街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワ動物園で保護された野生孤児ニカに欧州の多くの動物園が重大な関心を抱く

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モスクワ動物園のスヴェトラーナ・アクーロヴァ新園長とニカ
Photo(C)пресс-служба Московского зоопарка

ロシア極北・チュクチ自治管区のリィルカイピ村で野生孤児として保護された後にロシア軍の協力でモスクワまで移送され、現在はモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で保護・飼育されたまだ一歳になっていない雌(メス)の幼年個体のホッキョクグマであるニカ (Ника)については、そういった一連の経緯は全て御紹介してきました。最新のイズベスチヤ紙の報道によりますと獣医さんのチェックではニカは歯が二本折れてはいる以外の健康状態は非常に良好だとのことです。このニカの映像で前回ご紹介していなかったものを下に御紹介しておくこととします。



さて、モスクワ動物園の新園長となっているスヴェトラーナ・アクーロヴァさんの話ですが、このニカがモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設に移動して来て以来、欧州の複数の動物園が極めて大きな関心をこのニカに抱いているそうです。間違いなく欧州の動物園はモスクワ動物園に接触を図ってきているということでしょう。なんといってもこのニカは野生出身ですから、飼育下の「遺伝的多様性(Генетическое разнообразие)」の維持に大きく有利に働く状態を導くことになり、ホッキョクグマの繫殖計画に組み入れる必要性を認識していることが理由であることは誰の眼にも明らかだからです。アクーロヴァ園長はイズベスチヤ紙に対して語っていますが、欧州の動物園はこのニカが繁殖に成功した「果実」について欧州の動物園は入手の可能性があり、ニカそのものは決してロシア国外に出すことはないとも語っています。そしてこれはロシア連邦天然資源・環境省(Министерство природных ресурсов и экологии Российской Федерации)の自然管理局 (RPN)の決定事項であることにも触れています。こういったことは今までも散々このブログへの投稿で述べてきた通りです。ロシアの野生孤児出身個体は2000年頃を境にしてロシアはもう国外には出さないという国家的な方針を確立しているわけです。モスクワ動物園に問い合わせを入れてきた欧州の複数の動物園のうちの多くはこうしたロシアにおける野生孤児個体に関する取扱いを知っていると思います。しかし何故もうこうしてモスクワ動物園に問い合わせを入れてきているかと言えば、それは少なくとも5年後以降から誕生が期待されるこのニカの繫殖の成果を入手したいという希望を今の段階から示しているとみて間違いないでしょう。一方で、このニカのニュースが報じられた直後にモスクワ動物園に問い合わせを入れた日本の動物園はおそらく皆無でしょう。
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ニカ Photo(C)пресс-служба Московского зоопарка

日本の動物園でこのニカの繁殖の「果実」を入手しようと考えれば、それにはこの「果実」のパートナーとなる個体を有している動物園でなければならなくなったいるわけです。これはここ3年ほど前からのEARAZA(つまり事実上はモスクワ動物園)の方針となってしまったわけです。現時点でその「ニカの繫殖成功果実入手希望グラブ」への入会資格を有している日本の動物園は札幌・円山動物園と浜松市動物園の二園だけです。上野の場合はイコロとデアとの間で繁殖に成功し、本来は札幌市が最初に権利を得るはずのその個体(第一子)を上野が札幌市から権利を敢えて入手した時点で入会資格が得られます。横浜の場合はジャンブイとツヨシとの間での繁殖成功個体(第一子)を釧路市から権利を譲ってもらえれば入会資格が得られます。

飼育下のホッキョクグマをめぐる国際環境はどんどん変わっています。それについていかなければ、日本のホッキョクグマ界の未来は決して明るくはならないでしょう。

(資料)
Известия (Sep.30 2016 - Россия стала главным поставщиком белых медведей в зоопарки мира)

(過去関連投稿)
ロシア極北・チュクチ自治管区 リィルカイピ村でホッキョクグマの生後約8ヶ月の孤児が発見・保護される
ロシア極北 リィルカイピ村で保護された推定生後8ヶ月の孤児はモスクワ動物園で保護・飼育が決定
ロシア極北で保護されたホッキョクグマの野生孤児がモスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設に到着
ロシア極北で保護のホッキョクグマの野生孤児のモスクワへの移送の様子が公開 ~ ロシア軍が輸送に協力
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設に移送された野生孤児は雌(メス)で「ニカ」と命名
by polarbearmaniac | 2016-09-30 12:00 | Polarbearology

「ホッキョクグマ計画推進会議」が大阪で開催 ~ 将来の方針と海外個体導入の可否は議題と無縁か

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モモ(2015年3月10日撮影 於 大阪・天王寺動物園)
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リラ(2015年4月5日撮影 於 札幌・円山動物園)

さて、今年も「ホッキョクグマ計画推進会議」が開催されたようです。場所は大阪の天王寺動物園で9月27、28日の両日にわたって行われたとのことです。テーマは「ホッキョクグマの飼育や繁殖についての意見交換」であったということ以上のものは明らかになっていません。ちなみに昨年のこの会議についていったいどのようなことが議題に上っていたのだろうかを推測してみたのが「「ホッキョクグマ計画推進会議(於 恩賜上野動物園)」について ~ 「ツヨシ問題」の行方や如何」という投稿でした。つまり昨年のこの会議については想定されていだであろうペアの交代という現実的な問題があったわけですが、今年の会議については昨年のようなペアの交代の問題が喫緊の議題ではなかっただろうと考えられます。つまり繁殖のためにホッキョクグマを移動させる計画は今回はあまり語られなかっただろうと思われます。仮に語られたとすれば非常にdrastic な案が机上にのぼったことを想定せざるを得ず(つまり必ず旭川が関わることになるでしょう)、そういう案が話し合われるということはこの会議の目的にはなりにくかっただろうということです。唯一の例外は札幌・円山動物園に完成する予定になっている新飼育展示場と、そのオープンに関連した個体の移動(つまり基本的には札幌への帰還)の問題だけだったろうと考えられます。これは預託契約終了による個体の粛々とした「帰還」であり、繁殖のための移動とは性格を異にするわけです。ですから今年の年末から来年の春にかけての日本における繁殖目的の個体移動は非常に少ないか全く無いかのどちらかだろうという予想は十分に成り立つわけです。


さて、私自身はこういった会議についてそこで何が語られたかを推測してみることにはもう関心が無くなってしまったというのが本当のところです。それは日本のホッキョクグマ界に関心を失ってしまったわけではないものの、こういった「ホッキョクグマの飼育」「ホッキョクグマの繁殖」をテーマとすることよりも、「将来の日本の動物園におけるホッキョクグマの飼育・展示をどうするか」という問題意識を抜きにして「ホッキョクグマの繁殖」を考えることは無理となってきたという段階に至っているのが正常な問題意識だと思っているからです。
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モモ(2015年3月10日撮影 於 大阪・天王寺動物園)

