街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ドイツ・ニュルンベルク動物園、フェリックスの大活躍 ~ 欧州における偉大な雄の素顔

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フェリックス Photo(C) AP

昨年暮れに世界の6つの施設で合計8頭誕生したホッキョクグマの赤ちゃんのうち、3頭の父親が今回ここで御紹介する雄のフェリックス(Felix)です。 

彼は現在ドイツ・ニュルンベルク動物園で飼育されており、欧州におけるホッキョクグマの繁殖で今後将来ますますの活躍が期待されています。彼はウィーンのシェーンブルン動物園で2001年11月に生まれ、現在9歳になります。旭山動物園のイワンより1歳年下です。しかしイワンと異なるのは、彼にはすでに5頭の父親となっているということです。フェリックスは昨年12月に同動物園で誕生したツインズの父親であるばかりでなく、2007年暮れに誕生し後に人工哺育で育てられたフロッケの父でもあります。また、あのデンマークのオールボー動物園で2008年暮れに誕生したミラク、そして今回昨年の11月に誕生した赤ちゃんの父親でもあるのです。ドイツとデンマークという2つの国を出張で渡り歩いて繁殖に貢献するという獅子奮迅の活躍といってよいでしょう。
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フェリックス Photo(C) Uwe Niklas/ Nürnberger Zeitung

彼が現在のニュルンベルク動物園で飼育されるようになったのは2004年からのようですが、2007年の春、彼が5歳半のときに彼とヴィルマとヴェラとの間に繁殖行動が確認されました。この結果2007年の暮れにヴェラが赤ちゃんを生み、そして人工哺育で成育したのがあのフロッケです。この一連の出来事については昨年秋に「ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択」として何回かにわけて投稿した通りです。フェリックスはこのヴェラの出産直前に飼育スペースの関連などから一度ドイツ国内のゲルゼンキルヘンの動物園に預けられましたが、ヴェラの出産した赤ちゃん(フロッケ)が人工哺育となりヴェラの子育てがなくなったのを機に、ヴェラとの引き続きの繁殖を目的として2008年の2月に再びニュルンベルク動物園に戻ります。運よくヴェラとの繁殖行為が確認された後(この時もヴェラは年末に出産しましたが赤ちゃんの成育はありませんでした)、フェリックスは今度は別の雌とさらなる繁殖を目指し、今度はデンマークのオールボー動物園に移動したのでした。それが2008年4月のことです。移動に次ぐ移動となったわけでした。オールボー動物園には繁殖可能となっていた雌2頭(ヴィクトリアとメーリク)が飼育されていましたがパートナーとなるべき雄がいなかったわけです。それだけフェリックスへの期待が強かったのです。それにしても、雄の飼育スペースの問題も背景にあるとはいえ、いくらなんでも移動が多すぎるとは思いますが、しかしEAZAのホッキョクグマ繁殖計画がいかに危機意識のもとに行われているかをも物語るものでしょう。

オールボー動物園に移動したばかりのフェリックスはここでも大活躍です。いきなり雌のヴィクトリアと繁殖行為を行い、その結果その年の12月に生まれたのが雄のミラクでした。1年おいて今度は2010年の早春に今度はメーリクとの繁殖行為が確認され、その結果昨年11月20日に生まれたのが今回の赤ちゃんです。以下でフェリックスとメーリクの様子をご覧になってみて下さい。





さて、オールボー動物園でのメーリクとの繁殖行為の直後、フェリックスは昨年2010年の4月にまた再度ドイツのニュルンベルク動物園に戻り本来のパートナーであるヴェラと再会します。フェリックスは朝の7時にニュルンベルク動物園に到着し、2時間半後には飼育展示場にその姿を復活、そしてその日の14時半にはもうヴェラと再会したということだったようですが、再会したこの2頭はたちまち再び意気投合したようです。



そして再びまたヴェラとの繁殖行為がありました。



そしてその結果昨年12月に生まれたのがグレゴールとアロイトの雄の双子というわけです。 ニュルンベルク動物園の園長代行の方の言によればフェリックスは大変な「紳士」であり、どの雌とでもうまくやっていける性格の良さがあるということです。そう言われてみれば、繁殖能力の高い雄のホッキョクグマはこういう性格であることが多いようです。モスクワ動物園のウランゲリなどはこの典型でしょうし、ロッテルダム動物園のエリックやアウヴェハンス動物園のヴィクトルもそうらしいです。日本では札幌・円山動物園のデナリもそうですね。例外的なのはサンクトペテルブルクのメンシコフでしょうか。メンシコフが雌を選り好みするホッキョクグマであることは、レニングラード動物園のスキーバ園長も語っていました。 しかしまあ、一般的には神経質すぎる雄は繁殖には向いていないのかもしれません。 それから、このフェリックスの姿を写真や映像で見てみても気が強いという感じはしません。そうした彼が何度もの移動という厳しい条件のもと、こうやって繁殖に貢献し続けているということは心強い話です。 日本の動物園でも、若い雄の個体の移動ということに関しては思い切ったやり方を考えてもよいでしょう。

(*追記)フェリックスの昨年6月の一頭での映像を追加しておきます。なかなか優しそうな男に見えますが(笑)。



(資料)
DR Forside (Mar 31 2008)
Aalborg Zoo (The polar bear enclosure)
Tiergarten Nürnberg (Aktuell - Eisbär Felix ist wieder da und Eisbärin Vera freut sich)
nordbayern.de (Dec.6 2010) (Dec.8 2010)
Hamburger Abendblatt (Feb.9 2011)
Nürnberger Zeitung (Feb.28 2011)
by polarbearmaniac | 2011-03-12 13:00 | Polarbearology

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