街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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歴史を変えたかもしれない1頭のホッキョクグマ ~ 危機一髪のホレーショ少年

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Photo: “Nelson and the bear” (by Richard Westall)
National Maritime Museum, Greenwich

イギリス本土侵攻を狙う皇帝ナポレオン、そのフランス・スペイン連合艦隊を1805年のトラファルガーの海戦で破ったイギリス艦隊を率いていたのがネルソン提督でした。彼は卓越した戦略家であったと同時に優れた戦術遂行能力を備え、イギリス艦隊を勝利に導きナポレオンのイギリス本土侵攻を阻止した人物として、イギリスでは現在も救国の英雄として高く評価されています。

このホレーショ・ネルソン提督、実は非常に若かりし時の1773年に北方航路探検に参加し航海の過程でスヴァールバル諸島(現在はノルウェー領)近くを航海中に船の進行が氷に妨げられてしまいました。そのとき若きホレーショ少年が見たものは1頭の巨大なホッキョクグマでした。ホレーショ少年はそのホッキョクグマを撃とうと船から氷面に降り立ちました。1発しか装弾されていない彼のマスケット銃から放たれた弾丸は標的のホッキョクグマをはずしてしまいました。至近距離に迫ってきた狂暴なホッキョクグマに対してホレーショ少年は到底勝ち目がないのもかかわらず銃の台尻を武器にして勇敢にも立ち向かおうとしました。ホレーショ少年危機一髪! ところがどうでしょうか、その瞬間ホレーショ少年とホッキョクグマが乗っていた氷が割れてホッキョクグマとホレーシオ少年との間を分ったのでした。さらにホレーショ少年を援護するために船から空砲が撃たれ、ホッキョクグマはそのままそこを立ち去ったのでした。九死に一生を得たホレーショ少年は時に僅か15歳。

ホレーショ・ネルソン提督は1805年のトラファルガー海戦の最終場面で流れ弾に被弾して結果的には戦死してしまうわけですが、そのネルソン提督の最後の言葉は、

"Thank God, I have done my duty..."

でした。 彼の遺体はロンドンに運ばれ国葬の後にセントポール寺院に手厚く葬られたのでした。

さて、歴史にifは禁物ですが仮に1773年に氷面が割れずに、そしてホッキョクグマが彼から立ち去ること無しにホレーショ少年がホッキョクグマと素手同然で戦っていたと仮定しましょう。ホレーショ少年は疑いも無くホッキョクグマに殺されていたことでしょう。つまり後年のあの天下の名将ネルソン提督は存在していなかったことになります。そうなれば、1805年の段階でイギリス海軍の制海権は皇帝ナポレオン率いるフランス海軍に握られ、ナポレオン軍のイギリス侵攻が可能になったように思われます。そうなったとすれば19世紀の欧州の歴史は大きく変わっていたことでしょう。デイリーテレグラフ紙の記者に言わせれば、「ホッキョクグマがもう一つ彼に接近できていれば、我々は現在フランス語を話していたかもしれない。」ということになります。
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National Maritime Museum, Greenwich

“Thank God, I have done my duty.”はネルソン提督の辞世の言葉でした。 ひょっとして現在のイギリス人は次のように言わねばならないのかもしれません。

“Thank Polar Bear, he did his duty.”

*(資料)
National Maritime Museum
National Maritime Museum Collection
Daily Telegraph紙 (2010年8月24日付)
BBC - British History in-depth (Nelson: The Hero and the Man)
by polarbearmaniac | 2010-08-25 17:00 | Polarbearology

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