街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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鹿児島へ ~ 坂本龍馬、薩摩上陸の地に建つ碑

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週末は鹿児島に行くことにした。 鹿児島は4年振りになるだろうか。 実は鹿児島はいろいろ訪れたい歴史上の史跡があり、そういった訪問を取り込んで旅程を作りたいと思っているうちに時間がどんそん経過して結果として足が遠のいてしまったというのが本当のところだ。 徳山動物園にしても、やれ津和野にも行って萩にも行ってなどと欲張ったことを考えているうちに再訪するまでに時間がかかってしまったのであるが、鹿児島にしても同じである。 歴史紀行への誘惑も絶ち難い。
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鹿児島サンロイヤルホテルにチェックイン。ここは前回も滞在している。
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ホテルから近くのコンビニに行こうと思って歩いていると突然、「坂本龍馬、新婚の旅碑」というスポットに遭遇した。 坂本龍馬は例の京都・伏見の寺田屋で伏見奉行の一見の襲撃をうけ負傷してしまったのだが、薩摩藩によって救われ、大阪から船で鹿児島に逃亡したのであった。 その後、薩摩で温泉湯治を行って傷の治療をしたのである。 その湯治旅行にお龍が同行していたために、この旅行が「日本最初の新婚旅行」だと言われている。 このスポットそれ自体はこの「新婚旅行」とは直接の繋がりはない場所だろうと思う。 ただし、西郷隆盛、大久保利通らに引き連れられて坂本龍馬とお龍が上陸したのがこのあたりだったらしい。、こういう碑に偶然出会うというのもさすがに鹿児島である。

(Aug.31 2012 @鹿児島)
by polarbearmaniac | 2012-08-31 23:45 | しろくま紀行

ロシア・西シベリア、セヴェルスク動物園のホッキョクグマ、ウドに地元企業から救いの手

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ウド Photo(C) РИА Новости в Томске

ロシアの地方都市で苦境にあえぐ小さな動物園にひっそりと暮らしているホッキョクグマに対して大変に嬉しいニュースが報道されています。 ロシア・西シベリアにあるセヴェルスク動物園については過去何回か投稿してきました(過去関連投稿参照)。 このセヴェルスク動物園は財政的に非常に厳しいらしく、動物たちへの毎日の飼料を満足に確保することにすら四苦八苦している状況であることは以前にもご紹介しています。 この動物園に暮らすホッキョクグマのウドにも厳しい状況が続いているようでした。 最近は夏の暑さのために、ほとんどプールに浸り切りという様子も伝えられています。

ところがトムスクからの報道によりますと、この地方の農産工業企業体の持ち株会社であるСибирская Аграрная Группа (「シベリア農業グループ社」とでも訳しておきます) からセヴェルスク動物園のホッキョクグマのウドに対して食費、ホッキョクグマ舎とプールの修理と改築などの目的で毎月55000ルーブル(約13万2千円)を寄付する申し出があり、セヴェルスク動物園と契約を結んだそうです。 同社ではこの地方で苦境にあえいでいる飼育下の動物を支援することによって少しでも動物の保護に貢献したいという方針で、このホッキョクグマのウドに対する支援が行われることになったそうです。 同企業グループのHPにもこの支援活動開始が述べられています。

このセヴェルスク動物園のウドというのはカザン市動物園の生まれで、サンクトペテルブルクのレニングラード動物園に暮らす女帝ウスラーダの弟にあたるわけで、カイ(仙台)やロッシー(静岡)の叔父にあたるわけです。 現在20歳になるはずですが1994年からこのセヴェルスク動物園で一頭で細々と暮らしているわけで、私は以前から同情の念を抱くと同時に、何か心を引かれるホッキョクグマです。 是非、実際に彼に会ってみたいと思うのですが、前回も書きましたがこのセヴェルスクというのは核関連施設があるために閉鎖都市になっています。 外国人の訪問は極めて難しいようです。 しかし私も、こういったロシア地方都市の「知られざるホッキョクグマ」に光を当てようと、たとえ小さくても何かニュースがあればここでご紹介することにしています。 今回のニュースも小さなニュースではありますが、しかしウドの今後の生活の大きな改善につながる点で、そのニュース価値は実は非常に大きいと考えます。
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Photo(C)crazy.werd.ru

今回このホッキョクグマのウドの他にトムスク小動物園のピューマもこの企業からの支援が始まるそうです。

(資料)
РИА Новости в Томске (Aug.30 2012 - Аграрная группа стала опекуном белого медведя и трехлапой пумы)
Сибирская Аграрная Группа (Press Release/Aug.29 2012 - Белый медведь и пума - у «Сибирской Аграрной Группы» новые друзья)
Томский Обзор (Aug.18 2011 - Зоопарки России-3. Северский зоопарк)

(過去関連投稿)
ロシア・セヴェルスク動物園で空腹に悩むホッキョクグマ ~ 地方小都市動物園の窮状
ロシア・西シベリア、セヴェルスク動物園のウドに差し入れによるご馳走のプレゼント
ロシア・西シベリア、セヴェルスク動物園で暮らすウドの避暑 ~ 新動物園計画への子供たちの夢
by polarbearmaniac | 2012-08-31 17:00 | Polarbearology

オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係

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リア(右)とハドソン(左) Photo(C)The Courier-Mail
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リア(右)とネルソン(左) Photo(C)goldcoast.com/Kit de Guymer

南半球のオーストラリア、クイーンズランド州のシーワールドのホッキョクグマたちにとっては今が春たけなわといったといころなのでしょう。 オーストラリアの報道によりますと同施設の飼育されている3頭のホッキョクグマのうち11歳の雌のリアと8歳の雄のネルソンはここのところ非常に仲が良かったそうですが、とうとう繁殖行動へ移行し、このような繁殖行動が2週間続いたそうです。 その後リアはネルソンの相手をすることを止め、今度はネルソンの双子の兄弟であるハドソンと遊び始めたようです。 もし仮にリアとネルソンとの間の繁殖行動が成果をもたらせてリアに出産があれば、それはオーストラリアでは約30年振りのホッキョクグマの赤ちゃん誕生となるそうですのでシーワールドの飼育員さんもこういった様子を非常に注意深く観察し、なんとかリアの繁殖を成功させたいと意気込んでいるようです。 こうしたシーワールドでのホッキョクグマたちの様子伝える映像がありますのでこちらをご参照下さい。
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リア Photo(C)goldcoast.com/Kit de Guymer

さて、今回出産が期待されているリアについては以前ご紹介しています通り2000年12月にロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダメンシコフとの間に生まれた双子のうちの一頭です。 双子のもう一頭のリューティクと共に2001年の11月にレニングラード動物園からこのオーストラリアのシーワールドに送られたときの様子は以前の投稿である「ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ」を是非ご参照下さい。 シーワールドの強い要請によって2頭に絶対に麻酔は用いないという方針を貫き、いかにしてこの双子を輸送用のケージに収容したかについてもその投稿ご紹介しています。 実はこのリアとリューティクがサンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダお母さんと遊んでいる大変貴重な映像がありますのでご紹介しておきます。こちらをクリックしてみて下さい。この冒頭のシーンがそうです。これは、この二頭をいかにして無事にオーストラリアまで移送するかをドキュメンタリーにした映像のうちの一部です。
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シーワールドでのリアとリューティク Photo(C)Australian Stainless

サンクトペテルブルクのレニングラード動物園のウスラーダお母さんはすでに15頭の子供を出産していますが、そのうち雌は3頭だけというアンバランスです。 その3頭の娘とはシモーナ(現 モスクワ動物園)、コーラ(現 チェコ・ブルノ動物園)、そしてこのオーストラリア、シーワールドのリアです。 シモーナについてはもう何を申し上げる必要もないでしょう。 今回の三つ子を含めてすでに12頭を出産しています。 コーラについても何度もご紹介していますが、有名なトムとビルの双子を産んだお母さんです。 となれば当然、女帝ウスラーダの娘としてこのシーワールドのリアの繁殖も非常に有望なはずで、大きな期待をかけてよいように思われます。双子であるリアももう一方の雄のリューティクは2006年の夏にこのシーワールドからアラスカ・アンカレッジのアラスカ動物園に移動しています。 

さて、このシーワールドに飼育されている8歳の雄のネルソンとハドソンですが、この双子はともにカナダで野生孤児として保護されケベックの施設からシーワールドに移動してきたわけですが、何を隠そう実はこのネルソンとハドソンの双子のうちの1頭が2004年の9月の段階では日本の男鹿水族館に移送される方針が決まっていました。 しかしとりあえずこの双子の2頭はオーストラリアのシーワールドに移送されました。 オーストラリアのマスコミの報道によれば、この時の移送関係者の言葉として、「まだ日本(秋田県)では施設が完成していないので、完成したあかつきには1頭が日本に移動することになる。」 と述べています。 ところがシーワールド側と当初の送り出し元であったカナダ側が、この双子の孤児をその段階で引き離すのはその成育上問題があると判断され、1頭の男鹿水族館への移動が一端中止になります。 その代わりにシーワールドから無期限貸与で日本の男鹿水族館に送られたのが2003年11月にモスクワ動物園でムルマお母さんから生まれ、その後にシーワールドが所有権を獲得したもののまだモスクワ動物園で飼育されていた、後に「豪太」と命名された雄の個体だったわけでした。このあたりの状況は以前の投稿である「モスクワ動物園のムルマ(5) ~ 豪太の日本への旅立ち」を是非ご参照下さい。 また、豪太が2004年3月9日にモスクワ動物園で一般公開されたときの映像を「豪太(男鹿水族館) のモスクワ動物園での初公開日の映像」という投稿でご紹介していますので、是非ご覧ください。

こうして後に「豪太」と命名された雄の個体が日本(秋田県)にやってきたわけです。 さて、送り出し元のカナダ側にしてみても双子を生後1年にもならないうちに引き離して1頭をイメージの悪い日本までわざわざ送りたくない気持ちはよくわかります。 またシーワールド側も、モスクワ動物園からムルマお母さんの息子をオーストラリアに連れてきて、さらにカナダの孤児の双子の1頭を日本に送るという二重のリスクを生じさせるよりは、モスクワの個体を日本に動かすという単独のリスクだけに留めておいたほうが無難であると考えただろうと思います。 (*注 - 秋田県はこの一連の事情に関して別の理解をしている可能性もありますが、カナダ、及びオーストラリアの報道を総合しますと上記のようになります。)

