人気ブログランキング | 話題のタグを見る


街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ロッシー(日本平動物園)の物語 (2)

ロッシー(日本平動物園)の物語 (2)_a0151913_19271082.jpg
Photo(C)English Russia/World Press

前記事よりの続き)
2007年12月11日のロシアの情報サービスフォンタンカ(Фонтанка)の記事は、レニングラード動物園で雌のウスラーダ(Услада)、雄のメンシコフ(Меншиков)の間に2頭のホッキョクグマの赤ちゃんが誕生したニュースを伝えています。記事によれば、11月27日に同動物園の雌のホッキョクグマのウスラーダはまず1頭を出産しました。そして数時間の間隔をおいて2頭目を出産したことが産室の2台のモニターカメラで確認されたことを伝えています。 この2頭、クラーシンとピョートル(ロッシー)が産室を経て一般公開されたあとの写真や映像については、このブログでも記事にしています(1月13日1月14日2月3日)。その他、別の写真記事もありますので御紹介しておきます。



今まで御紹介しなかった別の動画も御紹介しておきましょうか。 このウスラーダお母さんに押さえつけられているほうがピョートル(ロッシー)でしょう。(そういえば、ララも子供たちにプールで同じようなことをやっていましたね!)



さて、2008年4月4日、日本平動物園がレニングラード動物園と協定に合意した日のロシアの報道です。それによりますと、所有権をサンクトペテルブルクに置いたまま10年間の期限(延長が可能)でレニングラード動物園はホッキョクグマを日本平動物園に供与する(“Ленинградский зоопарк Санкт-Петербурга передал японскому зоопарку "Нихон дайра" префектуры Сидзуока белого медвежонка на десять лет на безвозмездной основе,” ― これはロシア語独特の契約用語でしょうか。「寄贈」ではありませんが、「貸与」という意味でもないようですね。あえて「供与」としておきます。総合的に見ますと内容的には解除条件付の貸与に近いでしょう。) ことを報道しています。その他、日本平動物園が新しいホッキョクグマの展示場を建設する義務も負う内容でした。さらに、今回のホッキョクグマの将来の繁殖のためのパートナー探しについて、日本平動物園が独力でうまくいかなかった場合は、レニングラード動物園はパートナー探しに協力する義務を負う旨の条項もあります。そして次が問題ですが、「北海道洞爺湖サミット」の直前までにホッキョクグマを送るという合意内容です。

この2007年暮れに誕生したこのサンクトペテルブルクのツインズについては他の多くの動物園も食指を伸ばしていたという話は一部で報道されていました。「20以上の動物園」という報道もあったはずです。そういった多くの動物園を差し置いて日本平動物園への供与することになったのは、園長さんが非常に熱心にレニングラード動物園にアプローチした結果であるとの報道もありました。それはまさしくその通りだったでありましょう。しかし、その背景には北海道洞爺湖サミットを直前に控えて、日本との関係に配慮しようとしたロシアの「政治筋」の力もあったからだと考えるべきでしょう。その理由として、この合意契約には東京のロシア大使館が大きな役割を果たした事実が、先に御紹介した2008年4月4日付けのロシア側の報道の最後の部分に見られます(>“В осуществлении проекта большую роль сыграли посольство РФ в Токио и японское представительство Росзагранцентра, осуществлявшие все контакты и проводившие переговоры с представителями организаций обеих стран.”)。 (また、プーチン首相、メドヴェージェフ大統領が共に、旧レニングラード/サンクトペテルブルクの出身であることが、実はあとから少なからぬ意味を持っていたらしい形跡があります。それについてはあらためて後に触れます。)

しかし、さらに本当にこれだけだったか...。そうではなかったようです。日本平動物園にとってはさらに(予期せぬ)救いの、「神の見えざる手」とも言えるものが働いたのでした。

(続く)
# by polarbearmaniac | 2010-03-26 09:30 | Polarbearology

ロッシー(日本平動物園)の物語 (1)

ロッシー(日本平動物園)の物語 (1)_a0151913_18113848.jpg
Photo(C)共同通信

2008年の夏にロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園から静岡の日本平動物園にやってきたロッシー(ロシア名 ピョートル)ですが、この機会に彼の個人史をまとめると同時に、知られざるいろいろなエピソードも紹介しておきましょう。

日本平動物園にロッシーが来る前に飼育されていたホッキョクグマの雄のジャックと雌のピンキーですが、この2頭とも私は会ったことがありません。ジャックについては2002年の1月に亡くなり(動物園のHP情報)、ピンキーについては2007年の5月4日に亡くなりました(朝日新聞記事)。地元のいろいろな方々のブログを読みますと、この2頭は地元の人々に大変愛されたホッキョクグマだったようです。

