街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
by polarbearmaniac
カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの物語 ~ 双子姉妹と繁殖との関係

以前に「アメリカ・オレゴン州 ポートランド、オレゴン動物園のコンラッドとタサル ~ 別離なき永遠の双子兄妹」という投稿で、アメリカ・オレゴン州ポートランドのオレゴン動物園で飼育されているコンラッドとタサルの双子の兄妹が27歳になっても別れることなく同じ動物園で暮らし続けていることをご紹介しています。 それほどまでの年齢ではないにせよ、常に一緒に何度かの移動を共にしてきた双子の例をここでまたご紹介しておきます。 それはここ数日連続して取り上げてきたカナダのトロント動物園、そこで飼育されているオーロラとのニキータの双子の姉妹です。



トロント動物園においてこの双子の孤児の赤ちゃんの名前の公募が行われ、2頭はオーロラとニキータと命名されました。 このオーロラとニキータがトロント動物園でその年の5月に一般公開されたときの映像を以下にご紹介しておきます。
(*後記 - 後日トロント動物園が公開した同園でのオーロラとニキータの写真を以下にご紹介しておきます。)

この双子の姉妹はトロント動物園で1年を過ごした後にケベック州のサンフェリシアン原生動物園を経てコクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村に移動し、そこで5年間を過ごすことになります。 このコクレーン時代のオーロラとニキータの映像を一つご紹介しておきます。
さて、この姉妹ですがコクレーンにおいてはパートナーとなるべき雄がいなかったためと、トロント動物園で新施設(Tundra Trek) が完成したのを機に2009年の7月に再びトロント動物園に戻ってきたのでした。 そしてこの姉妹とともにトロント動物園に復帰したのが昨日投稿しました雄のイヌクシュクだったわけでした。 ここでトロント動物園に復帰した直後の時期のオーロラとニキータの映像を一つご紹介しておきます。
イヌクシュクはその年の春、サンフェリシアン原生動物園でエサクバクとの間で繁殖行為に成功していたわけで、今度はトロント動物園でオーロラとニキータの姉妹との間での繁殖が期待されたわけです。 そしてとうとう2年後の2011年の春にイヌクシュクとオーロラとの間に繁殖行為があり、その結果としてオーロラが昨年2011年の10月に初出産したのでした。 オーロラは三つ子を出産したのですが、その赤ちゃんたちのその後については、「カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース」、「カナダ・トロント動物園で誕生の赤ちゃん、生き残った2頭のうち1頭が死亡」、「カナダ・トロント動物園にて人工哺育で育てられた赤ちゃんが遂に一般公開」をご参照下さい。 生き残った1頭こそ先日満一歳の誕生日を迎えたハドソンであるわけです。
オーロラは自分の産んだ赤ちゃんのうち生き残っていた2頭を虐待・攻撃し1頭を死亡させてしまいました。 そしてトロント動物園は生き残っていた1頭を救いだし人工哺育で育てたということなのです。 オーロラはこの時が初出産だったわけで、こういった結果になってしまったのもいたしかたのないことかもしれません 。昨日ご紹介していますと通り、雄のイヌクシュクがコクレーンに移動したという事実と、トロント動物園はハドソンとニキータを同居に近い形にもっていくことを考えている事実から、今春にイヌクシュクとオーロラとの間に再び繁殖行為があった可能性は強いと思われます。 果たしてこれから年末にかけて再びオーロラに出産があるのかどうか、トロントよりのニュースに注目したいと思います。

こうしてオーロラとニキータという姉妹は常に一緒に移動を繰り返してきましたが、オーロラはいち早く出産したものの育児を行うことはできませんでした。 双子の姉妹が一緒に暮らす年月が長くなるにつれて、ひょっとしたら繁殖の面では良くない影響があるかもしれないという考え方はありえます。 しかし、ケベック州のサンフェリシアン原生動物園のエサクバクとフリーマスの野生孤児の双子の姉妹もずっと一緒に移動を共にしてきたわけですが、エサクバクが2009年に出産に成功し、その後の育児も順調に行った例がありますから姉妹が長く一緒に生活したことが繁殖に影響を与えたということは言えないでしょう。 また、ドイツのロストック動物園生まれの双子の姉妹のヴィーナスとヴァレスカも一緒にフィンランドのラヌア動物園に移動しヴィーナスが昨年暮れにランツォを出産していますので、これも双子の姉妹の同居が繁殖に影響したとは言えない例でしょう。 むしろ、双子姉妹は一緒に暮らしていたほうが、相手となる繁殖のための雄1頭に対する精神的負担が軽減されるためにむしろ有利であるというほうが遥かに真実に近いと考えられます。