実はこのシーワールドは現在のリア、ネルソン、ハドソンの3頭飼育体制になる前には2000年から2004年まで中国の北京動物園から1995年生まれのピンピンという雄の個体を借りていたわけです。
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ピンピン Photo(C)theage.com.au/Angela Wylie

ピンピンに関しては以前、「モスクワ動物園のシモーナ(4) ~ 消息不明の息子は何処に? (上)」という投稿で少しだけ触れたことがありました。このピンピンが北京動物園から送り出される映像の一部をこちらで見ることができます。 ピンピンは2004年の11月に貸借契約期間の満了により北京動物園に戻されたわけですが、この時にはオーストラリアでピンピンの北京への返還に対して反対の声があがりました。 「飼育環境の良くない北京動物園に戻すとは何事か!」といった声でした。 しかし契約は契約であり、シーワールドの園長さんもどうすることもできなかったわけでした。

このピンピンとシーワールドでペアを組んでいたのが雌のカヌークで、このカヌークは2000年にアメリカ・アリゾナ州のレイドパーク動物園からシーワールドに移動してきた個体でしたが2004年6月に腎臓病を患い19歳で安楽死という方法で亡くなっています。 このカヌークとピンピンの間の繁殖には成功しませんでした。
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2004年に亡くなったカヌーク  Photo(C)ABC TV

そういったわけでこのシーワールドでは雌のリアの繁殖に大きな期待を寄せているわけです。 いくつかの映像を見てみましょう。まずこの下の映像、これはリアでしょうね。


この下の映像では3頭が全て登場しているようです。



こうやってホッキョクグマのバックグラウンドを知っていくと同じホッキョクグマ見るのでも、より以上に興味深く見えてくるものです。

(資料)
Gold Coast Bulletin News (Aug.30 2012 - Sea World's romantic recipe for polar cubs)
Brisbane Times (Aug.30 2012 - 50 shades of polar love)
Sky News Australia (Aug.30 2012 - 50 Shades of White spice up Sea World)
The Daily Telegraph (Aug.30 2012 - Sea World keepers create Fifty Shades of White to get polar bears in breeding mood)
The Courier-Mail (Jan.6 2012 - Sea World's handsome Hudson melting ice queen Liya's heart in quest for love)
Sea World (Polar Bear Shores)
Sea World (History)
BBC (Dec.22 2012 - White Christmas for Australian polar bears)
TVF International (Bringing Home the Bears - Episode 1)
TVF International (Bringing Home the Bears - Episode 2)
TVF International (Bringing Home the Bears)
ABC (Nov.23 2001 - Baby polar bears touch down in Brisbane)
ABC News (Jun.30 2004 - Sea World puts down polar bear Kanook)
Animal Liberation Queensland (Nov.4 2004 - SEA WORLD’S POLAR BEAR “PING PING” TO BE SHUNTED AROUND THE GLOBE AGAIN! )
Nunatsiaq News (Sep.24 2004 - Orphaned polar bears destined for Japan, Australia)
ABC News (Nov.18 2004 - Sea World takes in polar bear orphans)

(過去関連投稿)
ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ
モスクワ動物園のムルマ(4) ~ 危機の克服、そして豪太の誕生
豪太(男鹿水族館) のモスクワ動物園での初公開日の映像
モスクワ動物園のムルマ(5) ~ 豪太の日本への旅立ち
モスクワ動物園のシモーナ(4) ~ 消息不明の息子は何処に? (上)
by polarbearmaniac | 2012-08-30 21:00 | Polarbearology

アメリカ・ケンタッキー州、ルイヴィル動物園に暮らすアラスカで保護されたカニックの近況

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カニック  Photo(C)WHAS11

昨年4月にアラスカの油田地帯でお母さんとはぐれてしまったホッキョクグマの赤ちゃんが保護され、アラスカ・アンカレッジの動物園を経てケンタッキー州のルイヴィル動物園で飼育されるようになった件は昨年何度も投稿しました。 この件は昨年アメリカで大きく報道され「アラスカでのホッキョクグマの赤ちゃん救出劇」として話題になりました。 この雌の赤ちゃんのカニックのその後についてはもう1年以上投稿していませんでしたが近況を調べてみますと、順調に成育を遂げている様子が伝わってきています。 今年の1月にはルイヴィル動物園でカニックの1歳のお誕生会、そして7月には来園1周年のお祝いも催されたそうです。 最初に今年の1月のカニックの1歳の様子と、7月の来園1周年にあたってカニックの様子を語る園長さんのニュース映像をご紹介しておきます。





すでにご紹介しているように、このカニックには早々ともうパートナーが決まっていて、それはオハイオ州のトレド動物園で2009年12月に生まれたシークーです。 シークーはすでに昨年9月にルイヴィル動物園に移動してきているわけで、数年後にはこのペアの間で繁殖が試みられることになるでしょう。

