街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カテゴリ:しろくま紀行( 838 )

よこはま動物園ズーラシアは将来のホッキョクグマ飼育展示をどうするか ~ 「ツヨシ購入」が唯一の道か?

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こうしてツヨシを見ていていろいろなことを考えた。まずズーラシアは今後のホッキョクグマの飼育展示についてどうするのかということである。「今後」とは、つまり「ジャンブイ後」ということである。今のうちから将来を見据えて考えておかなくてはならないわけである。選択肢としては三つあるように思われる。
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A.ホッキョクグマの飼育展示からは撤退する。

B.ツヨシを釧路市から購入して彼女を繁殖に寄与させるべく、
  パートナーの入手も狙う。

C.他園からの預託個体で飼育展示を行う。

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まずだが、これはかつてとくしま動物園が園の方針として公言し選択した道である。かつてシロー(ララ 、ルルの父)が亡くなった時の「お別れ会」で当時の園長さんがそう述べていたのである。「これからはバーレーを大事に飼育していく。」という内容で、その発言の全体からは「バーレー後」というものを全く想定していないことが明らかであった。しかし同園は結果的には札幌からの預託個体であるポロロを受け入れたのである。それから一般的には、動物園で飼育されたいたホッキョクグマが亡くなってしまいその存在が不在となった場合は現在はこのAという選択肢をとらざるを得ないわけである。何故なら国内の飼育頭数が減少しているからである。現時点で名古屋と神戸はこの道への方向を突き進んでいるように見える。

次にだが、これについては最近、ロシア個体の入手に関する私のいくつかの投稿の中で提案したものである。詳しくは以下の投稿を御参照頂きたい。

・ロシア動物園水族館協会(RAZA)が設立 ~ ロシアでモスクワ動物園の主導的地位が一層強まる
・ロシア・ペンザ動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場が9月にオープン ~ それが意味する重要なこと
・ロシア・クラスノヤルスク動物園の新飼育展示場計画発表 ~ 欧露の「囲い込み」体制に日本はどう対応するか
・「ホッキョクグマ計画推進会議」が大阪で開催 ~ 将来の方針と海外個体導入の可否は議題と無縁か

は現在、おびひろ動物園が採っている道である。つまり、ララの子供たちの預入先に徹しているわけである。現在は熊本と徳島もこういった形でホッキョクグマを飼育している。
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さて、A、B、Cをそれぞれ少し考えてみたい。

まずAであるが、これは非常に簡単で楽な道である。横浜の人間というのはホッキョクグマを大きな目的の一つとしてズーラシアに行っているようには見えない。だからホッキョクグマの飼育展示から将来撤退しても誰も文句は言わないと思われる。私も文句は言わない。

次にBであるが、ツヨシがもう五歳若ければ、ズーラシアは躊躇することなくこの道を選択すべきであり、そしてそのパートナーとしてツヨシの存在をカードにしてロシア個体の導入を狙うという方法である。しかし現在のツヨシの年齢(2003年12月11日生まれ)ならばこれは微妙である。難しいというべきかもしれない。ロシアから雄(オス)の個体を導入してもその個体は幼年であってツヨシと年齢差がかなりあるからである(ゴーゴ/シルカの場合も年齢差はあったのだが)。そうなると、もっと年齢が上の個体、つまりツヨシと年齢差の小さい個体を導入せざるを得ないのだがロシアにはロスゴスツィルク (Росгосцирк)に所有権のある野生出身の雄のウムカとスネジョークの二頭しか候補はいない。ただし交渉を持っていく有効なルートを見つけるのは難しいと思われる。ブラジルのサンパウロ水族館はこの二頭の購入に失敗しているそうである。サンパウロ水族館は雌(メス)はノヴォシビルスク動物園からシルカを購入し、そして雄(オス)はカザン市動物園が所有しイジェフスク動物園で飼育されていたピリグリム、あるいはこのウムカとスネジョークのどちらかを購入してシルカのパートナーにしようとしたようである。ところがサンパウロ水族館はカザン市動物園、及びロスゴスツィルクとの個体購入交渉に失敗したため、雄(オス)の入手ができないままノヴォシビルスク動物園の故シロ園長とのシルカ入手の交渉を継続したそうである。そこで口を挟んできたのがモスクワ動物園だったのである。モスクワ動物園は故シロ園長に対して「シルカを彼女のパートナーとなる雄のいない施設には売るな。それがEARAZAの方針だ。」と言ってきたのである。これでサンパウロ水族館は大阪に負けたというわけである。ズーラシア(横浜市)はウムカとスネジョークの入手についてはモスクワ動物園に泣き付いても無駄である。この二頭はモスクワ動物園の影響力の範囲外にある個体なのだ。

次にCであるが、これは簡単なようでいて実はそうではないと思われる。先日も述べたのだが、これは日本のホッキョクグマ界において短期・中期的にいったいどういう方針でホッキョクグマの繁殖を試みるかという今後の方針に直結する話だからである。近年行われてきたように国内飼育頭数の維持を図ろうという方針が今後も維持され、そして現在有望な若年個体ペアの繫殖が順調に成功し続けるという二つの要因の存在が不可欠なのだ。要するにCはあまりに不確定要素が大きく、それを将来の方針として決めるというわけにはいきにくい。なにしろ自園で所有権を持つホッキョクグマが一頭もいないという状態を前提としたホッキョクグマの飼育展示の継続はリスクが大きすぎる。
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よって私の意見ではAを選択すべきであると考える。可能な限りジャンブイの健康状態に注意しながら彼を長生きさせるということである。そして「ジャンブイ後」はホッキョクグマ飼育展示から撤退すべきと考える。横浜市民でそれに意義を申し立てる人はいないだろうと思う。
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しかし万が一にでも「何が何でもホッキョクグマの飼育展示を将来も続ける」という方針を採るならば、国内個体の購入を行うこととなる。そうであるならばツヨシが最適の個体だろう。その場合、パートナーが非常に難しい。国内にはいないのである。
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Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
(Oct. 5 2016 @よこはま動物園ズーラシア)
by polarbearmaniac | 2016-10-05 23:55 | しろくま紀行

