街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2017年 02月 12日 ( 1 )

アメリカ・バッファロー動物園でルナとサカーリとの同居開始 ~ 繁殖可能年齢到達と同時に挑戦させる考え方

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サカーリ(左)とルナ(右) Photo(C)WGRZ/Jim Gibbons

アメリカ・ニューヨーク州のバッファロー動物園で雌(メス)のルナと雄(オス)のサカーリとの本格的な同居が始まりました。世界中の動物園ではだいからこの時期から繁殖を狙ってホッキョクグマのペアの同居が開始されるわけで、そのようなペアが世界ではいくつもあるにもかかわらず何故このバッファロー動物園に注目するかについては理由が二つあります。そのうちの一つは前回の投稿でも述べましたが、ルナというのは人工哺育された個体であるという点です。従来から人工哺育された雌(メス)の個体の繁殖可能性については極めて悲観的な見解が支配的だったわけですが、南フランス・アンディーブ、マリンランドのフロッケが2014年に出産に成功するという快挙を成し遂げ、この「人工哺育個体繁殖不能論」というのは大きく後退したわけです。

人工哺育されたフロッケの繁殖成功は「適応化 (Socialization)」の成功が大きな要因なのですが、ではこのルナはと言えば、一応彼女は幼年期からカリー(現 セントルイス動物園)との同居に成功しているわけで、フロッケほどではないものの「適応化 (Socialization)」がある程度なされているとは言えるわけです。そうなるとこのルナが繁殖に成功するかは極めて注目すべきことになります。昨日から本格的にスタートしたルナとサカーリとの同居の様子を見てみましょう。この二頭は相当に体の大きさが違います。大きな方はもちろん雄(オス)のサカーリです。





上の二つの映像だけでは何とも言えませんね。では地元の二つのメディアがこれをどのように報じているかを見てみましょう。音声はonにして下さい。





その他の報道内容などを総合しますと、この二頭はかなり相性が良いという評価をバッファロー動物園の複数の担当者としては下しているということがわかります。

さて、このバッファロー動物園の若いペアにとりわけ注目すべき二つ目の理由ですが、この二頭は共に現在は4歳で、今年のシーズンからは一応繁殖可能な年齢となるというペアであるということです。これについては「北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること ~ 再び考えるキャンディの今後」という投稿の中でご紹介したグラフを御参照下さい。このサカーリがバッファロー動物園に来園したのは昨年の晩秋なのですが、こうして二頭が4歳となった最初のシーズンから繁殖を狙って同居の試みを行っているわけです。日本でしたら、もう一年環境に慣らしてからということで4歳になった時点ですぐに繁殖を狙わせるということはしないでしょう。ところが欧米やロシアではそうではないわけです。早めに若いホッキョクグマたちの「背中を押す」というのが彼ら欧米やロシアの考え方であるということです。早い年齢で繁殖を狙わせ、そして失敗してもまだ十分に年数があるからです。 バッファロー動物園の担当者の方は、“We’ll probably not see any cubs for another year. It’s not out of the realm of possibility but I would be very very surprised if we saw cubs this year.” と語っています。つまり今年は現実的には無理だろうと考えているわけです。しかしもし今年うまくいったら儲けものということで、繁殖可能年齢の4歳から挑戦させるということなのです。最初の年には成功しなくても次の年には「決めにかかる」という感じですね。そして成功させるというわけです。
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サカーリ(左)とルナ(右) Photo(C)WGRZ/Jim Gibbons

日本ではクルミ、ツヨシ、ピリカなどはもっとずっと若い年齢から繁殖に挑戦させるべきだったでしょう。それができなかった事情については私は理解しているつもりですが、しかし我々日本人は彼らに対して「優し過ぎる」わけです。釧路市動物園のミルクはこのルナと同じ年齢です。しかも彼女にはキロルというパートナーがすでにいるわけです。欧米やロシアならば今頃から果敢に同居の試みを行い、そして今年の年末のミルクの出産を狙うでしょう。しかしだいたいにおいて今年の年末の出産はならず、そして引き続いて来年も同居させて一気呵成に来年の11~12月にミルクの出産を実現させるでしょう(キロルの繁殖能力の問題は脇に置きます)。釧路市動物園の考え方に注目したいところですが、やはり釧路市動物園の担当者の方々も日本人です。そしてミルクやキロルを見守る我々ファンも日本人なのです。「無理をさせるな」という結果に落ち着くでしょう。それから、上野動物園では少し異なる考え方で繁殖に臨んでおり、これはあくまでも上野におけるデアとイコロの存在のシンボル化と同時に考えているということでしょう。しかしその上野でも間違いなく今年のシーズンに早々と繁殖に成功したいという願望は透けて見えてきているように思います。上野の場合は根本的な考え方自体はしっかりしていますので、繁殖への取り組みについては今年か来年かといったような視点ではないわけで、そう心配する必要はないと私は思っています。

(資料)
wivb.com (Feb.11 2017 - Polar bears at the zoo enjoy first date)
WGRZ.com (Feb.11 2017 - Buffalo Zoo Polar Bears go on "1st Date")
Buffalo News (Feb.8 2017 - Buffalo Zoo plans 'first date' for affectionate polar bears)

(過去関連投稿)
(*ルナとサカーリ関連)
アメリカ・バッファロー動物園のルナとサカーリの若いペアへの期待 ~ 雌の人工哺育個体の繁殖への挑戦
(*ルナ関連)
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ その姿が突然公開
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃんの追加映像 ~ ララの子供たちの従妹であるルナ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の人工哺育の赤ちゃんのルナが初めて戸外へ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナの近況を伝えるTVニュース映像
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナが雪の舞う戸外へ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナが遂に一般公開へ
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園の赤ちゃんの「ルナ」が仮称から正式の名前となることが決定
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナの近況 ~ 人間の視線への意識と興味
アメリカ ・ ニューヨーク州、バッファロー動物園で遂にルナとカリーが初顔合わせ
アメリカ ・ バッファロー動物園でルナとカリーの正式な同居展示が開始 ~ カリーの今後について
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園でのルナとカリーの同居は順調に推移
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園のルナとカリーの近況 ~ 展示需要と個体数のアンバランス
アメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園でルナとカリーの一歳のお誕生会が開催される
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナとカリーの近況 ~ 新飼育展示場は2015年秋に完成
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナが約4.3メートル下の堀に転落、救出後に精密検査へ
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園のルナの精密検査の結果が発表 ~ 左後脚二か所の骨折
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園で堀に転落し骨折したルナの治療が長期化へアメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園が転落事故で骨折し長期療養中のルナの現在の様子を公開
アメリカ・ニューヨーク州バッファロー動物園の新施設”Arctic Edge”に長期治療中だったルナが元気に登場
アメリカ・ニューヨーク州のバッファロー動物園で人工哺育されたルナが三歳となる
(*サカーリ関連)
アメリカ・ウィスコンシン州のヘンリー・ヴィラス動物園で新展示場 ”The Arctic Passage”がオープン
アメリカ・ウィスコンシン州、ヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリが繁殖のために他園移動が決定
アメリカ・ウィスコンシン州マディソン、ヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリのお別れ会が開催される
アメリカ・ウィスコンシン州のヘンリー・ヴィラス動物園のサカーリがバッファロー動物園に無事到着
アメリカ・バッファロー動物園に来園したサカーリが検疫期間を終了し新年より一般公開へ
by polarbearmaniac | 2017-02-12 18:00 | Polarbearology

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