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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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戦後史の闇を歩く ~ 札幌市(中央区)南6条西16丁目に響いた銃声と暗い闇から浮かび上がった真相

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帝銀事件、下山事件、三鷹事件、松川事件...占領下の戦後日本で起きた数々の怪事件は現在もその真相が深い暗黒の闇の中に沈んでいるものが多いが、その最後を飾った一つの重要な事件が、ここ札幌市(中央区)南6条西16丁目の路上で起こったのであった。 今日は、まずその歴史的現場を訪ねてみることにする。
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時は占領下の1952年(昭和27年)1月21日午後7時30分頃のことであった。 市電の現在の西線6条停車場。
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その西線6条停車場から西に向かって歩く。
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南6条西16丁目である。1952年(昭和27年)1月21日午後7時30分頃、ここを二台の自転車がほぼ並んで走行していた。
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そしてこの左側の路上で一台の自転車に乗っていた男がもう一台の自転車に乗っていた男に銃を発射した。 撃たれた男はこの場で絶命したのである。 
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撃たれた男の名前は白鳥(しらとり)一雄、札幌市警察本部の警備課課長であった。 これが有名な「白鳥事件」の発生である。
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戦前、旧満州国の哈爾濱 (ハルビン)でロシア語を学んだ経歴のある白鳥警部は当時公安担当であり、左翼運動を監視すると同時に風俗営業の取り締まりも担当していた。
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白鳥警部を射殺した男はそのまま自転車で西17丁目の方向、すなわちこの円山方面に逃走したのである。
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白鳥警部が射殺された現場の近くには当時にすでに建っていたと思われる木造家屋がまだ残っている。
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これらの木造家屋は白鳥警部が撃たれた銃声を聞いていたであろう。
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事件発生から四か月後に警察は白鳥警部殺害に関与したとして、当時は非合法で武装闘争路線を走っていた日本共産党の札幌地区委員であったMを逮捕した。 直接の実行犯と考えられた男は密航で建国間もない中華人民共和国に逃亡している。 Mは起訴され、懲役20年の刑が確定している。
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裁判の過程で日本共産党と弁護士団体である自由法曹団は、Mは無罪であると一貫して強く主張し続けた。 物的証拠はただ一つ、それは白鳥警部の体内から見つかった弾丸と、Mらのグループが幌見峠で行った射撃訓練で使用され、後に発見された弾丸との銃痕が一致しているというものであった。 ところがその後の鑑定でこの銃痕の同一性はほぼ否定されるに至ったのである。 しかし再審請求は最終的に最高裁判所によって棄却されている。
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刑期を終えたMはその後1994年に自宅に発生した原因不明の火災により謎の怪死をとげている。 指名手配犯3人は逃亡先の中国でその後に死亡している。
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この白鳥事件は唯一の物的証拠であった二つの弾丸の銃痕の不一致が明らかになったことで日本共産党を弾圧する目的で公安当局が行った謀略でありMは冤罪であるという主張は幾分かの説得力を持っていた。 ところが最近、「亡命者: 白鳥警部射殺事件の闇」、及び「白鳥事件 偽りの冤罪」という二冊の本が世に出た。 この二冊は当時の関係者へのインタビューや裁判資料の研究などを通して白鳥事件の真相に深く迫った力作である。 読んでいて手に汗を握るのである。 白鳥事件は冤罪ではないという説、つまり白鳥事件は当時の日本共産党のMが首謀して行った謀殺事件であったという説に極めて強い説得力を感じる。 今回は札幌にこの二冊を持ってきた。 北の街に沈んでいた深い闇に強烈な光を当てた力作である。

Nikon D5300
AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR II
(Jul.19 2014 @札幌市中央区南6条西16丁目、及び藻岩山山頂)

(資料)
「亡命者: 白鳥警部射殺事件の闇」(筑摩書房)
「白鳥事件 偽りの冤罪」(同時代社)
HBCラジオ開局60周年記念番組 「インターが聴こえない ~ 白鳥事件60年目の真実~」 (1)(2)(3) (4)(5)
「現代政治・戦後史研究会」 (白鳥事件資料抄録)(pdf) 
by polarbearmaniac | 2014-07-19 23:30 | 倭国旅日記

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