遅れてやってきたホッキョクグマ、ツヨシの黙々とした足取り ~ 「ツヨシの失われた7年」

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ズーラシアにやってきた。大都市にありながらも訪問しにくい動物園なのだ。今日は気温はそう高くはないものの何か不快に感じる湿度である。
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黙々と歩いているツヨシである。
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あの「性別取り違え事件」からもう8年近くになる。あれからツヨシにはいろいろなことがあった。それらのほとんどはツヨシにとって物事がうまく運んだとはいえない年月だった。かくも長き年月を経て彼女はズーラシアにやってきた。
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彼女は「遅れてやってきた」ホッキョクグマなのである。その遅れをもたらせた要因のほとんど全てに対して私は否定的な評価しかできない。
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ツヨシは大事にされていたから遅れてここにやってきたわけではない。
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彼女は大事にされていなかったから遅れてここにやってきたのである。
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世界ではなにしろ次から次へと新しい「意匠」と「衣装」を身に付けたホッキョクグマが現れるが、年齢を経て人々の話題からは遠ざかっていく。あのかつてのロンドン動物園の人気者だったピパラクが、最後は異国ポーランドで忘れられたように亡くなった件などはその典型である。
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しかし、このツヨシはピパラクの運命をたどることにはならないような気がする。ホッキョクグマは年齢を重ねていった場合には、我々は彼らに対してその彼らの年齢相応の接し方と観察の仕方がある。そして彼らの性格や行動が大いにそれに関係してくる。ところが日本のホッキョクグマ界には唯一、この例外の個体が存在している。それが大阪のシルカである。シルカというホッキョクグマは本質的に決して忘却されることのない存在なのだ。
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この世の中のホッキョクグマには本質的に「絵画のホッキョクグマ」、「写真のホッキョクグマ」、「動画のホッキョクグマ」という三種類の存在がある。シルカは「絵画のホッキョクグマ」である。彼女は見ている者の想像力と心に働きかけるのである。だからいつまでたっても新鮮な印象を見ている者に与えるわけである。一方で「動画のホッキョクグマ」とは、その行動に idiosyncratic なものがあるために、それが理由で関心を集めるホッキョクグマである。「動画のホッキョクグマ」は一時期は非常に人気があるが、意外なことに後世からは忘れられる存在になりやすい。何故なら「動画のホッキョクグマ」は語り継がれることを拒否した存在だからである。私にはこのツヨシが「絵画のホッキョクグマ」であるかどうかはまだわからない。ただしツヨシは「動画のホッキョクグマ」ではないことは明らかであると思う。
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このツヨシは貴重な年月を失った。繰り返すが、年月を「過ごした」のではなく失ったのである。しかしそうしたものをなんとか取り返してやりたいと思うのである。このツヨシは本来はウスラーダにとってのシモーナのような存在であるはずなのだ。あの偉大なララの長女が、いったいこれはどうしたことだろう?
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今日は気温は25~26℃ほどではないかと思うが、ツヨシはやや苦しそうである。大気の状態が快適ではなく、何か天候が不安定になってきている。
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Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
(Oct. 5 2016 @よこはま動物園ズーラシア)
by polarbearmaniac | 2016-10-05 23:50 | しろくま紀行

バフィンさん、モモさん、お元気で! また浜松でお会いしましょう! ~ 「未完のドラマ」は続く

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私にとっては今日の金曜日が最後の「大阪でのバフィン親子」である。
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モモも力強く成長した。
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しかしこの「大阪でのバフィン親子」というドラマは私にとってはこのモモが主役だったわけではないと思っている。
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最初の頃は非常に危うさを感じさせたものの、己の関心の全てを娘のモモに注ぎ続けたバフィンこそが本当の主役であった。
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「一世一代」の渾身さを育児に感じさせたバフィンである。「美しい」という言葉以外に現在の彼女を形容する言葉は見つからない。

黙想するバフィン (Baffin the polar bear in contemplation at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on Jun.10 2016.) (youtube)
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明らかに「大阪でのバフィン母娘」のドラマが幕を閉じるには潮時のような気がする。バフィンは大きな一つのフェーズを終了させつつある。彼女にとっての人生(Bear's life)は大きな区切りに差し掛かったのである。
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彼女自身がどう考えているかを我々が知るすべはないが、客観的に見れば少なくとも彼女は大きな何かを達成したことに間違いはないだろう。
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力強く成長したモモ。
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遂に母親となり、そしてその役を見事に演じたバフィン。
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この母娘には次のドラマはあるのだろうか?
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いや、そもそも「バフィン母娘」の存在というものは「未完のドラマ」そのものである。
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そしてそれは「大阪のバフィン母娘」というドラマに途切れなく続く永遠のドラマである。それは「祝祭性」にあるのではなく「日常性」に帰結されるホッキョクグマ母娘の姿であろう。以下にまったく変哲もない、毎日繰り返されてきたこの母娘の本日の日常の姿をもって私自身の「大阪でのバフィン母娘」の姿を求める旅の幕を閉じておきたい。「日常性」こそがこの母娘の永遠かつ未完のドラマそのものだからである。