こうしてホッキョクグマが不在となってしまった日本平動物園の園長さんはホッキョクグマを獲得しようと渾身の奔走を始めました。その結果、2008年4月4日にサンクトペテルブルクのレニングラード動物園と「ホッキョクグマ飼育に合意書」の締結となったわけでした。ところがロシア側との合意ができた喜びもつかの間、園長さんはそれまでの無理がたたったのか、病に伏せることとなってしまったのでした。病名はがんでした。そして待望のホッキョクグマがサンクトペテルブルクから到着して一般公開を行うわずか2日前の8月12日に園長さんは亡くなってしまったわけです(この読売新聞の記事を是非ご参照下さい!)。 そしてとうとう8月14日にホッキョクグマが一般公開されました。そのセレモニーの場で静岡の市長さんは、この日を待たずにわずか2日前に亡くなってしまった園長さんの尽力を称えたのでした(ニュース記事参照)。

ピンキーの死によりホッキョクグマがいなくなってしまった日本平動物園の園長さんの抱いていた願い、それは子供たちにホッキョクグマのすばらしい姿をなんとしてもこれからも見てもらいたいということだったでしょう。 そしてその願いを実現するために必死の努力をしている園長さんの姿を神は見捨てなかったのでしょう、実に日本平動物園にとっての「幸運」をもたらす状況が、なんと「偶然」にもロシア側に生じていたのでした。次にロシア側の情報をたどりつつ、この「ピョートル(ロッシー)来日のドラマ」を見ていくことにします。
続く
# by polarbearmaniac | 2010-03-25 18:30 | Polarbearology

仙台・八木山動物公園のカイのロシア時代の写真

仙台・八木山動物公園のカイのロシア時代の写真_a0151913_1636183.jpg
Photo(C) 2005 ИНТЕРПРЕСС
仙台・八木山動物公園のカイのロシア時代の写真_a0151913_20535835.jpg
Photo(C)Ленинградский зоопарк

ロシアのTV局の過去のニュース映像記事を見ていましたら、おもしろいものがありました。それは、2008年7月7日のТелекомпания НТВのニュース番組で、サンクトペテルブルクのレニングラード動物園から本日、前年暮れに生まれたピョートル(ロッシー)が日本の静岡(日本平)に送られたことを伝えるニュースです。以下でそのニュース映像がご覧になれますが、まず驚いたのはこの映像はウスラーダの生んだピョートルとクラーシンの双子を撮った映像ではなく、ウスラーダがその前の前、すなわち2002年の暮れに生んだ3つ子の映像が使われていることです。このTV局は、ケージに入れられたピョートルの映像を撮ることができず、そしてクラーシンとピョートルの双子の映像も撮っていなかったためでしょうか、前々回の出産の2002年の3つ子の映像を転用したのでしょう。映像の中でこの3つ子の顔を見ていますと、確かにピョートルの兄たちだけあってピョートルに良く似た顔をした子供が映っていますね。この三つ子は、それぞれベーリング(Беринг ― 現在は中国・大連)、セードフ(Седов ― 現在はロシア・クラスノヤルスク)、マリーギン(Малыгин ― 現在はモスクワ)という探検家の名前が付けられています。

さて、ここで映像が実際に転用された2002年の三つ子の誕生と2007年誕生のクラーシンとピョートルの誕生との間にウスラーダは2004年12月2日にも1頭を出産していますが、その1頭こそ現在仙台・八木山動物公園で飼育されているカイなのです。カイというのは日本に来てからの名前であってサンクトペテルブルク時代の名前は一般公募で「ラダゴル(Ладогор)」であり、それを短くしてラディック(Ладик)と呼ばれていたそうです。当時からなかなか泳ぎが達者な子だったようですね。このラディック(後のカイ)ですが、レニングラード動物園のホッキョクグマの産室に初めてCCTVが導入されて、それによって出産が確認された個体だったとのことです。2006年2月2日のРИА Новостиの記事は、ラダゴルが日本に行くことが決まったことを報道しています。 (* 尚、同記事の記述の中でラダゴル/ラディックの誕生日が2005年12月2日とされていますが、これは同記事の間違いで正確には2004年12月2日が正解です。)

こうして、カイ、そしてその弟のロッシー...いずれもロシアの白夜の古都サンクトペテルブルクからウスラーダお母さんと別れて、はるばる遠い日本にやってきたわけでした。

*(後記) レニングラード動物園のウスラーダお母さん、本当にすごいパワーだと思います。 2000年代に入ってからに限っても、昨年の暮れに誕生したツインズまでに合計10頭出産しています。 しかもそのうち9頭が雄! ロシアの動物園担当者が嘆くのも、もっともなことです。いや、ロシアだけではありません、世界のホッキョクグマ界の繁殖にとっては実に「痛い」状況を結果的には作ってしまったことになったわけです。
# by polarbearmaniac | 2010-03-25 09:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類

最新の記事

........and so..
at 2023-03-27 06:00
モスクワ動物園のディクソン(..
at 2023-03-26 03:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-25 02:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2023-03-24 02:00
鹿児島・平川動物公園でライト..
at 2023-03-23 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-22 03:00
名古屋・東山動植物園でフブキ..
at 2023-03-21 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-20 02:00
モスクワ動物園のディクソン ..
at 2023-03-18 22:20
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2023-03-18 03:00

以前の記事

2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索