街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんのナヌクが右前脚を負傷 ~ ブルノ動物園の抱く思惑への憶測

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ナヌク Photo(C)Zoo Brno

チェコ・ブルノ動物園で昨年の11月24日にコーラお母さんから生まれた雌と雄の双子の赤ちゃんのコメタとナヌクですが、先日ナヌクが消化不良で一時体調を崩したものの回復した件についてはすでに投稿しています。 さて、この雄のナヌクですが一昨日から今度は右前脚の具合が少々よくないようで、どうも遊びの最中に何らかのケガをしたような形跡があるようです。 ブルノ動物園では獣医さんに来てもらって、果たしてコーラお母さんから引き離してナヌクの検査をしたほうがよいかを話し合ったそうです。 コーラお母さんと一時的ではあれ引き離すことはナヌクにとってストレスが大きいとの判断で、とりあえずケガとはいってもひどいものではなさそうなので様子を見ようということになったようです。 昨日(木曜日)の状態ですが、好転の兆しは見えないものの食欲はあり、一応は動き回っているようなので、今後は獣医さんの注意深い監視を行うことになったそうです。ファンの心配は相当なもののようです。 それにしてもこの雄の赤ちゃんのナヌクというのは、ああだこうだといろいろ周囲を心配させる赤ちゃんです。 私に言わせれば、今回のナヌクの右前脚のケガはそれほど心配するようなものではないように思います。 少し騒ぎ過ぎでしょう。

この下の映像は雌の赤ちゃんのコメタが水遊びをしている5月10日頃の映像ですが、泳ぎも上達しそして潜ることもしています。



この下も同じ頃の映像ですが、こちらは泳いでいりのはナヌクに見えます。



それから少々興味深い内容の報道もあります。 それは、ブルノ動物園はこの双子の赤ちゃん、特に雄のナヌクの将来の繁殖について早々とここのところ、EAZA (European Association of Zoos and Aquaria - 欧州動物園水族館協会) ではなく EARAZA (Евроазиатская региональная ассоциация зоопарков и аквариумов / Еuro-Аsian Regional Аssociation of Zoos and Аquariums - ユーラシア地域動物園水族館協会) と話し合っているそうです。 これはブルノ動物園にとっては一見、実に奇妙な選択のようにも見えます。 EARAZA というのはEAZA のユーラシア版 (旧ソ連、東欧、バルト諸国、中央アジア諸国) の組織のようなもので、そういった旧ソ連影響地域国の動物園が加盟しているEAZA 類似の組織であり、EAZAに対抗するように1994年に創立された時点から現在に至るまでモスクワ動物園がこれを牛耳っているわけです。  ですから、EARAZA加盟の動物園の背後にいるのはモスクワ動物園というわけです。
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前回のコーラお母さんが産んだ双子の兄弟であるトムとビルの他園への移動にはEAZA のコーディネーターが関わっていたはずで、トムはプラハ動物園に、そしてビルはドイツのゲルゼンキルヘンの動物園に移動したわけですが、今回の双子の赤ちゃんの将来についてブルノ動物園が EARAZA に相談するということは、要するにこの2頭はドイツなどの西欧の動物園ではなく東欧の動物園に出したいということなのでしょうか? ブルノ動物園はもともとからEARAZAのメンバーでしたのでEARAZA にホッキョクグマの繁殖についての話を持っていくこと自体に不思議はないわけですが、ブルノ動物園の園長さんは前回のトムとビルの件でEAZA に不満を持ったために今回は先手を打ってEARAZA、特にモスクワ動物園の協力を求めているという解釈が成り立つように思います。 EAZA と話せば飼育基準その他のことで条件を付けられて苦しい立場に追い込まれるためにEAZA ではなくEARAZA と話す方が確かにやり易いのは事実ですね。 今回の双子の赤ちゃんの将来の移動は EAZA のコーディネーターには介入させないという意図でしょうか? てっとり早く言えば、「今回の双子はドイツやオランダの動物園には渡さない。」 という決意なのでしょうか? 欧州やロシアの動物園同士の間では外からでは容易にわからない確執があるらしいということは知ってはいましたが、そういったことの一端が見えるような気がします。 先日ヴィックスとセシがスウェーデンからオランダに戻ってきたのも何か腑に落ちない事情が背後にあっただろうと考えざるを得ません。
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ナヌク(左)とコメタ(右) Photo(C)Zoo Brno

