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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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クルミ、その特異なる母性へのオマージュ ~ 「母親」 たることを拒絶した、その逆説的母親像への敬意

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世界のホッキョクグマの母親で、このクルミほど特異な特徴を持つ母親はまず存在しないだろうと思われる。
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私は昨年何回かのここへの訪問では、いつもこのクルミの行動を最大限の集中力で観察してきた。 それぞれの時点における感想は全て過去の訪問記に書いてきた。
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国内外で今まで随分と違ったホッキョクグマの母親に接してきたが、このクルミほど超の上に超の付くほどの個性的な母親は初めてであった。 まさかこれほどまでに個性的な母親を日本で見ることができるとは想像もしていなかった。
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それは、「母親」たることを拒否した実に逆説的な母親像なのである。 5月以降の私の訪問のそのそれぞれの印象は一貫性に欠けていたとも言える。 というのも、このクルミの母親像の本質を掴み取るまでにそれだけ時間がかかったということである。 
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私は最初はこのクルミの母親像を十分に理解できず、「現在は荒削りだが育児の回を重ねるごとに完成度は増すだろう。」 と理解していた。 つまり、今まで会った母親たちとクルミはまるで異なっていたがために、その原因をクルミの経験不足と位置付けたのであった。 ところが訪問を重ね、そして今回になって初めて、このクルミの特異なる母親像はすでに最初からこういう形で完璧に完成され、そして将来も不変であろうという考えにようやく到達したのである。 彼女の母親としてのスタイルは、この初産から実は確固とした完成度の高さを誇っていたのである。 それを理解するまでに私は多くの時間を要した。
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そもそもホッキョクグマの母親は、出産そしてその後については産室内にいる期間が大きな勝負なのである。 光の乏しい産室で、ほとんど食べ物を摂取せずに赤ちゃんを大事に育てるのである。 実はこれは大変なことである。 並大抵ではできないことである。 それをしっかりと行ってクルミは見事にミルクを育て、そして産室を出たのである。 それだけでも大いに称賛に値するのだ。 赤ちゃんがそれ以降生きていくために必要なことはクルミが全て産室内で行ったということになる。 だから、もう産室を出れば自分はそれ以上の母親としての義務は負わないという姿勢なのである。 三か月近くも暗い場所にいたわけだから、それ以降は自分の自由な時間を再び回復しようということなのだ。 それを子供のためにさらに犠牲にする必要はないということである。 後は子供が自由に遊べばよく、それに自分が介入したり、あるいは一緒になって遊んでやったりするという必要などないという姿勢なのである。 こういう姿勢はララやシモーナ、あるいは彼女たちと対極の育児を行うウスラーダやフギースにも全く見られないものである。 自分の自由は束縛されたくないというのがクルミのスタイルである。 これこそがクルミの、「母親」たることを拒絶した逆説的な母親像なのである。

屈託なくブイ遊びをするクルミ

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これを母親としての責任感の欠如と捉えるのは比較的容易かもしれない。 しかしクルミに言わせれば、「私はあななたち人間が切望していたように、ちゃんと赤ちゃんを産んで育児放棄もせず暗い場所で三か月も授乳を行い、そして立派に赤ちゃんと一緒に産室から出た。 そしてちゃんと娘は独りで遊んで育っている。 いったいこれ以上の何を私にせよと言うのか?」と反論しているのである。 「私は自由なホッキョクグマなのである。 何をしようとそれは私の勝手である。」 とクルミは言っているように思われる。
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これはこういうスタイルなのだと理解する以外にはない。 そしてその彼女自身の自由への希求に大いなる敬意を払いたいと思う。 しかし、このクルミの母親としてのスタイルにいささか危うさを感じないわけでもない。 このクルミのスタイルは、何頭も存在している世界のホッキョクグマの母親のスタイルとはかけ離れたものであるからだ。
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私はこのクルミの母親としてのスタイルを尊重し大きな敬意は払うものの、根本的な部分で共感することは難しいと考える。 私自身がこれから誕生するホッキョクグマであるならば、自分の母親がクルミではないこと願うばかりである。

Nikon D5200
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR
(Jan.25 2014 @秋田県、男鹿水族館)

(過去関連投稿)
*男鹿水族館訪問記
男鹿水族館の赤ちゃん、はじめまして!!
クルミの赤ちゃん(クーシャ - 仮称) の素顔と性格 ~ 一般公開日初日の印象
クルミお母さんの性格と母親像 ~ その 「対象非関与型母性」への評価について
梅雨期の出羽の国、男鹿水族館でクルミ母娘との再会
美しく成長を遂げつつあるミルク ~ その素顔と性格
クルミお母さんの母親像を再度考える ~ 「求心性」、「非求心性」の第三の座標軸から見えてくること
クルミ母娘の夏の日 ~ 大きな展示場へ移動した親子との再会
"La tristesse allante de Milk" ~ クルミとミルクの母娘関係と行動の基本的構図を探る
悪天候、そして夏の終わりの男鹿水族館 ~ 転換点を迎えたクルミとミルクとの母娘関係
驚くべき進化を遂げつつあるミルク ~ "Efforcez-vous d'entrer par la porte étroite..."
過ぎ去らない夏の残る男鹿水族館 ~ クルミとミルクの母娘模様
ミルクの楽しいおもちゃ遊び ~ 超一流の遊びの能力
*ホッキョクグマの母親像
「情愛型」 と 「理性型」、「対象関与型」 と 「対象非関与型」 のそれぞれの母親像の違いを探る
クルミお母さんの母親像を再度考える ~ 「求心性」、「非求心性」の第三の座標軸から見えてくること
by polarbearmaniac | 2014-01-25 23:40 | しろくま紀行

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