街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2017年 05月 06日 ( 1 )

ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの近況から、彼の今後の移動問題を考える

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ロスチク (Белый медвежонок Ростик) Photo(C)Анна Новикова

一昨年2015年の12月7日に当時8歳のゲルダお母さんから誕生したロシアのノヴォシビルスク動物園の雄のロスチク (Ростик) は今年2017年の3月9日以来、ゲルダお母さんと引き離されて同園内の別の場所で暮らしているわけですが大阪のシルカの弟であるこのロスチクが、いったいいつ頃どの動物園に移動するのかについては私もいろいろと調べてはいるものの根拠のある情報というものは見つからない状態です。

さて、最近のロスチクの様子を地元のファンの方々の撮った映像で見ておきましょう。まず最初のものですが、彼にはもっと広い場所とおもちゃを与えてやりたいと思いますね。





欧露間のホッキョクグマの繁殖に関する協力関係はロシアから個体が欧州に移動するという形をとり、そしてロシア側でそれを主導しているのはモスクワ動物園ですが、モスクワ動物園は自園が権利を持っているロシア国内の個体を欧州に出しているわけで、残すはあとひとつの移動、つまりモスクワ動物園からハンガリーのソスト動物園へ移動する予定を残すのみとなっている状態だと考えてよいでしょう。つまりロスチクの年内の国外への移動の可能性は非常に小さいと考えてよいものと思います。これまでのいくつかの報道の内容から考えればノヴォシビルスク動物園はロスチクの移動に関しては受け身の立場であり、その移動について決定するのは自分たちではないという一貫した姿勢なのですが、ではいったい誰が決定するかといえば立ち上げられて間もないロシア動物園・水族館協会 (Ассоциация зоопарков и аквариумов Российской Федерации - АЗАР/RAZA) であり、そして実質的にこの組織をリードするモスクワ動物園なのですが、そのモスクワ動物園は自分が権利を持っている個体の移動を優先しロスチクについては手が回らなかった.....そういう解釈も可能ですが、もう一つの考え方をすれば欧州側がロスチクについて難色を示しているという考え方も可能かと思います。ロスチクの権利はノヴォシビルスク動物園にあるわけですが、しかし自らがその売却を行うことは事実上できなくなってしまっているということなのです。つまりホッキョクグマ(特に若年個体)の移動は常に繁殖というものの具体的展望なしにはできなくなっているのが近年のロシアであり、故シロ園長はシルカをそれまでの時代のように単純売却しようとしたもののモスクワ動物園からストップがかかり、そして移動先は必ずシルカのパートナーとなる雄(オス)の存在を条件とすることをモスクワ動物園から要求され、そしてこれによってシルカの移動先として有力候補であったブラジルのサンパウロ水族館は脱落した.....こういうことだったわけです。そしてそのシルカの次に誕生したロスチクについてはノヴォシビルスク動物園は権利を有しているにもかかわらず自園ではほとんど売却には関与できなくなり、繁殖計画を主導するモスクワ動物園の手の中にあるわけです。しかしモスクワ動物園の動きは非常に鈍いです。モスクワ動物園を介したロスチクの移動先選定は事実上は頓挫してしまっている可能性すら否定できないと私は考えています。

さて、また映像を見てみましょう。次の二つを見ますと、ロスチクにはおもちゃが与えられたようですのでエンリッチメントという点においては合格だと思います。





このロスチクは年齢的に言えば札幌のリラのパートナーに適しています。しかもリラとロスチクの間には何らの血の繋がりはありません。その点で考えれば「ピョートル(ロッシー)/ヴァニラ」や「ゴーゴ/シルカ」を血統的には遥かに優る組み合わせではあります。しかしロスチクは「アンデルマ/ウスラーダ系(カザン血統)」ですので、今更あえて日本に導入せねばならない必然性はなく、そして日本の飼育下のホッキョクグマにとってはその次の世代のペアの組み合わせに無理が生じてきてしまうわけです。欧州側がロスチクの受け入れに難色を示しているとすれば、札幌市(円山動物園)が手を挙げればチャンスはあると思います。しかも札幌市(円山動物園)は雌(メス)の若年個体を何頭も所有しているからです。ですからモスクワ動物園はロスチクの札幌行きには了解するでしょう。ただし問題は血統なのです。現時点でロスチクを入手するというのでしたら、私だったら最初からブダペスト動物園に移動したシェールィとビェールィの双子兄弟の両方の入手を狙っていたでしょう。シェールィとビェールィのほうが血統的にはロスチクよりもずっと有利なのです。しかし現時点ではララファミリーの雌(メス)の若年個体たちにはパートナーがいませんので、背に腹は代えられないといった状態であることも間違いないわけです。しかしそうは言っても私が札幌市(円山動物園)でしたらロスチクの入手にはやはり二の足を踏みます。ゲルダの血統疑惑が解消できればいくらかは積極的には成り得ますが、この問題は非常に微妙なのです。

ロスチクの姿を見ていると、どういうわけか日本の飼育下のホッキョクグマたちが心配になってきます。日本の動物園関係者は真面目に真剣に、そして多くの情報を持って彼らの将来のことを考えてやっているのでしょうか? 札幌市(円山動物園)はJAZA経由でモスクワに話を持っていき、そしてララファミリーの若年個体のパートナー入手について協力関係の構築を模索してみてはどうでしょうか。欧州側(EAZA)との関係の構築が難しいならばロシア(モスクワ動物園)経由で話をもっていくという手段しかありません。そうやって欧州とロシアとの間の協力関係の中に入り込んでいくという方法しか有効な手段はないと考えます。このままではどんどん日本の動物園は世界に取り残されていってしまうと思いますが.....。

(過去関連投稿)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクが母親ゲルダと別居となる ~ シルカもいた同園内の別の場所へ
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(*ロシア動物園・水族館協会関連)
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by polarbearmaniac | 2017-05-06 23:00 | Polarbearology

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