ある推理を働かせれば、一昨年の暮れにモスクワ動物園でムルマお母さんから生まれているものの、一般への公開は一切行われずバックヤード(あるいは別に場所)に秘匿されていると言われている幼年個体(性別不詳 - 私もモスクワ動物園では一切その存在を確認できませんでした) と今回のブルノ動物園の双子のコメタとナヌクのどちらかを組み合わせてどこか東欧内の動物園で繁殖を狙わせようようという、モスクワ動物園とブルノ動物園の思惑がすでに合致しているのかもしれません。 これは一層、今後の事態の推移に注目しておく必要があるでしょう。 こういうドロドロとした世界の話は私は意外に嫌いではありません。 そしてそこに、スラヴ系という、魑魅魍魎とした海千山千の人々が時として我々の理解を超えるような考え方をするという傾向が絡み合ってホッキョクグマの赤ちゃんの将来をめぐる人間のドラマが今後展開されるのでしょう。 どう転んでもこの双子の赤ちゃんたちの将来のパートナーはいるだろうと考えます、 ですから、少々不謹慎な言い方ですが、非常に面白くなってきたということです。 これは人間のドラマです。

(資料)
iDNES.cz (May.29 2013 - Brněnské medvídě Nanuk kulhá, v zoo s vyšetřením zatím vyčkávají)
Brněnský deník (May.30 2013 - Lední medvídě Nanuk kulhá. Ošetřovatelé zjišťují, proč)
Brněnský deník (May.30 2013 - Medvídě Nanuk si nejspíš natlouklo při hře. Bude v pořádku)
EARAZA (Евроазиатская региональная ассоциация зоопарков и аквариумов)
Information Issue of Eurasian Regional Association of Zoos and. Aquariums (Vol.28 2009 - Moscow)

(過去関連投稿)
チェコ・ブルノ動物園がコーラの出産に園の浮沈をかける ~ 食害の瞬間を映した貴重な映像記録の公開
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チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんが生後2ヶ月を無事に経過 ~ 1976年の人工哺育事例について
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チェコ・ブルノ動物園で誕生した双子の赤ちゃん、生後三カ月が経過  ~ 前回5年前の映像を振り返る
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チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんの名前が決定 ~ 「コメタ」 と 「ナヌク」
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃん、コメタとナヌクの命名式が盛大に行われる
チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんの一頭のナヌクが消化不良で一時体調を崩す
by polarbearmaniac | 2013-05-31 07:00 | Polarbearology

アメリカ ・ ウィスコンシン州 マディソン市、ヘンリー・ヴィラス動物園の30歳のミシュカ、ひっそりと逝く

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亡くなったミシュカ  Photo(C)WKOW/Henry Vilas Zoo

アメリカ・ウィスコンシン州マディソンにあるヘンリー・ヴィラス動物園のSNSのページ、及び報道の語るところによりますと、同動物園で20年間にわたって飼育されていた30歳の雌のホッキョクグマであるミシュカが先週の初めに、老齢からきた複合症 (complications related to her advanced age) の悪化によって安楽死という処置で亡くなったとのことです。 以下は生前のミシュカの姿です。 まずこれは2010年の春に撮影されたもののようです。



この下は昨年の暮れの雪が降っている日の映像です。 新しくもらったおもちゃを水から引き揚げようとしていますが、うまくいかないようです。 高齢にもかかわらず実に美しいホッキョクグマだと思います。



実はこのヘンリー・ヴィラス動物園については以前に一度、「繁殖のために住み慣れた動物園を旅立ったホッキョクグマ ~ ヘンリー・ヴィラス動物園のナヌークへの期待」 という投稿をしていただけでした。 なにしろこの動物園は入場料も駐車場利用も無料という動物園である点でも有名ですが、そういった入場無料という動物園は全米で10施設あるそうです。 私が実際に訪問したアメリカの動物園で入園が無料だったのはシカゴのリンカーンパーク動物園だけでした。

実はこの動物園では1988年、まだミシュカが来園する前のことですが、精神異常者がホッキョクグマ展示場に侵入したために警官がホッキョクグマに発砲し、その結果として15歳のチーフという名前の雄のホッキョクグマがその警官によって射殺されたという大変に不幸な事件があったそうです。以下はそれを伝える新聞記事です。 この時は警官がホッキョクグマを射殺したことに対して賛否両論の議論がわきあがっようです。 何か事があれば、それがたとえ全面的に人間に責任があったとしても生命をもって責任を取らされるのはいつでも動物たちです。 まったく理不尽な話です。
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以前の「繁殖のために住み慣れた動物園を旅立ったホッキョクグマ ~ ヘンリー・ヴィラス動物園のナヌークへの期待」という投稿で、長年このミシュカのパートナーであったナヌークがバッファロー動物園に移動する件をご紹介しましたが、バッファロー動物園でこのナヌークは見事に役目を果たし、アナーナとの間に生まれたのがあの人工哺育で育てられているルナです。 ナヌークはまた新たなる使命を帯びてコロンバス動物園に移動しています。 ナヌークはヘンリー・ヴィラス動物園にその所有権があるようですが、今回亡くなったミシュカの所有権はミルウォーキー動物園にあるそうです。 ミシュカがナヌークとの間で繁殖に成功できなかったのは誠に残念なことでした。
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ミシュカ  Photo(C)WKOW/Henry Vilas Zoo