具体的に言いますとこういったことです。たとえば横浜ズーラシアは「ジャンブイ後」のホッキョクグマの飼育展示をどうするのかといったことです。国内の他園から連れてきますか? 連れてくるといっても他園で繁殖に成功して誕生した個体を連れてきて展示するということでしょうか(たとえば熊本のマルルや徳島のポロロのように)? その場合に連れてきた個体の繁殖をズーラシアで試みるならばパートナーを確保せねばなりません。そのパートナーをどう入手しますか? パートナーの入手が不可能ならば、繁殖には挑戦せず、単に個体の飼育・展示を行うことだけに徹しますか? 熊本や徳島(そして帯広)は、現在のところは他園(つまり札幌)で繁殖成功によって誕生した個体を飼育・展示していますが、そういった預託個体の展示でホッキョクグマ不在問題を切り抜けられると考える動物園がこれから他に現れてきてもおかしくはありません。その一方で、「現在飼育している個体が高齢になって亡くなれば、もうホッキョクグマの飼育・展示は行わない(撤退する)」という方針を採るのならば、残念ですがそれはそれで一つの尊重すべき選択です。パートナーの確保ができないために一頭だけでの個体飼育・展示を続けるよりもはるかにましな選択でしょう。
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モモ(2015年3月10日撮影 於 大阪・天王寺動物園)

こうしたことを考えていくと具体案として透けて見えてくるものはおのずと明らかです。それは海外個体の導入です。この場合ロシアから以外は想定しにくい(つまり不可能)ということです(札幌・円山動物園の欧州個体との交換構想を除く)。その頼みのロシアですら現実的には、そこからの個体導入はハードルが極めて高くなってしまっているのです。こういった件については「ロシア動物園水族館協会(RAZA)が設立 ~ ロシアでモスクワ動物園の主導的地位が一層強まる」、「ロシア・ペンザ動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場が9月にオープン ~ それが意味する重要なこと」、「ロシア・クラスノヤルスク動物園の新飼育展示場計画発表 ~ 欧露の「囲い込み」体制に日本はどう対応するか」という三つの投稿を御参照下さい。
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リラ(2015年4月4日撮影 於 札幌・円山動物園)

日本の動物園におけるホッキョクグマの飼育・展示を行う動物園の数の減少を防ごうとすれば飼育個体の頭数維持を第一の目的としてホッキョクグマの繁殖計画を推進することになります。あらためて復習しておきたいと思いますが、「2011声明」 が発表された時の記者会見の質疑応答で、当時の種別調整者であった旭山動物園のFさんは「デナリの血筋ばかり広がることについては?」という質問に対しての回答は「デナリとララ以外の血統をより広げていくことも必要であると認識しておりますが、今の状況はそうは言っていられない状況でもあると認識しています。繁殖可能なうちに実績のあるデナリに期待したいと思います。」 となっています。この国内の飼育頭数維持という方針が現在も維持されているわけです。しかし仮にこういった方針を極端な形で極限化すれば「デナリ/デア」「デナリ/ミルク」「デナリ/シルカ」「デナリ/ヴァニラ」「デナリ/モモ」といった、デナリの最大活用という驚愕の奇策すら登場する可能性があります。そしてこの奇策での繁殖成功の確率は高いかもしれません。しかしいくらなんでもこれらはないでしょう。次世代の血統の遺伝的多様性維持には致命的なダメージを与えることになるわけです(ただし私は「デナリ/シルカ」「デナリ/ヴァニラ」ならば有り得るとも考えます。これは「ゴーゴ/シルカ」「ロッシー/ヴァニラ」よりも血統的には優る組み合わせだからです)。 さて、では飼育個体の頭数維持を第一の目的としない場合、つまりこれは次世代の血統の遺伝的多様性の毀損を最小化しようという意図が比較的強く働く場合ですが、この場合はいくつかの動物園にホッキョクグマの飼育・展示の継続を断念してもらうということを意味します。この場合には他血統の個体を海外(すなわちロシア)から導入する以外にはないわけで、要求条件的に考えれば現時点でこれが可能なのは札幌と浜松だけです。しかし資金的に考えれば前者の札幌だけでしょう。

もう日本のホッキョクグマ界において「ホッキョクグマの繁殖」とは、上の前者の道を選択し続けるか、あるいは後者の道に方向転換するかを考えることを抜きにするわけにはいかないのです。つまり海外からの個体導入はどうしても必要なのです。
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リラ(2015年4月5日撮影 於 札幌・円山動物園)

今回の「ホッキョクグマ計画推進会議」に参加していらっしゃった方々は飼育の現場の最前線で汗をかいていらっしゃる方々です。こういった担当飼育員さんの不断の努力によって我々は日本の動物園でホッキョクグマたちの素晴らしい姿を見ることができているというわけです。心から感謝したいと思っています。しかしその一方で、未来においてもホッキョクグマの飼育・展示を行う方針を維持するか、それとも将来は断念するか(つまり撤退するか)という方針を決める「権限 (authority)」があるのはこういった飼育現場の最前線の方々ではなく、園(あるいは自治体)の上級管理職の方々でしょう。ましてや海外(つまりロシア)の個体を導入するような方針を決定する権限、そしてそのための資金調達(予算化)、そのための交渉、これらを行うのも現場の飼育員さんたちではありません。私が先に「こういった会議についてそこで何が語られたかを推測してみることにはもう関心が無くなってしまった」と述べたのは、私自身の関心が「日本における将来のホッキョクグマの飼育・展示についての方針」の方向生、そしてそれに密接に関係してくる「海外個体導入の方針決定への可否」へと意識が移行してしまっているからです。こう言い換えてもよいでしょう、それは戦いにおいて「ホッキョクグマ計画推進会議」は「戦闘 (Battle)」をいかに戦うかが論議された場所だっただろうということです。私は「戦争 (War)」にいかに勝つかに関心が移行してしまったというわけです。円山動物園は「戦闘」に勝とうとすればノヴォシビルスクからロスチクを導入してリラのパートナーにすればよいのです。ロスチク/リラは世界的に見ても素晴らしいペアになると思います。ところがこれでは「戦闘」には勝てても「戦争」に勝つことは難しくなるということなのです。

(過去関連投稿)
・「ホッキョクグマ計画推進会議(於 恩賜上野動物園)」について ~ 「ツヨシ問題」の行方や如何
・ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダとメンシコフの不屈の挑戦
・大阪・天王寺動物園のモモの将来のパートナーを考える ~ 「二大血統」の狭間で苦しい展開を予想
・ロシア動物園水族館協会(RAZA)が設立 ~ ロシアでモスクワ動物園の主導的地位が一層強まる
・ロシア・ペンザ動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場が9月にオープン ~ それが意味する重要なこと
・ロシア・クラスノヤルスク動物園の新飼育展示場計画発表 ~ 欧露の「囲い込み」体制に日本はどう対応するか
by polarbearmaniac | 2016-09-30 00:30 | Polarbearology

ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園のアンデルマ、セリク、ユムカ(ミルカ)の近況

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アンデルマとペルミ動物園に導入されたオーディオ・ガイドシステム
Photo(C)«МК в Перми»

ロシアのウラル山脈のほぼ山麓に位置する街であるペルミの動物園に暮らすホッキョクグマたちについては今まで何度も投稿してきました。私が今まで何度もこの街の小さな動物園を訪れているのも、それはこの動物園は日本に暮らす多くのロシア生まれのホッキョクグマたちと切っても切れない関係にあるからです。この動物園で余生を送っている野生出身で年齢が不詳である高齢のアンデルマこそ、そういったロシア出身の日本のホッキョクグマたちのルーツとなっているわけです。彼女と直系で血がつながっている日本のホッキョクグマは、イワン(旭川)、ルトヴィク(ホクト - 姫路)、ゴーゴ(白浜)、ラダゴル(カイ - 仙台)、ピョートル(ロッシー - 静岡)、シルカ(大阪)といったホッキョクグマたちです。