このカニックというのはおびひろ動物園のアイラと同じ年齢なのですがアイラと同じく、いやもっとそれ以上に遊びが大好きといった印象を持ちます。 じっとしていることが少なく、いつも遊んでいるといったような雰囲気です。 このカニックの比較的最近の映像をご紹介しておきます。



(資料)
WHAS11.com (Jan.19 2012 - Polar bear cub celebrates first birthday at Louisville Zoo)
WHAS11.com (Jul.2 2012 - Louisville Zoo celebrates anniversary of Qannik's arrival)

(過去関連投稿)
アラスカの油田でホッキョクグマの赤ちゃんが保護!
アラスカの油田地帯で保護された赤ちゃん、アンカレッジ動物園で報道陣に公開
アラスカの赤ちゃん孤児の一般公開後の映像 ~ その視線から感じること
アラスカ・アンカレッジの動物園の赤ちゃん孤児の元気な遊び姿
アラスカの赤ちゃん孤児、月末にケンタッキー州のルイヴィル動物園へ
アラスカの孤児の赤ちゃん、月曜日にアラスカを旅立ち約6時間の空輸で新天地のケンタッキーへ
アラスカでの孤児の赤ちゃんの最後の1日、そして旅立ちの様子
アメリカ・ケンタッキー州のルイヴィル動物園のカニックの検疫終わる
アメリカ・トレド動物園のシークーがルイヴィル動物園へ移動決定 ~ アメリカのPSSP
アメリカ・オハイオ州トレド動物園のシークー、ケンタッキー州ルイヴィル動物園に到着
by polarbearmaniac | 2012-08-29 19:00 | Polarbearology

中国・吉林省、長春動植物公園のサムソンの近況

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長春動植物公園のサムソン(吉极)  Photo(C) 网易公司

ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園で2009年11月にウスラーダとメンシコフとの間に生まれた双子の1頭であるサムソンが韓国のソウル動物園を経て中国・吉林省の長春動植物公園に移動してそこで飼育されている件についてはすでにご紹介しています(過去関連投稿参照)。 私はこのサムソンにサンクトペテルブルクとソウルで会っていますので大変に親しみを感じています。 非常に人懐こいホッキョクグマで大変に魅せられたものでした。

彼の最近の様子については実はネット上にはあまり情報が多くはないのですが元気で暮らしていることだけは伝わっています。 この長春動植物公園の施設は空調が整備されていてサムソン(中国名では「吉极」ということになっているそうです)が快適に暮らせるように配慮されているようです。 空調は三菱重工製だということも報じられていました。 サムソンの動画は非常に少ないのですが、その貴重なもののうち二つをご紹介しておきます。 下の映像です。 やはりロッシーの弟だけのことはあって感じがよく似ているようです。





中国といえば最近はハイブリッドのホッキョクグマの話ばかり投稿してきましたが、こうやって「普通の」ホッキョクグマの姿を見るとなにかホッとした気持ちになります。

(資料)
長春市動植物公園 (Oct.1 2011)
网易公司 (May.1 2012 - 北国之春)

(過去関連投稿)
ロッシーがお兄さんになった! ― ロシア・レニングラード動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
サンクトペテルブルクの動物園で昨年11月に生まれた赤ちゃんの近況
サンクトペテルブルクの動物園で昨年末に誕生した赤ちゃんが産室を出た!
サンクトペテルブルクの動物園の双子の赤ちゃん(ロッシーの弟たち!)の一般公開の動画映像
ロシア・サンクトペテルグルクの動物園で昨年暮れに生まれたツインズの最新の映像 (3月20日)
モスクワとサンクトペテルブルクの赤ちゃんの最新画像
はじめまして、ペテルブルグのツインズちゃん!
サンクトペテルブルクのツインズ五態
ウスラーダお母さんの授乳シーン
ロシア・サンクトペテルブルクのツインズ別離の時来る ~ 1頭がモスクワ動物園へ!
ロッシーの弟が韓国・ソウル動物園へ! ~ レニングラード動物園に残るツインズの1頭の移動決定
サンクトペテルブルクからソウルに旅立つサムソンの映像
韓国・ソウル動物園のサムソン、元気な姿を来園者に披露
会いたかったぜサムソン君!
韓国・ソウル動物園のサムソンの素顔 ~ 人なつこさの限りない魅力
ソウル動物園のサムソンが中国の長春動植物公園へ移動!
中国・長春動植物公園のサムソン、遂に一般公開へ
by polarbearmaniac | 2012-08-28 20:00 | Polarbearology

「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(1) ~ 雄雌の同居は繁殖行動期に限定すべき?