このヘンリー・ヴィラス動物園では現在、新しいホッキョクグマ展示場を新設する計画が進行中で、その具体案が昨日の水曜日に発表されたばかりです。 そういった華々しい報道、そしてかつてのパートナーであったナヌークの活躍...そういったことの中でミシュカの死のニュースはまるで陰に隠れたようになかなか報道されませんでした。 しかし我々の前から、また一頭、美しい姿をした老ホッキョクグマがこうして姿を消したのです。 ひっそりと亡くなったミシュカの冥福を心より祈ります。 本当に長い間ご苦労様でした。
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Photo(C)Henry Vilas Zoo

(過去関連投稿)
繁殖のために住み慣れた動物園を旅立ったホッキョクグマ ~ ヘンリー・ヴィラス動物園のナヌークへの期待

(資料)
Channnel3000.com (May.29 2013 - Zoo's polar bear dies, officials say)
WKOW.com (May.30 2013 - Henry Vilas Zoo's polar bear, Mishka, euthanized)
Madison.com (May.30 2013 - Farewell to Mishka: Vilas Zoo polar bear euthanized)
Surroundedbyreality.com (Mar.13 1988 - Polar Bear "Chief" Shot & Killed at Henry Vilas Zoo)
Wisconsin State Journal (Apr.3 2010 - High cost to bear: Vilas Zoo at 100 years)
Madison.com (May.29 2013 - Vilas Zoo unveils plans for new cafeteria, Arctic exhibit, 'Forever Free' fund)
Wisconsin State Journal (May.29 2013 - Costs to be reduced for zoo's sprawling Arctic Passage exhibit)
Channnel3000.com (May.29 2013 - Bear habitat to help keep zoo free for attendees)
by polarbearmaniac | 2013-05-30 19:30 | Polarbearology

シンガポール動物園のイヌカが同園内にオープンした新施設 ”Frozen Tundra” に移動

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新施設に移動したイヌカ Photo(C)Olivia Siong/MediaCorp

シンガポール動物園で飼育されている22歳の雄のホッキョクグマのイヌカは、生まれてからずっと一緒の暮らしてきた母親のシェバが昨年11月に亡くなった件については以前、「シンガポール動物園のシェバ、35歳で一生を終える...」 という投稿でご紹介していますが、その母の死からはイヌカは一頭で暮らしているわけですが、シンガポール動物園に新設され昨日の火曜日にオープンした”Frozen Tundra” と名付けられた新飼育展示場に移動したニュースが流れています。
(*追記 - 以下にシンガポール動物園が制作したこの施設の紹介映像をご紹介しておきます。 また、こちらではシンガポールのTV局のニュース映像を見ることができますが、このTVニュースの紹介映像のほうが素晴らしいです。 必見でしょう。)



この新展示場はプールを除いた陸の部分で600平方メートルあるそうで、その他に3メートルの水深の大きなプールがあったりなど、シンガポール動物園としてはかなりの自信を持っている施設のようです。 (*追記 – 別の報道によれは今回の新展示場の総面積は2700平方メートルとなっていますが、これはプール、そしておそらくバックヤード、観覧スペースを含めてのものでしょう。 総工費は520万ポンド、つまり約8億円だそうです。) 全体としては従来の施設の4倍の広さがあるそうで、来園者が観覧する場所は摂氏17~18℃に保たれ、この温度というのはイヌカが暮らす岩室内と同じ温度だそうです。 特にご自慢なのはプールの水を最大限に透明に保つ濾過システムだそうで、これによって来園者が水中で泳ぐイヌカの姿をはっきりと見ることができるようになるようです。 一般には6月から、つまり今週末からの公開のようですね。 昨日火曜日にこに移動したイヌカは大変に新しい場所を楽しんでいる様子だそうです。
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イヌカ Photo(C)Getty Images

シンガポールという国は私も湾岸戦争の前後に居住していたことがありますが、こういった新施設の企画と建設などは得意中の得意です。 多分間違いなく彼らならば素晴らしい施設を造っているでしょう。 最近はシンガポール関連の仕事がないため、すっかりと御無沙汰していましたが、できれば年内にこの新展示場を訪ねてイヌカに再会してこようかと思っています。

(過去関連投稿)
シンガポール動物園のシェバ、35歳で一生を終える...

