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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコルの独居の「孤独」

カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコルの独居の「孤独」_a0151913_15333779.jpg
アリコル Photo : Almaty-City.kz

動物園で飼育されているホッキョクグマの数が減少し、そして残っているホッキョクグマも高齢化していく....これは日本の動物園にも顕著な傾向として少しずつ現れてきています。雄雌がペアで飼育されていたものの、そのどちらかが亡くなってしまったあと残されたほうのホッキョクグマが1頭でいる姿を見て来園者がその残された個体の孤独を同情する....そういったシーンはよくあります。カザフスタンのアルマトイ動物園でもそういったシーンがあるようです。残されたホッキョクグマに対しての記者の深い同情を伝える記事がカザフスタンスカヤ・プラウダ (Казахстанская Правда) 紙の2月18日付けの記事です。
カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコルの独居の「孤独」_a0151913_1559193.jpg
カザフスタン・アルマトイ動物園で飼育されている22歳になる雄のアリコル(Алькор)は1990年にソ連(当時)のカリーニングラード動物園からこのカザフスタンのアルマトイ動物園に移ってきました。アリコルはやがて5歳年上の雌のクリスティーナとペアを組みました。2頭は大変な仲がよく両者の愛情に満ちた姿が見られたそうです。クリスティーナは毎年のように赤ちゃんを出産しましたが彼女はうまく子育てができず、赤ちゃんは成育することがなかったのでした。クリスティーナは人工哺育によって育てられたために母親としての本能が未発達であったためにそういったことがおきたのだろうと飼育担当は考えているようです。しかしこのアルマトイ動物園はとうとう1頭の赤ちゃんを人工哺育で育て上げたのでした。健康に成育したその雄の赤ちゃんはその後チェコに送られたそうですが、この赤ちゃんこそ現在チェコのブルノ動物園で飼育されており、そこで雌のコーラと組んであの2007年暮れに双子として生まれたトムとビルの父親となったウムカなのです。

さて、そのクリスティーナは3年前に24歳で亡くなってしまいましたが、その後このアリコルは1頭で飼育されています。このアリコルを訪ねた記者は1頭でいるアリコルを見て同情の念を禁じえない様子が伝わってきます。子供たちはこのアリコルに対して手を伸ばして触ろうとしていますが、ホッキョクグマが本来は危険な動物であることを知らないのでしょう。しかし子供たちはこのアリコルに対して親愛感を感じているためにこうした行動となると考えられます。

かつてこのアルマトイ動物園に飼育されていたホッキョクグマでは、1986年に28歳で亡くなったトーマスという名の雄が有名だったようです。その他、かつてはホッキョクグマ以外にもクマは何頭もいた記憶のある記者は、「何故クマの数がこれほど少なくなったのか?」と飼育主任に尋ねます。飼育主任の言うには、「サーカスで飼育されていたヒグマをこの動物園で引き取って飼育したことがあったが、そのクマはサーカスの時の習慣か、お客さんを楽しませようとして格子をよじ登ったりエサをねだったりした。そのために、このクマがエサを与えられておらず飢えていると考えた客さんが動物園管理者に対して怒りをぶつけたことがあり、クマたちは他の動物園に売却された。」という内容の返事だったそうです。

現在残っているホッキョクグマですが、ホッキョクグマ舎が老朽化しているために動物園側は新しい施設を建設するそうで、記者も希望を持ちつつ1頭で暮らすアリコルの健康を心から祈り、彼に別れを告げたようです。なかなか素晴らしい記事だと思います。彼の生きてきた「歴史」というものにも触れつつ、記者のアリコルに対する心からの同情の念が良く伝わってきます。

壮年・老年になってパートナーに先立たれたホッキョクグマが本当に寂しく感じているかどうかはわかりません。ホッキョクグマは本来1頭で生きている動物...という事実を考えれば案外1頭の「孤独」を楽しんでいるようにも思います。しかし動物園という場所で長年飼育されてきたホッキョクグマに、野生のホッキョクグマの本来の感じ方がそのまま当てはまるかどうかについては幾分、微妙なものがあるようにも思います。

尚、この記事の中で記者は、飼育下で45年生きたホッキョクグマがいることを指摘しています。これは勿論、あのデトロイト動物園で飼育されていた個体の43歳10ヶ月の世界記録のことを述べているのでしょう。

(資料)
Казахстанская Правда (Feb.18 2011 - Скучает косолапый и барабанит лапой)
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by polarbearmaniac | 2011-02-18 17:00 | Polarbearology

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