧が晴れてきたような印象を持ったほどでした。 「10月」やら「10月中」やら「秋頃」などというのはデナリとクルミに交尾が確認できなかった場合にだけ限られるわけで、これはすでに今年の1月に確認ができていますから、当の昔にありえない時期設定であったわけです。

さて次回で、さらにこの「クルミ・ツヨシ・豪太報道」の深層を奥深く探っていきたいと思います。
(続く)

*(資料)
毎日新聞 秋田地方版 (2010年10月30日付
釧路市・定例市政記者クラブ・市長懇談会記録(2009年12月分
by polarbearmaniac | 2010-11-03 13:00 | Polarbearology

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