本日金曜日昼のバフィン母娘の一コマ (Baffin and Momo the polar bears, around Friday noon at Tennoji Zoo, Osaka, Japan on Jun.10 2016.) (youtube)
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バフィンお母さん、モモちゃん、お元気で! また浜松でお会いしましょう!
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Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
Panasonic HC-W870M
(Jun.10 2016 @大阪・天王寺動物園)

天王寺動物園ホッキョクグマ親子旅立ちへ 飼育員の熱き思い
(Mr.Shimomura of Tennoji Zoo talks about his days with Baffin and Momo, on their leaving Osaka for Hamamatsu)
by polarbearmaniac | 2016-06-10 22:30 | しろくま紀行

シルカ (Шилка) の木曜日。光沢を持った柔らかさ ~ 「心で感じるホッキョクグマ」の魅力

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シルカさん、こんにちは! 今日は暑いですね。
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このシルカは全く素晴らしい若年個体である。
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世界のホッキョクグマ界では最高の存在である「ホッキョクグマ親子」というものの姿のあとで交代展示で午後から登場しても、決してそれに引けを取らないほどの魅力を放っているからである。今まで世界の動物園で「ホッキョクグマ親子」の姿の横にいてその存在に対抗できた個体はレニングラード動物園のメンシコフだけである。いかにシルカが素晴らしい存在であるかが、わかろうというものである。
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このシルカの魅力について私は以前に「シルカ(Шилка)、その成長の軌跡 ~ 来園者の心の中に「物語」を作り出す稀有のホッキョクグマ」、及び「シルカにとっての「おもちゃ」の意味するもの ~ その想像力を引き出す源泉」という二つの投稿で述べた通りである。
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私がこのシルカが素晴らしく感じる最大の理由は、彼女は「目で見るホッキョクグマ」ではなく「心で感じるホッキョクグマ」だからである。
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シルカのように「心で感じるホッキョクグマ」は日本のホッキョクグマ界には今まで存在しなかったであろう。

シルカにおもちゃのプレゼント(Shilka gets a toy at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on Jun.9 2016) (youtube)
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シルカの存在は我々にとってのホッキョクグマ体験の幅を広げてくれるのである。
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シルカに魚のプレゼント (Shilka gets treat of live fish, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on Jun.9 2016.) (youtube)
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その魅力は「光沢を持った柔らかさ」にもある。
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さすがにロシアのホッキョクグマは素晴らしい。
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今日は暑い一日である。
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雨模様の天気予報だったのだが晴れてしまった。

Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
Panasonic HC-W870M
(Jun. 9 2016 @大阪・天王寺動物園)
by polarbearmaniac | 2016-06-09 23:55 | しろくま紀行

バフィンとモモの木曜日、楽しみと安らぎの時間 ~ 「共感度」という座標軸での高得点

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今日は木曜日、「大阪のバフィン親子」の姿に残された時間は非常に少ない。
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しかし私個人としては大きな寂しさというものはあまり感じない。今回は世界のホッキョクグマ界においてもその実例が非常に少ない親子の同時・同一動物園への移動だからである。
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バフィンにとっては娘のモモを連れての浜松帰還は、実は輝かしい「凱旋帰園」を意味するわけである。しかし大阪のファンの方々の中には非常に悲しい気持ちでこの親子の大阪よりの出発を見守る方々もいらっしゃるだろう。
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しかし担当飼育員さんはブログでこの親子とシルカとの交代展示などについて、もうソフト面では限界であると述べている。もう「潮時」なのかもしれない。
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昨日そして今日と、このバフィン母娘には何か特別に濃密な時間が流れているようにすら感じる。そこには何か「楽しみ」と「安らぎ」を感じさせるものがある。

バフィンとモモへのおやつとおもちゃのプレゼント (Baffin and Momo the polar bears get some treats and toys, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan on Jun.9 2016) (youtube)

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バフィンお母さんも今日はよく水に入った。
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バフィンお母さんは体調は悪くはないようだ。

バフィンとモモ、母娘の水遊び (Baffin and Momo, the polar bears enjoy themselves together in the water, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on Jun.29 2016) (youtube)

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バフィンは母親としての貫録が増した。
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世界の飼育下のホッキョクグマの雌(メス)は、繁殖に成功した個体よりも成功しなかった個体の数の方が多い。私はホッキョクグマの雌が繁殖に成功せず育児体験も持てなかった個体が価値が低いなどとは毛頭考えてはいない。しかし繁殖に成功した雌は特別の賞賛を与えてやってよいと考えている。
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ホッキョクグマ、二つの姿 - 休むバフィンと遊ぶモモ (Two lives of the polar bears - Baffin resting, Momo playing, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan on Jun.9 2016.) (youtube)

