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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ジャンブイの素顔 ~ 彼の出自の謎を追う

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さて、この横浜市民であるジャンブイの過去を追ってみよう。
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動物園側の情報ではこうなっている。 1992年生まれで野生孤児だったということである。
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そして彼は1999年12月にモスクワ動物園から来園したことになっている。この上の写真は1999年12月にズーラシアに溶着した時の写真である。
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彼は生まれてから1999年に横浜に来るまでの7年間を、いったいどこでどうしていたのかということである。 上のズーラシアの紹介文を見ればモスクワ動物園 ("Moscow Zoo" と記載されている) から来園したことになっているからモスクワ動物園でずっと飼育されていたような印象を与えるが、実はシベリアのノヴォシビルスク動物園で飼育されていたのである。 つまり彼の出自はバレンツ海ではなくチュクチ半島付近だったと、とりあえずのところでは推測できることになる。 (*補足  一般的にモスクワ動物園やレニングラード動物園が野生孤児個体を保護・飼育する場合は、その孤児がロシア西部の極北地域、特にバレンツ海付近で保護された個体であることが過去には非常に多かったのである。 一方、シベリアの動物園で野生孤児個体を保護・飼育する場合はロシア東部の極北地方であるチュクチ半島付近で保護された個体である場合が現在に至るまでほとんどである。 つまりこのことから、ジャンブイが保護された場所は一応はチュクチ半島付近である可能性が強いのではないかということを意味することになるということである。) 
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当時彼はノヴォシビルスク動物園で、現在モスクワ動物園で飼育されている野生孤児出身のウムカ(豪太の父)と一緒に飼育されていた。 ところがこのジャンブイは1999年に横浜に移動してくる際にモスクワ動物園の付属施設であるヴォロコラムスク付属保護施設で短い期間、預けられていたのである (実は姫路のホクトも一時期この施設で暮らしていた)。 ジャンブイはそのヴォロコラムスク付属保護施設から日本にやってきたのである。 だからこのズーラシアの紹介文では彼がモスクワ動物園から来たということが書いてあるのだ。 一方、ノヴォシビルスク動物園でジャンブイと一緒に飼育されていたウムカ(ウンタイ)は私が持っているモスクワ動物園の資料によれば、2003年4月23日にノヴォシビルスク動物園からモスクワ動物園に移動している。 その経緯については「モスクワ動物園のムルマ(4) ~ 危機の克服、そして豪太の誕生」をご参照いただきたい。 この投稿は現地モスクワ動物園で得た情報を参考にしてまとめたものである。 ところがここでジャンブイの出自に大きな疑念が生じてきたことを新たに指摘しておきたい。
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手持ちのモスクワ動物園の飼育資料ではウムカはタイミール半島で1991年に生まれたと推定できる旨が記載されている。 ところが同じ野生孤児個体で1992年生まれとされるジャンブイも同じ時期に地方都市にあるノヴォシビルスク動物園でウムカと暮らしていたというのは、何か腑に落ちないのである。 
ジャンブイの素顔 ~ 彼の出自の謎を追う_a0151913_1563335.jpg
野生孤児個体を動物園で保護した過去のロシアの事例を見てもこれはあきらかにおかしいのだ。 わずか1年違いの年齢の野生出身個体が続けて2頭も地方都市のノヴォシビルスク動物園で保護され、そして同じ時期に暮らしていたというのは偶然なのだろうか? 実に不自然である。 2年続けて野生孤児個体を地方の同じ動物園で保護・飼育することなど通常はありえないと考える。 なぜばら、ロシアの連邦政府の自然管理局 (RPN - Федеральная служба по надзору в сфере природопользования) は野生孤児個体に通常はそういった飼育場所の選定と承認は出さないからである。 そしてさらに、当時のロシアの地方の動物園にはそのような飼育をする余裕はなかったのだ。 現在ですらほとんどありえない話である。
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以上のことから考えると、ひょっとしてジャンブイは記録上では推定1992年生まれとなってはいるものの、実は1991年生まれが正しく、モスクワ動物園のウムカと野生孤児の双子の兄弟であるというのが正しいのではないだろうか? 双子の兄弟だからこそノヴォシビルスクのような地方都市の動物園で一緒に暮らしていたのではあるまいか? 双子を離さないという方針ならば自然管理局は2頭の野生孤児個体の飼育場所の選定と飼育を許可するというケースが過去にもあったからである。 あるいはジャンブイではなくウムカの誕生年が実は1991年ではなく1992年が正しいという可能性だってあると考えられる。 そうなればこの2頭が双子の兄弟である可能性は、これまた同じようにあるのである。 (20年前は現在と違って、ロシアの連邦政府・自然管理局は野生孤児個体を外国に出すことも承認していたのである。 だからもう7年も一緒に暮らしていた野生孤児出身の双子兄弟のうちのジャンブイだけを日本に出すことは可能だった。 現在ではもうほとんど不可能である。)
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仮にこの疑念が事実とすればジャンブイは豪太の叔父にあたることになる。 ここでモスクワ動物園のウムカ(豪太の父)の顔を私が2011年の夏にモスクワ動物園で撮影した写真を投稿したこのページを開いていただいてモスクワ動物園のウムカの姿をご覧いただきたい。
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いかんせん私の写真撮影の能力は非力である。 だから私の写真では何とも言えないかもしれない。 しかし私は今日、ジャンブイの横顔を見ていてウムカに似ていることに初めて気がついた。 「ジャンブイの横顔、どこかで見た記憶がある。」と過去の記憶をたどってみた。 そしてそれはモスクワ動物園のウムカであることに気がついたのだ。 
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これは確証がないし証明もできないから単なる憶測だとご理解いただきたい。 つまり今まで述べてきたように、このジャンブイとモスクワ動物園のウムカは双子の兄弟である可能性があると考えるのである。 このことは、記録書類においてジャンブイかウムカのどちらかの誕生推定年の記載に誤りがあるということになるのである。 そうなるとノヴォシビルスク動物園の関与した血統登録に誤りがあるということを意味することになる。 ロシアの動物園ならばこういったことはありそうな話だ。 繰り返すが、厳密な証明ができないから現時点ではあくまでも憶測の域を出ない。 ただしかし私は、このジャンブイの本当の誕生年は1992年ではなく1991年であり、そして彼はモスクワ動物園のウムカと双子の兄弟であり、そして男鹿水族館の豪太の伯父であるという一連の推論が実は真相だろうと心の底で強く考えている。

Nikon D5200
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR
(Feb10 2013 @よこはま動物園ズーラシア)
by polarbearmaniac | 2013-02-10 23:30 | しろくま紀行

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