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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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ロシア極北・ネネツ自治管区のアンデルマの街とホッキョクグマたち ~ 人に身近な存在のホッキョクグマ

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アンデルマの街に現れたホッキョクグマ Photo(C)Владимир Шадрин
ロシア極北・ネネツ自治管区のアンデルマの街とホッキョクグマたち ~ 人に身近な存在のホッキョクグマ_a0151913_1263052.jpg
昨日ご紹介したロシア北西部のネネツ自治管区にあるカラ海に面したウスチ・カラ村からさほど遠くない場所にある街であるアンデルマ (Амдерма) は現在人口が500人ほどですが、ソ連時代には5000人もの人口がありソ連軍の軍事施設もこのアンデルマの街にはあったわけでした。 ロシア・ペルミ動物園の名ホッキョクグマであるアンデルマの名前はこの街に由来しています。 あのアンデルマが息子のメンシコフと共にアンデルマの街に派遣されたレニングラード動物園のスタッフに捕獲された一連の経緯は「ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿」という投稿の (1)(2)(3)(4) でご紹介しており、そういった投稿の中でもこのアンデルマの街についてはご紹介したことがありましたので是非再度御参照いただければ幸いです。
ロシア極北・ネネツ自治管区のアンデルマの街とホッキョクグマたち ~ 人に身近な存在のホッキョクグマ_a0151913_0434166.jpg
Photo(C)Владимир Шадрин
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Photo(C)amderma.nao.net.ru

このアンデルマの街ではかつてソ連時代、とりわけ1970年代には街中にたびたびホッキョクグマが現れ、そして比較的自由に通りを闊歩していたそうです。 街の人々はそのホッキョクグマを眺めたりカメラにその姿を収めたり、また食べ物を投げ与えたりなどしていたそうで、ホッキョクグマは多くの場合は自分のそばに人間が接近することは好まなかったものの、それでも人間を襲うなどという雰囲気はまるでなかったようです。 こういったところがカナダのチャーチルとは異なるところです。 わざわざホッキョクグマを見るために動物園に行く必要がなく、ホッキョクグマの方からこちらに会いに来てくれるとでもいったらよいでしょうか。
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ロシア極北・ネネツ自治管区のアンデルマの街とホッキョクグマたち ~ 人に身近な存在のホッキョクグマ_a0151913_1104884.jpg
Photo(C)amderma.nao.net.ru



以下に2003年3月にアンデルマの街で撮影されたホッキョクグマの映像をご紹介しておきます。 これは親子ですね。 街の中心というよりはやや外れた場所のようです。 後半三分の一はオーロラが写っています。



とはいうもののやはり事故はあったそうで、一度ホッキョクグマが下校途中の子供を襲って殺してしまったということがあったそうです。 しかしそれ以外の深刻な事件というものはなかったようです。 現在はこのアンデルマの街は著しい斜陽でソ連崩壊後は人口も減り続けており、またホッキョクグマたちもかつてのように堂々と街に現れるということはないようです。 先週WWFロシア支部のベアパトロールのチームがアンデルマの街付近の海岸に打ち上がられたホッキョクグマの幼年個体の遺体を発見したそうです。 悪天候の中で泳いでいるうちに母親とはぐれてしまい岸に泳ぎ着けなかったのだろうとWWFの専門家は語っています。
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アンデルマの街近くで発見された幼年個体の遺体
Photo(C)Всемирный фонд дикой природы (WWF)

そもそもペルミ動物園のアンデルマは息子であるメンシコフなどを連れてアンデルマの街に霧の中から忽然と姿を見せ、そして食料を得るために家屋や倉庫に押し入ろうとしていたわけであり、人間にとっては危険な状態ではあったものの街の人々はそういったホッキョクグマを殺そうという発想はまるで無かったらしく、だからこそレニングラード動物園に捕獲を依頼したわけです。 やはりもともとこの街の人々はホッキョクグマというものが身近な存在であり人間に危害を与えるようなものではないという認識だったのでしょう。
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アンデルマ (2013年9月30日撮影 於 ペルミ動物園)
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息子のメンシコフ (2014年5月3日撮影 於 レニングラード動物園)

そういったアンデルマの街に住んでいた人々が抱いていたホッキョクグマへの親近感のようなもののおかげで我々は日本でこのアンデルマや彼女の息子であるメンシコフの息子や孫、つまりカイ、ロッシー、ホクト、ゴーゴ、イワンといったホッキョクグマたちの姿を動物園で見ることができるというわけです。

(資料)
Всемирный фонд дикой природы (WWF) (Новости Aug.15 2014 - Отправившиеся в Арктику эксперты WWF обнаружили погибшего медвежонка)
ЧУМотека (Aug.6 2014 - Новые приключения Умки)
sevprostor.ru (Белые медведи)
ВКонтакте (Амдерма, Амдерма, вьюгами задымлена..)

(過去関連投稿)
ロシア・ペルミ動物園のホッキョクグマ、「生ける伝説」となったアンデルマ
ロシア・ペルミ動物園で一般公開された生後3ヶ月のゴーゴ(現・天王寺動物園)の様子
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(1) ~ 捕捉し難き素顔
ロシア・ペルミ動物園、アンデルマの表情(2) ~ その存在への認識
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(1) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(2) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(3) ~ 遠征での映像より
ロシア・ペルミ動物園のアンデルマ、その日常の姿(4) ~ 遠征での映像より
ロシア極北・ネネツ自治管区のウスチ・カラ村に現れたホッキョクグマ ~ 人とホッキョクグマの生命の尊重
by polarbearmaniac | 2014-08-15 23:45 | Polarbearology

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