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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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クルミ、男鹿水族館へ「レンタル」移動が内定

クルミ、男鹿水族館へ「レンタル」移動が内定_a0151913_16595629.jpg
クルミとツヨシ 2010年9月11日 (於 釧路市動物園)

読売新聞・秋田版の2月8日付け報道で、釧路市動物園のクルミが男鹿水族館(GAO)へ移動することが内定した旨の記事が発表されました。部分的に引用いたします。

>男鹿水族館「GAO」にいるオスのホッキョクグマ「豪太」(7歳)の花嫁として、北海道釧路市動物園は、メス「クルミ」(14歳)を3~5月にも貸し出す方針を固めた。延びていた豪太の花嫁がようやく決まり、県は受け入れ準備を本格化させる。 釧路市を含む、道内でホッキョクグマを飼育する主要4動物園が、繁殖のため動物園間でクマを移動させる計画をまとめたためで、ほかのクマの移動先とともに、今週にも発表される(後略)。(下線は引用者)

釧路市動物園がクルミかツヨシをGAOへ貸し出す件についてはすでに昨年からの決定事項であったわけですし、クルミの出産がなかった場合にはクルミがGAOに移動し出産があった場合はツヨシがGAOに移動するという方針も昨年来からのものです。 ですので、さほどとりたてて不思議なニュースではないわけです。しかし昨年秋に「ホッキョクグマ繁殖検討委員会」が発足したこともあり、それとの関連で果たして昨年決定されたスケジュール通りに進行するかどうかやや不透明な印象を与えていたのは事実です。

このブログで昨年10月に2回ほど「GAOに行くのはクルミかツヨシか」について日本のホッキョクグマ界の血統面から私なりに検討したことがありました(「釧路に残るのはクルミかツヨシか?」「人工哺育まで行うか?」)。 結論としては、「ツヨシが釧路に残ったほうが幾分優位」といたしました。ただしその優位性は、さほど大きなものではないとも感じていました。といいますのも、「クルミの繁殖」を「クルミとツヨシの2頭の繁殖」と視野を拡大して考えれば、クルミには北海道内にはデナリとイワンというパートナー2頭が可能ではあるものの、ツヨシには北海道内には直近にはイワン1頭しかいないという事実です。となればGAOに実際に移動するのはツヨシではないかと予想したのが先日の投稿である「北海道内の動物園での次のホッキョクグマ再配置を予想する」の(上)(下)でした。「ホッキョクグマ繁殖検討委員会」の活動の成果は今春の繁殖ペアの選定には時間的な余裕がないため、今春は再び北海道内での移動に限られるだろうというのが現在も私の予想です。クルミとツヨシのどちらかを釧路に残すかという発想ゆえに悩ましくなるのであって、それならどっちも釧路から移動させたほうがスッキリするというのが私の考え方でした。1頭はGAOに、もう1頭は札幌か旭川へということです。雌2頭を一時的にではあれ同時に釧路に不在となるかわりにイコロとキロルが釧路に移動すれば釧路の関係者も不満はないだろうという考え方でした。

先週末の帯広滞在中に私のホテルの部屋に朝届けられた北海道新聞の道東版の記事によりますと、北海道内4園の園長さんの会議が今月中に開催され、北海道内のホッキョクグマの次の再配置が決定されるという内容でした。しかし今回の読売新聞の記事は、すでにこの北海道内の新しい移動計画が決定済みであることを伝えている点で注目されます。この事実を深読みしていきますと、「ホッキョクグマ繁殖検討委員会」の座長である福井さんの組織上の上司にあたる旭山動物園の園長さんがこの4園会議をリードしたであろうことから考えれば、やはりクルミかツヨシのどちらかをGAOに移動させるかは「ホッキョクグマ繁殖検討委員会」内でのなんらかの移動計画の一環としての意味付けを持っていると言えます。やはりGAOへの1頭の移動は釧路と男鹿(秋田県)との両者間だけの取り決めという性格を換骨奪胎し、あくまでも日本国内のホッキョクグマの繁殖計画の一環としての位置付けを持たせたことは歓迎できると思います。ベクトルの方向は「嫁(婿)入り」という「両家の荘重なる儀式」ではなく国内レベルでの「レンタル」という、フットワークの軽さを重視する方向に明らかに向いていると考えます。

4園会議の結論として注目すべきなのは釧路に残るはずのツヨシのパートナーをどうするかでしょう。今回の読売新聞が伝えている、今週に予定されているという北海道4園会議の結果の発表を注視したいと思います。

*(追記)4園会議の決定がすでになされているという読売の記事の内容が正しければ、おそらく今月一杯に移動の対象となる個体についてはその移動を完了させるというスケジュールとなるでしょう。日本のホッキョクグマ界、いよいよ風雲急を告げてきた感じです。

(資料)
読売新聞 (秋田版2011年2月8日付
(過去関連投稿)
釧路市動物園の期待と苦悩(前) ~ 釧路に残るのはクルミかツヨシか?
釧路市動物園の期待と苦悩(後) ~ 人工哺育まで行うか?
北海道内の動物園での次のホッキョクグマ再配置を予想する(上)
北海道内の動物園での次のホッキョクグマ再配置を予想する(下)
ホッキョクグマの「レンタル」移動について
by polarbearmaniac | 2011-02-09 01:00 | Polarbearology

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