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以前に述べたが、ホッキョクグマの母親の育児スタイルを評価するのには複数の座標軸が存在している。そういった複数の座標軸の中の一つには、やはり育児技量といった比較評価の座標軸が入ってくることも間違いないのである。ホッキョクグマの母親というのは実は序列社会なのである。しかしこのバフィンについては、その「高齢繁殖(出産+育児)」成功という勲章があるために、そういった相対評価を免れているのだと私は考えている。
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仮に「共感度」という評価の座標軸があるとすれば、このバフィンは非常に高い得点が付くだろう。
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このモモについて大阪の地元ファンの方でお顔を良く存じ上げている方から質問された。その内容をかいつまんで言えば、このモモの「お転婆度」は他の個体と比較してどの位かという質問だった。
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私は「平均レベルでしょう。モモはこれからどういうように変わっていくかは未知数です。」と自分の意見でお答えしたところ、その方は「安心しました。」という私にしてみれば意外な反応だった。その方は「モモちゃんがこんなにお転婆だったら将来母親になれないだろう。」と心配していらっしゃったようである。だから、他の幼年個体と同レベルだと私が答えたことに安心されたということのようである。
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このモモというのは未知数である。これからどうにでも変わっていくホッキョクグマだと思っている。
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いよいよ大阪でのこのバフィン母娘の姿が見られなくなる時が迫っている。
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見事に成長を遂げつつあるモモである。
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この案内も残すところ、あと二日間だけである。
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Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
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(Jun, 9 2016 @大阪・天王寺動物園)
by polarbearmaniac | 2016-06-09 23:45 | しろくま紀行

シルカ (Шилка) にとっての転機到来となるか?

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久し振りのシルカである。
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このシルカは来週からいよいよ「主役」の座に座ることとなる。
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しかし私にはやや心配なことがある。
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終日展示となれば担当飼育員さんも今までの半日のペースで終日にわたっておもちゃを投げ与えてやる余裕はないだろう。
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今日は担当飼育員さんの休みの日である。
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だからシルカも精彩が感じられない。
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今までは半日の展示だったので比較的密度の高い一日を過ごしていたが、これからは非常に長い一日となるために彼女もその生活スタイルの変化が求められることになる。
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つまり、最初に与えられたおもちゃで今まで以上に長い時間を遊ぶ必要があるということだ。

遊びのエンジンのかかったシルカ (Shilka the polar bear’s rampant playing at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on Jun,8 2016.) (youtube)
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担当飼育員さんという外からの刺激から、今度は自分が主体的におもちゃで遊ぶ時間を少しずつ探っていかなくてはならない。
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それこそがシルカの次のステップなのだ。
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このシルカは大器である。力強い次の成長が期待されている。
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Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
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(Jun, 8 2016 @大阪・天王寺動物園)
by polarbearmaniac | 2016-06-08 23:55 | しろくま紀行

最終章に入った大阪でのバフィンとモモの親子の姿

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五ヶ月ぶりに天王寺動物園にやってきた。
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バフィンとモモの母娘の姿が大阪で見られるのも残すところ数日である。
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モモ(手前)も本当に大きくなったものである。写真の写り方によっては母親と同じ位の体の大きさにも見えるときがある。
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ある動物園でホッキョクグマの赤ちゃんが生まれ、そしてその子育てを何度か見ているうちにやがて別れの日がやってくる。今回は母娘一緒に大阪から浜松に移動するわけであるから、「別れ」というのは母娘の別れではなく大阪のファンと母娘の別れという変則的な形をとる。しかしそうはいってもこのバフィン母娘にとっても一つの重大な転機であることは間違いない。
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「記録のイチロー、記憶の松井」というフレーズがある。このバフィンは23歳の誕生日を目前に控えて出産し、そして過去の彼女の複数回の出産事例とは異なり見事にこのモモを育て上げたのである。過去に育児成功経験がなかったものの、ほぼ23歳で初めて育児に成功したという例は世界的にも極めて稀である。この点からすればバフィンはまさに「記録のホッキョクグマ」なのである。
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また、バフィンの育児スタイルは私なりの分類で言えば「理性型」に当てはまる。これについては、この親子がお披露目となった日からも明らかであったと私は感じている。これに関しては「バフィン、その「理性型」母親像が見せる「非理性型」としての側面 ~ 未完のドラマの始まり」、及び「バフィン、その「理性型」の母親のスタイルを受け入れた大阪の土壌」という二つの投稿で述べた通りである。

バフィンお母さんの生後16ヶ月のモモへの授乳 (Baffin the polar bear nurses Momo, the 16-month-old female cub, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan on Jun.8 2016.) (youtube)

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私の経験では、一般的に「情愛型」の母親は「記憶のホッキョクグマ」となる確率が非常に強い。その典型は札幌のララである。ララの場合は出産・育児成功頭数が日本における飼育下のホッキョクグマでは最多の記録を保持しているのだが、ララの場合は不思議とその日本における「記録」を語るよりも彼女の育児中の時期の子供たちとの姿が鮮烈なイメージとして多くのファンの記憶に残るホッキョクグマである。一方でこのバフィンは彼女のまさに記録的ですらある「高齢出産」そして「育児への取り組み」について、渾身の力を振り絞り、そして自らを完全燃焼させた姿を私たちファンの前に見せてくれたということが意義深いと思うのである。そのバフィンの姿が我々の記憶に残るのは、あくまでも彼女が高齢で育児初体験を行った際に生じたある種の困難さに起因しているためだと思われる。バフィンはやはり「記録のホッキョクグマ」なのである。

安らぎの表情のバフィンお母さん (The Variations in Baffin the polar bear’s facial appearance, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan on Jun.8 2016.) (youtube)

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このモモというバフィンの娘がいったいどういう性格を持っているかについて多く語られることはあまりなかったように思われる。語られていたとすれば、それは感覚の次元での話に限定されていたはずである。
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私が思うに、このモモは非常に多くの可能性を秘めているものの、まだ現時点ではどちらの方向に行くのかが定まっていない個体のように思うのである。まだ「原石」であるのがモモである。
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このモモについて、その色をどう付けてやったらよいかまでを示す余裕はバフィンにはまだないようである。
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私なりの分類で「アポロ的」なのか「ディオニソス的」なのかは、まだモモについて語ることはできないようである。私の予感では前者のような気がするのだが。

