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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語

カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語_a0151913_21402864.jpg
カイ(ラダゴル)とウスラーダお母さんの戸外初登場 (2005年3月15日) Photo(C)Ленинградский зоопарк

ロシアのマスコミの過去のニュースのアーカイヴを見ていましたらおもしろい記事がありましたのでご紹介しておきます。 それは現在、仙台・八木山動物公園で飼育されている7歳になったカイ(ロシア名:ラダゴル)の誕生と戸外への初登場に関するニュースです。

カイは2004年12月2日にロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園で、あの有名なウスラーダメンシコフの間に生まれた10番目の子供であることは今更申し上げる必要はないと思います。 このカイ(ラダゴル)の幼年時代については以前に「仙台・八木山動物公園のカイのロシア時代の写真」、及び「ウスラーダお母さんの10番目の子供、カイ (八木山動物公園 / ロシア名 : ラダゴル )のロシア時代の姿」という2つの投稿をしておりますので、まずそちらをご覧ください。 このカイ(ラダゴル)は誕生の時点ではやはり三つ子だったそうです。 まず12月2日に最初の赤ちゃんが生まれ(それがカイということのようです)、翌日3日の午前4時頃に二頭目の赤ちゃんが誕生したとのこと。実はこの2004年のウスラーダの出産の際に初めてレニングラード動物園は産室内にモニターカメラを設置したそうで、その映像を見ての判断だったようです。 ところが5日の報道ではウスラーダが出産していたのは実は三つ子であったことが判明したことが明らかにされています。 やはり、モニターカメラを見ての当初の判断の難しさということなのでしょうか。
カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語_a0151913_20433520.jpg
産室内のカイ(ラダゴル)
Photo(C)Ленинградский зоопарк

この時点におけるロシアのTV局のニュース番組の映像がご覧になれますのでこちらをクリックしてみて下さい。 確かに三つ子であることがわかります。(モニターカメラの映像の前に写っている、遊んでいる三つ子たちはウスラーダが2002年の11月に産んだマリーギン、ベーリング、セードフの三つ子たちの映像です。) さて12月21日の段階の報道では、生まれた三頭のうち1頭だけが生育していることを伝えています。 この赤ちゃんこそカイ(ラダゴル)ということです。

このカイ(ラダゴル)がウスラーダお母さんと一緒に初めて戸外に登場したのは誕生の翌年の2005年3月15日のことでした。 その時の写真が冒頭の写真です。 かなり生育が良い状態であることがわかります。 この戸外初登場の日にはカイ(ラダゴル)は飼育員さんがウスラーダに与えた魚も食べたようです。スタッフはこの赤ちゃんのためにゴム製の大きなボールのプレゼントを与える予定であることも報じられています。
カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語_a0151913_20454042.jpg
カイ(ラダゴル)とウスラーダお母さん 
Photo(C)Ленинградский зоопарк 

この赤ちゃんの性別はこの段階でも判明していなかったそうですが、1月の時点で赤ちゃんが雌ならば動物園側は「ラダガ(Ладога)」と命名しようと考えていたようです。何故ならこの「ラダガ」というのはレニングラード動物園の最大の支援企業の名前だったからということです。 赤ちゃんが雄の場合は一般公募で名前を募集する計画だったそうですが、結局後日、「ラダガ」の男性形である「ラダゴル」と決定したようです。 2006年1月の段階の報道では、カイ(ラダゴル)が2~3か月後に日本に旅立つことになったので今のうちに彼(ラダゴル)に会いに動物園に来てほしいというレニングラード動物園の呼びかけも報じられています。
カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語_a0151913_21352648.jpg
カイ(ラダゴル)とウスラーダお母さん 
Photo(C)Ленинградский зоопарк 

