街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2017年 03月 01日 ( 2 )

ベルリン動物公園のフリッツが間もなく生後四カ月へ ~ 自分での行動よりも母親の真似の段階

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フリッツとトーニャお母さん Photo(C)Tierpark Berlin

昨年2016年の11月3日にベルリン動物公園(Tierpark Berlin)でにトーニャお母さんから誕生した雄(オス)の赤ちゃんであるフリッツは間もなく生後四カ月になろうとしています。通常でしたら飼育展示場に登場しているのは当然なのですが安全改修工事が続いていてトーニャお母さんとフリッツは依然として室内に留まっています。しかしそうしたフリッツに室内でも冒険の機会を与えてやろうという意図からでしょうか、切った木の幹が室内に据え付けられたようです。これに親子はどう反応したでしょうか、下の映像を見てみましょう。



トーニャお母さんは突然出現した幹を訝しく思い、かじって引き剥き始めますが、やがでフリッツも母親の真似をし始めます。担当者はフリッツが登山でもするようにこの幹をよじ登り、来たるべき屋外登場のために足腰を鍛えてほしいと願っていたようですが、そうしたいという気持ちはフリッツにはないようです。そういったことよりも、母親のやることを自分もやってみたいというのが現在のフリッツなのです。

人間の期待するようには行動してくれないのがホッキョクグマです。

(資料)
Berliner Zeitung (Feb.27 2017 - Eisbär-Baby Fritz spielt Bergsteiger)

(過去関連投稿)
ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 第一関門は週末
ベルリン動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、第一関門の生後72時間を見事に乗り切る ~ 授乳音確認
ベルリン動物公園で誕生の双子の赤ちゃんは生後五日を乗り切る ~ 生後10日間を最初の関門ととらえる同園
ベルリン動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、一頭が産室内で姿を消す? ~ 生存は一頭と同園が発表
ベルリン動物公園、産室内のトーニャお母さんに若干の余裕が生まれる ~ 隣室での水分補給
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ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃん、生後40日で立ち上がり始める ~ 同園がトーニャを「熟練の母親」と評価
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ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃん、生後50日が経過する
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃん、生後約二ヶ月が経過
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんの性別は雄(オス)と判明 ~ "Es ist ein Junge!"
ベルリン動物公園の雄(オス)の赤ちゃんの故クヌートと重なり合うもの、合わないもの
ベルリン動物公園のトーニャお母さん、散らかった床を片付ける ~ 初めて肉に挑戦した赤ちゃん
ベルリン動物公園で誕生の赤ちゃんの命名投票が始まる
ベルリン動物公園で誕生の雄の赤ちゃんの名前が "フリッツ(Fritz)" に決まる
ベルリン動物公園がフリッツのために飼育展示場を一部改修の予定 ~ 父親のヴァロージャはベルリン動物園へ
ベルリン動物公園の赤ちゃん、フリッツの近況 ~ 「国際ホッキョクグマの日」に間に合わない一般公開
by polarbearmaniac | 2017-03-01 15:30 | Polarbearology

ドイツのカールスルーエ動物園とノイミュンスター動物園の個体再配置 ~ 繁殖できぬ個体に迫った「退出」

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ノイミュンスター動物園のカップ(男鹿水族館・豪太の異父同母の兄)
Photo(C)Tierpark Neumünster
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フィトゥスとラリッサ Photo(C)Tierpark Neumünster

今回の投稿の内容は表面的には二つの動物園の間での単なる個体移動についてですが、実は深く考えなければならないテーマの内容を含んでいます。あまり大きく風呂敷を広げすぎますと大変なことになってしまいますので今回はサラリと触れておくに留め、後日改めてそういった重要なテーマについて考えていきたいと思います。

まず事実関係はこういうことです。ドイツ西南部のカールスルーエ動物園 (Zoologischer Stadtgarten Karlsruhe) には三頭のホッキョクグマが飼育されています。26歳の雌(メス)のラリッサ(Larissa)、16歳の雌(メス)のニカ(Nika)、16歳の雄(オス)のフィトゥス (Vitus)、という三頭です。長年にわたってこの三頭で繁殖を試みてきたわけですが成功しませんでした。雌(メス)が二頭に雄(オス)が一頭というトリオの組み合わせで繁殖を狙うのは一昔前には欧米の動物園でよく行われていたわけで、実際にこの組み合わせでの成功例は多かったわけですが、過去にはホッキョクグマ繁殖成功の実績の多かったカールスルーエ動物園ではあるものの、現在の三頭の間での繁殖には成功しなかったのです。
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カールスルーエ動物園のフィトゥス、ラリッサ、ニカ
Photo(C)Zoologischer Stadtgarten Karlsruhe