モモの水遊び (Momo the polar bear cub plays with her favorite toys at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on Jun.8 2016.) (youtube)

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今日見ていた感じでは、この母娘は近いうちに自分たちの環境が大きく変わるであろうという予感を持っているようには見えなかった。

水曜日の昼下がりのバフィンとモモ (Baffin the polar bear and her female cub Momo,on Wednesday afternoon at Tennoji Zoo, Osaka, Japan on Jun.8 2016) (youtube)

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「大阪でのバフィンとモモの物語」の本当の主役はやはりこのバフィンだった。
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このモモは実は脇役に過ぎなかったのである。
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バフィンが娘のモモをこうして見守るように、私ももうしばらく大阪に留まってこの母娘の姿を見続けることにしたい。
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Nikon D5500
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(Jun, 8 2016 @大阪・天王寺動物園)
by polarbearmaniac | 2016-06-08 23:45 | しろくま紀行

上野動物園、デアとイコロが持つ余裕の時間

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久し振りに上野動物園にやってきた。やや蒸し暑く感じる土曜日である。正門は工事中らしい。
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右側に向かう。
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ここは昔の入り口だろう。
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デアさん、お久しぶりです!
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時間不定でイコロとの同居が開始されているデアであるが、こうして別に展示されている時の表情は以前と変わることがない。つまり彼女はすんなりと新しい生活に入ったのである。
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つまり、よい意味でこのデアはイコロとの同居に精神的な負担を感じたり、あるいはそこから解放されて極度にリラックスしているということもなく、実に安定した状態を保っている。これがピリカとイワンの同居とは大いに違うところなのである。
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デアとイコロが同居している姿を見るというのは勿論それなりに興味深いことだとは思うが、私にしてみればこうして離されているときのデアがどのような状態なのかがこのペアの将来を占う重要なポイントであるように思うのだ。
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こうしてデアを見ていると、彼女はイコロとの同居を負担に感じていないことがよくわかる。仮に彼女がそれを負担に感じているのならばイコロに対して普段とは違う気持ちで接するわけだから、こうして一頭になるとホッとして疲れが出てくるはずなのだが、デアはそういったことを全く感じさせない。ホッキョクグマ同士が相性が良いかどうかは、同居してみてお互いが他方の存在に大きな精神的負担を感じるかどうかの問題なのだ。感じているとすれば(つまり相性が悪いということ)、同居を中止したときに安堵の表情が強く出てくる。感じていないとすれば(つまり相性が良いということ)、同居を中止しても比較的平常心を保った表情を見せ続けるのである。デアの場合は後者である。
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つまりデアとイコロは非常に相性が良いのである。同居している姿を見るよりも一頭になった姿を見たほうがそうしたことが逆に良くわかるのだ。イワンとピリカが相性が良いかどうかは必ずしも二頭が一緒にいるときを見なければいけないというわけではない。いや、むしろ同居している時の姿を見て相性を判断するほうが危険な場合すらある。イワンから「解放」された後のピリカの様子を見たほうが、逆の意味でこの二頭の相性がよくわかるということである。(*追記 - ただし次に考えてみなければいけないのは、個体同士としての相性の良さと繁殖上の相性の良さが常に一致するかと言えば幾分微妙な点があるということである。モスクワのシモーナとウランゲリはこのどちらの点でも相性は最高である。しかし札幌のララとデナリは繁殖上の相性は非常に良いが個体同士の相性が最高かと言えば、必ずしも最高だとまでは言えないように思う。)

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さて、イコロである。
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こうやって一頭になっていても彼には「やれやれ」といったような安堵の表情は見られない。つまり彼はデアとの同居によって自分の精神がかき乱されてしまったという表情はしていないということなのだ。
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つまりこのことは、デアとイコロが相性が良いことを逆の意味で証明していると思われる。
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私が見たところ、上野動物園は当初からこの若いペアの最初の勝負の年は来年のシーズンであると考えていると思うのである。上野動物園がいかに多くの時間をかけてこのイコロを上野の環境に慣らそうとしてきたかを考えると、今シーズンは同居をさせてみて問題のないことを確認するだけで十分成果があったと考えているように思うのである。なにしろこのイコロとデアには時間がたっぷりとあるからだ。
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上野動物園の舵取りはなかなか巧みである。どの日のどういった時間にデアとイコロを同居させるかについて全てフリーハンドを確保しているのである。横浜のズーラシアがジャンブイとツヨシのそれぞれを展示場に出す曜日を発表しているが、あれは大変な失策である。ズーラシアは自ら自分の手足を縛ってしまったのである。ツヨシを見たいという来園者に対する配慮かもしれないが、そんな配慮など行ってはダメなのである。ホッキョクグマ繁殖に対する姿勢が甘いということである。
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上野動物園のしっかりとしたホッキョクグマ繁殖への姿勢の次に考えてみたいのはこのデアのことである。彼女の繁殖能力(そしてもちろんイコロについても同じなのだが)について予想するとすれば彼女の姉妹について語らねばならないだろう。デアのすぐ上の姉はミュンヘンのヘラブルン動物園のジョヴァンナであるが、ジョヴァンナは2013年12月にネラとノビの双子を出産し育児にも見事に成功している。だからこのデアの血統は繁殖能力には決して劣らないと考えることが可能である。

