街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2017年 02月 17日 ( 1 )

「大阪でシルカとゴーゴが同居開始」というロシアのマスコミの大誤報 ~ 超えられない認知度の壁



いやはや、驚きました。ロシア・ノヴォシビルスク市のマスコミ(НГС)の配信したニュースを見て私はびっくりしてしまいました。本日付けのこのロシアのマスコミの記事には「シルカとゴーゴが同居している」という写真が掲載されており、「大阪の天王寺動物園はシルカのパートナーとしてゴーゴを入手した。ゴーゴはもうすでに天王寺動物園の飼育展示場に登場している。」と述べられ、しかもシルカもゴーゴも共に3歳であると書かれています。このマスコミがソースにしているのは地元の方々のSNSサイトに投稿されたバフィンとモモの動画です。困ったことです。

(*追記1)コムソモリスカヤ・ブラウダ紙がノヴォシビルスクのシルカファンの方々やノヴォシビルスク動物園の担当者にまで取材を行って、このНГСの情報は正しくないという記事を夕方になって発表しました。



(*追記2)最初の誤った情報を流したマスコミ(НГС)はコムソモリスカヤ・プラウダ紙の上の記事の発表直後に当初の記事を訂正しました。ところがそれは当初の記事のバフィンとモモの写真の上にゴーゴの写真を追加で掲載したものの文章は一切訂正していません。お詫びの文言もありません。結局「シルカとゴーゴはもう一緒にいる」という内容のままです。これもまた困ったことです。

ロシアの方々と我々日本人とのコミュニケーションは難しいですね。翻訳サイトというものがあるにはあるのですが、これも大いに問題があります。非常に荒っぽくて単純化して言いますと、ロシア語には「男言葉」と「女言葉」があるのです。ロシア語学習の参考書に書かれているのは全て「男言葉」です。翻訳サイトで日本語をロシア語にしようとすると、それは全てロシア語の「男言葉」に翻訳されてしまいます。大方の翻訳サイトでは、日本語 → 英語 → ロシア語というように、中間に英語が介在しています。たとえば「俺様はうれしいぜ」という日本語でも「あたいは嬉しいざーます」という日本語でも、英語はそもそも話し手の性別を語形変化的には区別しない言語ですので、性別を無視して "I am glad" と翻訳します。そしてこの英語が今度はロシア語に変換されるわけです。そしてそのロシア語は全て「男言葉」になるわけです。つまり "Я рад." と翻訳されます。ところが本当は「私は嬉しい」という日本語をロシア語にすると話し手が男性の場合は "Я рад."、女性の場合は "Я рада." となります。フランス語もこういった男性形、女性形が存在する場面があります。「私は嬉しい」というのを話し手が男性の場合は "Je suis heureux." 、話し手が女性の場合は "Je suis heureuse." と言います。そして翻訳サイトでフランス語をロシア語にしようとして仮に女性表現の "Je suis heureuse." を入力しますと、最初にまずこれが英語に変換され、そしてそれがロシア語になります。英語は全て "I am glad." ですから、これがロシア語になると「男言葉」の "Я рад." になってしまうというわけです。フランス語でせっかく話し手が女性である表現を入力しても、ロシア語の「女言葉」にはならないのです。何故なら中間に英語が介在して「男」「女」の表現の区別を無くしてしまうからです。これがネットにおける「英語帝国主義」の支配構造なのです。翻訳サイトも辞書も、実際は文法を知らないとなかなか簡単には使いこなせない道具であるという認識が必要であるとも言えます。

しかし今回の大誤報は、そういった翻訳サイトの問題点の存在以前の重大なミスですね。配信元のメディアに訂正依頼のメールを送ってありますが無視されているようで、いくつかのマスコミも最初に配信したНГСの記事をソースにしてこの faked news を報じ始めています。困ったことです。

勿論こうした誤った内容の記事を配信したマスコミに全面的な責任があるわけですが、せめて日本語がラテン文字表記でしたらこのような間違いは生じなかったでしょう。ホッキョクグマの生息地を自国領内に持つ国とか、あるいはホッキョクグマを飼育している動物園が属する国というのはほとんどがラテン文字(又はキリル文字)を使用している国であり、日本(そして中国)のようなラテン文字を使用しない国で暮らすホッキョクグマたちが国際的に認知度が非常に低いというのは事実です。こういったことを回避しようとすれば日本で暮らすホッキョクグマたちの写真や動画をネット上にアップさせる際に彼らの名前にラテン文字を併記してやるという方法はあるにはありますし私はそれを極力実践しているつもりですが、これは一般的ではないでしょうし同好の方々にもあえてお勧めはしません。

(資料)
НГС - Независимые Городские Сайты (Feb.17 2017 - Уехавшей в Японию медведице Шилке нашли жениха)
by polarbearmaniac | 2017-02-17 12:00 | Polarbearology

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