(資料)
Channel News Asia (May.29 2013 - Polar bear Inuka moves into new home)
Wildlife Press (May.15 2013 - CHILL OUT AT FROZEN TUNDRA DURING THE JUNE HOLIDAYS WITH INUKA AND FRIENDS)
(*追記資料)
METRO News (May.29 2013 - Polar bear Inuka moves into plush new home at Singapore Zoo)
The Straits Times (May.29 2013 - Polar bear Inuka moves into new home at the Singapore Zoo)
Daily Mail (May.29 2013 - I hope this is an iceberg lettuce! Inuka the polar bear tucks into a meal at his 'house-warming' party at Singapore Zoo)
by polarbearmaniac | 2013-05-29 21:00 | Polarbearology

地球温暖化がホッキョクグマにもたらす未知の病原体の脅威

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アイラ (2012年7月7日撮影 於 おびひろ動物園)

地球温暖化によってもたらされる北極圏の氷の面積の縮小がホッキョクグマの生態に与える影響は今更ここで述べる必要もないわけで、それを直截的に要約すれば、海氷の面積の減少は主食であるアザラシを捕える機会の減少を意味し、それはすなわち栄養不良となったホッキョクグマの母親の出産、及びその後の子育てに非常な悪影響をもたらし、このことによって生息数が減少するという一連の負の連鎖だと言えましょう。 さて、しかしこの海氷の減少から繁殖への悪影響という連鎖以外にも、地球温暖化がホッキョクグマの生息数の減少をもたらすもう一つの重要な可能性について触れておきたいと思います。
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地球表面の平均気温の変化
(C)School of environmental science, climatic research unit, university of East Anglia

今回ここで御紹介するのはイギリスの科学雑誌 “New Scientist” の電子版に紹介されている “Climate change brings disease threat for polar bears” (5月15日付)という記事の中での生物学者たちの警鐘です。 まず、アメリカ・フロリダ州、ニューカレッジ (New College of Florida) のダイアナ・ウェーバー助教授を中心としたチームがカナダに生息する98頭のホッキョクグマのDNA配列を調査した研究です。 この研究チームは、こうしてホッキョクグマから採取したサンプルを調べて、主要組織適合抗原のMHCクラス遺伝子(Major Histocompatibility Complex - MHC) のなかで、とりわけ脊椎動物の大部分に見られる免疫システムには重要な役割を果たす特殊な遺伝子を探したのですが、それが見つからなかったそうです。 そもそもホッキョクグマのMHCクラス遺伝子の数は少なく、これはウィルスの存在が極めて稀である北極圏といった地域に暮らすことに適応するための変化ではないかと指摘する研究者もいるそうで、緯度が高く温度の低い地域に生息する生物はこういったMHCクラス遺伝子の多様性が見られない傾向があるという研究結果を根拠にした考え方だそうです。

ウェーバー助教授は、最近の北極圏に生息する動物にはかつてでは見られなかったいくつかの病気にかかる個体が存在しているとも述べていますが、地球温暖化の進行によって本来は緯度の低い場所に存在する病原体が緯度の高い場所にも存在が可能となり、それによってホッキョクグマのようなMHCクラス遺伝子の多様性の少ない種が、こういった状態においては懸念されるということも語っています。 こういった病原体によって引き起こされる病気でホッキョクグマの生息数が減少する可能性もあるという危険性です。

以前、「ドイツ・ヴッパータール動物園の故イェルカの死因はヘルペスウィルス(Zebra herpesvirus) の感染と判明」という投稿をしていますのでそれもご参照いただきたいのですが、飼育下の動物たちにもこのウィルスの脅威にさらされているわけで、このヴッパータール動物園の故イェルカの死因がシマウマヘルペスウィルスの感染によるものであったことも考えれば、仮に地球温暖化が想像を超えるピッチで進行すれば、本来は北極圏には生息しない動物の生息地が北に拡大し、それによってホッキョクグマとの遭遇の機会が生じれば、ホッキョクグマがそういった今までには出会わなかったウィルスに感染するという可能性は十分にあるでしょう。 実はこのヴッパータール動物園の故イェルカの死因が判明した翌日におびひろ動物園に行きましたが、あそこではホッキョクグマ舎の隣がキリン・シマウマ舎ですね。 野生下ではホッキョクグマとシマウマは決して遭遇することのない組み合わせです。 イェルカの死因がシマウマヘルペスウィルスであえうことを思い出して私はちょっとドキリとしました。

(資料)
New Scientist (May.15 2013 - Climate change brings disease threat for polar bears)
Polar Bear Specialist Group of the IUCN Species Survival Commission (Jan.27 2009 - Climate impacts on polar bears)
New Scientist (Jul.25 2012 - Hardy polar bears have survived past global warming)

(過去関連投稿)
ドイツ・ヴッパータール動物園の故イェルカの死因はヘルペスウィルス(Zebra herpesvirus) の感染と判明
by polarbearmaniac | 2013-05-28 20:30 | Polarbearology

アメリカ ・ オハイオ州、トレド動物園の双子の赤ちゃん、スーカーとサカーリの近況 ~ 映像と解釈

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スーカーとサカーリ Photo(C)Toledo Zoo

