街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・オレゴン動物園を去るノーラへの人々の反応 ~ 移動の必要性を理解・納得した地元ファン

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ノーラ Photo(C)Oregon Zoo

アメリカ・オハイオ州のトレド動物園のホープとオレゴン州のオレゴン動物園のノーラというどちらも一歳半の雌(メス)の幼年個体二頭が秋にユタ州のホーグル動物園に移動することになったニュースはすでに投稿しています。特にオレゴン動物園のノーラは昨年9月にコロンバス動物園からオレゴン動物園に移動してきたわけで地元ポートランドでは大変な人気となったものの、来園後に一年も経過せずに他園に移動することになったニュースについて地元のポートランドではSNSなどでいくつかの意見が出ています。まず、オレゴン動物園でのノーラの様子を見ておきましょう。



やはりこのノーラを見ていますと人工哺育で育てられた個体特有の、人間に対する関心の深さというものが見て取れます。続いて地元ポートランドのニュースです。





ノーラがポートランドを去ることについてはやはり何人ものファンが非常に悲しい思いを語っていることはよくわかるのですが、ノーラには遊び友達が必要であるという事実を多くの人々は受け入れて明るく彼女を送り出そうという感想のほうがずっと多いように思いました。日本ではとかくウェットな話になりがちなのですが、やはりアメリカでは物事をロジックで納得すれば不満を漏らす人は少なくなるというのが顕著な傾向のようです。ただし同じアメリカでも以前にカンザスシティーからニキータが移動する際には地元ファンは「往生際」が悪かったといいますか、全く感心できない態度を示したという悪い事例もあったわけです。上にご紹介した地元ポートランドのTVニュースでは何故ノーラが移動しなければならないのかについてその理由がきちんと述べられているのには感心します。

私はこのノーラの映像を見ているとやはり彼女の運命を気の毒に感じます。人工哺育となった経緯はいたしかたのないことでしたが、諸々の理由で生後10ヶ月ほどで環境の良かったコロンバス動物園からオレゴン動物園に移動させられ、そしてまた秋に他園に移動するということになるわけですが、人工哺育された個体にありがちな人間への関心の強さによって映像などでは逆に見栄えのする姿を見せてくれるといった形になっています。彼女の生まれたコロンバス動物園では三頭もの赤ちゃんが誕生したため人々の関心はそちらの方に映ってしまっており、人工哺育されたが故の一種の「哀しさ」というものをノーラに感じてしまいます。

ともかく今年の夏はノーラはまだオレゴン動物園に留まっていますので、その可愛らしい姿をポートランドの人々は存分に楽しめるでしょう。しかし彼女の現在の様子を見ていますと非常に心配に感じるのは事実です。遊び方は自由奔放で野放図なほどであり来園者は大いにその姿を楽しむわけですが、こういった彼女の行動は一刻も早く他の個体と同居させて抑制してやるのがやはりノーラのためには必要であることを痛感します。"Socialize with another polar bear" つまり「適応化(Socialization)」が必要だということです。

(資料)
KGW.com (May.24 2017 - Nora the polar bear leaving the Oregon Zoo)
KATU2 (May.25 2017 - Oregon Zoo's beloved polar bear Nora will be leaving for Utah this fall)