さて、実際にカイ(ラダゴル)が日本に旅立ったのはその年の6月でした。 このようにカイ(ラダゴル)の出発が遅れたのには事情があります。 その事情の大筋については、やはり以前の投稿である「ロシア・サンクトペテルブルクのツインズ別離の時来る ~ 1頭がモスクワ動物園へ!」の青字の部分を是非ご参照願います。 換言すればモスクワ動物園とレニングラード動物園との間のに大きな確執が生じたことが背景にあったわけです。 このウスラーダお母さんの所有権はモスクワ動物園にあり、カザン市動物園で生まれたウスラーダがモスクワ動物園に移動したあとさらにサンクトペテルブルク(当時はまだレニングラード)に移されたときの契約ではウスラーダの産む赤ちゃんを売却した利益をレニングラード動物園とモスクワ動物園が分かち合うという条項があったわけです。 これは事実上BLに近い契約だったわけですね。 ところが途中からレニングラード動物園はこの売却利益のうちモスクワ動物園の取り分をモスクワ動物園に渡さずにレニングラード動物園が独り占めしてしまったわけです(レニングラード動物園がいつの頃から売却利益を独占し始めたかについては私が過去に調べたいくつかのロシアのマスコミの記事に内容の若干の相違がありますが)。 

さて。モスクワ動物園はこの件に関して非常に怒って、ウスラーダお母さんをモスクワに戻せとレニングラード動物園に要求しました。 今回発見した報道のアーカイヴによれば、このカイ(ラダゴル)をモスクワ動物園に引き渡せという要求も行っていたようです。 レニングラード動物園はカイ(ラダゴル)を日本(つまり仙台市)に売却する方針をすでに立てていたわけですから、モスクワ動物園の要求を拒否したのでした。 「赤ちゃんをどこに売ろうが我々の勝手だ。」、レニングラード動物園はそういう姿勢だったようです。 そこでモスクワ動物園とレニングラード動物園の大ゲンカが始まったわけです。 実はこの大騒動の過程についても私が過去に調べたロシアのマスコミの記事の内容に部分的にいつくか相違点があり、どれが本当の事実なのか不明な点も若干は残るのですが、大筋では私が今まで述べてきた内容がロシアの各マスコミ報道の最大公約数となります。 ともかくこの大騒動のためにカイ(ラダゴル)の日本への旅立ちが大幅に遅れたということです。このモスクワ動物園とレニングラード動物園の大騒動については、そののちのロッシー(ピョートル)の来日の件にまで尾を引いたわけであり、機会を改めましてまた書いてみたいと思います。

サンクトペテルブルクのレニングラード動物園のホッキョクグマ展示場の前にはウスラーダの産んだ子供たちの写真展示がされていますが、とりわけ大きなスペースで紹介されているのがシモーナ(現 モスクワ動物園)、コーラ(現 チェコ・ブルノ動物園)と並んでカイ(ラダゴル)とロッシー(ピョートル)です。彼ら(彼女ら)を送り出したレニングラード動物園はそれを誇りにしている様子がよくわかります。

(資料)
ЗОЛОТАЯ ЧЕРЕПАХА (Dec.3 2004 - У неё всё таки двойня!)
Вести (Dec.5 2004 - В зоопарке прибавление)
ЗОЛОТАЯ ЧЕРЕПАХА (Dec.6 2004 - Услада опять принела уникальный выводок)
ЗОЛОТАЯ ЧЕРЕПАХА (Dec.21 2004 - Услада и её малыш)
ЗОЛОТАЯ ЧЕРЕПАХА (Mar.14 2005 - Услада сегодня впервые вывела на улицу своего малыша)
ZOOPRICE.RU (Jan.21 2006 - Ладогор уедет в Японию)
Cмена (Mar.28 2006 - Медведи поссорили Москву с Питером)

(過去関連投稿)
仙台・八木山動物公園のカイのロシア時代の写真
ウスラーダお母さんの10番目の子供、カイ (八木山動物公園 / ロシア名 : ラダゴル )のロシア時代の姿
ロシア・サンクトペテルブルクのツインズ別離の時来る ~ 1頭がモスクワ動物園へ!
ロシアのマスコミ、カイ(仙台)とロッシー(静岡)の地震・津波からの無事を大きく報じる
by polarbearmaniac | 2012-04-24 21:30 | Polarbearology

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