アメリカ・オハイオ州のトレド動物園で昨年の11月21日にクリスタルお母さんから誕生した双子の雌と雄の双子の赤ちゃんであるスーカーとサカーリは今月5月3日になってやっと一般公開されたわけですが、その後の様子をいくつかの映像で見ていくことにしましょう。

最初はトレド動物園の公式映像です。 これは実はお披露目の日の5月3日の映像だそうです。



以下はそれから数日経った時点のもののようです。 追いかけたり走り回ったりと、行動量の多いほうが雄のサカーリだとおもいます。



次に二つは先々週末の映像のようです。




こういった映像を見ると、このスーカーとサカーリは水遊びが大好きなのだ...と判断してよいかと言えばそう簡単ではないでしょう。 映像というものは一日という広いタイムスパンのなかの特定の短い時間だけを抽出しているわけで、一日の展示時間のなかでいったいこういう時間がどれだけあったかが問題なのだ...などというのとも少し違います。 こういったことをどう考えるかですが、この赤ちゃんたちの水遊びが、この双子にとってどれだけ中心的でどれだけ重要な意味を持っているのかという点こそが問題でしょう。 一日のうちで水遊びの時間が長かったのか短かったのかが、その赤ちゃんが水遊びが大好きなのかそうでもないのかを判断する規準にすることは簡単ではないということです。 そういった重要な意味を持つシーンを写真なり動画で撮れれば最高なのですが、現実には非常に難しいわけです。 

私がこのスーカーとサカーリの映像を見る限り、水に入ったのは成り行きによってであるように見えますね。 つまり前後から判断して、この双子の赤ちゃんの一日の行動のなかで水に入って遊んでいるシーンは、あくまで一日の行動の繋ぎ部分であることを示唆している継時的な映像のように見えます。 一方、ブランシュやノワール(仮称)の水遊びは、それ自体がもっと独立したものであるように思います。 そうしますと、やはりブランシュやノワール(仮称)のほうがスーカーとサカーリよりも水遊びそれ自体に意義と楽しみを見出している...つまりそれだけ水遊びが好きであることを意味しているように思いますが...。

ある一頭の赤ちゃんが甘えっこなのか(つまり母親に依存心が強い)のか、独立心が旺盛なのかについて、そのどちらの解釈も特定の傾向を持つ特定の瞬間の写真を単に羅列すれば、いかようにも言い得るということです。 たとえば、ブランシュ(仮称)は一般に言われていることとは逆に、甘えっこではなくて独立心の強い赤ちゃんだと主張したければ、そういった写真を羅列することなどは、いとも簡単です。 仮にそうなれば、要するに写真というものは解釈の道具にすぎないということです。 ですから、このトレド動物園のスーカーとサカーリが水に入っている写真ばかりを取り上げた人が、本当にこれが重要なシーンだと自覚しているかを見極める、見る側の洞察力も重要でしょう。

それから、人間が外からホッキョクグマに刺激を与えて、その反応を写真に撮るということは私はあまり好きでありません。 たまたまそういう場面に遭遇した場合には写真を撮ることもありますが、そうして撮られた写真や映像によって、そのホッキョクグマの何か本質的なものにつながる重要なことがわかるというものではないように思っています。 

(過去関連投稿)
アメリカ・オハイオ州のトレド動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生!
アメリカ・オハイオ州、トレド動物園で誕生の双子の赤ちゃんの産室内映像が公開
アメリカ・オハイオ州 トレド動物園で誕生の双子の赤ちゃんがクリスタルお母さんと戸外へ!
アメリカ・オハイオ州 トレド動物園で誕生の双子の赤ちゃんの名前を決める投票が始まる
アメリカ・オハイオ州 トレド動物園で誕生の双子の赤ちゃんの名前が「スーカー」 と 「サカーリ」 に決まる
アメリカ・オハイオ州 トレド動物園の双子の赤ちゃん、スーカーとサカーリが遂に一般公開される
by polarbearmaniac | 2013-05-27 16:00 | Polarbearology

