街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
by polarbearmaniac
ホッキョクグマ繁殖計画(Polar Bear Survival Plan)の日本版作成が急務

8月13日付の朝日新聞の記事にはいろいろと示唆的な内容が含まれています。なかなかよく書かれた記事だとは思いますが、結果的には日本の動物園におけるホッキョクグマ飼育・繁殖の問題点をあぶりだした結果となっています。要するに各動物園がバラバラに動いているという実態です。一番問題だと思ったのは以下の部分です。
>80年に世界の199施設に633頭いたホッキョクグマは、07年には135施設356頭になった。「価格」は5~6年前の倍になり、輸出国のロシアなどは環境の良い施設を選ぶようになっているという。このため、メスが高齢となった上野動物園はホッキョクグマ舎を500平方メートルを超える国際水準に建て替え中だ。それでも、モスクワの動物園からは「順番待ちの列は長い」と言われたという。
上野動物園がホッキョクグマ舎を建て替える理由は、要するにモスクワ動物園からホッキョクグマを購入するためですか! 日本の首都・東京の上野動物園ともあろうものが、全く首を傾げたくなります。それとも、これを口実にして施設改修の予算を獲得するためだったのでしょうか? いずれにせよ、「ホッキョクグマさえいればよい。」という旧態依然とした飼育・展示の考え方から一歩も出ていないと思われます。
日本の動物園におけるホッキョクグマの繁殖にはどうしてもアメリカとヨーロッパの動物園との協力が不可欠です。昨年暮れに円山動物園がEAZAと交渉したものの結果的には不調であった理由は、日本の動物園のホッキョクグマ飼育数が多い(アメリカに次いで2位)のだから自国内で努力してほしいという理由があったはずです。これを言い換えますと、日本の動物園には欧州におけるEEP (European Endangered Species Programmes) やアメリカにおけるSSP (Species Survival Plan) などのようなホッキョクグマ(希少動物)繁殖プランが欠如していることが問題だと思われます。 ですので、早急に非常に突っ込んだ形での日本版ホッキョクグマ繁殖計画PBSP (Polar Bear Survival Plan – 仮称) を作成することが必要です。そのような具体的な繁殖プランが無い国には欧州もアメリカも個体を送ることは考えにくいでしょう。この日本版PBSPにおいては全国の動物園のホッキョクグマの血縁関係を明らかにし、それに基づいて繁殖のための明確で具体的な指針と実行計画の作成を行うべきです。このプランの作成には欧米の複数の専門家を招き、日本の動物園関係者とのしがらみのない形で彼らの意見を取り入れるべきでしょう。同時にPBSPには施設の改善、飼育環境の向上も定めるべきです。
結果として、現在すでに繁殖の実績があり、そして今後の可能性も期待できるララとデナリのペア以外の繁殖可能年齢のホッキョクグマを全国レベルで再配置(relocation)すべきと考えます。 こうやって今後3~5年でなんとか「実績」を積み上げるということです。「実績」というのは、実際の出産にまで至らずとも具体的な計画(PBSP)に基づいて繁殖への具体的な努力を一歩一歩積み重ねるということです。同じ雄雌の組み合わせで2年(2繁殖シーズン)で結果が出ない場合は、さらに個体の再配置を行って繁殖への努力・姿勢を見せるべきです。それでも結果が出ない場合は、「我々はこの繁殖計画(PBSP)に基づいてこれだけの期間努力してきたが結果が出ていない。ついてはそちら(欧州&アメリカ)の個体との交換によって繁殖を図りたい....。」こう主張しなければ欧米相手に説得力はないと思われます。こういうことをやりながら、一方で同時にロシアからの個体、特にアンデルマとウスラーダの血の入っていない複数の個体の入手を狙うということです。
こうしたトータルなプラン中の一部としての各動物園の施設改良であるべきで、「モスクワ動物園からホッキョクグマを購入するため」に上野動物園がホッキョクグマ舎を改築するというのではまったく発想の順番が違うと思われますね。
ともかく時間がありません。
by polarbearmaniac
| 2010-08-16 17:00
| Polarbearology
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