(過去関連投稿)
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ オーロラが待望の出産
アメリカ・コンロバス動物園のオーロラお母さん、赤ちゃんの育児を突然止める ~ 人工哺育へ
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園の人工哺育の雌の赤ちゃんが生後25日となる
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園の人工哺育の雌の赤ちゃんが生後5週間が無事に経過
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園の人工哺育の雌の赤ちゃんが生後7週間が無事に経過
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園で人工哺育の赤ちゃんの成長と舞台裏を紹介した映像が公開
アメリカ・オハイオ州コロンバス動物園で人工哺育の雌の赤ちゃんの名前選考の投票が開始
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の雌の赤ちゃんが生後89日を無事経過
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の雌の赤ちゃんの名前が "ノーラ (Nora)" に決まる
アメリカ・コロンバス動物園、ノーラの「国際ホッキョクグマの日」 ~ 一般公開開始に慎重な同園
アメリカ・コロンバス動物園の人工哺育の赤ちゃん、ノーラの近況 ~ 「適応化」を意識した飼育プログラム
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の雌の赤ちゃんノーラが遂に一般公開となる
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園の人工哺育の赤ちゃん、ノーラが生後半年となる
アメリカ・コロンバス動物園のノーラの展示時間延長に慎重な同園 ~ 父親ナヌークへの期待と配慮が理由か
アメリカ・コロンバス動物園のノーラの「出漁」
アメリカ・コロンバス動物園のノーラ、発疹の症状から回復 ~ ホッキョクグマファンには世界は狭い
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園のノーラが国務省の「北極地域特別代表」の訪問を受ける
アメリカ・オハイオ州 コロンバス動物園のノーラが生後九ヶ月となる ~ "An independent bear"
アメリカ・コロンバス動物園のノーラがポートランドのオレゴン動物園へ ~ その背景を読み解く
アメリカ・コロンバス動物園、「遅咲き」の28歳の雄のナヌークに最後の栄光は輝くか?
アメリカ・コロンバス動物園のノーラの同園での展示最終日に多くの来園者がノーラとの別れを惜しむ
アメリカ・コロンバス動物園のノーラが西海岸・ポートランドのオレゴン動物園に無事到着
アメリカ・オレゴン州ポートランドのオレゴン動物園に到着して検疫期間中のノーラの近況
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園のノーラとコロンバス動物園の担当飼育員さんの別れ
アメリカ・オレゴン動物園のノーラの来園を歓迎しない地元ポートランド市民の意見 ~ So what ?
アメリカ・オレゴン動物園で検疫期間中のノーラの最近の様子
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園で検疫期間中のノーラの近況
アメリカ・オレゴン動物園でノーラとタサルの同居開始準備のため二頭の初対面が行われる
アメリカ・オレゴン動物園のノーラが満一歳となる
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園のノーラの近況 ~ 今週末にも一般公開開始の予定
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園のノーラが初雪を楽しむ ~ 相手役を求めAZAと交渉の同園
アメリカ・ポートランド、オレゴン動物園のノーラ ~ 野放図な遊び好きの性格に潜む危うさ
アメリカ・オレゴン州ポートランド、オレゴン動物園が降雪の影響で閉園となった日のノーラの姿
アメリカ・オレゴン動物園のノーラの自由奔放さ ~ 彼女の遊び友達を探す同園とAZA
アメリカ・オレゴン動物園のノーラの近況 ~ 「適応化(socialization)」とエンリッチメントとの関係
アメリカ・オレゴン動物園のノーラの近況 ~ 「遊び友達」の導入に苦戦するオレゴン動物園とAZA
アメリカ・トレド動物園のホープ、及びオレゴン動物園のノーラが共にソルトレイクシティのホーグル動物園へ
# by polarbearmaniac | 2017-05-28 23:50 | Polarbearology

ロシア・ペルミ動物園でセリクとユムカ(ミルカ)が後見役のアンデルマの影響からの独立を指向へ

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セリクとユムカ(ミルカ) 
Photo(C)Пермский зоопарк/Екатерина Мельникова

ロシア・ウラル地方にあるペルミ動物園といえば姫路のホクトや白浜のゴーゴが生まれた動物園であり、この二頭の母親であるアンデルマが余生を送っている動物園です。このアンデルマ(生年不詳)は世界のホッキョクグマ界では別格と言えるほどの偉大な存在であり、彼女について多くの投稿を行ってきましたし私自身も数回の訪問でレポートも投稿しています。日本のホッキョクグマファンのうち数人の方々も実際にこの動物園に行ってアンデルマに会われていることを私も知っています。アンデルマに実際に会うということは特別の体験であり私は同好の方々にもなるたけ多く彼女に会ってほしいと願っているわけですが、いかんせんロシアの地方都市の動物園ですので何が何でもとまでは申し上げられません。
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セリクとユムカ(ミルカ) 
Photo(C)Пермский зоопарк/Екатерина Мельникова

このアンデルマの他には野生孤児出身の4歳の雄(オス)のセリクとカザン市動物園生まれの4歳の雌(メス)のユムカ(ミルカ)が飼育されており、この二頭は繁殖上のペアを形成してこれからのペルミ動物園を支えていくホッキョクグマたちです。そしてこの若い二頭の後見役を勤めているのがアンデルマなのです。ペルミの地元の最新の報道では興味ある内容が述べられています。それは、セリクが非常に逞しくなり、そして活動量も増えてきたため、ペルミ動物園のホッキョクグマたちのリーダー格にセリクはなりつつあるという内容です。
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セリクとユムカ(ミルカ) 
Photo(C)Пермский зоопарк/Екатерина Мельникова