さてそこでカールスルーエ動物園は、ベルリンのライプニッツ(野生動物)研究所(あのクヌートの死因を調査した研究所です)に依頼してこの三頭の検査を行ってもらい、彼らホッキョクグマたちが本当に繁殖能力があるのかを診断してもらったわけです。その結果としてラリッサとフィトゥスの二頭は「繁殖できない("für eine Zucht nicht geeignet" を前後の文脈からそう訳しておきます)」ということが判明したわけです。なにしろ肝心の雄のフィトゥスが繁殖できない(つまり精子が非常に少なくて繁殖能力がないということでしょう)ということは、この三頭での飼育では繁殖は無理であるということになるわけです。フィトゥスは体重が600kgsあるそうでドイツでは最も重いホッキョクグマだそうですし、また彼は欧州では繁殖能力に定評のある「ロストック系」であることからも、繁殖能力がないという結果は意外な気もします。 さて、こういったことでカールスルーエ動物園は同園におけるホッキョクグマの繁殖を成功させるためにはいくつかの選択肢を考え始めたというわけでした。しかしそれはどういう選択肢であってもホッキョクグマの移動を伴うものであることは不可避であるわけです。
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カールスルーエ動物園のラリッサとフィトゥス 
Photo(C)Ralf Geier/Holsteinischer Courier

さて、こうした状況で2月27日の「国際ホッキョクグマの日」にカールスルーエ市は公式発表を行い、カールスルーエ動物園のラリッサとフィトゥスの二頭が共にノイミュンスター動物園 (Tierpark Neumünster) に移動し、それと交代でノイミュンスター動物園の16歳の雄のカップ(Kap)がカールスルーエ動物園に来園し、同園に残ったニカとの間で繁殖を狙うことになったことを明らかにしたわけです。このカップというのは以前から何回も投稿していましたが2000年10月にモスクワ動物園であのムルマ(豪太の母)から誕生し、実は翌年1歳の時ににカールスルーエ動物園に移動したホッキョクグマですのでカールスルーエ動物園としては「帰還」という受け止め方をして非常に喜んでいます。カップは彼が三歳半になる時までカールスルーエ動物園で暮らしていたわけですが、その時期にニカとは幼馴染でもあったそうです。
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モスクワ動物園から来園した時期のカップ(2001年) Photo:PR

さらにカールスルーエ動物園園では、このカップは「モスクワ血統("Moskauer Blutlinie")」であるとして、ドイツにはいない血統であって貴重であるとも述べています。しかしこれは正確ではありません。ベルリン動物公園のトーニャは血統登録情報上ではムルマの娘となっていますので実際にはドイツにもう一頭このカップと同じ血統の個体は存在していることになるからです。ドイツ以外の欧州ではデンマークのボリス、フランスのラスプーチンは共にムルマの息子です。そしてこの二頭は男鹿水族館の豪太の兄弟でもあるわけです。ただしかし今回問題のカップは母親は確かにムルマですが父親が豪太やボリスやラスプーチンとは違うのです。この件についてはかなり以前の投稿である「モスクワ動物園のムルマ(3) ~ 初産、そして訪れた危機」、及び「モスクワ動物園のムルマ(4) ~ 危機の克服、そして豪太の誕生」という二つの投稿を是非ご参照下さい。カップが2001年11月にモスクワ動物園からカールスルーエ動物園に移動してきたことを報じる記事がまだネット上に残っています。こういう記事は貴重ですね。

こういったことでカールスルーエ動物園のラリッサとフィトゥスの二頭はノイミュンスター動物園に移動し、これと交代でノイミュンスター動物園のカップがカールスルーエ動物園に13年振りに帰還してニカとの間で16歳同士のペアを形成して繁殖に挑戦するということなるわけです。これを決定したのはEAZAのコーディネーターであることは言うまでもありません。
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カップ Photo(C)Kloth/Tierpark Neumünster

