街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ターニャの悲劇(後) - 「繁殖計画(EEP)」と「個体の幸福」の狭間で

よりの続き)

さて、これからが問題です。 EAZA(European Association of Zoos and Aquaria)欧州希少動物繁殖計画(EEP-European Endangered Species Breeding Programs)に従う形で取られた処置は、ウィーンの双子のお母さんであるオリンカをロッテルダムに移動させ、そこにいるやはりウィーンから「出張」しているエリックと「再」ペアリングさせるというものでした。3年ほど前にウィーンでペアリングしてツインズをもうけたペア同士が今度はロッテルダムで、しかも両者の出張による再ペアリングということとなりました。なんとウィーンでは、双子が母の元を去ってハノーファーに行くより先に、母が息子たちのもとを去ることになったわけです。欧州のブロガーさんたちは、果たしていつオリンカお母さん息子たちから引き離されてウィーンからロッテルダムに移送されるのか固唾を呑んで見守っているようです。シェーンブルン動物園の担当者は日時についてはノーコメントのようで、欧州のブロガーさんたちは来週ではないか、などと噂しあっています。

シェーンブルン動物園からオリンカお母さんが去り、双子の息子たちも4月にハノーファーに旅立ち、結局ウィーンに残るのは今回ロッテルダムからやってきたターニャだけです。ウィーンの動物園のホッキョクグマ舎も近々改装があるらしく、施設の関係で当分はターニャ1頭だけの飼育になります。 年齢からいえば、繁殖に関して本来はもっと緊急の問題であるはずのターニャのパートナーはもう用意されていないのです。

ウィーンのブロガーさんは、19歳になったにもかかわらず今まで出産経験のないターニャが、EAZAの「繁殖計画(EEP)」からはもう外されてしまったことに触れ、「繁殖計画(EEP)」は結構だが個体の幸福が軽視されているのではないかと疑問を呈してターニャに深い同情を寄せています。「繁殖計画(EEP)」から見捨てられたような形で今回ウィーンに送られてきたターニャに対して、ウィーンのブロガーさんの心からの暖かい歓迎の気持ちをあらわしていることは心温まるものを感じます。

*(後記1)このターニャは実に数奇な運命を辿っている個体のようです。欧州のブロガーさん情報によれば、彼女は1990年12月にロッテルダムの生まれ、92年にパリの動物園に移動し2003年にアムステルダムの動物園に移動、2005年にはオランダ国内のRhenenの動物園に移動しますがペアリングの相手との相性が悪く、わずか3ヶ月で再びアムステルダムに戻ります。その後2008年にロッテルダムの動物園の新しい飼育場の完成に伴い、生まれ故郷のロッテルダムに戻った...と、こうなります。雄のエリックとの間での繁殖が期待されましたが、うまくいかなかったことはここで御紹介した通りです。

*(後記2) 「繁殖計画」と「個体の幸福」との関係は、私のブログのテーマだと当初から考えています。ですので、これから折に触れてこの問題について触れ、私の意見も述べていきたいと考えています。

*(後記3)私が昨夜この2つの投稿のドラフトを書き、夕方にアップしていた間に現地からの報道があり、なんとオリンカは昨日の4日にウィーンからロッテルダムに移動になってしまいました。アルクトスとナヌークの双子は、母親と2年以上ウィーンで暮らしたわけでしたが、オリンカお母さん(下の写真)が先に突然息子たちに別れを告げてしまったわけです。ウィーンのホッキョクグマファンにその移動の日時は知らされず、オリンカはこうして「繁殖計画」に沿ってウィーンを去りました。 私がウィーンのファンならば、いくら繁殖が重要とはいえ、移動したあとの本日の金曜日になって動物園側がプレスリリースするようなやり方も含め、納得がいかない今回の件に大きく失望したことでしょう。
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Photo(C) Yahoo Inc. / N.N. alias “Patty926”

*(後記4) 続報があります。こちらをご参照下さい。

*(後記5) ターニャのロッテルダム動物園からの移動が決定したことに関してはオランダのTVニュースの映像がありますのでご紹介しておきます。映っているのはターニャと、そして雄のエリックです。

by polarbearmaniac | 2010-03-05 17:35 | Polarbearology

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