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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ラトヴィア、リガ動物園のロメオに外国の動物園が食指 ~ 「小さくて弱い」 動物園に対するイジメか?

ラトヴィア、リガ動物園のロメオに外国の動物園が食指 ~ 「小さくて弱い」 動物園に対するイジメか?_a0151913_0444930.png
ロメオ Photo(C) Riga Z00

一昨日、ラトヴィアからの報道記事の内容を読んだ後、私としてそれをどう考えたらよいのか散々頭を悩ませ続けています。 未だに自分自身の回答を見つけられないままです。今回はこの問題についてご紹介しておきます。

以前に2回ほどバルト海沿岸の国、ラトヴィアの首都リガの動物園で飼育されているロメオのことをご紹介したことがあります。 まずその2つの投稿を先にご参照いただければ幸いです(過去関連投稿)。 実は比較的最近、このリガ動物園では少ない予算からなんとか工面して新しいホッキョクグマ舎を新設してロメオをそちらに移したわけです。 この新施設は一応、飼育下の動物の飼育展示基準(欧州の基準ということでしょうか?)を考慮に入れて造られたものでしたが、実はまたその「基準」が改定されて、ホッキョクグマ飼育場の地表はコンクリートではなく土でなければならないとか、その他の新たな条件が付加されたそうで、リガ動物園としては当然またさらに新しいホッキョクグマ舎を造る余裕など到底ないわけです。

こういったリガ動物園の状況を知った外国のいくつかの動物園(多分欧州内の動物園でしょう)が、リガ動物園で飼育されているホッキョクグマのロメオを譲れと申し入れてきたそうです。 そういった外国の動物園は当然、新しい基準を満たしている快適なホッキョクグマ展示場を保持しているが故に、リガ動物園がホッキョクグマ飼育展示基準を満たせないことでリガ動物園の足元を見ているわけです。 実はリガ動物園がこの飼育展示基準を満たせないがために、すでにゾウを外国の動物園に譲渡せざるを得なかったという苦い経験をしたばかりだそうです。 そしてなんとリガ市の市長も、リガ動物園は飼育動物の数を減らすべきだと言っているそうで、これはさらに動物園の予算を削減しようという意図からでしょう。 リガ動物園の園長さんはこういった状況で今度はホッキョクグマの番なのかということで頭を悩ませているそうです。
ラトヴィア、リガ動物園のロメオに外国の動物園が食指 ~ 「小さくて弱い」 動物園に対するイジメか?_a0151913_0463247.jpg
ロメオ Photo(C) Riga Zoo

この件について考えてみました。 非常に単純化させて言えば、(A)と(B)の二つの考え方があるでしょう、

(A) ホッキョクグマが狭くて「快適ではない」場所からもっと広くて快適(と思われる)飼育展示場のある外国の動物園に移動することはホッキョクグマの「福利厚生」にとって良いことなのだから歓迎すべきである。

(B) 今回のような件は「強くて大きな動物園」の「弱くて小さな動物園」に対する横暴、イジメであるからホッキョクグマの移動を許すべきではない。

(A)については、たとえば最近もご紹介したロシアのカザン市動物園のような飼育環境が劣悪な動物園であるとか、今は亡きポールお爺ちゃんが暮らしていた京都市動物園だとか、そういった動物園の飼育展示場からホッキョクグマたちを環境の良い他の場所に移すということです。 しかしさらなる問題は、では移動先が外国の動物園であってもよいのかということですね。 これはちょっと承服しかねるという感じが出てくるでしょう。

(B)については、「弱くて小さな動物園」といったら私の行ったことのある動物園で言えば、やはりロシアのカザン市動物園とかペルミ動物園ですね。 日本で言えば姫路市立動物園でしょうか(ゴメンナサイ!)。 こういった「弱くて小さな動物園」でもちゃんと地元の人々の支持を得てちゃんと運営されている動物園が大多数だと思われます。 あのアンデルマのいるペルミ動物園などは小さくても本当に気持ちの良い動物園です。そういった動物園からホッキョクグマ(その他)を奪っていくというやり方は、たとえ飼育環境が大幅に良くなっても許されるのかということです。

ホッキョクグマ(その他の動物)を可能な限り飼育環境の良い場所で暮らさせてやりたいと思います。 しかし「弱くて小さな動物園」にはそういうことを実現させてやるだけの予算がありません。 たとえ「弱くて小さく」てもそういった動物園の大多数は地元の人々に愛されている動物園だろうと思います。 そういった動物園から「強くて大きな」動物園が飼育環境をたてにとって動物たちを「奪う」ととは許されるのか...?  一昨日の夜はこういったことをずっと考えていましたが、自分が納得する結論が出ませんでした。 「要は程度問題だろう。」 という都合の良い結論しか私には思いつきません。 一例をあげれば、仮にJAZAにホッキョクグマの飼育展示場の新しい基準ができたとして、あの阿蘇のカドリー・ドミニオンのカアチャン(健康が回復したそうで本当に良かったです!)を神戸の王子動物園や横浜ズーラシアが「奪う」ことは当然許されると考えます(仮にカドリー・ドミニオンがJAZAに留まっていたとして)。 これは歓迎すべきことでしょう。 しかしでは姫路の、将来の繁殖が極めて有望であるホクトとユキを、ホッキョクグマ飼育展示場が新装され産室も完備された上野動物園が「奪う」ことは許されるのか...となると、この「程度問題」というのは少々悩ましいですね。

さて、昨日になって新しい報道がありました。 リガ動物園の園長さんは、ホッキョクグマは(人々に)強い印象を与える動物だから外国の動物園に渡すことは絶対にしないと決心したそうです。

ロメオには、「(人々がこれまで愛してくれた)リガ動物園にいられてよかったね!」 と言ってやったらよいでしょうか、それとも、「(飼育環境の良い)外国の動物園に行けず残念だっだね!」 と言ってやったらよいでしょうか...?

以下にリガ動物園のロメオの映像をまた一つご紹介しておきます。



(札幌にて記す)

(資料)
Rīgas Apriņķa Avīze (Feb.12 2012 - Ārvalstu zoodārzi tīko pēc Rīgas baltā lāča Romeo)
DELFI.lv (Feb.12 2012 - Рижский зоопарк рискует потерять белого медведя)
DELFI.lv (Feb.13 2012 - Рижский зоопарк не откажется от белого медведя)

(過去関連投稿)
ラトヴィア・リガ動物園のホッキョクグマ・ロメオの不本意な「引退」
ラトヴィア・リガ動物園のロメオ、21歳の誕生日の苦渋 ~ 雄の繁殖能力年齢の上限は? 
by polarbearmaniac | 2012-02-15 08:30 | Polarbearology

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