街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ララの次の出産個体の性別を過去のデータで予想する!

これはホッキョクグマファンにとっては気になるところです。札幌・円山動物園のララの今後期待されている出産で生まれてくる個体が雄になるのか雌になるのかは、日本のホッキョクグマ界にとって大きな問題だからです。 3月5日の投稿でロシアの新聞記事で、最近ロシアで誕生する個体が雄ばかりだというロシアの動物園関係者の嘆きの声をご紹介いたしました。 これは最近の例を見ればそうだという以上のことは言い難いように思います。そこで、この件に関して、なにか統計がないか調べてみました。そうしましたところ、ロシアのサンクトペテルブルクの「極北地域自然保護研究所」の報告書(“Reproductive Biology of Captive Polar Bears”)のなかで、生まれた個体の雄雌の比率に触れている箇所がありましたのでご紹介いたしましょう(ロシア語ではなく英語ですので御安心いただき、是非クリックしてみて下さい!)。 この統計は1932年から1988年の間でのレニングラード(現在は「サンクトペテルブルク」)のレニングラード動物園での50回のホッキョクグマの出産によって生まれた88頭の個体についての統計記録です。 88頭の個体というのは、出産後2~3週間経過して生きていた個体の数をカウントしたものだそうです。 結果は、雄が46頭(つまり52.3%)、雌が42頭(つまり47.7%)とのことです。  

ウーン....これだけでは、動物園で誕生する個体は雄が多いということを証明しているようには必ずしも言えないようにも思います。 もっともっと個体数が多くないと統計としての決定的な意味をなさないようにも思います。しかし、世界の動物園でのホッキョクグマ繁殖についてはモスクワ動物園に次ぐ第2位の頭数実績を誇るサンクトペテルブルクの動物園の半世紀にわたっての繁殖に関する統計数字は実に貴重ですので、いかに統計母体としての数量が十分ではないとしても我々はこの統計を十分に評価すべきでしょう。 もともと自然界では、雄の誕生数が僅かではあるものの雌の誕生数を上回ることが報告されています。人間の場合ですと、誕生時点の比率(the secondary sex ratio )は男が105に対し女が100という比率も提示されています。雄の幼児期の死亡率が雌よりも若干高いために誕生時点ではこのような比率になる、これを自然の摂理だと言う人もいるくらいです。

しかし、先にご紹介した報告書ですが、実はもっと興味深いことが書いてありました。Table1.をご参照下さい。交尾日(Date of copulation)、出産日(Date of parturition)、出産回数(Litters)、平均妊娠日数(Mean pregnancy duration - days)、誕生個体数(Cubs)、一回の出産あたりの平均個体数(Mean cubs per female)、雄の誕生個体の比率(Males %)が記載されています。このTable.1をよく見ていきますと、ある傾向が見えてきます。まず、5月8~16日に交尾が行われた場合に1回の出産に対して一番個体の誕生頭数が高くなり(つまり双子や三つ子の出産が多くなる)、そして同時に雄である比率が高くなるということが真っ先に読み取れます。 逆に、6月5~13日に交尾が行われた場合では出産個体数は低くなり、そして誕生個体が雄である比率は低くなる傾向があるということも読み取れます。

この報告書の文章、そしてTable.1の全体を見渡し、その示すところのデータをララとデナリの間に当てはめますと、ララとデナリの交尾が4月中ではなく3月中であるほうが、生まれてくる個体が雄である確率は低くなる....こう読み取れるように思います。そしてまたもっと言いますと、ララとデナリの交尾が4月よりも3月であったほうが、誕生する個体は双子である確率が高くなり、そしてそのうち少なくとも1頭は雌である確率が増える...そう言えそうです。さらに、もし交尾が5月にずれ込むようであれば誕生個体は、この場合もやはり双子である確率は比較的多く、そして今度はその2頭ともが雄である確率が高くなる...こう言えそうです。 このデータに沿ってもっと別の角度から簡単に言えば、運良く来年3月に一般公開される個体が双子であれば、その2頭は両方ともまた雄の確率が高い思われます。また、もし1頭だけならば、それは雌である確率は高い...そう言えますね。考えてもみれば、1頭だけで公開されたツヨシとピリカは雌であり、双子だったイコロとキロルは雄でした。ララのこれまでの出産は、まさしくこのデータの傾向に沿った結果が出ているように思われます。 
続く

*(後記)付け加えれば、釧路のクルミは1月にデナリとの交尾が確認されています。この場合は、誕生が早くなる傾向があるとしても妊娠日数(Pregnancy Duration)は長くなるはずです。 とすれば、今度はTable.2のデータを援用することになり、生まれてくる個体は双子である確率は低くなる...そう言えそうです。性別は...これは難しいですが(つまり、Table.1に記載されていない時期の交尾でしたから)、傾向から言えば若干雌である確率が高くなるといえるのかもしれません。
# by polarbearmaniac | 2010-03-09 19:15 | Polarbearology

いなくなったオリンカお母さんを呼び続けるウィーンの双子兄弟(アルクトス&ナヌーク)

先週の金曜日に「ターニャの悲劇(後)」として、ウィーンのシェーンブルン動物園の双子のお母さんのオリンカが、息子たちを置いてEAZA(European Association of Zoos and Aquaria)の希少動物繁殖計画(EEP-European Endangered Species Breeding Programs)に従ってオランダのロッテルダムの動物園に移送される(された)ことはお知らせいたしました。

さて、ウィーンに残された双子の息子たちですが、事情がまったく理解できず、オリンカお母さんが移送となった翌日、お母さんの姿を求めて呼び続けていたそうです。その映像がyoutubeにありますのでご覧になってみて下さい。

もしイコロとキロルが円山を離れるのではなく、ララが息子たちを置いて円山を去るというような事態であれば、イコロとキロルもこのウィーンの双子と同じように鳴き続けて母親を呼んだでしょう。 いや、ララお母さんの育て方が優しかったですから、もっと悲痛に鳴いたでしょうね。 ちなみに、このアルクトスとナヌークはイコロとキロルより1歳年上なのですが、なんと母親の去る前日まで母親の授乳シーンが見られたそうです。なんだかちょっと悲しくなりました.....。でも2頭一緒なのが救いですね。


*(後記) 一方、こちらはオランダのロッテルダムの動物園に到着したオリンカお母さんの映像です。オランダのTV局が撮ったものです。檻の中にいるのがオリンカです。やはりオリンカも落ち着いてはいないようです。 この映像で外を歩いている姿が映っていますが、それは彼女のウィーンでの「夫」であったエリックです。ウィーンから離れたこのオランダのロッテルダムで、この「夫婦」は再会となる予定です(本日3月8日の月曜日から同居のようですね)。

# by polarbearmaniac | 2010-03-08 19:30 | Polarbearology

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