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ララとデナリ (2012年4月15日撮影 於 札幌・円山動物園)
Nikon D5100  AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II

もう8月も末になり、なんと実はホッキョクグマの赤ちゃん誕生シーズまであと3か月ほどになっています。それまでの間に論者の野生のホッキョクグマの頭数変化への評価問題と並んで、断続的に動物園におけるホッキョクグマ飼育の問題点を整理することにより、基本に立ち返ってホッキョクグマの福利厚生について考えをめぐらせたいと思います。 テキストとして利用するのはアメリカ動物園・水族館協会 (AZA) が作成した「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Polar Bear Care Manual)」です(pdf)。 こういった飼育マニュアルについては日本でもホッキョクグマ繁殖検討委員会がその計画・準備をしているのはご承知の通りです。 このアメリカにおける飼育マニュアルは、動物学の観点から長年にわたっての飼育下のホッキョクグマに対する研究結果と全米各地のホッキョウグマを飼育・繁殖している動物園の担当者飼育の飼育実践を融合したものですが、日本でホッキョクグマ繁殖検討委員会が計画・準備しているのはあくまでも飼育の実践を基礎にしたものになるだろうと私は理解しています。

さて、今回は「雄雌の同居は繁殖行動期だけにすべきなのか?」 という点につき諸例を振り返りつつ考えてみたいと思います。 実はホッキョクグマを飼育している日本の動物園のほとんどは「雄雌の同居は繁殖行動期だけにすべきなのか?」という問題設定に関して「Yes」と考えているらしいことが見て取れます。 旭山動物園のイワンとルル、天王寺動物園のゴーゴとバフィン、男鹿水族館の豪太とクルミ、仙台・八木山動物公園のカイとポーラ、その他の例を見てもそれは明らかでしょう(「別居」には「交代展示」を含めます)。 一方で釧路市動物園はそう考えていないらしいことは以前のデナリとクルミの例、現在のユキオとツヨシの例を見ても明らかです。 札幌・円山動物園は幾分柔軟な考え方のようで、以前はたしかデナリとララの同居は夏ごろまでは続いていたような記憶もありますが今回は比較的早い時期に別居になっています。 別居の問題に関してデナリとララのようにすでに繁殖実績がある場合とそうではない場合とを同じに考えてよいかは非常に微妙な問題ですが問題が必要以上に複雑化しますので今回は便宜上同じに考えていくことにします。
(*後記)札幌・円山動物園の飼育員さんの記録を見ますと、ララとデナリの別居は2003年(ツヨシ誕生)では10月12日、2007年(このときは翌年2月1日に赤ちゃんは死亡)では7月、2008年(イコロ、キロル誕生)では5月8日だったとのことです。 だんだんと別居の時期が早くなってきています。 これは「雌個体への徹底したストレス軽減」が目的だっただめだそうです。

さて、海外に目を転じてみますとこれとは全く正反対の事例があります。 たとえばモスクワ動物園です。 この世界で最もホッキョクグマの繁殖実績を誇る動物園にはウランゲリとシモーナ、ウムカとムルマという繁殖実績の豊富な二組のペアが飼育されているのですが、この二組のペアともに雄雌の同居は雌が産室入りする11月初頭まで継続させています。 つまり、雌の出産。子育て期間中以外は年を通して雄雌が同居するというやり方をやっており、別居もさせなければ交代展示もしないそうです(飼育員さん談)。 確かに私が昨年の9月にモスクワ動物園に行きましたときにも同居していました。 その2つのレポート(「ウランゲリ、右前足の爪先を負傷か? 」「秋の日のモスクワ動物園のシモーナとウランゲリ ~ 再び期待されるこのペアの繁殖」)をご参照下さい。 特に二つ目のものは9月も下旬になっての様子ですが、このレポートから2か月してシモーナは三つ子を無事出産しているわけです。 それからオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園も昨年5月に私が訪問した際には雄のヴィクトルと雌のフギースは彼らの繁殖行動期(3月)をかなり過ぎていたにもかかわらず広い展示場で同居していたのを見ました。 ところが同じロシアでもモスクワ動物園のライバルであるサンクトペテルブルクのレニングラード動物園ではメンシコフとウスラーダの同居は繁殖行動期だけに限定されており、それ以外は完全別居という、モスクワ動物園とは正反対の日本に近いスタイルです。 いったいこれらの事例をどう考えたらよいのでしょうか?
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モスクワ動物園のシモーナ(手前)とウランゲリ(奥)
Photo(C) Александр Суханов/zver911.ru

そこでこのAZAの作成した「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Polar Bear Care Manual)」 がこの点に関してどういっているかを見てみましょう。49ページの “7.1 Reproductive Physiology and Behavior” にズバリこう言っています。そのままコピーします。

The decision of whether to introduce males and females for
specific breeding interactions, or whether males and females
can be housed together year-round, will need to be based on
the temperaments of the bears, evidence of affiliative or
aggressive interactions, and the facilities available at each
institution. Some males and females can stay together
the whole time. The design and size of habitat areas provided
to polar bears that are separated during any point during
the reproductive process should follow the recommendations
and requirements described in Chapter 2. The challenges that
can arise during the breeding season, or during specific
breeding interactions, include males being overly aggressive,
and females not being receptive to males. Inexperienced and
young bears may require additional time together before
successful copulation occurs.


