街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2017年 09月 05日 ( 1 )

オランダ・ロッテルダム動物園のシゼルとトーズの近況 ~ 欧州ホッキョクグマ界の突き当たっている問題点

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シゼル (Sizzel) とトーズ (Todz)
(2015年5月4日撮影 於 オランダ・ロッテルダム動物園)

2014年の12月2日にオランダのロッテルダム動物園でオリンカお母さんから誕生した双子の雌のシゼル (Sizzel)と雄のトーズ (Todz) についてはもう一年以上も投稿していませんでしたが彼らはもう二歳になっているものの他園への移動の話しは聞こえてきません。数年前までの欧州でしたらすでにこういった年齢の幼年個体は他園に移動していたわけですが、ここのところそういった欧州の幼年個体の移動は滞っているという印象を受けます。しかし欧州のホッキョクグマ界の状況を見わたしてみますとこれには理由があることがわかります。それを考えてみたいと思います。その前に比較的最近のシゼルとトーズの映像を見ておきましょう。





本論に戻ります。 まず第一点として「集中プール基地システム」の問題点です。すでに何度もご紹介していますが欧州には幼年・若年個体の集中プール基地が存在しています。雄(オス)についてはイギリスのヨークシャー野生動物公園、雌(メス)についてはオランダのエメン動物園です。しかし以前に引き続いて成功している欧州におけるホッキョクグマの繁殖の結果、誕生した幼年個体を生後二年ほどで受け入れるにはこういった二つの集中プール基地だけでは不十分であり、その結果としてそういった幼年個体を引き続いて生まれた動物園で母親と同居させておいたほうがよいということになるわけです。つまり「集中プール基地システム」は部分的には機能を停止しているとも言えます。
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シゼル (Sizzel) とトーズ (Todz)
(2015年5月4日撮影 於 オランダ・ロッテルダム動物園)

第二点として、欧州内におけるホッキョクグマの繁殖には「EEP構成個体群」といった集団のなかで行われているわけですが、近年になって次第に血統的な偏りが生じてきたために簡単に幼年・若年個体の繁殖上のペアを形成させることがだんだんと難しくなってきているという現実です。具体的に言えば「ロストック系」という血統に属する個体が増えできたために、この血統で最も繁殖の成功に寄与してきたオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園のヴィクトルを繁殖計画から外し(つまり「EEP構成個体群」からの除外)、彼はイギリスのヨークシャー野生動物公園で早々と優雅な引退生活に入らせてしまったということがあります。その一方で「ロストック系」の「EEP構成個体群」の比率を相対的に下げるためにロシアから「アンデルマ/ウスラーダ系(カザン血統)」の個体を昨年秋から数頭欧州に導入して「EEP構成個体群」に加えたということです。ただし私の見たところ、それもすでに頭数的に限界だろうと思います。「アンデルマ/ウスラーダ系(カザン血統)」に属するノヴォシビルスク動物園のロスチクは現時点では「EEP構成個体群」への参加ができない状態になっているために欧州への移動ができないままになっているわけです。
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シゼル (Sizzel) とトーズ (Todz)
(2015年5月4日撮影 於 オランダ・ロッテルダム動物園)

第三点として、欧州において優れた繁殖実績を持つオランダのフギース、フリーダム、オリンカという三頭の雌(メス)ですが、フギースとフリーダムについては「EEP構成個体群」から外されてしまったヴィクトルに代わる次のパートナーは現時点では用意されておらず、またオリンカについては彼女のパートナーだったエリックが亡くなってしまったもののエリックに代わるオリンカのパートナーは現時点で用意されていないということです。その大きな理由としては彼女たちの年齢層にうまくフィットする雄(オス)の個体をあてがうことが難しいという現実があります。
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オリンカ (Olinka) お母さんとシゼル (Sizzel) とトーズ (Todz)
(2015年4月30日撮影 於 オランダ・ロッテルダム動物園)

上記の三つの点から、このロッテルダム動物園のシゼルとトーズが依然として同園で母親であるオリンカと共に暮らしているという理由がわかるわけです。こういった欧州のホッキョクグマ界が抱え始めた問題を理解すると、おのずからそこに日本の「ララファミリー」の個体が食い込んでいくチャンスが再び到来してきたようにも感じます。大枠のように言えば以下のようになります。それは、欧州から「ロストック系」の雄(オス)を導入して「ララファミリー」の雌(メス)の個体とペアにすると同時に、日本から「ララファミリー」の雌(メス)の個体が欧州に移動して「ロストック系」以外の雄(オス)をパートナーとさせるということです。そうだとすればこのロッテルダム動物園のシゼルとトーズ のうち雄(オス)のトーズのパートナーは「ララファミリー」の雌(メス)の個体となる可能性が浮かんでくるわけです。ただしこれも以前から述べていますが、日本のホッキョクグマ界が欧州との協力関係を構築していくことに私は悲観的です。ここ数年にわたって私には見えてきたことですが、悲しいかな私たち日本人にそういったことを行う意思や能力に欠けているということです。日本にはララのように世界でも超トップレベルの母親としての存在があったりバフィン親子のように観察していて素晴らしい対象がありますがそういったものは例外的存在であり、日本のホッキョクグマ界全体としてみれば欧米やロシアのホッキョクグマ界に伍していくようなものではないというのが私の印象です。今回の投稿では欧州のホッキョクグマ界の問題点を述べたわけですが、それは彼らが繁殖に成功しているが故に突き当たっている問題点であり、日本のホッキョクグマ界の問題点とは次元を異にすることなのです。

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2017-09-05 23:30 | Polarbearology

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