ロシアから日本にやってきたホッキョクグマたちは、それぞれが幼年だった頃に母親と共に屋外に姿を見せ、そして来園者からの歓声を浴びていたわけですが、このペルミ動物園でアンデルマから誕生したルトヴィク(ホクト - 姫路)やゴーゴ(白浜)が母親であったアンデルマと別れて旅立った時には、注意して見ていなければ気が付かないような本当に小さな報道記事だけで報じられただけでした。現地のファンにとっては、いつのまにか姿を消してしまったという気がしていたでしょう。あの大阪のシルカは全く例外だったわけでノヴォシビルスク動物園にはライブカメラの映像があり、そしてマスコミにも大きく報じられ、そしてシルカがゲルダから引き離された後はシルカ残留を求めた署名活動などが行われて大騒ぎになったというわけでした。そういったことの無かった時代のこのペルミ動物園で、ホクトやゴーゴがどう暮らしていたか、そして母親はどういうホッキョクグマであったかを知るためにはペルミ動物園に行かねばならないわけです。日本からもホッキョクグマファンの方でこの動物園に行かれた方を私は3人存じ上げています。全て女性の方です。目的はもちろんアンデルマだったということでしょう。しかしセリクとユムカ(ミルカ)という若いホッキョクグアたちも実に魅力的です。

このペルミという街はいわゆる観光地ではありません。観光地という観点でしたら地方都市ならば世界遺産であるカザン・クレムリンのあるカザンの方がずっとそうだと言えます。ロシアで観光地と言えばやはり筆頭の都市はサンクトペテルブルクでしょう。とはいってもそもそもロシアに出かけていくという日本人の数自体が少ないわけですからサンクトペテルブルクといってもそう多くの日本人の観光客を見かけるわけではありません。ましてやペルミともなれば、街中で日本人を見かけるということはまずありません。ペルミは治安の良い街です。一方でサンクトペテルブルクは必ずしもそうではありません。ただしサンクトぺテルブルク(レニングラード動物園)もモスクワも、動物園のある地域は非常に治安は良いです。

さて、ペルミ動物園では夏期恒例の活魚のプレゼントは9月で終了し、そろそろ別の特別給餌がホッキョクグマたちに行われる時期となっています。現地の方は9月25日の映像を公開していますのでホッキョクグマたちの姿を見てみましょう。まず下の映像ですが、陸の側にいるのはアンデルマです。セリクはもらった肉を咥えて走り回ったり水に入ったりしています。アンデルマもすでに老齢ですが体調は良いようでなによりです。



次は陸に上がっているのはアンデルマとセリク、ずっと水に入っているのはユムカ(ミルカ)です。セリクはスロープのある場所に登ったりしています。



ペルミ動物園には協力会社から提供されたオーディオ・ガイドシステムが導入されたそうで、飼育展示場ではそれぞれの動物たちについての解説を聴いたり読んだりできるそうで、画像もダウンロードできるようになっているそうです。Wifiを利用するのでしょう。本当に小さな動物園なのですが、いろいろな工夫がされているようです。

アンデルマは健在です。喜ばしいことです。

(資料)
59.ru (Sep.14 2016 - Зоопарк приглашает пермяков посмотреть, как едят калао и белые медведи)
МК в Перми (Sep.14 2016 - Амурский тигр – теперь онлайн)
Страна.Ru (Sep.8 2016 - Молодёжь заманивают в зоопарк современными технологиями)

(過去関連投稿)
*ユムカとセリク
ロシア・ペルミ動物園におけるセリクとユムカの近況 ~ テルペイがロストフ動物園に移動か?
ロシア・ペルミ動物園でのセリクとユムカの初顔合わせは不調に終わる
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園でアンデルマが気の強いユムカに手を焼く ~ 大物に挑みかかる小娘
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園のユムカと野生孤児のセリクとの関係が良好となる
*ユムカ、セリク、アンデルマの三頭同居
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でアンデルマとユムカ、そして野生孤児セリクの3頭同居は順調な滑り出し
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でのアンデルマ、ユムカ、セリクの三頭同居は大きな成果を上げる
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でのアンデルマ、ユムカ、セリクの三頭同居の近況 ~ 最新の映像が公開
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園のアンデルマ、ユムカ(ミルカ)、セリクの近況
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園、初冬のユムカ、セリク、アンデルマの姿 ~ 調和のとれた関係
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園の「ホッキョクグマの日」のイベントで訓練の様子が公開される
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園で夏期恒例のホッキョクグマへの活魚のプレゼント始まる
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園のホッキョクグマたちの夏 ~ 同地の観測史上最高の暑さの夏
*2015年ペルミ動物園訪問記
ペルミ動物園での待望のアンデルマ、ユムカ、セリクとの再会 ~ 整備された飼育展示場
ユムカ(ミルカ)が背負うロシアでのホッキョクグマ繁殖の将来
野生孤児セリクに蘇った自信と明るさ
至高のホッキョクグマ、アンデルマの発散する永遠、かつ普遍的なる母性
ペルミ動物園二日目 ~ 変化のある一日を過ごすアンデルマ、ユムカ(ミルカ)、そしてセリク
ペルミ動物園三日目 ~ アンデルマさん、ユムカ(ミルカ)さん、セリク君、お元気で!
アンデルマ、その超絶的な偉大さ ~ 「君死にたまふことなかれ」を超えた絶対的、普遍的な母性
by polarbearmaniac | 2016-09-29 02:00 | Polarbearology

アメリカ・オレゴン動物園で検疫期間中のノーラの最近の様子

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ノーラ Photo(C)Oregon Zoo

9月15日にオハイオ州のコロンバス動物園から西海岸ポートランドのオレゴン動物園に到着した人工哺育で育てられた生後10ヶ月のノーラは勿論まだ30日間の検疫期間中ですが、彼女の最も新しい映像をオレゴン動物園は公開しました。それが下の映像です。



なかなか動きは良いようです。小さなプールでは気の毒ですので早く検疫期間が終了してメインの展示場に登場してもらいたいところです。

(資料)
KXXV News Channel 25 (Sep.27 2016 - Nora update: Young polar bear adjusting to life at Oregon Zoo)