要するに簡単に言えば、繁殖行動期以外にも同居させてよいかどうかはこの雄と雌の気質・性格の問題と施設の構造の問題次第だということですね。 この点に関してどちらがどうという結論的なことは言っていません。 場合場合によって柔軟に考えてよいという意味であると理解できると思います。 以上、モスクワ動物園の事例、そしてアメリカの動物園の多くの事例を総合したAZAの「ホッキョクグマ飼育マニュアル」の2つから言えることは、「雄雌のペアは繁殖行動期以外は別居させねばならない」 という考え方は必ずしも常に正しいとは言えないという結論になります。 私は、まさか日本の多くの動物園が 「別居させることが常に100%絶対なのだ」 とまで硬直的には考えていないだろうとは思っています。

(*追記) しかし仮に繁殖行動期間を過ぎての「別居」が「交代展示」の形でなされ、そして1頭がバックヤードでの飼育の形になるということであれば、それはAZAの飼育マニュアルの趣旨に従えば、むしろこれは「同居」させるべきであるという結論になるように思われます。 何故なら、「別居」させるにしてもその2頭の双方がこのマニュアルに定められているChapter 2 の飼育条件をクリアしない限り「別居」は推薦できないということになるからです。 昼間もバックヤードで飼育するならば、これをクリアすることはできません。 かといって、もちろん同居させようとする場合でも2頭の性格・気質の問題がクリアされることが条件にもなることは言うまでもありません。  サンクトペテルブルクのレニングラード動物園がウスラーダとメンシコフが繁殖行動が終了すると直ちにこの2頭を別居させているのは、この2頭にはそれぞれの独立した飼育・展示スペースが用意されており、1頭をバックヤードに収容して交代展示とする必要がないからとも言えるかもしれません。 

(資料)
Association of Zoos and Aquariums - Polar Bear (Ursus maritimus) Care Manual

(過去関連投稿)
ウランゲリ、右前足の爪先を負傷か?
秋の日のモスクワ動物園のシモーナとウランゲリ ~ 再び期待されるこのペアの繁殖
ケンピンスキーホテルからレニングラード動物園へ ~ ウスラーダとメンシコフとの再会へ!
円山動物園、春の陽光の下でのホッキョクグマたちの場景
by polarbearmaniac | 2012-08-27 20:30 | Polarbearology

ドイツ・ケルン動物園の在りし日のホッキョクグマ展示場

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1875年のケルン動物園のホッキョクグマ(イラスト) (C)Kölner Zoo
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1956年のケルン動物園ホッキョクグマ展示場 Photo(C)Kölner Zoo

フランクフルター・アルゲマイネ(Frankfurter Allgemeine Zeitung) 紙、その他のドイツのマスコミが一斉に報道しているところによりますと、ドイツのケルン動物園で昨日25日にアルタイという名前のアムールトラが飼育場から逃げ出し飼育員さんを襲って死亡させたあと、園長さんによって射殺されるという痛ましい事件があったようです。亡くなった女性の飼育員さんは本当にお気の毒なことです。謹んでご冥福を祈ります。この事件のニュース映像をご紹介しておきます。 トラを射殺せざるを得なくなった園長さんもインタビューに答えています。

逃げ出したとはいっても、そこは一般来園者の立ち入りできない地域ではあったそうですが、射殺しなければ襲われた飼育員さんの救出が不可能という状況だったようです。上の映像でインタビューに答えている園長さんは今回の事件の発端は飼育員さんのミスであると考えているようですが、当局によって詳しい調査が行われるそうですから事実が究明されることになるでしょう。
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アムールトラのアルタイと犠牲となった飼育員さん
Photo(C)Bild/Andrea Matzker

さて、このケルン動物園ですが大都市ケルンにある152年の歴史を誇る動物園です。ところが1999年を最後に現在ではホッキョクグマは飼育されていないそうです。冒頭の写真は1956年に造られたホッキョクグマ展示場の様子です。この下の映像は1963年に撮影されたものです。画像をクリックしていただくとイギリス・パテ(British Pathé) のページが現れ、再生が可能になります。


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1985年のケルン動物園のホッキョクグマ Photo(C)Walter Kleinert
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Photo(C)ZooChat/Baldur

上の写真はケルン動物園の1985年と1999年の写真ですが、冒頭の1956年に完成した展示場にかなり改修が施されているように見えます。 しかしこの1999年にはもうホッキョクグマは不在になっていたわけです。この年にヴィクトリアというホッキョクグマが亡くなったそうで、その母親だったヴェラはオランダのレネンのアウヴェハンス動物園を経てデンマーク。コリントのスカンジナヴィア野生動物公園に移動したあと2008年にそこで亡くなったようです。

ケルン動物園がホッキョクグマの飼育をやめてしまった理由の詳細は不明ですが、やはりホッキョクグマを動物園という環境で飼育し続けることに問題を感じたためであるというような記述が散見されます。それにしてもホッキョクグマのいない動物園というのはやはり寂しく感じます。

(資料)
Frankfurter Allgemeine Zeitung (Aug.25 2012 - Tiger tötet Pflegerin)
Bild (Aug.26 2012 - Tiger zerfleischt Tierpflegerin im Kölner Zoo)
Kölner Zoo (150 Jahre Kölner Zoo)(History)
WDR (Happy Birthday: 150 Jahre Kölner Zoo)
British Pathé (Polar Bears At Play 1963)
by polarbearmaniac | 2012-08-26 22:00 | Polarbearology