セリクのパートナーとなる彼と同年齢の4歳の雌(メス)のユムカ(ミルカ)は性格的に非常に気が強いことは私は彼女にカザン市動物園で会ったときから気が付いていましたが、そのユムカ(ミルカ)はペルミ動物園に移動してきた後のしばらくの間はセリクを圧倒していたものの、最近になってセリクの性格が積極的になたっために以前とは逆にセリクがユムカ(ミルカ)に対して強い地位を築いているのを私は2015年の夏に見ていますが、今回の地元メディアの報道ではセリクはアンデルマをも圧倒する立場になっているようです。アンデルマもそろそろ後見役という立場を十分果たしたようですのでセリクやユムカ(ミルカ)を適当にあしらっているようですが、時々唸り声をあげて警告を行うそうです。セリクもユムカ(ユムカ)も成長してきたということですね。そういった状況は近々現地で見てこようと思っています。ペルミ動物園ではホッキョクグマたちのおもちゃなどに利用するプラスチック製品などの入手に苦労しているそうですから、できれば何かそういったものを日本から持って行ってやりたいとも考えています。
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新ペルミ動物園の正面口完成予定図
Photo(C)пресс-службы администрации Пермского края

さて、ここでペルミで計画されている新動物園の建設に関してです。現在のペルミ動物園の敷地は隣接した教会の墓地だった場所でありスターリン時代に強制的に教会から接収されたものです。そういった場所に動物園が開園したわけですから、ソ連の崩壊と共に土地の返還を行うという話が出てきたわけですが、ペルミ市による移設先の土地の確保や建設計画の立案に非常に時間がかかり、また移設先の土地の森林を伐採する必要から環境保護の面でもいろいろとクリアすべき問題が次から次へと生じてきたわけでしょた。しかしとうとうその建設工事は今年の春から開始されたわけです。建設工事は計画に沿って急ピッチで進められることになり、2018年3月に完成するとのことです。これに関する地元のTVニュースをご紹介しておきます。最初に映っているのは現在のペルミ動物園であり、ホッキョクグマではセリクとユムカ(ミルカ)の姿も見ることができます。



現在のペルミ動物園は2ヘクタールですが移動先の新動物園では25ヘクタールとなるそうです。ペルミ動物園が特に力を入れているのはホッキョクグマの飼育展示場で、プールを大きなものにしてやるという計画で建設が行われているそうです。今までの狭い敷地では果たせなかったゾウの複数頭の飼育が大きな目玉となるそうです。

(資料)
Т7-Информ (May.16 2017 - Новый зоопарк: от глянцевых макетов - к реальному строительству)
Комсомольская правда в Перми (May.26 2017 - Белый медведь в Пермском зоопарке борется за власть с «женой» и «бабушкой»)
Pro Город Пермь (May.27 2017 - Зоопарк опубликовал фото игр и потасовок белых медведей) (Apr.4 2017 - Дождались! В Перми началось строительство нового зоопарка)
МК в Перми (May.23 2017 - Строительство Пермского зоопарка будет ускорено)

(過去関連投稿)
*ユムカとセリク
ロシア・ペルミ動物園におけるセリクとユムカの近況 ~ テルペイがロストフ動物園に移動か?
ロシア・ペルミ動物園でのセリクとユムカの初顔合わせは不調に終わる
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園でアンデルマが気の強いユムカに手を焼く ~ 大物に挑みかかる小娘
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園のユムカと野生孤児のセリクとの関係が良好となる
*ユムカ、セリク、アンデルマの三頭同居
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でアンデルマとユムカ、そして野生孤児セリクの3頭同居は順調な滑り出し
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でのアンデルマ、ユムカ、セリクの三頭同居は大きな成果を上げる
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園でのアンデルマ、ユムカ、セリクの三頭同居の近況 ~ 最新の映像が公開
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園のアンデルマ、ユムカ(ミルカ)、セリクの近況
ロシア・ウラル地方 ペルミ動物園、初冬のユムカ、セリク、アンデルマの姿 ~ 調和のとれた関係
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園で夏期恒例のホッキョクグマへの活魚のプレゼント始まる
ロシア・ウラル地方、ペルミ動物園の「ホッキョクグマの日」のイベントで訓練の様子が公開される
ロシア・ペルミ動物園の「国際ホッキョクグマの日」 ~ アンデルマ、ユムカ、セリクと来園者たち
# by polarbearmaniac | 2017-05-27 23:50 | Polarbearology

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