街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2017年 09月 16日 ( 1 )

ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの待機続く ~ 移動先候補にフランスのセルザ動物園が急浮上か?

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ロスチク (Белый медвежонок Ростик)  Photo(C)Anna Novikova

ロシアのノヴォシビルスク動物園の雄(オス)のロスチク(大阪のシルカの弟)はあと三ヶ月ほどで満二歳を迎えます。彼は今年の春から母親であるゲルダと離されて別居の状態になっていますが、それは彼の他園への移動の準備のためという説明がなされています。しかしその他にさらに需要なことはゲルダとカイ(クラーシン)との間での今年2017年の繁殖シーズンにおける繁殖への緒戦のためにロスチクをゲルダから引き離す必要があったためです。後者の点、つまりゲルダの年末の出産の可能性についてはさておき、ロスチクは今後どうなるのかについて予想を立てておくことは今後のロシアと欧州のホッキョクグマ界の展望を考えることと同義の意味を持つわけです。まずロスチクの最新の映像を二つ見ておきましょう。





このロスチクの移動につぃて具体的な話が聞こえてこないのはノヴォシビルスク動物園自体が彼の移動先について関与できる立場になく、全ては欧州側(EAZA)の決定を待つだけの受け身の立場にいるからだというのが現状認識として正しいでしょう。先日も述べていますが、欧州におけるホッキョクグマ繁殖を担っているのは「EEP構成個体群」であり、この個体群のなかでの血統的な偏りをこれ以上増やさないために昨年秋よりロシアから「アンデルマ/ウスラーダ系(カザン血統)」の数頭の導入を図ってきたわけです。しかし現時点においてはそれも限界に達したと判断されたために当初予定されていたモスクワ動物園のシモーナが2014年11月の産んだ雄(オス)と雌(メス)の双子の欧州行は困難になっているとみて間違いありません。そのために雄(オス)のハバルは欧州ではなくロシア極東ハバロフスクに移動し、雌(メス)のスネジンカは依然としてモスクワ動物園で待機中となっているわけです。モスクワ動物園はまだ年齢的にも今後も十分出産成功の可能性が高いシモーナを同園のヴォロコラムスク附属保護施設に移動させたわけですが、これはシモーナを早々と繁殖の舞台から引退させたとみるのが正しいと思われます。ただし100%そう断言もできません。何故ならモスクワ動物園ではシモーナよりもさらに4歳も年上のムルマにシモーナのパートナーだったウランゲリを当てがっているからです。
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ロスチク (Белый медвежонок Ростик)  Photo(C)Anna Novikova

さて、こうしてシモーナの娘である2歳のスネジンカでさえ欧州(予定されているのはハンガリーのソスト動物園)に出られないという現状では、ノヴォシビルスク動物園のロスチクの移動先が決まらないのも無理からぬところです。常識的に考えれば雌(メス)ですら移動できないのですから雄(オス)が移動できないのは当然のことなのです。ここで欧州側に目を転じてみましょう。欧州側の情報に新しいホッキョクグマを受け入れるといった話がないのかどうかということです。私が見たところ実は一つだけ非常に有力だと思われる話が出ています。それはフランス北西部・ノルマンジー地方のリジュー (Lisieux) 近郊のエルミヴァル・レ・ヴォー (Hermival-les-Vaux) にあるセルザ動物園 (Le Parc Zoologique de Cerza) です。
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フランスの報道によりますと、このセルザ動物園は現在三つの区画のホッキョクグマの飼育展示場を新設すべく土地を造成中だそうで、完成後は複数頭の同性のホッキョクグマたちを飼育する予定だそうです。そして将来的には繁殖も視野に入れていきたいと同園は述べているそうです。最初の段階において同性のホッキョクグマを複数導入するということは、つまり欧州における幼年・若年個体の集中プール基地としてオランダのエメン動物園やイギリスのヨークシャー野生動物公園を補完する役割を担うことを意味しています。セルザ動物園は現時点では、雄(オス)だけを飼育するのか雌(メス)だけを飼育するのかについては明らかにしていません。しかし、十分に面積のある場所をホッキョクグマたちに提供できるという自信を見せています。そしてセルザ動物園はホッキョクグマの受け入れ時期を来年の2018年であると述べています。
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造成中のセルザ動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場 
Photo(C)Le Pays d’Auge

さて、問題はこのセルザ動物園が導入する複数の幼年・若年個体が雄(オス)なのか雌(メス)なのかということですが、私は雄(オス)ではないかと予想します。何故ならモスクワ動物園で待機中の雌(メス)のスネジンカは移動先がハンガリーのソスト動物園であるとモスクワ動物園とソスト動物園から一応は明らかにされたという事実があり、移動先の候補が全く聞こえてこないのがノヴォシビルスク動物園の雄(オス)のロスチクだからです。つまり雄(オス)の幼年・若年個体のホッキョクグマについては集中プール基地としてどの動物園がヨークシャー野生動物公園を機能的に補完するかが決まらなかったからだろうと考えられるからです。こういった状況下では、消去法でやはりロスチクは来年2018年の早い時期にフランスのセルザ動物園に移動するという可能性が現時点では最も高いと考えても不自然ではありません。



このセルザ動物園の新しいホッキョクグマ飼育展示上はスカンジナヴィア野生動物公園とかヨークシャー野生動物公園のように自然の中にそのままホッキョクグマを飼育するというスタイルだろうと思います。仮にロスチクがここに移動するとすれば大変環境に恵まれたノルマンジーのこの場所で伸び伸びと暮らせるでしょう。ただしノルマンジーのこの地方にはロスチクの姿を大阪のシルカのように定期的にモニターしてネット上にアップするような熱心なホッキョクグマファンのいない場所だろうと思います。ノルマンジーにホッキョクグマファンがいるという話を私は聞いたことがありません。それが残念といえば残念だろうと思います。

事態の推移を注目して見守りたいと思います。

(資料)
НГС.НОВОСТИ (Sep.10 2017 - Новосибирцы собрали для животных зоопарка больше двух тонн овощей)
actu.fr (Aug,8 2017 - Les ours polaires arrivent au zoo de Cerza en 2018)

(過去関連投稿)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクが母親ゲルダと別居となる ~ シルカもいた同園内の別の場所へ
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の「二つの愛の心」 ~ "Два любящих сердца"
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの別居は安全上の理由と同園は説明 ~ 移動先決定は難航か?
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ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの欧州への移動は2018年以降の可能性が高い?
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(*ゲルダの血統問題)
「ロシア血統の謎」に迫る(1) ~ ラスプーチン、ゲルダ、血統番号2893個体の三頭の謎を追う
南フランス・アンティーブ、マリンランドの「国際ホッキョクグマの日」~ "Savoir-vivre au Marineland"
by polarbearmaniac | 2017-09-16 06:00 | Polarbearology

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