youtube

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ただし、ホッキョクグマの繁殖というのはいろいろな要素があって、何が確実であるかについては実はよくわからないのである。姉のジョヴァンナが繁殖に成功したからといってデアも成功するだろうという確実な見通しはない。運任せのような面もあるのだ。
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このデアと、そしてイコロのペアはいわば首都・東京の「黄金のペア」である。だから結果がすぐに出なくてもペアの解消ということにはなりにくいだろう。東京オリンピックまでにはなんとか素晴らしい結果を出してもらいたいと思うのである。
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このデアも、そしてイコロもいわゆる「垢抜けした」ホッキョクグマなのである。「ロシア臭」といったものをまるで感じさせないのだ。その点で優等生タイプのホッキョクグマに見えてくる。しかし、日本のホッキョクグマ界の若年個体のペアのうち、このデアとイコロのペアに一番「新しい時代の幕開け」といったものを大きく感じるのだ。あとは結果が出せるかどうかということである。
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現時点まででは上野動物園の手綱さばきは完璧である。デアとイコロの同居開始の事実そしてその後についての情報を、さりげなく、そして的確に発信するやり方も非常に好感が持てる。私も昨日今日からホッキョクグマを見始めたわけではない。そういった私にも同園のホッキョクグマ繁殖に対する真摯な姿勢がよく伝わってくる。ただし、結果については、これは人間の努力だけでは如何ともし難い部分があるのだ。難しいものである。
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Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
Panasonic HC-W870M
(May.14 2016 @恩賜上野動物園)

(過去関連投稿)
・若きイコロ、「その機は熟したり」 と考えるべきか?
・おびひろ動物園のイコロが遂に恩賜上野動物園へ! ~ イコロ、日本の首都・東京で繁殖の檜舞台へ
・おびひろ動物園のイコロの旅立ちの日が迫る
・おびひろ動物園のイコロ、故郷である「北の大地」を去り、帝都・東京へ ~ お披露目はGW以降との意向
・初夏の東京、デアとイコロの真昼に見た夢 ~ "An Early Summer Day's Dream"
・イコロ、歩むことを運命づけられたその「偉大なる道」 ~ "The Great Road ahead of Ikor"
・若大将イコロ、颯爽と躍り出たララファミリーの出世頭 ~ 運気をデアにもたらすか?
・梅雨期の高湿度の火曜日の上野動物園、イコロとデアの午後の光景 ~ デアに生じた活動範囲の拡大
・依然として梅雨の明けない東京、イコロとデアの小雨降る土曜日
・台風一過の晴天の東京、若大将イコロ(Ikor)の気楽な上野の金曜日
・女神デア(Dea)を覆うミストとメランコリーの金曜日 ~「不快さに耐える能力」と「母親の資質」との関係
・蒸した秋の土曜日、デアとイコロの淡々とした日常 ~ さらなる一層の飛躍への待機状態
・師走間近の上野動物園、イコロとデアの日曜日 ~ 同居開始前の意義ある「マンネリ化」
・新時代の幕開けを告げるデアとイコロの黄金のペアの土曜日 ~ "Dea et Ikor ouvrent la porte."
by polarbearmaniac | 2016-05-14 21:30 | しろくま紀行

「ロシアの(ホッキョクグマ)ブローカー」であるズーラシアでの連続二回目の「はずれくじ」

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今日はロシアにやってきた。よこはま動物園ズーラシア(以下「ズーラシア」と略記)である。ここは横浜市旭区だそうである。横浜市に「旭区」という区があることを私は最近初めて知った。いや、それどころではない、ここは世界のホッキョクグマ界においては本当の意味で日本ではなくロシアなのである。幸いなことにロシア入国のヴィザ取得も不要だし入国審査もないためパスポートも不要なのが幸いである。不思議なことに「入園料」はロシア・ルーブルでは払えない。日本円だけのようである。園内でロシア語が通じるかどうかはやってみたことがないのでわからない。ズーラシアを訪問するのは男鹿水族館やモスクワ動物園に行くのよりも私にとっては大変なのである。前日から重大な決意を持っていなければ、おいそれとは出かける気にはなれない動物園である。
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今日はジャンブイが出番のようである。なかなかツヨシには会えないようである。今回も「はずれくじ」だった。まあしょうがない。「二度あることは三度ある」そうである。となると、次の訪問でもジャンブイに会うことになりそうである。 