(過去関連投稿)
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ オーロラが待望の出産
アメリカ・コンロバス動物園のオーロラお母さん、赤ちゃんの育児を突然止める ~ 人工哺育へ
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園の人工哺育の雌の赤ちゃんが生後25日となる
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園の人工哺育の雌の赤ちゃんが生後5週間が無事に経過
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園の人工哺育の雌の赤ちゃんが生後7週間が無事に経過
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園で人工哺育の赤ちゃんの成長と舞台裏を紹介した映像が公開
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園で人工哺育の雌の赤ちゃんの名前選考の投票が開始
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の雌の赤ちゃんが生後89日を無事経過
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の雌の赤ちゃんの名前が "ノーラ (Nora)" に決まる
アメリカ・コロンバス動物園、ノーラの「国際ホッキョクグマの日」 ~ 一般公開開始に慎重な同園
アメリカ・コロンバス動物園の人工哺育の赤ちゃん、ノーラの近況 ~ 「適応化」を意識した飼育プログラム
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の雌の赤ちゃんノーラが遂に一般公開となる
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の人工哺育の赤ちゃん、ノーラが生後半年となる
アメリカ・コロンバス動物園のノーラの展示時間延長に慎重な同園 ~ 父親ナヌークへの期待と配慮が理由か
アメリカ・コロンバス動物園のノーラの「出漁」
アメリカ・コロンバス動物園のノーラ、発疹の症状から回復 ~ ホッキョクグマファンには世界は狭い
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園のノーラが国務省の「北極地域特別代表」の訪問を受ける
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園のノーラが生後九ヶ月となる ~ "An independent bear"
アメリカ・コロンバス動物園のノーラがポートランドのオレゴン動物園へ ~ その背景を読み解く
アメリカ・コロンバス動物園、「遅咲き」の28歳の雄のナヌークに最後の栄光は輝くか?
アメリカ・コロンバス動物園のノーラの同園での展示最終日に多くの来園者がノーラとの別れを惜しむ
アメリカ・コロンバス動物園のノーラが西海岸・ポートランドのオレゴン動物園に無事到着
アメリカ・オレゴン州ポートランドのオレゴン動物園に到着して検疫期間中のノーラの近況
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園のノーラとコロンバス動物園の担当飼育員さんの別れ
アメリカ・オレゴン動物園のノーラの来園を歓迎しない地元ポートランド市民の意見 ~ So what ?
by polarbearmaniac | 2016-09-28 10:00 | Polarbearology

ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園で最終段階に入りつつある新ホッキョクグマ飼育展示場の建設

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ベルィ Photo(C)Пензенский зоопарк

ロシアのヴォルガ川流域の都市ペンザの動物園に新しいホッキョクグマの飼育展示場建設計画が立案され、そしてこれが完成に至るまでのペンザ動物園の悪戦苦闘について以前から投稿し続けています。この動物園に暮らす5歳の雄のホッキョクグマであるベルィは2011年の秋に極北のヤマロ・ネネツ自治管区で漁民によって保護された野生孤児であり、連邦政府の自然管理局 (RPN)によってペンザ動物園での保護・飼育が指定されたわけですが、もともとホッキョクグマの飼育を希望していたペンザ動物園ではあったものの、いざ実際にこのベルィの飼育が実現した段階となって新しいホッキョクグマの飼育展示場の建設が求められたわけで、その建設計画の実現には紆余曲折があったわけです。ロシアの中規模の地方都市の動物園にとってそれは予想以上に大きな負担だったというわけです。先月8月の段階におけるこのペンザ動物園の工事の様子とベルィの姿をTVニュースで見てみましょう。



さて、そういった困難を何とか乗り越えてようやくこの9月に新しい飼育展示場が完成する当初の予定であり、そしてとうとう飼育展示場内側の内装を行う段階までこぎつけたようです。内装は専門家によって行われる予定で、ホッキョクグマの生息地を想起させるような白と青を基調とした色彩になるそうです。色調的にも見た目の良いものにするということだそうです。下は完成予定見取り図で、内装については考えらえていなかった段階のものです。
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(C)Пензенский зоопарк

これを見る限り地面はすべてコンクリートで土の部分はないようです。いろいろと大騒ぎしてきた建設計画ですが意外に「簡素」なものであり、財政の厳しいペンザ動物園は資金をロスネフチ社の援助に頼りきったということもあり、まあこれでも上出来なものだと言ってもよいかもしれません。ともかくこのベルィも4年近くも待ってようやくちゃんとした空間に暮らすことができそうです。
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ベルィ Photo(C)PenzaNews

ここで約5年前にこのベルィが極北の地で野生孤児で保護され、そしてまずモスクワに移送された時のニュース映像を御紹介しておきます。



先日も野生孤児として保護されたニカがモスクワ動物園に移送された件を御紹介しましたが、野生孤児の保護というものは、やはり大変に重要なことなのです。そして彼らの保護された時の様子はどうしても映像として記録しておくべきだと思います。 それから、こういった無名の小さな動物園に暮らし、そして世界ではほとんど話題にされないホッキョクグマの姿を追い続けることは私にとっては非常に意義深いことだと思っています。そこには、地域の人々とホッキョクグマとの意識下での密接なつながりを通して地域コミュニティの一員となっているホッキョクグマの姿というものを垣間見せてくれるからです。

(*追記)9月28日付けの報道ではベルィの新飼育展示場への移動は10月末となったそうです。


(資料)
Пензенский зоопарк (Aug.29 2016 - Очередной этап строительства вольера для северного хищника.) (Sep.23 2016 - Начаты подготовительные работы по оформлению вольера белого медведя)
"ТВ-Экспресс" Новости Пензы (Sep.2 2016 - «Роснефть» дарит новый дом белому медведю)
ГРТК Пенза (Sep.23 2016 - В вольере белого медведя в Пензе сделают льдины и нарисуют граффити в природных тонах)
PenzaNews (Sep.23 2016 - Вольер белого медведя в Пензе будет напоминать о его естественной среде обитания)
Пенза-взгляд (Sep.23 2016 - В пензенском зоопарке начнут декорировать вольер для белого медведя)
Prо Город Пенза (Sep.26 2016 - В Пензенском зоопарке вольер для белого медведя начинают оформлять)
Пензенская правда (Sep.26 2016 - В зоопарке Пензы создают декорации для белого мишки)
Наш город сегодня (Пенза и Заречный) (Sep.26 2016 - Появился эскиз вольера для белого медведя)
(追記資料)
ПензаИнформ (Sep.28 2016 - Белого медведя переселят в новый вольер к концу октября)

(過去関連投稿)
ロシア極北で漁民に保護された1歳の野生孤児が中部ロシアのペンザ動物園での飼育が決定
ホッキョクグマ飼育経験のないロシア・ペンザ動物園が飼育準備を開始 ~ 「親和性」、「運」とは?
ロシア極北で保護された孤児のウムカ、依然としてモスクワ動物園で待機か? ~ 野生孤児保護の問題点
モスクワ動物園で待機中の野生孤児のウムカ、11月末までにペンザ動物園へ移動
モスクワ動物園で待機中だった野生孤児のウムカが陸路、ペンザ動物園に無事到着
ロシア・ヴォルガ川流域のペンザ動物園にモスクワから移動したウムカの近況 ~ 待たれる新施設の完成
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園のウムカの新しい名前を公募することが決定
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園のウムカの新しい名前が「ベルィ」に決まる
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園の苦境続く ~ ベルィ に仮仕様のプールが完成 
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園の2歳の野生孤児ベルィの近況
ロシア・ヴォルガ川流域、ペンザ動物園の野生孤児ベルィが間もなく3歳に ~ 完成が待たれる新展示場
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園のベルィがソチ冬季五輪のプロモーション映像に登場
ロシア最大の石油会社 ロスネフチがロシアの動物園の全ホッキョクグマへの援助・保護活動開始を表明
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園の野生孤児ベルィの新飼育展示場建設にロスネフチ社の援助決定
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園でのソチ冬季五輪開催イベント ~ 2026年札幌冬季五輪招致へ
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園のベルィの新飼育展示場建設計画が出直しの形で開始される
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園の 「国際ホッキョクグマの日」 のベルィの姿
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園のベルィの近況 ~ 遂に新展示場建設着工の見通し
モスクワ動物園のシモーナの双子が一歳となる ~ 双子のうち雌が来年にペンザ動物園へ移動か?
ロシア・ヴォルガ河流域、ペンザ動物園のベルィの新展示場建設工事が開始 ~ 雌の導入計画の謎
ロシア・ペンザ動物園のベルィの新展示場が秋に完成の予定 ~ ロシアの中小地方都市の動物園の苦闘
ロシア・ペンザ動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場が9月にオープン ~ それが意味する重要なこと
ロシア・ペンザ動物園のベルィに夏の旧舎最後の特別給餌 ~ ロシア地方都市動物園の素朴なイベント
by polarbearmaniac | 2016-09-28 01:00 | Polarbearology

アメリカ・デトロイト動物園のタンドラが亡くなる ~ インディアナポリス動物園よ、恥を知れ!

