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ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(4) ~ 遠征での映像より

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アンデルマ (2011年9月11日撮影 於 ロシア・ペルミ動物園)

前投稿よりの続き)

「アンデルマの物語(仮題)」(掲載原著 “От зверинцев к зоопарку. История ленинградского зоопарка”)の一部の御紹介の続きです。前回は2頭のホッキョクグマの捕獲に成功し、レニングラード動物園の捕獲隊がレニングラードに戻るべく捕獲した2頭のホッキョクグマをケージに入れて飛行機に乗り込んだところまででした。



レニングラード動物園に到着し獣医は急いで傷の診察を行いました。その結果、獣医はすぐに地元の医学校の歯学部に連絡したところ、そこのスタッフはホッキョクグマの治療の経験はないものの快く出来うる限りの協力を申し出てきました。医学校のスタッフたちが動物園にやってきて2頭(すなわちアンデルマとメンシコフに麻酔をかけ、コメニスとボグダノフ、その他の医師3名(キリロフ、チェボタレフ、ペレカリン)がすぐさま手術に取り掛かったのでした。

傷口は十分に、そしてきれいに洗浄されました。頭部から2か所ほど、ほんの少し皮膚を切除し傷口から体毛を取り除いたあとに縫合されました。そういった手術は成功しました。 こういった猛獣が患者の場合の治療には定まったマニュアルのようなものは存在しませんので、その場その場での対応となるのです。しかし医師は非常にうまく対応しました。しかしもう1頭のホッキョクグマ(アンデルマとメンシコフ以外のもう1頭)は肺炎をおこしており、この手術によってさらに体力を落としたために肺炎の病状は悪化し、この1頭については命を救うことができませんでした。(訳者注 - アンデルマとその双子2頭のうち1頭は治療がうまくいかずに亡くなってしまったということを意味します。 つまり亡くなったのはメンシコフの双子の兄弟ということになります。)


レニングラード動物園でのその後のアンデルマですが、2006年に発行された「カザン市動物園の過去、現在、未来」(«Казанский зооботсад вчера, сегодня, завтра» (Авторы: Гильмутдинов Р.Я., Мударисов А.Р., Малев А.В. 2006 г.)という本の記事を引用した形で紹介されています。その要点をまとめてみます。

レニングラード動物園ではアンデルマにパートナーを与えることができなかったため、アンデルマは3年ほどしてカザン市動物園に移動になりました。しかしカザン市動物園の雄のウムカはすでにかなりの年齢になっていてアンデルマのパートナーとなることが難しくなり、アンデルマは1997年にペルミ動物園に移動しました。そこで彼女のパートナーとなったのがチェクチ半島で野生で捕獲された雄のユーコンでした。このユーコンとの間でアンデルマが最初にもうけた子供は雄と雌の双子だったのでした。

アンデルマとユーコンは3回にわたって繁殖に成功し(訳者注 - 2004年のゴーゴを除いての回数でしょう)、そのうちの1頭は日本にも行っているのです(訳者注 - これは2000年生まれの姫路のホクトをさしています)。ユーコンは堂々とした雄ですがアンデルマの怒りに触れないように彼女の領域を尊重しようとしたことがこの2頭がうまくいったことの最大の要因だと考えられます。


随分と省略した形でご紹介せざるを得なかったのは残念でありますが、アンデルマというホッキョクグマの存在はこうしてレニングラード動物園、カザン市動物園、そしてペルミ動物園の歴史をまとめた資料の中にしっかりと刻まれ、そして私たち日本のホッキョクグマファンにとってはホクト、ゴーゴ、カイ、ロッシー、イワンといった若年の雄個体が彼女の血を受け継いでいるという点で忘れることのできない貴重な存在なのです。

とりあえず今回でこのシリーズは終わりますが、アンデルマについては今後何回もこのブログで触れることになるでしょう。そして私も彼女が元気で生きている限りは毎年ペルミに行って彼女に会い続けることになるでしょう。仮に私が誰かから、「世界でたった1頭のホッキョクグマを残せ。」などと言われれば躊躇なくアンデルマを挙げるでしょう。それほどまでに私は彼女に心底魅せられているわけです。アンデルマの魅力をこのブログの写真や動画でうまく伝えきれないのは全て私の写真技術の非力のためです。日本のホッキョクグマファンの中で実際にこのアンデルマに会いに、彼女がひっそりと余生を暮しているロシアの地方都市ペルミの小さな動物園の質素なホッキョクグマ者に行かれた方を、私は他にたった一人しか知りません。 その方もこのアンデルマには大変に魅せられたようです。 是非とも多くの方に実際にペルミに行っていただいてアンデルマに会っていただきたいと思います。 絶対に失望することはないでしょう。彼女の実際の年齢は不詳で、28歳説から30歳以上という説まであります。しかし彼女が高齢であることは間違いありません。会いに行かれるならばできるだけ早くとおすすめしたいと思います。
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ロシアの極北、アンデルマ基地に現れたホッキョクグマ

(資料)
От зверинцев к зоопарку. История ленинградского зоопарка
Казанский зооботсад вчера, сегодня, завтра (Авторы: Гильмутдинов Р.Я., Мударисов А.Р., Малев А.В. 2006 г.
Аргументы и факты (Звери, как люди: умеют любить)

(過去関連投稿)
極北の地より動物園へ(1) ~ ゴーゴのお母さんの物語
ロシア・ペルミ動物園のホッキョクグマ、「生ける伝説」となったアンデルマ
ロシア・ペルミ動物園で一般公開された生後3ヶ月のゴーゴ(現・天王寺動物園)の様子
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(1) ~ 捕捉し難き素顔
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(2) ~ その存在への認識
2011年ロシア遠征後半(ペルミ動物園関連部分)
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(1) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(2) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(3) ~ 遠征での映像より
by polarbearmaniac | 2011-11-23 19:00 | Polarbearology

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