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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ララの赤ちゃんの将来は? ~ 現時点では当然白紙とすべき

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ララの赤ちゃんの将来は? ~ 現時点では当然白紙とすべき_a0151913_23353498.jpg
(2011年5月28日撮影 於 札幌・円山動物園)
Nikon D7000
Ai AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED

2つの点においてあまりにも時期尚早です。一つは私が今こんなことを書くということ。もう一つは、ネット上の情報からなにかを憶測・詮索してそれを信じ込むということです。特に後者について日本平動物園のロッシーと云々といった憶測です。

「この赤ちゃんは日本平のロッシーのパートナーになることが決まっている云々」というような憶測話が出てくるのには、あながち原因がないわけではないのかもしれません。現に先週末の札幌で、時々お話をさせていただくお二方から別々にこの「噂話」について話しかけられました。なるほど、そういう憶測を生むような情報がネット上や「楽屋裏」に存在するらしいのかもしれません。私にはよくわかりません。 しかしそうとするならばここで、このことについて大きい視野で考えてみたいと思います。

まず最初にこの赤ちゃん、果たしてイコロとキロルの時のように円山動物園によって海外個体との交換を宣言されるかどうかですが、前回のイコロとキロルのケースのその後の経過を踏まえて考えれば、この赤ちゃんがいくら雌(メス)だからと言って前回のような「宣言」がされるかは疑問と考えます。それよりもまず、この赤ちゃんに「宣言」がなされてもなされなくても結果的には日本国内に留まるだろうと予想します。雌のホッキョクグマの幼年個体を「売ります」とか「寄贈します」とか、要するに交換を前提としなければ欧米の動物園はいくつも手を挙げるでしょう。引く手あまただと思います。EAZAは欧州における「ロストック系」の血統を可能な限り薄めたいと考えていることは間違い無いだろうと考えます。ララの赤ちゃんのパートナー候補なら欧州だけでもイギリス〔スコットランド〕のウォーカー、ドイツのシュプリンター、アルクトス、ナヌーク、グレゴール、アレウト、オランダのヴィックス、デンマークのオゴ、その他まだまだ何頭もの候補個体の雄がいます。多くの動物園が手を挙げるでしょう。ただしかし日本側(円山動物園)が「宣言」しても、条件はあくまでも「交換」です。そう言った瞬間に欧州の動物園では(具体的にはEAZAの担当者ということになりますが)黙ってしまうでしょう。日本の動物園におけるホッキョクグマの繁殖に対して、根拠があるか否かは別の問題として彼らが何らかの「疑念」を持っているだろうことは別としても、欧州の側にも欧州域外に出してもよい幼年の雌の個体は非常に少ない(あるいはほとんといない)わけです。ですから、雌同士の交換をこちらから申し出ても非常に困難でしょう。 ということは、交換を「宣言」してもしなくても結果的には今回のララの赤ちゃんは国内に留まることは確実と思われます。

さて、今回のララの赤ちゃんが国内に留まるとすればいったいパートナーはどの雄の個体となるかですが、確かに年齢的に近いのは日本平動物園のロッシーです。しかし考えてもみて下さい。今度の赤ちゃんの姉のツヨシやピリカすらパートナーに確実な展望がありません。前者については釧路市動物園でパートナー無しに1頭で飼育されています。後者については他にまだ2頭のパートナーを相手にせねばならない「心優しすぎるホッキョクグマ界の超エリート・イワン」次第という非常に不確定な要素があるわけです。こういう状況下で日本平動物園ならばロッシーのために今のうちに今回のララの赤ちゃんを早々と確保しておきたいと考えたとしても不思議はないかもしれません。確かに先日園長さんが来日したレニングラード動物園、そして円山動物園に二股賭けておくのは確実かもしれません。しかし重要なことは、日本における血統の多様性を可能な限り維持しつつホッキョクグマの個体数の減少を回避していくということであって、特定の動物園の人気者のパートナー探しということだけに選択を限定したとすれば実に見識と視野の狭い話となるでしょう。こと現在に至ってまで動物園関係者がホッキョクグマの繁殖に関して、まさかそこまで旧態依然とした考え方をするとは思いたくありません。日本平動物園には、なにがなんでもサンクトペテルブルクのレニングラード動物園の全面的な協力を得て「外の血」の個体を導入してほしいと思います。というのも、海外でホッキョクグマの繁殖に多くの実績を持つ動物園と密接な関係を維持している日本の動物園は日本平動物園だけだからです。

今回のララの赤ちゃんの将来、特にパートナーがどの個体になるかは今後4~5年の日本におけるホッキョクグマの繁殖の成果を見極めてから考えるべきことだと思われます。「末永くお幸せに」は人間の結婚式において述べられるフレーズです。ホッキョクグマの繁殖について危機的な状況に入り込んでいる日本においては、繁殖のないペアには「末永くお幸せに」一緒にいられては困るわけです。ホッキョクグマの繁殖という至上目的のためには、我々の側としては人間で言うところの「結婚」の概念、社会通念などは笑い飛ばすことが必要なのです。

今回のララの赤ちゃんの将来(特にパートナー候補)については日本国内に留め置くという点以外、現段階では白紙にしておくのがよいと思われます。繰り返しますが、現段階であれこれ言うのはあまりにも時期尚早です。

(*追記) あくまでも単に机上における頭脳ゲームだと想定して、今回のララの赤ちゃんを欧州のどの個体と交換すれば欧州と日本のどちらにとっても血統の観点から有利であるかということならば、欧州個体の血統をいろいろ調べた結果を踏まえて実は今回は理論的には「正しい解答」が存在しています。それはオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園でフリーダムお母さんから昨年暮れに生まれたシークーとセシのどちらかです(彼女?たちは「ロストック系」です)。実はこの双子ちゃん、まだ性別が判明していません。私は最低1頭は雌だと睨んでいます。でも交換は今までの経緯から言っても、まず実現しないでしょう。
(追記に関する過去関連投稿)
シークーとセシ、その伸びやかさと無邪気さの大きな魅力



by polarbearmaniac | 2011-06-02 12:00 | Polarbearology

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