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タンドラ Photo(C)Detroit Zoo
(Tundra the Polar bear/Белая медведица Тундра)

昨日9月26日付でアメリカ・ミシガン州のデトロイト動物園が発表したところによりますと、今年の6月にインディアナ州のインディアナポリス動物園から移動してきた29歳の雌のホッキョクグマであるタンドラ(Tundra)が昨日の朝に安楽死という処置にて亡くなったとのことです。

タンドラは一昨日の日曜日の朝に突然、非常に体調が悪くなり獣医さんが診察したものの原因が特定できず、スタッフが夜を徹して彼女に付き添ったものの昨日の月曜日の朝に至るまでに彼女の健康状態は目に見えて悪化の一途をたどり、デトロイト動物園は彼女を安楽死させるという苦渋の決断を行い、タンドラは死亡に至ったということです。尚、彼女の病気の原因を特定させるために検死が行われる予定だそうです。

実に残念の一言に尽きます。タンドラが29歳にもなってインディアナポリス動物園からデトロイト動物園に移動したのはインディアナポリス動物園がホッキョクグマの飼育・展示から撤退するといった方針をとったというのが6月に発表された表向きの理由でした(過去関連投稿を御参照下さい)。タンドラは1986年11月にサンディエゴ動物園に生まれ一歳半の時にインディアナポリス動物園に移動し、それ以来ずっとインディアナポリス動物園で飼育されていたわけですが、29歳にもなって突然こういった理由で彼女はデトロイト動物園への移動を強いられたわけです。要するにインディアナポリス動物園はすでに高齢の域に入っていたタンドラを見捨てたというわけです。実に非情な動物園であると言えましょう。以下は彼女の死を報じるTVニュースです。



こういった年齢のホッキョクグマは慢性か、あるいはゆっくりと進行している病気などを抱えている場合もあるわけで、移動させると一気にそうした病気が顕在化し、そして可視化するケースは今までの例を見ても非常に多いのです。移動した後に数か月から半年して死亡したため解剖してみると腫瘍が原因であったということがよくあります。「彼(or 彼女)の死亡は彼(or 彼女)がすでにXXという病気にかかっていたことが原因であって移動が原因なのではない。」という言い方が一般的に行われるわけですが、高齢の個体については実は隠れていた病気が移動の後の環境の変化で一気に表に出てくるということが多いということが過去の事例を見ていて気が付くのです。今回のタンドラの死はそういった典型的な例の一つだと思います。こういった年齢となって住み慣れた動物園から別の動物園に移動したことが彼女の死を大幅に早めたといって過言ではありません。
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Photo(C)Detroit Zoo

謹んでタンドラの死に哀悼の意を表します。今まで本当にご苦労様でした。

(資料)
Detroit Zoo (facebook/Sep.26 2016)
Detroit Free Press (Sep.26 2016 - Tundra, 29-year-old polar bear, dies at Detroit Zoo)
CBS Local (Sep.26 2016 - Beloved Polar Bear Dies At The Detroit Zoo)
MLive.com (Sep.26 2016 - Elderly polar bear who arrived in June dies at Detroit Zoo)
The Detroit News (Sep.26 2016 - Detroit Zoo: Tundra the polar bear dies at 29)

(過去関連投稿)
アメリカ・インディアナポリス動物園がホッキョクグマ飼育から撤退 ~ 29歳のタンドラはデトロイト動物園へ
アメリカ・デトロイト動物園に移動した29歳のタンドラが元気に飼育展示場に姿を見せる
by polarbearmaniac | 2016-09-27 09:30 | Polarbearology

ドイツ・ニュルンベルク動物園、ヴェラとシャルロッテの母娘の近況 ~ 行動の精彩さの有無への評価

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ヴェラとシャルロッテ (C)Tiergarten Nürnberg

ドイツのニュルンベルク動物園で2014年の11月21日にヴェラお母さんから誕生した雌のシャルロッテについては一歳の誕生日までその成長を追い続けたのですが、それ以来は投稿していませんでした。考えてもみればシャルロッテは札幌・円山動物園のリラや浜松市動物園のモモと同じ年齢であり、そして性別は同じ雌というわけですから、その成長を比較してみるのはおもしろいかもしれません。とはいっても現時点では体の大きさというよりも母親との関係についてこの三頭がどう異なっているのかと言う点も興味のあるところです。今年に入ってからのヴェラとシャルロッテの映像をいくつか拾って見てみましょう。

まず今年の4月の映像ですが、やはりシャルロッテは随分と大きくなりました。母親であるヴェラはそれほど体の大きくないホッキョクグマですので母娘の大きさの対比はそれほどないようにすら見えます。非常にもんびりとした姿です。母親のヴェラも雄のフェリックスがいないせいか、神経質そうな態度は見せていません。



続いて5月の映像です。非常に抑制された動きの場面が集められていると思います。



続いて6月のシーンです。これは母娘の遊びですが、それほど激しいものではなく比較的節度があるといった感じです。友達感覚といったものがうかがえる場面もあります。



次は7月のシーンです。気温が高いようで母娘共にやや動きが鈍いようです。特にヴェラはやや息づかいが荒いように見えます。そこへいくと、あのバフィンとモモという母娘は夏の暑さには耐性がかなりあるということがわかります。



次は8月のシーンです。あまり激しい動きはありません。



こういった映像を見ていきますと、この母娘は非常に穏健な母娘関係にあるという評価を言うことは可能です。一方で、やや精彩がない母娘ではないかという印象を持つことも可能でしょう。ニュルンベルク動物園のこの母娘は終日展示ですしバフィンとモモは半日展示だったのでこの二組の母娘は動き方が違うのだという考え方もできるかもしれません。すでに一歳半を越えている娘のシャルロッテですのでその性格は一応は固まってきていると思います。私の感じではこのシャルロッテは優しい性格であるというよりは、やはり自意識がやや強いホッキョクグマであるようには見えます。ところが爆発的な瞬発力やエンジンがかかって遊びだすという雌でもないようです。なにか不完全燃焼のようなものを感じるわけです。母親であるヴェラもそれほど容量の大きな母親には感じられないということです。それは私が実際に見たヴェラと双子の息子であるグレゴールとアレウトの姿を見た時も感じたことでした。このヴェラは現在13歳、ノヴォシビルスク動物園のゲルダは8歳です。ヴェラとゲルダを比べれば(血統登録情報ではヴェラとゲルダは姉と妹にあたるわけですが私は異説を主張しています)やはりヴェラの方が行動も成熟したホッキョクグマですが、器の大きさという点ではゲルダの方がはるかに大きいように思います。やはりゲルダの方が大物だと私には感じます。