えっ、何ですって? ツヨシに会えるかどうかは電話で問い合わせれば教えてくれるですって? 開園時間に電話してみてツヨシの出番ならそれから家から出かけていき、ツヨシでないのなら行かないということですか? 今日は早朝から雨なので入学試験を受けるはずの受験生の欠席率が大きくなるという五流大学の入学試験のようなものですね。なるほど、そういえば今日はホッキョクグマ展示場には人があまりいませんでした。平日だから人が少ないのか、今日はジャンブイが出番だと電話で確認した方が何人もいたからホッキョクグマ展示場には人が非常に少なかったのか、仮に後者だったとすればジャンブイはまさに「五流大学」、そして今日はその五流大学の雨の降っている入学試験日だったというわけです。
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ツヨシに会うのは大変な労力と多くの時間を費やすことが必要な、まさにギャンブルである。ペルミ動物園のアンデルマに会う方がまだ楽といったところだろう。さっさと海外に出かけたほうがよいかもしれない。さて、ここで本投稿を終えてもよいのだが、「転んでもタダでは起きぬ」私である。本日は本ブログをわざわざ御訪問いただいた同好のホッキョクグマファンの皆様にせめて役に立つ情報を述べておくことにしたい(といっても興味など持っていただけないだろうが)。
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まず、「横浜で飼育されているホッキョクグマは何頭いて、何という名前ですか?」と海外の方から質問があった場合は必ず、「それは二頭です。ユキ丸 (Yukimaru)とユキ姫 (Yukihime)という名前です。」と答えるのが正解だということである。ユキ丸とユキ姫はご存じ、横浜の八景島シーパラダイスで飼育されているホッキョクグマである。世界で飼育されているホッキョクグマの正式な国際血統登録台帳上では、日本の横浜で飼育されているホッキョクグマは二頭だけであり、それはユキ丸 (Yukimaru)とユキ姫 (Yukihime) 以外には存在しないのである。
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では、このズーラシアで飼育されているホッキョクグマは何なのかということなのだが、彼らはホッキョクグマの正式な国際血統登録台帳上では「ロシアに存在している(動物)ブローカー」が飼育していることになっており、日本における飼育下のホッキョクグマからは除外されていて「ロシアで飼育されているホッキョクグマ」に分類されているということである。だから国際的にも国別ホッキョクグマ飼育頭数のデータにはズーラシアで飼育されているホッキョクグマは日本で飼育されているホッキョクグマの頭数には入っていないということである。
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まず血統管理台帳の記述について最初に説明しておきたい。飼育下のホッキョクグマの国際血統登録情報と台帳を管理しているのはドイツのロストック動物園である。ロストック動物園はホッキョクグマの国際血統登録情報の記述に複数の「略記」を用いている。まず、ホッキョクグマが飼育されている動物園を都市名で記述するわけである。北海道・旭川市の旭山動物園を例にとれば、以下のようになる。
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真ん中に旭山動物園(Asahiyama Zoo)の名前と日本の住所が記載されている。左側には「所在地(Asahikawa)」が記載されているが、この「所在地(Asahikawa)」をもって、ホッキョクグマがどこに飼育されているかを明示するわけである。だから旭山動物園で飼育されているイワン、ルル、ピリカ、サツキは「旭山動物園」という組織で飼育されているホッキョクグマという表現はせず、「旭川(Asahikawa)」のホッキョクグマという表現をするのである。こうした表現に基づいて世界の飼育下のホッキョクグマを記述する場合に「旭川のイワン」という表現を行い「旭山(動物園)のイワン」という表現は行わないというのが約束事なのである。さらに右端のASAHIKAWAは誕生や移動などの個体情報を記述する場合に用いる記号としてこれを記載するというのが約束事なのである。次は札幌の円山動物園である。
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真ん中に円山動物園(Maruyama Zoo)の名前と日本の住所が記載されている。円山動物園で飼育されているデナリ、ララ、リラ、キャンディは「円山動物園」という組織で飼育されているホッキョクグマという表現はせず、「札幌(Sapporo)」のホッキョクグマという表現をするのである。だから「札幌のララ」「札幌のリラ」という表現が正しく「円山(動物園)のララ」「円山(動物園)のリラ」という表現は行わないというのが約束事なのである。右端のSAPPOROは誕生や移動などの個体情報を記述する場合に用いる記号としてこれを記載するというのが約束事である。次は恩賜上野動物園である。
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真ん中に上野動物園(Ueno Zoo)の名前と日本の住所が記載されている。上野動物園で飼育されているデアとイコロは「上野動物園」という組織で飼育されているホッキョクグマという表現はせず、「東京上野(Tokyo Ueno)」のホッキョクグマという表現をするのである。右端のTOKYOUENOは誕生や移動などの個体情報を記述する場合に用いる記号としてこれを記載するというのが約束事である。次は大阪の天王寺動物園である。
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真ん中に天王寺動物園(Tennoji Zoo)の名前と日本の住所が記載されている。天王寺動物園で飼育されているバフィンやモモは、「天王寺動物園」で飼育されているホッキョクグマという表現はせず、「大阪(Oosaka)」のホッキョクグマという表現をするのである。だから「天王寺のバフィン」とか「天王寺のモモ」という言い方はせず「大阪のバフィン」「大阪のモモ」という言い方をするというのが世界の飼育下におけるホッキョクグマを呼ぶ言い方としての約束事なのである。右端のOSAKAは誕生や移動などの個体情報を記述する場合に用いる記号としてこれを記載するというのが約束事となっている。

私は今まで極力、この約束事に沿ってホッキョクグマたちを記述してきたつもりである。私は「札幌のララ」とか「大阪のバフィン」とか「旭川のピリカ」という記述を今まで可能な限りここで行ってきたつもりである。ただし上野動物園については「東京上野のデア」という言い方ではなく単に「上野のデア」と記述を行っているのは例外である。ドイツのホッキョクグマファンの方々のうち数名はこういった約束事を厳格に守って記述を行っているようである。その点はさすがだと思う。
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さて、では問題のこのズーラシアである。以下、よくご覧いただきたい。
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ズーラシアの所在国はロシアであり住所不詳である。ロストック動物園はズーラシアをホッキョクグマの国際血統登録台帳上はロシアに所在している「(動物)ブローカー」として分類しているのである。さらに、ズーラシアで飼育されているホッキョクグマの血統登録情報を下でご覧いただきたい。バリーバが去りツヨシが来園してから時間がそれほど経過していないため、まだ個体情報のアップデートがなされていないのはしょうがない。
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しかとご覧いただきたい。ズーラシアは明確にロシアに所在していることが左上の記載でおわかりいただけるだろう。
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私はこの件について、もう何年も前にロストック動物園に訂正を申し入れたものの同園からは無視されている。それはそうだろう、私は動物園関係者ではなく単なる外野の人間だからである。以前の情報から調べてみたが、ズーラシアは1999年の開園以来、ホッキョクグマの飼育に関してはずっとロシアの動物園であり続けてきたことが記録でも明らかである。そしてロストック動物園は過去の一時期ズーラシアとコンタクトしようとしたようだが全くできなかったらしい。"+no contact to this institute" と記述しズーラシアを得体の知れない団体と考えているようである。だからブローカーに分類しているのである。ロシアに存在しているズーラシアの情報について、日本に居住している私なぞが訂正を申し入れたところでロストック動物園が聞いてくれるわけがない。

