街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
by polarbearmaniac
釧路における漂泊の歌人・石川啄木 ~ 北海道放浪時代の終幕




「啄木は思うところの多い人間であった。 啄木は自己の感情をいつも人間の真実の中に通わせ、そこからあの底辺の広い文学が生まれた。 啄木はいつも世俗に抗し、精神の高揚を求め続けた。 そこからあの厳しい芸術の世界が展開された。 円い人格ではなく、角だらけの人間であった。 そういう啄木を好まぬ人でも、その作品の中に見える自負と謙虚という矛盾を一つの塊として受け取ることができるのではないだろうか。 詩人石川啄木は明治21年1月21日、雪の釧路に一人降り立った。」
これは誰の文章なのかわからない。 しかし私はこの文章の内容には賛成できない。 この上の文章を書いた人は啄木の人格と作品を統合的なものと理解しようとしている。 啄木の作品から彼の人となりを照射しようと試み非常に無理な理解をしていると思われる。 「このような素晴らしい作品を創作した人だから彼の人格も素晴らしいはずだ。」というナイーヴな考え方が根底にあって、それとは合致しない彼の人格を彼の作品の側から照射して弁護しようとしている。 この理解のやり方が間違いなのである。 芸術家の作品には2つのタイプがある。 一つはその作品が芸術家の人格とその成熟の反映であるというものである。 たとえばベートーヴェンやミケランジェロや夏目漱石の作品はそうである。 二つ目として、表現の素材を巧みに駆使することによって、その素材から広大なイマジネーションを引き出して作品にするケースである。 この典型的な例はモーツァルト、ジェームス・ジョイス、川端康成などがそうである。 村上春樹の作品もこのタイプである。 そして啄木の場合も明らかに後者のタイプなのである。 啄木の作品の魅力は、言葉という複数の素材の造りだすイメージにあるのだ。 だから彼の作品を彼の人格と結び付けて統一的な理解をあれこれ試みるのは間違った理解の仕方なのだ。 よって私は碑に刻まれた上の文章の内容には賛成しかねる。




「あはれかの国のはてにて 酒のみき かなしみの滓を啜るごとくに」
「小奴といひし女の やはらかき 耳朶なども忘れがたかり」
「舞へといへば立ちて舞ひにき おのづから 悪酒の酔ひにたふるるまでも」





函館同様、釧路にも啄木ゆかりの場所が多い。 そういった場所にはもっと天気の良い日にあらてめて訪れてみることにしたい。
Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR
(Nov.18 2012 @釧路)
(過去関連投稿)
函館を巡る (3) ~ 漂泊の歌人・石川啄木を追って
by polarbearmaniac
| 2012-11-18 22:30
| 倭国旅日記
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