ララファミリーの今を考える ~ 揺るぎない存在感と強固な実体、そして今後の新メンバー

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俗に「ララファミリー」などとも呼ばれているが、その中心に確固として存在しているのがこのララお母さんである。 そして彼女の子供たちであるツヨシ、ピリカ、イコロ、キロル、アイラ、ノワール(仮称)、ブランシュ(仮称)、そしてもちろんララのパートナーであるデナリ、そしてララの双子の姉妹であるルルがこのファミリーを形成している。
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このノワールはそういった中にあってやや異色のキャラクターを持っているようにも感じる。
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ノワールは、イコロ・キロルのツインズに当てはめればイコロに該当するように思う。 つまり、イコロがキロルに対して「前半戦」でリードしたように、このノワールは現時点でブランシュに先行しているとみて間違いではないだろう。
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おもちゃに対してこのノワールはブランシュに比べて反応する能力が幾分秀でているように思う。
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このノワールはアイラの持つ良い意味での「鈍感さ」はあまり感じない。ピリカの持つ鋭敏さもあまり感じない。 そのくせ、どうも何かが気になるのである。 このノワールは何か高次元のところでの、鈍感さとは異なるおおらかさを感じるのである。 非常に神経質でプライドの高かった祖母のクーニャ、基本的にそれを受け継いでいるララお母さん、気が強くて鈍重な感じがあるくせにどこか冷めているルル伯母さん、これらのキャラクターとはかなり異なるものを感じる。 その源泉をどこかに見出そうとすれば、それは消去法で父方の祖母であるシヌック以外にないのである。 このノワールこそ、1980年代後半から1990年代にかけてアメリカにおける偉大なる母であったシヌックの影を濃厚に感じさせる存在ではないのか? シヌックほどの偉大なホッキョクグマが、その存在の影を後世に残さないなどということは考えにくい。 ついにそれがこのノワールという雌の赤ちゃんのキャラクターとして姿を見せたような気がする。 シヌックの育児記録写真集を私は持っているが、それらの写真から感じさせシヌックの姿は、どこかこのノワールのキャラクターにたぶるものがあるのだ。 シヌックは、知性を母性に先行させることがなかった母親のように思うのだ。
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そういったノワールを、ララお母さんは決して突き放して育ててはいない。 ララおかあさんというのは元来は神経質な性格であるが、子育てではどこか鷹揚さがあるのである。
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このブランシュをイコロ・キロルのツインズに充てはめるとキロルにあたるように思う。
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このブランシュは、あのキロルが「前半戦」こそイコロに先行されたが、いつのまにかイコロに追いつき、そしてある部分ではイコロを追い抜いたのである。
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このブランシュはとにかく「甘えっこ」なのだが、どこかに気の強さを隠し持っているように思うのだ。
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このブランシュの成長はかなり注意深く観察する価値がある。 「甘えっこ」であるくせに、あまり依存性を感じないのである。 ひょっとしてこのブランシュは「超大物」かもしれない。
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ララお母さんが甘えっこのブランシュに対してこれからどう接していくかに注意する必要がある。 大物お母さんのお手並み拝見なのである。
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ララファミリーの今日の繁栄を作った大功績者こそこのデナリである。 彼は性格的にはモスクワ動物園のウランゲリに一番似ているように思う。 優秀な繁殖能力を持つ雄は、ほどんどが腰が低いのである。 デナリも同様である。 彼を今後の日本のホッキョクグマ界でさらにどう活躍してもらうかについてもっと考えねばならない。 キャンディの次に札幌にやってくるホッキョクグマが誰かということが問題だろう。 年齢的に言えば、実はもう存在しないに等しいのである。 同じファミリー内のルルぐらいしか見当たらないのだ。 実に頭の痛い話である。
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仮にこのキャンディが年末に出産に成功すれば彼女はララファミリーの準構成員として見てよいだろう。 ただしその出産だが、過度の期待は禁物である。
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ララファミリーのことは稿を改めてまた書きたい。 ホッキョクグマも人間と全く同じで、血の影響から全く自由な独自のユニークな存在というものはないのである。 必ず以前の血統から引き継いだ要素というものが後の世代に現れてくるはずのものなのだ。 ともかく、このララお母さんの背後には彼女の母であったクーニャの存在があるのである。 札幌にあれだけ多くいらっしゃるララファミリーを暖かく見守る多くのファンの方々のうち、いったい何人の方が生前のクーニャに、仮に会いに行かないにしても、もっと話題にしなかったのだろうか? 実は今迄このララファミリーの背後にはクーニャの存在があったのである。クーニャこそ、このララファミリーの存在を陰で見守っていたのである。非常に抽象的な言い方になるが、クーニャというホッキョクグマの本質は、「物事に対して鋭敏な反応」 をするところにあった。 その最たるものがララとピリカ、そしてある部分ではキロルなのだ。 ところがここにきてララファミリーにはそういったクーニャの存在の影をあまり感じさせないメンバーが加わった。 それがノワールとブランシュなのである。 
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ララファミリーの背後に、クーニャに加えてもう一頭の守護神が存在しているらしいことがわかったのである。 いや、実は今までも存在していたのである。それはデナリという存在の後ろに隠れていただけである。 それこそがシヌックなのである。 そしてシヌックお母さんは、実は多分ララお母さんが今後も産むであろう子供たちに、その陰を大きく落としていくことになるだろう。 このノワールとブランシュの誕生を境にして、今後のララファミリーには今までとは違ったタイプのララの子供たちが生まれてきそうである。 そういった意味でララファミリーは今後も進化を遂げていきそうである。 そしてさらに付け加えれば、旭川のルルの出産を期待したいところだ。
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汗ばむような陽気の札幌である。