さて、いくつかの問題点や疑問点が浮かんできます。まずノイミュンスター動物園は以前からホッキョクグマの繁殖に意欲を見せていてカップのパートナーを探していたわけですが、今回カールスルーエ動物園から来園する26歳のラリッサと16歳のフィトゥスのペアは繁殖ができないから移動してくるわけですから、こういったことでノイミュンスター動物園は本当に納得しているのかということが挙げられます。さらに何故EAZAのコーディネーターは雄のカップを16歳になるまで満足なパートナーを付けないままで放置させてきたのかという点です。ましてやカップは貴重な「モスクワ血統("Moskauer Blutlinie")」であるという認識があったにもかかわらずです。ノイミュンスター動物園の飼育展示場は改装が行われたもののまだ環境が不十分であるという指摘もあるわけですが、それならば何故もっと早くカップを他園に移動させて繁殖に貢献させてやらなかったのかも大いに疑問です。また、繁殖実績のある動物園(今回はカールスルーエ動物園)は常に繁殖実績のない動物園(今回はノイミュンスター動物園)に対して個体の再配置に関して優位に立つのかという問題も考えなければいけない点でしょう。

ただしかし今回の移動だけに関して言えばコペンハーゲン動物園のボリスがノエルと相性が悪くて同園から移動させられてしまい、コペンハーゲン動物園には近日中にロシアのイジェフスク動物園からノルドが来園することになった点との関連で調整が難しかったという推察は可能でしょう。ボリスはカップと同じ血統ですからカップをコペンハーゲン動物園に移動させてボリスを同園からカールスルーエ動物園に移動させるという手はあったと思いますが、それはイジェフスク動物園のノルドの所有権を持つモスクワ動物園が繁殖能力が証明されているノルドを欧州に移動させることに同意するかといった大きな問題の解決次第であったという推察も十分可能です。要するにホッキョクグマ繁殖のための個体再配置は非常に logistical な思考が要求されるということだけは間違いないと思います。

その他、今回の三頭の移動に関連した問題点でも私なりの別の意見もあるのですが、それはまた次の機会に譲りたいと思います。フィトゥス、ラリッサ、ニカの三頭は互いに相性も良くて非常に仲良く暮らしていたわけです。しかしこうしてこの仲良しトリオの来園者の心を和ませていた姿は繁殖という大義名分のために間もなく見られなくなってしまいます。しかしそれはしょうがないでしょう。

欧州のホッキョクグマ界は刺激的で非常に興味深いですね。


カールスルーエ動物園のフィトゥス


カールスルーエ動物園のフィトゥス、ラリッサ、ニカ


今年1月のカールスルーエ動物園のフィトゥスとラリッサ

(資料)
Holsteinischer Courier (Feb.27 2017 - Kap geht, und stattdessen kommt ein Pärchen)
ka-news.de (Nov.23 2001 - Russischer Eisbär in Karlsruhe) (Feb.11 2017 - Zucht-Probleme: Müssen zwei Eisbären den Karlsruher Zoo verlassen?) (Feb.28 2017 - Abschied von Eisbären: Vitus und Larissa verlassen den Karlsruher Zoo)
Badische Neueste Nachrichten (Feb.27 2017 - Neuer Eisbär für Karlsruher Zoo)
regio-news.de (Feb.27 2017 - Eisbär-Nachwuchs im Zoo Karlsruhe: Neuzugang Kap soll es richten)
Karlsruhe: Presseportal (Feb.27 2017 - Kap kommt zurück nach Karlsruhe) (Zoologischer Stadtgarten - Eisbären)

(過去関連投稿)
ドイツ・ノイミュンスター動物園のマイカ逝く ~ その数奇なる生涯の終焉
ドイツ・ノイミュンスター動物園、悲願へのハードルの高さ ~ カップのパートナー探し難航
モスクワ動物園のムルマ(3) ~ 初産、そして訪れた危機
ドイツ・ノイミュンスター動物園のカップが同園展示場の地表改良工事のため一時的にハノーファー動物園へ
ドイツ・ハノーファー動物園のカップ (豪太の兄)が施設改修工事の終了したノイミュンスター動物園に帰還
ドイツ・ノイミュンスター動物園のカップ、パートナー獲得の見込みはあるか? ~ 苦戦するムルマの子供たち
by polarbearmaniac | 2017-03-01 06:00 | Polarbearology

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