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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカで登場したホッキョクグマ輸入の特別枠要求への動き

アメリカで登場したホッキョクグマ輸入の特別枠要求への動き_a0151913_2248179.jpg
イコロ (2011年11月3日撮影 於 おびひろ動物園)
Nikon D7000
AF-S DX VR Zoom-Nikkor 55-200mm f/4-5.6G IF-ED

注目すべき動きがアメリカから出てきましたのでご紹介しておきます。

以前からこのブログでは「自然界におけるホッキョクグマの保護」は時として「動物園におけるホッキョクグマの保護・繁殖」と矛盾する状況を作り出すということを指摘してきました。北極圏に住む野生のホッキョクグマを保護しようとして条約・法令によって輸入禁止措置をとるのは理解できますが、そうなると動物園におけるホッキョクグマの飼育、繁殖にとって重大な問題が生じるわけです。ホッキョクグマを動物園で繁殖させるのは大変なことですが、それがうまくいったとしても今度は動物園における血統の多様性が維持できなくなるわけです。その一番典型的な例が日本の動物園の場合だと言えましょう。実に頭の痛い問題です。ここにきてアメリカで新しい考え方が出てきています。それは、絶滅の危機に直面している北極圏のホッキョクグマに対して、たとえば孤児になった個体とか飢えに悩まされている個体とかを積極的に動物園に連れてくることによってホッキョクグマを救おうという流れです。

アメリカでは2008年に成立した絶滅危惧種法 (Endangered Species Act) の条項によって海洋哺乳類保護法 (Mammal Protection Act) の規定が強化され、アメリカ国内の動物園がホッキョクグマの輸入ができない状態になっているわけです。すでにそれ以前からホッキョクグマの輸入には障害があり、現在アメリカの45の動物園ではホッキョクグマ展示施設があるそうで、そのうち実際にホッキョクグマが飼育されているのは30施設強という状況から見れば、ホッキョクグマ舎はあっても実際にホッキョクグマの飼育されていない施設が10施設以上あることになります。また、非常に環境の整ったトップクラスのホッキョクグマ展示施設を持つ動物園は7つあるということで、これらの動物園は北極圏で孤児となったり飢餓に苦しんでいるホッキョクグマを積極的に受け入れていきたいという意向があるそうですが、いかんせん法令によってそれが難しい状況です。カナダにはそういったホッキョクグマの保護施設があるのですがキャパシティの問題で受け入れられるホッキョクグマの数は非常に限られたものになっています。

アメリカのセントルイス動物園では2007年に5週間の間に2頭のホッキョクグマが死亡し(1頭は飲み込んだ異物を胃の中から摘出する手術の過程で、もう1頭は感染症によって)、そのために7500ドルの罰金が連邦政府の内務省・魚類野生動物保護局(U.S. Fish and Wildlife Service)より課されたそうで、それ以来ホッキョクグマの飼育は行っていない状態です。新しいホッキョクグマ展示施設は2千万ドルの予算で準備され2015年をめどに完成させる計画だそうで、そうした素晴らしい施設に入れるホッキョクグマの入手も頭の痛い問題のようです。セントルイス動物園の園長さん(CEO)はミズーリ州選出のクレイ下院議員に窮状を訴え、クレイ議員は他州選出の何人かの議員と一緒に内務省に対してホッキョクグマ輸入の枠に設定を求める動きを行っています。その枠の設定には、非常に設備と環境の優れ保護的・教育的意義を持つ動物園に対して与えられる特別枠という設定を求めているそうです。 これはアメリカの動物園ではかなり大きな声になりつつあるようで、連邦政府はこの嘆願の内容現在検討中とのことです。 アメリカ人(ロシア人もそうですが)はホッキョクグマが大好きです。 「ホッキョクグマを見たい!」という子供たちの声も非常に大きいわけで、そういった声に対してホッキョクグマのいない動物園は苦慮しているという面があるものの、大事なのは野生であれ動物園で飼育されているホッキョクグマであれ、その保護と繁殖であるわけですから、とにかく環境の良い動物園でホッキョクグマを飼育することまで不可能となっている状況は見直す必要があるでしょう。

私は単に野生のホッキョクグマ保護という目的でなされる輸入禁止に輸入者の対象から動物園が除外されていないのはあまりにも杓子定規だと感じていますので、今回のアメリカでの動きに注目しています。こういった動きが世界的な傾向になれば素晴らしいと思うのですが、一方で日本の動物園のホッキョクグマ展示施設がもっともっと環境の整った広いものにならなければ日本がこういった動きに加わっていくことは難しいと考えます。要は、動物園というものの意義、そしてホッキョクグマ保護の必要性を声を大にして訴えなければ施設拡充のための予算の獲得は難しいでしょう。

(資料)
STLtoday.com (Nov.17 2011)
Louisville Courier-Journal (Nov.23 2011)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマの国際商取引禁止案の否決に関して
ロシア・プーチン首相のホッキョクグマ保護政策の後ろにあるもの
「記憶せよ、忘るるなかれ」 ― ホッキョクグマの高齢化のこと
by polarbearmaniac | 2011-11-17 23:00 | Polarbearology

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