Nikon D7100
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR
(May.26 2013 @札幌・円山動物園)

(*注 - ノワールとブランシュというのは勿論、この赤ちゃんたちの正式な名前が決まるまで私が便宜上、勝手につけた仮称である。)
by polarbearmaniac | 2013-05-26 23:45 | しろくま紀行

眩しい春の陽光の下での新ツインズとララお母さんの日曜日

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本当に素晴らしい天気の日曜日である。 もう逃げることのないであろう北国に訪れた春。
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ララお母さんとノワール(L)とブランシュ(R) の双子の水遊びと教育の始まりである。
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ノワールが先頭を切って飛び込む。
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ノワールとララお母さんの水遊び。
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ブランシュも気になってしょうがない。
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やがて飛び込んだブランシュとララお母さんの水遊び。

春の陽光の下でリラックスしたララ親子の水遊び

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やがて始まったノワール(L)とブランシュ(R)の壮烈で華麗な水遊びなのである。

ノワールとブランシュのハードな水遊び
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ブランシュ(L)に突撃するノワール(R)。
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ノワール(L)に反撃するブランシュ(R)。
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娘たちを尻目にララお母さんは新しいもので娘たちの関心を引こうとする。
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ちょっと驚いたノワールなのである。
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このブランシュに対してはララお母さんもやや手加減しているように見えるときもある。
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再会されたノワール(L)とブランシュ(R)の対決。
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このノワールのほうが、おもちゃ遊びは好きなようだ。
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先に水から上がるのはブランシュであるケースが多いように思う。 しかしまだ気になるブランシュ。
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長い時間遊ぶとやはり疲れてしまうノワール(L)とブランシュ(R)である。 まだまだ幼児なのである。 スタミナの配分を学習しなければならない。
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双子の娘を適当に遊ばせるのはララお母さんの計算なのだ。

遊び疲れて眠ってしまったノワールとブランシュ

Nikon D7100
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR
(May.26 2013 @札幌・円山動物園)

(*注 - ノワールとブランシュというのは勿論、この赤ちゃんたちの正式な名前が決まるまで私が便宜上、勝手につけた仮称である。)
by polarbearmaniac | 2013-05-26 23:30 | しろくま紀行

ノワールとブランシュ(仮称)、優雅さに芯の強さ加わる

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ブランシュ(左)とノワール(右)は、少なくともイコロ、キロル、アイラの三頭よりも成長のスピードいように早く感じられる。 まあそれは気のせいだろう。
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ララお母さんは娘たちに対して母親の権威を振りかざすことなく、どこか友達か仲間でもあるかのような姿勢を貫いている。 ホッキョクグマの母親と娘との関係でもそれはこういったものなのだろう。 イコロとキロルの時は決してこうではなかったのである。 ララお母さんがイコロやキロルに見せたのは「母親としての権威」だった。 それはこの息子たちが帯広に旅立つ前日まで揺るがなかったのである。
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以上はノワール。
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以上はブランシュである。
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優雅さの中に強靭なしなやかささえ感じられるようになってきたブランシュ(左)とノワール(右)なのだ。
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Nikon D7100
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR
(May.25 2013 @札幌・円山動物園)

(*注 - ノワールとブランシュというのは勿論、この赤ちゃんたちの正式な名前が決まるまで私が便宜上、勝手につけた仮称である。)
by polarbearmaniac | 2013-05-25 23:45 | しろくま紀行