ある土曜日の午後のゴーゴ ~ 猛暑の夏にも陰りを感じさせる大阪・天王寺動物園

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やあゴーゴ、まだまだ暑いね!
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毎日ご苦労様です!
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アンデルマの息子は猛暑の中で今日も淡々と動き回っている。
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ゴーゴは母親アンデルマに良く似ているが、一方で父親のユーコンの面影も備えているのである。
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ゴーゴはサンクトペテルブルク・レニングラード動物園の偉大なホッキョクグマであるメンシコフの父親違いの弟である。 こうしてみるとメンシコフにも顔つきは似ているのである。
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メンシコフはその威厳と貫録で周囲を圧倒する至高のホッキョクグマであるが、ゴーゴはそういった点ではメンシコフに相当見劣りがするものの、反対に非常に親しみと優しさを感じさせるのである。 同じアンデルマの息子でもこうも違うということは、やはり父親の性格が違うということなのだろうか。ゴーゴの父親のユーコンは紳士的で優しい雄であるとペルミ動物園の担当者は語っている。 一方メンシコフの父親は不明である。なぜなら、アンデルマがまだ野生の時に息子のメンシコフを連れていて捕獲されたからである。だからメンシコフの父親がどんな雄だったかはわからないのだ。
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ゴーゴの母親であるアンデルマについては是非、下の過去関連投稿を参照願いたい。 アンデルマこそ、その存在それ自体がオーラを発散するほどの稀に見るホッキョクグマであり、私が今まで会ったホッキョクグマのうちで最高の存在だと思っている。
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日本にはアンデルマの息子が2頭(ゴーゴ、ホクト)、孫が2頭(カイ、ロッシー)、曾孫が1頭(イワン)暮らしている。彼らのことを私は便宜上、「アンデルマ/ウスラーダ系」と呼んでいる。
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日本に暮らす「アンデルマ/ウスラーダ系」の雄のホッキョクグマのうちで最もアンデルマに似ているのはこのゴーゴである。 だから私にとってもゴーゴはある意味では特別なホッキョクグマであるのだ。

活魚のプレゼントを待つゴーゴと水中での捕食
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バフィンの姿がちらほら見える。
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ゴーゴとバフィンとの間で是非繁殖を成功させてもらいたいと思うが、これには運の上にさらに運が必要だろう。
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しかしまあ繁殖に成功せずとも、ゴーゴというのはアンデルマの息子として日本に存在してくれているだけでもありがたいのだ。
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おいゴーゴ、夏の暑さが続くのもそう長くはないよ。健康に気を付けて過ごして下さいね! 偉大なる母の息子がここにもいるのである。
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まだまだ非常に暑い大阪であるが、その夏にも陰りを感じる気配がする。
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今年の夏のピークは過ぎ去ろうとしている。 天王寺動物園は時間の都合で午後の2時間ほどしか滞在できなかった。
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今日は珍しく新幹線で大阪にやってきた。 夕方から大阪市内で会合がある。 ひとまず前回も宿泊した本町のセントレジスにチェックインすることにした。

Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR
(Aug.25 2012 @大阪・天王寺動物園)

(過去関連投稿)
極北の地より動物園へ(1) ~ ゴーゴのお母さんの物語
ロシア・ペルミ動物園のホッキョクグマ、「生ける伝説」となったアンデルマ
ロシア・ペルミ動物園で一般公開された生後3ヶ月のゴーゴ(現・天王寺動物園)の様子
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(1) ~ 捕捉し難き素顔
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(2) ~ その存在への認識
2011年ロシア遠征後半(ペルミ動物園関連部分)
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(1) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(2) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(3) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(4) ~ 遠征での映像より
by polarbearmaniac | 2012-08-25 22:00 | しろくま紀行

野生のホッキョクグマ調査研究者は動物園のホッキョクグマをどう見ているか ~ アムストラップ氏の講演

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アラスカ・アンカレッジの動物園のホッキョクグマ
Photo(C)Loren Holmes / Alaska Dispatch

フィールドワークを中心にして野生のホッキョクグマを調査している研究者たちが動物園におけるホッキョクグマの存在をどうみているのか、そもそも彼らが動物園におけるホッキョクグマの存在に関心があるのかないのかについて以前から興味をもっていました。 たとえば以前からご紹介している著名なホッキョクグマの研究者であるスティーヴン・アムストラップ (Steven C. Amstrup) 氏のような方です。

実はこのアムストラップ氏はこの6月にアラスカ・アンカレッジの動物園 (The Alaska Zoo) の 'Feast for the Beasts' (「動物たちの饗宴」とでも訳しておきます)という催し物のなかで行った講演が Alaska Dispatch の7月1日付けニュースサイトに掲載されており、その講演の中で動物園におけるホッキョクグマについて触れています。

まず、アメリカの動物園などが行っている世界での野性動物保護活動プロジェクトの貢献をあげています。 これはホッキョクグマに対象を限ったものではなく、多種多様な野生動物保護のための取組みということでしょう。 ホッキョクグマに限って言えば、人工授精などを含む繁殖への取り組みなども挙げています。 しかしアムストラップ氏は動物園の役割としてそれ以上にもっと重視しているのは、北米の動物園だけで年間1億7千万人もの数の入園者に対してホッキョクグマの置かれている状況を動物園という場で理解してもらうとともに野生のホッキョクグマを保護するために自ら何かの行動を起こすような動機を形成する場となりうる期待を込めているようです。
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アラスカ・アンカレッジの動物園
Photo(C)Loren Holmes / Alaska Dispatch