このシャルロッテも今年のクリスマス前には欧州の雌の幼年・若年個体の集中プール基地であるオランダのエメン動物園に移動することになると思います。その場合にこのニュルンベルク動物園にはオランダからフェリックスが戻ってくると考えるのが順当ですが、あるいは別の雄が登場する可能性があるかもしれません。ただしヴェラというのは本来かなり神経質なホッキョクグマですので真っ先に問題となるのはその雄との相性でしょう。このヴェラというのは旭川のイワンのすぐ下の妹で現在13歳です。つまりモスクワのシモーナの娘というわけです。神経質なところは母親であるシモーナにはあまり似ていない性格であるようにも思います。シモーナはもっとおおらかな性格です。

(過去関連投稿)
ドイツ・ニュルンベルク動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ ヴェラお母さんの健闘
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ドイツ・ニュルンベルク動物園で誕生し一頭が死亡した双子の赤ちゃんのうち残っている一頭は順調に推移
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ドイツ・ニュルンベルク動物園で誕生の赤ちゃんは元気に生後75日が経過 ~ ヴェラお母さんへ給餌再開
ドイツ・ニュルンベルク動物園で誕生の赤ちゃんの初めてのカラー画像が公開
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ドイツ・ニュルンベルク動物園のヴェラお母さんとシャルロッテに見る関係 ~ 想像力を喚起させぬ親子か?
ドイツ・ニュルンベルク動物園のシャルロッテが満一歳となる ~ 映像ではつかみにくいその性格
by polarbearmaniac | 2016-09-26 22:30 | Polarbearology

ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとロスチクの親子模様 ~ 「未完の大器」ゲルダ

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ゲルダとロスチク Photo(C)Новосибирский зоопарк

ロシア・西シベリアのノヴォシビルスク動物園で昨年2015年の12月7日にゲルダお母さんから誕生した雄(オス)のロスチク (Ростик)の成長を追っています。前回の投稿から約3週間が経過していますが、その時から現在までの現地のファンの方々の撮った映像のうちいくつかを見ていきましょう。映像の数は非常に多いわけで、思いついたものだけをご紹介しておきます。

まず最初の映像ですが、これは以前から述べていますようにこのノヴォシビルスク動物園に特有の来園者による園公認のえさの投げ入れに反応しているゲルダとロスチクです。あらかじめこの親子は飼育員さんから肉をもらっていたようなのですが、ゲルダお母さんは来園者から投げてもらうものをキャッチして食べることを優先しています。ロスチクのほうはもともともらっていた肉に執着しているのですが途中でゲルダお母さんの食べているものに関心を持つのですが、やがて肉に戻っていくというシーンです。ロスチクはなかなか冷静です。



さて、次の映像ですが開始後10秒あたりからの個所に御注目下さい。これがノヴォシビルスク動物園が投げ入れを公認している有料のエサです。かなり嗜好性の強いものです。ただしこの時はゲルダはほとんど反応していませんね。満腹だったのでしょう。最後は授乳のシーンで終わっています。



次は親子の水中のシーンです。ゲルダお母さんは少し来園者を気にしています。ロスチクは適当に母親にちょっかいを出すといった感じです。シルカとの時と比較するとロスチクは悠々としているように思います。



下のシーンですが、要するにゲルダは来園者から与えられるものに次から次へと関心が向いているわけですが、ロスチクは落ち着いていてすでに与えられているものの方に関心があるわけです。たいしたものです。



下の映像ですが、ロスチクは来園者から与えられるものに対してそれほど執着していません。



二年前、あのシルカがゲルダお母さんと一緒だった時はシルカには何か孤独の影といったものを強く感じさせたわけです。そこには将来シルカが体験せざるをえ得なかった悲しさというものが予感されていたような気がします。ところがロスチクにはそういった孤独の影といったものは感じません。彼は適当に母親に甘え、そしてうまく御機嫌をとるという余裕すら感じさせます。母親であるゲルダをうまく操縦しているのがロスチクなのです。あるいはゲルダはそういったことが全てわかっていて、敢えてそれにうまく乗っかっているとも言えるのです。



ゲルダ/シルカとゲルダ/ロスチクの親子関係は全く異なっていることに驚かざるを得ません。何故そういったことをもっと論じられないのでしょうか? これはホッキョクグマの親子関係を考える場合に非常に興味深い観察対象であると思います。原因はシルカとロスチクの性別の違いによって生じるゲルダの母親としての対応の違いなのか、それともゲルダが母親として経験を積んだためなのか、それともシルカとロスチクの性格の違いなのか......こういったことが論じられなければならないのです。こののヴィシビルスクにお住まいの方々の多くの映像は実に貴重だと思います。特異なシーンをことさら集めたりせず、この親子の普通のシーンをすくい取ることによって浮かび上がるゲルダとロスチクの親子模様を継続して記録していくことは実に有意義だと思います。

一つだけ付け加えておけば、ゲルダというのはまだ幼い母親のように感じられることです。クルミやバフィンは育児初体験ではあったものの「幼さ」と言った要素は感じさせませんでした。それは彼女たちの年齢が大きく作用していただろうと思います。ウスラーダやシモーナやララやフギースやオリンカといった母親になりますと、母親としての育児スタイルの違いこそあれ、やはり熟練の手綱さばきといったものを感じさせるわけです。ところがこのゲルダはまだ初々しいといいますか、母親としてはまだ成熟していないものを感じさせます。ただしかし、ゲルダの潜在能力の大きさは大変なものであることは十分に予感できます。そういった意味ではゲルダは「未成熟の大器」、あるいは「未完の大器」といったところでしょう。なにしろゲルダはまだ8歳なのです。

(過去関連投稿)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ やはり出産していたゲルダ!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの登場を待つ人々 ~ その時を親子の意思に委ねる度量
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、一瞬姿を見せる ~ 'authenticity' への視座
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんがゲルダお母さんと本日、初めて5分間だけ戸外に登場!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダ親子の「国際ホッキョクグマの日」
ロシア・ノヴォシビルスク動物園で誕生の赤ちゃんの「国際ホッキョクグマの日」の映像を追加
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの声を札幌のリラ、大阪のモモと比較する
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの性別予想に盛り上がる地元 ~ 雄(オス)の予想に高い支持
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子の近況 ~ 親子関係を破壊しかねない来園者のエサやり行為
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、日曜日に来園者が入場に長蛇の列 ~ 大人気のゲルダ親子
ロシア・西シベリア、ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、生後100日を超える
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんは雌(メス)と判明 ~ 赤ちゃんはシルカの妹だった!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの命名への同園の迷い ~ シルカ同様の過熱を恐れる同園
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子の近況 ~ ララ/アイラの多層的な親子関係と比較する
ロシア・ノヴォシビルスク動物園が赤ちゃん命名について沈黙状態 ~ 「シルカ事件」から学ばぬ同園
ロシア・ノヴォシビルスク動物園が赤ちゃんの性別を訂正発表! ~ 赤ちゃんは雄(オス)だった!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダお母さんと赤ちゃんの近況
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダお母さんとオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)のプール開き
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、オイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)が泳ぎ始める
ロシア・ノヴォシビルスク動物園生まれの二頭 ~ シルカ vs オイゼビウス (Ойзебиус - 仮称)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダをシモーナと比較する ~ 母親と息子の実力は反比例?
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のホッキョクグマ飼育展示場のライブカメラ映像配信、遂に復活!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)が間もなく生後半年が経過へ
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のオイゼビウス(仮称)の正式命名が後日行われる予定となる
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の雄の赤ちゃんの名前が「ロスチク (Ростик)」に決まる
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの成長 ~ シルカ/ゲルダとは非常に異なる親子関係
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子のライブ映像配信が二年前と同様に大人気となる
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとロスチク、その日常の姿 ~ 経験を積んだゲルダお母さん
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダお母さんの機嫌を損ねないように巧妙に立ち回るロスチク
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの成長 ~ 「シルカの物語」を乗り越えられるか?
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子の近況 ~ 「ゲルダ/シルカ」、「バフィン/モモ」と比較する
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとロスチクの親子の姿 ~ 娘とよりも息子との関係が気楽か
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの近況 ~ 予想の難しい彼の将来の移動先
by polarbearmaniac | 2016-09-25 23:00 | Polarbearology