ララお母さんと、相互に刺激し合い進化を遂げる新ツインズの麗らかな土曜日 ~ 目白の女子大の娘たち

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ララお母さん、ノワール(左)とブランシュ(右)、今日もよろしくお願いいたします!
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ララお母さんは「情愛型」のお母さんだが、一方で非常に「心理家」であり「戦略家」でもある。 これらの要素が矛盾なく存在しているのだ。
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娘たちが成長するにつれて、ララお母さんは子育ての負担が軽減され、自分のやりたいことも幾分ではあれできるようになってきた。こうやって水中でリラックスできるのも、そういったことからである。
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子育ての合間にこういった気分の切り替えができるというのがララお母さんが大物お母さんである所以である。
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ポリタンクだって好きなのである。
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実に悠々としている。
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こういったララお母さんの姿を見ていると、ノワールとブランシュもいつの間にか水に入ってしまうのである。
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水に入るのに気乗りしていなかったブランシュも、こうしてララお母さんの術中にはまってしまう。
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このノワールのほうは、もともと水は好きなのである。
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ノワール(左)とブランシュ(右)は、実は人が言うほど性格に大きな差はないように思う。 しかしこうして互いに刺激し合うことによって、表に出てくる行動の差はやはりあるのだ。
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ブランシュ(左)のほうがやや芯が強くなってきたのも、ノワール(右)に刺激されてきたからだと思われる。
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爽快に走り回るノワール(右)とブランシュ(左)。 こういった場合、大抵先を走るのはノワールであるほうが多いような気がする。
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時としてはタイヤを巡る攻防戦もするノワール(左)とブランシュ(右)。
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だが、ノワール(上)とブランシュ(下)は取っ組み合っていても決して互いに優劣を競おうとしていないようにさえ思える。
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うまく刺激し合って健やかな成長をとげるノワール(左)とブランシュ(右)。
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ここまでブランシュ(左)とノワール(右)をもってくるまでには母親の大きなる功績がある。 ただ自然に成長してきたというわけではないのだ。
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1994年に誕生したルル、ララの姉妹以来、久方振りの雌のツインズである。 雌のツインズというのは雄のツインズに比べて、その成育の過程におけるドラマは少ないという傾向がある。 それは双子の雄(オス)の2頭の性格の違いのほうが、双子の雌(メス)の2頭の性格の違いよりも大きいからだと言う人もいる。 もともと潜在的に性格の違いのあるツインズを、その差がより大きくなるように育てるべきか、その差が拡大しないように育てるべきかは難しいところである。 ララお母さんはひょっとして後者のタイプなのかもしれない。このブランシュ(左)とノワール(右)の性格差が少しずつはっきりとしてきたと言う人もいる。 しかし私に言わせれば、意外なほどそうではないように思うのだ。 本来だったらもっと性格差が広がってきていいものを、むしろそれが拡大しないようにしているのがララお母さんのように思える。 
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以前も書いたが、ララお母さんは男の子を育てるよりも女の子を育てるほうがうまいお母さんのように思う。 女の子を育てることが巧いホッキョクグマの母親というのは、娘の個性を尊重してそれを伸ばす子育てを行うことは勿論なのではあるが、究極的に娘が将来発揮すべき母性を(つまり娘たちが母親になる時のこと、という意味である)封印させないように教育する...すなわち、娘たちの個性を野放図に拡大させて将来発揮すべき母性を覆い隠してしまう危険性を回避できる母親ということではなかろうか? 仮にそうだとすれば、ララお母さんの教育によって、女の子の双子の個性の違いが拡大しないように育てることは正しいことだと思われる。 人間の母親さえ明確に意識しないそういったやり方を、ホッキョクグマが自覚して行っているとは到底思えない。 行っているとうればそれは本能以外の何物でもないが、そうであったとしてもララお母さんは実に大した母親なのである。 
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ララお母さんは娘たちを西荻窪の女子大ではなく目白の女子大に通わせようとする母親なのである。

Nikon D7100
AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR
(May.25 2013 @札幌・円山動物園)

(*注 - ノワールとブランシュというのは勿論、この赤ちゃんたちの正式な名前が決まるまで私が便宜上、勝手につけた仮称である。)
by polarbearmaniac | 2013-05-25 23:30 | しろくま紀行

オーストラリア・ゴールドコーストのシーワールドで誕生の赤ちゃん、元気に生後二週間が経過

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産室内で生後2週間の赤ちゃんとリアお母さん
Photo(C)Sea World

オーストラリア・クイーンズランド州、ゴールドコーストのシーワールド (Sea World) で5月9日にホッキョクグマの赤ちゃんが誕生した件はすでに投稿していますが、この赤ちゃんは二週間が経過しましたが産室内で順調に成育しているそうです。産室内の様子が映像としてこのたび初めてシーワールドから公開されました。以下です。 その映像のずば抜けた明瞭度には驚かざるを得ません。



(*追記 - ニュース映像もご紹介しておきます。)



産室内には5台のモニターカメラが設置されており、リアお母さんと赤ちゃんの様子が克明に把握できるようになっているそうです。リアお母さんは初産にもかかわらず授乳をはじめてとして、しっかりと赤ちゃんの世話をしているそうです。さすがはウスラーダお母さんの娘だけのことはあります。

(資料)
Courier Mail (May.24 2013 - Sea World installs 'cub cam' to share footage of polar bear cub with mother Liya at Gold Coast theme park)
Gold Coast Bulletin News (May.24 2013 - Polar bear cub rapidly growing)
Brisbane Times(May.24 2013 - Cub cam captures baby polar bear)
NEWS.com.au (May.24 2013 - Sea World installs 'cub cam' to share footage of polar bear cub with mother Liya at Gold Coast theme park)

(過去関連投稿)
オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係
オーストラリア・クイーンズランド州、シーワールドでホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
by polarbearmaniac | 2013-05-24 15:30 | Polarbearology

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