人気ブログランキング | 話題のタグを見る


街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って

函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19561898.jpg
今日は詩人・石川啄木(1886 - 1912)ゆかりの場所を訪ねることにする。 立待岬からスタートする。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_1371737.jpg
立待岬は津軽海峡に突き出た岬である。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19561234.jpg
市内から立待岬に到着する手前に啄木一族の墓がある。啄木は26歳で東京で亡くなっているのだが、死後に遺骨が函館に移されてこの場所に葬られた。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_1955596.jpg
不思議なことにこの墓の正面は海にも道路にも面していない。 墓石には「東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたわむる」という彼の有名な歌が刻まれている。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19563924.jpg
ここからは海が美しく見える。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19563851.jpg
立待岬から市内にもどって函館公園に向かう。 ここからは函館山がよく見える。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19571771.jpg
函館公園の一角に歌碑がある。「函館の 青柳町こそかなしけれ 友の恋歌 矢ぐるまの花」と刻まれている。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19565693.jpg
函館公園のすぐそばに啄木の居住地跡がある。彼はこの場所に妻の節子と娘の京子とともに約3ヵ月住んでいた。 短い彼の一生のなかでも函館のこの場所での生活は平穏な日々であったらしい。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19573666.jpg
この案内板の横の路を上がる。 
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19571673.jpg
突き当りを左に曲がった路のこのあたりに彼の一家が住んでいた住居があったらしい。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19575644.jpg
今来た路を引き返す。この坂は啄木も何度か歩いた路に違いない。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19573610.jpg
ここは彼が代用教員をしていた旧・弥生尋常小学校があった場所である。現在の校舎はもちろん新築されたものである。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19581586.jpg
大森海岸に車を走らせる。先ほど行った立待岬がよく見える。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19575436.jpg
ここに啄木の座像がある。 「潮かおる 北の浜辺の砂山の かの浜薔薇よ 今年も咲けるや」という彼の歌が刻まれている。
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って_a0151913_19583215.jpg
石川啄木は生活力のないだらしない男であった。 こんな男と好き好んで結婚した妻の節子も不幸な生活を過ごしたのである。 さらに彼は非常に生意気で、学生としても教員としても啄木は問題ばかり起こしていたのだ。 別な言い方をすれば彼は 「いやな奴」 だったのである。 ところがそういった彼の遺した作品は素晴らしい。 私も学生時代から彼の作品のファンなのである。 生身の人間としての性格の悪さ、そして一方で作品の素晴らしさ、これを不思議と考えるのは間違っている。 作品の質とそれを生みだした作者(文学者、画家、作曲家など)の性格とは無関係なのである。 素晴らしい作品を後世に残すような芸術家がいつも人格的にも素晴らしい人であったなどということはないのである。

作曲家リヒャルト・ヴァーグナーは鼻持ちならない男であった。 彼は 「俺には才能がある。 だから一般の凡人たちは俺を援助しなければいけないのだ。 才能ある俺のような人間に奉仕するのが凡人の義務である。」 と考えていた。 借金は踏み倒して当たり前。人の女房も奪ってしまう男なのだった。 自己顕示欲に満ち溢れてもいた。 ところが彼の作品は実に素晴らしい。 彼はJ.Sバッハ、ベートーヴェンと並んで音楽史に多大な貢献をした男である。 彼の功績、そして残した偉大な作品は大いなる称賛に値する。 彼の作品は現在に至るまで音楽ファンを魅了し続けているのである。 イギリス人の指揮者コリン・デイヴィスは「良き作品は良き人格から生まれ、そして良き人々から愛される。」という発言をしている。 これは大変な間違いである。 良き芸術の理解者が良き人格を持っているなどということも言えないのである。ナチス親衛隊の将校が音楽の良き理解者である(実際にそういった人が多かった)ということは不思議ではないのだ。 アドルフ・ヒトラーはヴァーグナー作品の崇拝者であった。 彼はヴァーグナー作品に魅せられていた。ヴァーグナー自身が醜い人格の持ち主であり、彼の作品を愛した人間の一人がアドルフ・ヒトラーであったとしても、ヴァーグナーの作品は芸術的な観点で圧倒的な質の高さを誇っているということに変わりはないのである。

芸術作品の質とそれを造った芸術家の人格、そしてそれを深く理解して享受する人間の人格、これらの関係は実は一筋縄ではいかない。 啄木の人格の醜さと彼の作品の素晴らしさというこの乖離、実に興味深いことである。

Canon EOS M
EF-M18-55㎜ F3.5-5.6 IS STM
(2012年11月11日 @函館)
by polarbearmaniac | 2012-11-11 21:30 | 倭国旅日記

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
飼育・繁殖記録
街角にて
未分類

最新の記事

........and so..
at 2023-03-27 06:00
モスクワ動物園のディクソン(..
at 2023-03-26 03:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-25 02:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2023-03-24 02:00
鹿児島・平川動物公園でライト..
at 2023-03-23 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-22 03:00
名古屋・東山動植物園でフブキ..
at 2023-03-21 01:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2023-03-20 02:00
モスクワ動物園のディクソン ..
at 2023-03-18 22:20
ロシア・サンクトペテルブルク..
at 2023-03-18 03:00

以前の記事

2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索