カナダ・トロント動物園のイヌクシュクが繁殖から事実上の「強制引退」か? ~ 同園の大胆な決断

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イヌクシュク Photo(C)Toronto Zoo
(Inukshuk the Polar bear/Белый медведь Инуксук)

事態が急展開してきたようです。これは腰を落ち着けてじっくりと考察せねばならない問題です。カナダのトロント動物園が発表したところによりますと、同園で飼育されている野生出身で13歳である雄のイヌクシュクが9月28日にオンタリオ州・コクレーン(Cochrane) の「ホッキョクグマ居住村(Polar Bear Habitat)」に移動することが発表されました。イヌクシュクは今まで何度もこの「ホッキョクグマ居住村」に移動し、そしてトロント動物園に戻ってくるという生活を行っていたのですが、それはトロント動物園でオーロラとニキータという野生出身で15歳の雌の双子姉妹がイヌクシュクをパートナーとした繁殖において出産準備のための環境作りのためにイヌクシュクがコクレーンの「ホッキョクグマ居住村」に一時出張するという形をとったからです。今回の彼のコクレーン行きもそういった目的であるとトロント動物園は述べつつも、イヌクシュクはすでに5頭(タイガガヌーク、ハドソン、ハンフリー、ジュノー)の父親となっているために、トロント動物園としては新しい繁殖プログラムを検討したいという意向だそうです。これはすなわちイヌクシュクを事実上繁殖計画から今後は除外するという意図であることは明白です。トロント動物園はイヌクシュクのコクレーン滞在は長くなるとも述べていることはこれを裏付けているわけです。
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イヌクシュク Photo(C)Toronto Zoo

トロント動物園としてもこれは思い切った決断だと思います。今年の年末には双子姉妹のオーロラとニキータに出産が期待されているわけですがオーロラは過去に数回出産したものの結局は自分で育児を行うに至らず、ハドソンハンフリージュノーの3頭が人工哺育で育てられたわけです。カナダでは飼育下で19頭のホッキョクグマが飼育されているわけですが、そのうちイヌクシュクの血の入った個体は彼自身を含めて6頭です。このイヌクシュクの繁殖能力は定評があり彼の子供は5頭ではあるものの、実はオーロラはもっと多くを出産していたものの死亡してしまった個体が多いというだけのことなのです。トロント動物園としてはイヌクシュクに代わる別の雄を導入しようとするのは当然のことで、仮に年末にオーロラとニキータが出産、そして育児に成功しなければ来年早々イヌクシュクに代わる雄の個体がトロント動物園に導入されることになると思います。
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トロント動物園で保護された野生孤児イヌクシュク(2002年2月)
Photo(C)Toronto Zoo

欧州でもオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園に暮らしていたヴィクトルが多くの繁殖に成功した後に15歳で繫殖から「強制引退」させられてしまい現在はイギリスのヨークシャー野生動物公園に暮らしていますが、私はまさか今回のイヌクシュクが5頭の子供たちの父親となった段階でこうしてトロント動物園での繁殖計画から早々と外されてしまうとは予想していませんでした。トロント動物園はすでにオーロラの出産に対して三回も人工哺育を行っていますが、さらに今年の年末にも必要ならば四回目の人工哺育を試みるかといえば、私はその決断は難しいように思います。ということは双子姉妹のもう一頭であるニキータの出産に期待したいわけですが、ニキータはまだ出産経験はないはずでイヌクシュクとの相性問題を考慮に入れてイヌクシュクとは別のパートナーを導入したほうがよいと考えた可能性もあるかもしれません。こういったことがイヌクシュクの繫殖からの事実上の「強制引退」の決定を後押しした可能性は十分あると思われます。ただしかし、イヌクシュクの後継としてトロント動物園に来園する雄のホッキョクグマがどの個体になるかは別にして、その個体が本当に繁殖能力があるかどうかは全くの未知数なのです。一方でイヌクシュクの繁殖能力は絶対とも言えるほど定評があるわけです。トロント動物園にとっては一種の賭けでしょう。しかしそうした賭けを行ってまで実現したいのは血統の多様性の維持ということだろうと思われます。(*追記 - カナダにおける飼育下のホッキョクグマの繁殖計画(SSP)を主導しているのはAZAのSSPのカナダでの一翼を担うトロント動物園だったはずで、要するにトロント動物園が日本で言うところの「種別調整園」ということになるわけです。)

イヌクシュク

このイヌクシュクや欧州のヴィクトルなどが日本に来てくれたらどれだけ素晴らしいかとも思うわけです。特にこのイヌクシュクはまだ14歳なのです。年齢的に言えばツヨシやピリカと近いのです。そして野生出身なのです。しかも繁殖能力というものは絶対ともいえる定評がある世界でも指折りの雄のホッキョクグマなのです。しかしそういった彼の来日の実現の可能性は全くありません。不可能なのです。 そしてなにしろ日本のホッキョクグマ界では飼育頭数の維持ということに必死な状態で、本来はその後にあるべき個体群の血統の多様性の維持というところまではほとんど目がいかないわけなのです。ですから札幌のデナリの繫殖からの「強制引退」はなく、キャンディとの間での繁殖の試みが継続されるといった状態なのです。「アンデルマ/ウスラーダ系」の若年個体の頭数の多さというものについて繁殖計画の中での組み合わせの調整といったものが実現する可能性はなく、そもそもそういった発想すら論じられていないというわけです。「強制引退システム」というのは繁殖が多く実現しているホッキョクグマ界では想定しうる話だということです。つまり中・長期的な繁殖プログラムの展望が立ちうる場合にのみ適用されるわけであって、2010年代以降において日本の動物園で何回も繁殖に成功したからといって(アイラ、ミルク、マルル、ポロロ、モモ、リラなど)、そこから見えてくる将来の見通しが視界不良である場合には日本のホッキョクグマ界においては「強制引退」は、なされることはないわけです。

こういった件については稿を改めて考えてみたいと思います。繁殖に成功するということと繁殖プログラムが順調に推移するということは別のことだということです。

(資料)
(過去関連投稿)
(*イヌクシュカ関連)
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村のイヌクシュク、繁殖への期待を担って再びトロント動物園へ
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村にイヌクシュクが無事帰還 ~ 息子のガヌークの近況
カナダ・オンタリオ州 コクレーンの保護教育生活文化村に暮らすイヌクシュクとガヌークの父子の近況
カナダ・トロント動物園に戻ったイヌクシュクのさらなる挑戦 ~ 優秀な雄の最後の課題は相性の克服
(*オーロラとニキータ関連)
カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの物語 ~ 双子姉妹と繁殖との関係
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース
カナダ ・ トロント動物園でホッキョクグマの三つ子の赤ちゃんが誕生するも全頭死亡!
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの三つ子の赤ちゃん誕生! ~ 2頭は死亡するも1頭が生存
カナダ・トロント動物園の施設 “Tundra Trek” の充実とオーロラ、ニキータ双子姉妹の繁殖への期待
今シーズンに出産の有無が注目される雌(1) ~ カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの双子姉妹
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 母親の母乳が出ずに人工哺育へ
(*繫殖「強制引退」関連)
オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園のヴィクトルが15歳の若さで繁殖の舞台から「強制引退」か?
オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園のヴィクトルがイギリスのヨークシャー野生動物公園に無事到着
イギリス・ヨークシャー野生動物公園のヴィクトルは繁殖の舞台から「強制引退」 ~ 欧州の重大な転機
by polarbearmaniac | 2016-09-24 23:00 | Polarbearology

中国・広州市の「皮扎 (Pizza)」の血統の深い謎 ~ 「皮扎 (Pizza) = 皮祖 (Pezoo)」 なのか?