ただし、姉妹の2頭のうちのどうちらかが先に出産して、さらに残ったもう一頭の繁殖を成功させるためには1頭を他園に移動させたほうが良いという考え方はありえます。 サンフェリシアン原生動物園のフリーマスは姉妹のエサクバクと別れて2011年にオランダ・ヌエネンの「動物帝国」に移動した件は「オランダとカナダの施設のホッキョクグマ個体の交換が発表 ~ 遂に開始された北米・欧州間の個体交換」をご参照下さい。 また、フィンランド・ラヌア動物園のヴァレスカも姉妹のヴィーナスと別れてドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園に今年の春に移動した件については「フィンランド・ラヌア動物園のヴァレスカがドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園へ」をご参照下さい。 つまり、双子の姉妹が同じ動物園で暮らし1頭が出産に成功した場合は他の1頭は他園に移動させて繁殖を狙わせる考え方もあるようにも思われます。 とすれば、トロント動物園にニキータも今後他園に移動する可能性もあるかもしれません。
それからもう一つ、こうしてカナダでの野生孤児の扱いを調べていきますと、こういった孤児が双子であった場合は極力その2頭を引き離さないような処置がとられるということです。 以前にも「オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係」という投稿で触れましたが、カナダ側は最初から野生孤児の双子を引き離して1頭を日本(秋田県)に移動させようなどという考えは実は最初から無かったのだろうと思います。 そういったことがカナダの野生孤児の扱いの考え方であることがいくつかの事例に垣間見えてくるわけです。
(資料)
CBC Digital Archives (May.12 2001 - Polar bear cubs debut at Toronto zoo)
A World through Lenses (Dec.1 2001 - Polar bear cubs at the Toronto Zoo)
Toronto Star (Jul.4 2009 - Returning polar bear orphans get fancier digs)
Canada Cool (In Cochrane Ontario you can swim with Polar Bears)
National Post (Oct.12 2011- Two cubs die as mother polar bear turns on her three newborns)
(過去関連投稿)
カナダ・サンフェリシアン原生動物園の双子、旅立ちの時来る ~ 2頭共にケペック水族館へ
カナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村にホッキョクグマ戻る ~ ガヌークの近況
カナダ・トロント動物園で人工哺育されたハドソンの満一歳のお誕生会が開催される
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
アメリカ・オレゴン州 ポートランド、オレゴン動物園のコンラッドとタサル ~ 別離なき永遠の双子兄妹
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース
カナダ・トロント動物園で誕生の赤ちゃん、生き残った2頭のうち1頭が死亡
カナダ・トロント動物園にて人工哺育で育てられた赤ちゃんが遂に一般公開
オランダとカナダの施設のホッキョクグマ個体の交換が発表 ~ 遂に開始された北米・欧州間の個体交換
フィンランド・ラヌア動物園のヴァレスカがドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園へ
オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係
by polarbearmaniac
| 2012-10-17 01:00
| Polarbearology
カテゴリ
全体Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類
最新の記事
........and so.. |
at 2023-03-27 06:00 |
モスクワ動物園のディクソン(.. |
at 2023-03-26 03:00 |
ロシア・ノヴォシビルスク動物.. |
at 2023-03-25 02:00 |
ロシア・西シベリア、ボリシェ.. |
at 2023-03-24 02:00 |
鹿児島・平川動物公園でライト.. |
at 2023-03-23 01:00 |
ロシア・ノヴォシビルスク動物.. |
at 2023-03-22 03:00 |
名古屋・東山動植物園でフブキ.. |
at 2023-03-21 01:00 |
ロシア・ノヴォシビルスク動物.. |
at 2023-03-20 02:00 |
モスクワ動物園のディクソン .. |
at 2023-03-18 22:20 |
ロシア・サンクトペテルブルク.. |
at 2023-03-18 03:00 |
以前の記事
2023年 03月2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月