まあこれは、「動物園の意義と役割」 とそのまま言い換えても同じことで、動物園の存在は野生動物の保護につながるという考え方ですから、別にホッキョクグマだけに限ったことではありません。 アムストラップ氏は動物園での飼育下に限ったホッキョクグマの生態を研究するという関心は全くないように感じました。 というのも、「ホッキョクグマが生きていくために必要なのは海氷 (Sea Ice) である。」と言う内容をはっきりと語っているわけです。 ですから、そういった海氷 (Sea Ice) の存在しない動物園で飼育されているホッキョクグマをあえて抽出して特別に研究しようというのではなく、もっと広い視野の中で動物園におけるホッキョクグマ展示の意義を重要に考えていると理解してよいでしょう。 仮に「自然」というホッキョクグマ本来の生育の場が失われても動物園で飼育すればホッキョクグマを絶滅から救うことができるなどという考え方をアムストラップ氏がとらないであろうことは間違いないでしょう。





飼育下に限定したホッキョクグマの研究(特にその行動について)はアメリカやロシア(ソ連時代)で過去にもかなりなされており、それらは主に動物学者によるものですが、そういった研究は野生のホッキョクグマの保護とはほとんど無関係なのではないかと思われます。 飼育下におけるホッキョクグマの生態の研究も重要ではありましょうが、現在のホッキョクグマの置かれている状況を考えれば、飼育下のホッキョクグマの研究以上にはるかに重要になっているのが自然下のホッキョクグマの生態を「保護」の視点から研究するといったことでしょう。その意味でアムストラップ氏の言う「動物園(におけるホッキョクグマの存在)の意義」が導き出されるわけであり、そしてそのことはもっともだと思われます。 「自然下におけるホッキョクグマにとって不可欠なのは海氷の存在であり、その海氷の存在を脅かしているものが温室効果ガスであるから、その温室効果ガスの増大をどうやったら防ぐことができるかを考え、そしてそれに向けて行動するきっかけを与えてくれるのが動物園におけるホッキョクグマの存在である。」、これがアムストラップ氏の考える動物園のホッキョクグマが持つ存在意義であると考えて間違いないでしょう。

(資料)
Alaska Dispatch (Jul.1 2012 - Polar bear scientist: Why I care about zoos)
Smithsonian.com (Nov.2007 - Interview: Steven Amstrup)

(過去関連投稿)
スティーヴン・アムストラップ氏のホッキョクグマ研究調査・保護活動にインディアナポリス賞が授与
by polarbearmaniac | 2012-08-24 17:00 | Polarbearology

カナダ・マニトバ州の森林火災がホッキョクグマの生息地を脅かす ~ ハドソン湾岸地域における巣穴の特徴

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マニトバ州のホッキョクグマ Photo(C)Reuters

カナダ・マニトバ州のワパスク国立公園 (Wapusk National Park)で発生した森林火災がハドソン湾岸にも一部の場所で迫っており、ホッキョクグマの生息地を脅かしかねない危険性が指摘されています。

もともと湿度の高く森林火災の少なかったマニトバ州でしたが、ここのところは乾燥した日が続いていたところに落雷によって火災が発生したそうで、この火災がハドソン湾岸に広く広がればホッキョクグマの巣穴の構造を支えているトウヒの木の根が張っている永久凍土に変化が生じ、結果として巣穴の構造が弱くなって崩壊する危険性があるとステーィヴン・アムストラップ氏は語っています。マニトバ州政府のHPに州内の森林火災の状況を示すページがありますが、そのうち ”Current Fire Situation Report” を見ますと北東部 (North East) においていくつかがactive となっており、そのうち2つが”out of control” となっています。 ちょっと心配ですね。
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マニトバ州の森林火災 Photo(C)Reuters

さて、我々はホッキョクグマの巣穴(産室)といえば思い浮かぶのは出産を意識した雌が緩やかな雪の傾斜に穴を掘って巣穴(産室)を造るのものだというイメージですが、このハドソン湾岸において巣穴とは雪を掘って造るというよりは、むしろこうやって木の根の張った凍土に造られるものだということです。 その写真は先日の投稿である「カナダ・ハドソン湾南岸にホッキョクグマの巣穴の数が予想以上に存在することが判明」の冒頭の写真がそれにあたります。 こういった巣穴のなかにはすでに100年以上も使われてきたと思われるものもあるそうです。 つまりハドソン湾岸においては雌は基本的には巣穴(産室)はすでに存在しているものを使用する(そういった巣穴に入り込む)ということになるでしょう。 以下の映像の開始後30秒前後のあたりから、こういったホッキョクグマの巣穴を見ることができます。



(資料)
Reuters (Aug. 16 2012 - Rare wildfires threaten Canadian polar bear habitat)
Government of Manitoba (Wildfire Information)

(過去関連投稿)
カナダ・ハドソン湾南岸にホッキョクグマの巣穴の数が予想以上に存在することが判明
by polarbearmaniac | 2012-08-24 01:00 | Polarbearology

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