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皮扎/皮萨 (Pizza) Photo(C)Our World Channel
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皮祖 (Pezoo)  Photo(C)People's Daily Online

中国・広東省、広州市の「広州正佳極地海洋世界 (广州市正佳极地海洋世界 - Guangzhou Grandview Polar Ocean World)」で飼育されているハイブリッドのホッキョクグマである「皮扎/皮萨 (Pizza)」が香港の動物保護活動家グループによって「世界で最も悲しいホッキョクグマ」というレッテルを貼られてネット上でこの施設の閉鎖を求める署名活動が行われている件、そしてイギリスのヨークシャー野生動物公園がこの皮扎/皮萨 (Pizza)の受け入れを申し出た件についてはすでに投稿しています。やはり予想していました通りこの広州市の施設側はこの申し出を断ったという報道がなされています。また、この施設の責任者はさらに施設を拡大して飼育展示する動物たちの数も増やす計画だそうです。そして皮扎/皮萨 (Pizza)については他施設からのローンであるとも述べています。借りている個体なのでそれをイギリスに出すなどという判断はできないという意味で述べているのでしょう。



今回の件に関して日本ではCNNやAFPなどの大手海外メディアの日本語サイトでは報じてはいるものの日本の新聞や放送などの大手メディアでこれを扱った社はないようです。これはある意味では実に健全なことだと思います。これはアジア・大洋州地域(特にシンガポール、香港、オーストラリア)に活動の本拠地を置くアングロサクソン系の保護活動家が得意とするところのメディアキャンペーンなのです。何かターゲットを見つけては「英語」というものを情報の武器にして批判キャンペーンを行うのが彼ら活動家の常套手段なのです。日本の新聞や放送などの大手メディアはこういった彼ら活動家の流す英語で書かれた情報は選別して排除しているというわけです。本ブログでも今回の件は当初は無視しようと思ってはいたのですが、当ブログ開設者はとりわけこの「皮扎/皮萨 (Pizza)」の血統について大きな関心を抱いているわけで、今回の件を「皮扎/皮萨 (Pizza)」の血統問題に的を絞って追及しているというわけです。さて、そうしていましたところニューヨークに本拠地のある新興ネットメディアである Quartz の記者が二度この広州市の当該施設を取材し、初めてこの「皮扎/皮萨 (Pizza)」の血統について広州市の当該施設より得た情報を報じましたのでそれについて述べておきたいと思います。

記者が確認したところによりますとこの「皮扎/皮萨 (Pizza)」は三歳の雌(メス)であり、父親は大連市(Dalian)の施設出身の個体であり母親は天津市(Tianjin)の施設で飼育されている個体であり、「皮扎/皮萨 (Pizza)」は天津市で育ったとのことです。これは人工哺育に間違いないものと思われます。以前に「中国・広東省、広州市の世界からの批判を浴びる「広州市正佳極地海洋世界のホッキョクグマ」の謎」という投稿で血統問題を考察したのですが、要するにこれでその投稿で考察した「個体A」と「個体B」は同一の個体であることを意味することがわかりました。少なくとも、そう想定して考察を行うことに問題はないということがわかりました。 さらに「皮扎/皮萨 (Pizza)」の父親は大連市で誕生した乐乐と静静と同じ個体である、つまり「皮扎/皮萨 (Pizza)」は乐乐と静静の妹であるだろうということです。問題は「皮扎/皮萨 (Pizza)」の母親ですが、これは以前に「中国・天津市の天津海昌極地海洋世界でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ そしてカナダでの映画撮影」という投稿でご紹介していた皮祖 (Pezoo)と同一の母親であることは確実でしょう。
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皮祖 (Pezoo)の登場した映画のポスター
(C)Hyde Park Entertainment

さてそうなりますとこれは大問題です。皮祖 (Pezoo)と「皮扎/皮萨 (Pizza)」は全く同じ年齢なのです。しかし皮祖 (Pezoo)が誕生したときのニュースでは、皮祖 (Pezoo)は一頭で誕生しており、双子ではないのです。そうなると実は皮祖 (Pezoo)と「皮扎/皮萨 (Pizza)」は同一のホッキョクグマではないかという強い可能性が生じてくるわけです。ただしQuartzの取材では「皮扎/皮萨 (Pizza)」は雌(メス)です。しかし皮祖 (Pezoo)は雄(オス)だと報じられているわけです。実に不可解です。しかしいずれにせよ「皮扎/皮萨 (Pizza)」と皮祖 (Pezoo)の母親は共通であることだけは99%間違いないでしょう。

仮に皮祖 (Pezoo)と「皮扎/皮萨 (Pizza)」が同一のホッキョクグマであった場合、カナダで撮影された映画("The Journey Home"/"Midnight Sun")に登場したほど有名であった皮祖 (Pezoo)は映画の中では広い雪原を駆け回っていたものの、現在ではこうして問題になっている広州市の息苦しい施設の室内で暮らしているということになるわけです。なんという数奇な運命だろうかと思ってしまいます。謎は深まりました。

カナダで撮影された映画に登場した皮祖 (Pezoo)

(資料)
BBC News (Sep.22 2016 - Pizza the 'sad' polar bear's owners plan to expand mall zoo)
Evening Standard (Sep.22 2016 - Shopping mall home to 'world's saddest polar bear' plans to expand zoo)
搜狐公众平台 (Sep.22 2016 - 世界最悲伤北极熊 不要悲剧再次上演)
Quartz (Sep.22 2016 - The world’s saddest polar bear is just one of thousands of “wild” animals living in malls in China)


(過去関連投稿)
セルビア・ベオグラード動物園のハイブリッドの正体 ~ “Polar Bear/Kodiak Bear Hybrid”
中国・広東省、広州市の世界からの批判を浴びる「広州市正佳極地海洋世界のホッキョクグマ」の謎
セルビア・ベオグラード動物園と中国・広州市の正佳極地海洋世界を結んだ「暗黒の闇」の連鎖の世界
イギリスのヨークシャー野生動物公園が中国・広州市の「皮扎 (Pizza)」の受け入れを申し出る

(*皮祖 (Pezoo)関連)
中国・天津市の天津海昌極地海洋世界でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ そしてカナダでの映画撮影
映画 “Il mio amico Nanuk” で共演したエイギー(Agee) とハイブリッドの皮祖 (Pezoo)
by polarbearmaniac | 2016-09-23 21:00 | Polarbearology

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