信号が赤になったら停止するのがルールである。飼育下のホッキョクグマについての正式な血統情報の約束事に基づいて記載するのがルールである。私もそういったルールを極力順守したいと考える人間である。だから「よこはま動物園ズーラシア」というのは「所在地がロシアにある動物ブローカー」であるというのが国際的ルールに基づいた記述であるとこを踏まえ、今後この動物園をそういう分類で呼ばせてもらうことにしたい。「横浜のユキ丸」「横浜のユキ姫」は約束事に沿った正しい記述である。しかし「横浜のジャンブイ」「横浜のツヨシ」は赤信号でも停止しない自動車と同じである。正しくは「ロシアに所在しているブローカーのズーラシアの(飼育している)ジャンブイ」「ロシアに所在しているブローカーのズーラシアの(飼育している)ツヨシ」と呼ぶのが正しいのである。

ツヨシに会うのが大変なのは、彼女が日本ではなくロシアで飼育されているからである。ましてや、あの国土の広いロシアという国のどの都市のどういった住所にズーラシアが所在しているのかすら不詳なのだから、ツヨシに会うことなどは至難の技であって当然である。

Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
(Apr.13 2016 @所在地がロシアの動物ブローカーであるズーラシア)
by polarbearmaniac | 2016-04-13 19:00 | しろくま紀行

よこはま動物園ズーラシアでの「はずれくじ」 ~ "No way casting whichever is the favorite"

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やれ、なんとか見学会やらお披露目会やらの誇りっぽい騒がしさを通り過ごした後を見計らって今日はツヨシの顔だけでも見ておこうかなと、よこはま動物園ズーラシア(以下「ズーラシア」と略記)にやってきた。本当に不便な場所にある動物園である。ここはやっていることは都会っぽいが上野動物園や天王寺動物園のような都市型の立地の動物園ではない。私の感覚ではここは相模原か厚木といった場所に感じるのである。
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ツヨシは繁殖の目的でこの動物園にやってきた。それ以上でもなければ以下でもない。肝心なことは繁殖に向かって歩むツヨシというホッキョクグマの姿と表情を見守っていくことであり来園イベントなどは瑣末な話であるし興味など全くない。だから私は来なかった。
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ジャンブイが歩いていた。
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掲示にはこう書いてある。「今日は誰かな? ジャンブイとツヨシのどちらか一頭をご覧いただけます.....」。 さて、「今日は...」と言うからには「今日一日は」の意味である。これに「どちらか一頭...」という文言が付加されると、これはつまり「どちらか一頭が終日飼育展示場に出ている」という意味である。つまり、一日の間での交代展示はないというのが正しい日本語の解釈である。つまり、今日はいくら待ってもツヨシは出てこないということである。とんだ「はずれくじ」だった。
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ということで、このズーラシアにホッキョクグマを見に来たいという方はご注意いただきたいと思う。一日に二頭は見られないということである。それは上の掲示の日本語の内容で明らかである。このジャンブイならば今日のような木曜日に会えるチャンスが大きいような気がするが、私はそれを保障はできない。
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遠方の方でよくお顔を知っている方がいらしていた。その方はツヨシに会いに来られたそうで失望の御様子だった。お気の毒なことである。是非またいらしていただきたいものである。
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海外の動物園のホッキョクグマ飼育展示場で彼らの個体名を表示している動物園は極めて稀である。ロシアの動物園では私の知る限りない(*追記 - そういえばイジェフスク動物園にはニッサンについてだけ紹介していたのを思い出しました)。欧州でもほとんどない。数少ない例外はアンティーブのマリンランドであるが、プールのどちらの側にいるホッキョクグマがなんという名前なのかについてはやはり掲示は無い。ベルリン動物園でクヌートが存命中に小さな展示場に一頭でいた時は「クヌート」というプレート表示があった。それくらいである。そういうことだから現在展示されているのが何と言う名前の個体なのかを表示する必要もないし、ましてズーラシアがいったいいつジャンブイやツヨシを展示場に出すのかについて明らかにしないのも全く問題はないと思う。それが「世界標準」というものである。ズーラシアは個体別展示に関してはそうした「世界基準」を採用している動物園であるらしい。他の点では知らない。
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ということで、今日はツヨシに会いに来た私は完全に「はずれくじ」だった。しかし、彼女に会うことはそれほど急ぐ必要はないと思っている。ツヨシを観察すべき始点はまだまだ先に設定すべきだと考えているからである。とはいえ、実に疲れた日となってしまった。

Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
(Mar.31 2016 @よこはま動物園ズーラシア)
by polarbearmaniac | 2016-03-31 21:00 | しろくま紀行

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