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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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ノルウェー極北の街トロムソとホッキョクグマとのつながり ~ ノルウェーのホッキョクグマ保護政策について

ノルウェー極北の街トロムソとホッキョクグマとのつながり ~ ノルウェーのホッキョクグマ保護政策について_a0151913_21422268.jpg
Photo : Norgesglasset

ノルウェーの極北の街 トロムソ(Tromsø) は、かつてスヴァールバル諸島で捕獲されたホッキョクグマが世界の動物園に送られる場合の中継基地としての街でもあったわけでした。 船のデッキでクレートに入れられたホッキョクグマのうなり声がよく街にも聞こえたというがあったそうです。 また最近ではこのトロムソは白夜やオーロラといった北極圏特有の自然を体験できる観光地としても人気を集めているそうです。
ノルウェー極北の街トロムソとホッキョクグマとのつながり ~ ノルウェーのホッキョクグマ保護政策について_a0151913_22101631.png
かつてのトロムソの街では冒頭の写真のようにホッキョクグマを飼い犬のように連れて歩く人の姿も見られたそうです。 1950年代には下の写真のように、街で行われたパレードにもホッキョクグマが登場しています。 現在では考えられないような光景ですね。
ノルウェー極北の街トロムソとホッキョクグマとのつながり ~ ノルウェーのホッキョクグマ保護政策について_a0151913_2143548.jpg
Photo(C) Thoralv Lund photographic collection

ノルウェーでは1970年からスヴァールバル諸島でのホッキョクグマ猟には狩猟枠が設けられ、1976年からはホッキョクグマは完全に保護種となったそうです。 それによってこの狩猟枠というのも無くなったということになります。 1970年以前にはスヴァールバル諸島では年間100頭ものホッキョクグマが狩猟されていたそうですから、これは乱獲だったといってよいでしょう。 そのうちの何頭もが世界の動物園に送られていたわけでした。 この下の写真は1953年にベルゲンの港でスヴァールバル諸島で捕獲したホッキョクグマをドイツ・ハンブルクのハーゲンベック動物園に送るために積み替えをおこなっている写真です。
ノルウェー極北の街トロムソとホッキョクグマとのつながり ~ ノルウェーのホッキョクグマ保護政策について_a0151913_21445737.jpg
ノルウェー極北の街トロムソとホッキョクグマとのつながり ~ ノルウェーのホッキョクグマ保護政策について_a0151913_21452213.jpg
Photo : Hentet fra ”Årets største begivenheter i bilder-1953”

ちょっとおもしろい記事を見つけました。 それは2011年2月17日付けのノルウェーの放送局(NRK)のニュースサイトの記事 (“Japansk dyrehage ønsker norsk isbjørn” ) です。 記事の内容によりますと静岡の日本平動物園が東京にあるノルウェー大使館を通じてノルウェー政府に、野生の2歳の雌のホッキョクグマを探しているのでスヴァールバル諸島で捕獲して日本に送ってもらえないかという依頼要請をしたそうです。 ホッキョクグマは子供たちに愛されている動物だからスヴァールバル諸島のホッキョクグマが日本に来れば、それはノルウェーと日本の間の友好のシンボルになるという意見が添えられていたそうです。 これは日本平動物園が当時ロッシーの将来のパートナー探しをしていたわけで、その一環としてのことだったと思われます。 これに対してノルウェー政府の日本平動物園への返事は当然予想されたように “No” でした。 そして、「(ホッキョクグマを捕獲するという)例外はありえるが、このケースはそれにあたらず、またその必要もない。」という返事を日本平動物園にしたそうです。 こういった同じような要請はそれ以前にも秋田県がノルウェー政府に対して行っていたはずですが「2歳の雌」 だろうが何だろうが、とにかく動物園で飼育するために野生のホッキョクグマの個体を捕獲するなどということは全くあり得るべきものではないわけです。 ただし日本平動物園も秋田県の前例を知っていたでしょうから「ダメでも当然」という考えでノルウェー政府に依頼したということでしょうし、ノルウェー側の返事の内容も初めから100%予期していたでしょうから格別失望したということもなかったのではないかとは思われますが。

以前にもご紹介していますがノルウェーの動物園ですら自国(スヴァールバル諸島)のホッキョクグマの野生個体の入手ができず、ホッキョクグマを入手するために札幌・円山動物園の名前を挙げてマスコミの取材に答えているほどですから(過去関連投稿参照)、ましてやノルウェー政府が男鹿水族館であれ日本平動物園であれ外国の施設に野生のホッキョクグマを送ることを認める可能性はゼロであることは言うまでもありません。

(資料)
NRK (Aug.3 2012 - Vil redde isbjørnen Rudi)
NORDLYS (Dec.13 2011 - Myten er sann – levende isbjørn i Tromsøs gater!)
Norgesglasset (Jun.26 2003 - Isbjørn i Tromsøs gater)
Creative Bergen (Isbjørnjakt i Bergen/ - Kunne blitt farlig)
NRK (Feb.17 2012 - Japansk dyrehage ønsker norsk isbjørn)

(過去関連投稿)
ノルウェー・スピッツベルゲン島へのホッキョクグマツアー研究
ノルウェーの極地動物園、ララの子供たちの入手を狙い円山動物園と接触か? ~ 報道内容の真偽を検証する
by polarbearmaniac | 2012-08-07 22:00 | Polarbearology

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