街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

マルル、その「正統派・アポロ的」かつ天恵の存在の成長と、五里霧中の将来の展望が醸し出す悲哀感

a0151913_057198.jpg
以前にも述べたが、このマルルは「正統派・アポロ的ホッキョクグマ」である。
a0151913_057115.jpg
ララの子供たちではツヨシ、ピリカ、イコロ、そしてこのマルルが「正統派」ホッキョクグマである。 国内では仙台のカイが最も「正統派・アポロ的ホッキョクグマ」であり、海外ではモスクワのシモーナもこのタイプである。 徳島のポロロはララの子供たちの中では最も「非正統派」の傾向がある。 彼ら(彼女ら)の母親であるララは「非正統派・ディオニソス的ホッキョクグマ」の典型である。 だからこのマルル(そしてツヨシとピリカとイコロ)は母親であるララとはかなり性格を異にするホッキョクグマだと言えると思われる。 (もっとも、ララは大きな進化を遂げて「正統派・アポロ的ホッキョクグマ」の方向に移行しつつあるが、根本は「非正統派・ディオニソス的ホッキョクグマ」である。) 人間で言えば、皇太子殿下は「正統派・アポロ的」であり、秋篠宮殿下は「非正統派・ディオニソス的」である。 将棋で言えば大山康晴は「正統派・アポロ的」であり升田幸三は「非正統派・ディオニソス的」である。
a0151913_0572012.jpg
しかしそうはいっても、実はララの子供たちにはララの母親であったクーニャの影は見当たらない。 実はこれが不思議なのである。
a0151913_0573052.jpg
私は、ララの子供たちはおそらくデナリの母親であった故シヌックの影響を隔世遺伝的に受け継いでいるのではないかと思うのである。 故シヌックは実に偉大な母だったらしい。 そういったことの片鱗は何枚かの彼女の写真が物語っている。
a0151913_0574126.jpg
マルルとポロロの双子姉妹はマルルが「正統派・アポロ的ホッキョクグマ」、ポロロが「非正統派・ディオニソス的ホッキョクグマ」と本質的な性格と存在感が大きく異なっているのだが、芸術・文化の面においても歴史の面においても前者の「正統派・アポロ的」 なものが後者の「非正統派・ディオニソス的」 なものに最終的には打ち勝つというのが一般的な理解・評価である。 それはたとえば、マルルは堀に落下しても無傷だったがポロロだったら大ケガをしていただろうというような予想にすら連なっていくのである。 
a0151913_0575084.jpg
逆に後者が前者に最終的評価で打ち勝った例は珍しく、たとえば同時代のライバルとしての作家でいえば前者のトルストイより後者のドストエフスキーへの評価のほうが優るとか、ピアニストでいえば前者のアルトゥール・ルービンシュタインより後者のヴラディーミル・ホロヴィッツへの評価の方が圧倒的に大きいだとか、そういった例がある程度だろう。 ところが後者に属する徳島のポロロは大きな進化を遂げており、遂にポロロは今までよりもう一つ上のステージに上昇したように思われる。 私は徳島のポロロは母親であるララのように「非正統派・ディオニソス的」な面を根本に持ちながらも将来的には「正統派・アポロ的」要素を自らの内側に取り込んでいく希有のホッキョクグマになるだろと予想している。 つまり、ポロロは大物なのである。 ララ(そして多分将来はポロロも)のように本質的に後者であるにもかかわらず進化して前者の要素を取り込んでいくケースは超大物であることが多く、最終的には単に「正統派・アポロ的」である存在よりも、もっと偉大な存在となる。 指揮者でいえばヴィルヘルム・フルトヴェングラーがそうであり、ピアニストならばエトヴィン・フィッシャーがそうである。 フルトヴェングラーもフィッシャーも若かりし頃は自分の感性によってのみ演奏を行っていたが、後にもっと客観的な古典的造形を自らの内側に取り込んでいったのである。 そしてまさにララ、そして多分ポロロというのはこういうタイプだろう。 一方で、前者を本質としながらも後者を取りこんでいったケースは指揮者でいえばヘルベルト・フォン・カラヤンだろう。 ホッキョクグマでは多分ウスラーダがこのタイプではないかと思っている。 そうなるとこのマルルはどうなのかという疑問が湧いてくる。
a0151913_0575887.jpg
私はこのマルルはポロロのように進化を遂げずに成長していくような気がする。 そしてそういった進化がなくてもマルルは偉大なホッキョクグマになっていく可能性があると思っている。 なにしろこのマルルには天恵の運があるのだ。
a0151913_05868.jpg
問題はこのマルル(そして徳島のポロロ)の二年後である。 すなわち「預託契約」の期限が終了したときに彼女たちがどうなるかである。 単純に期間延長になるとすれば、そういった状態は日本のホッキョクグマ界に何らの進展もなく明るい光も射してこない状況を意味することになるだろう。 何の進展もなければ彼女たちの契約は延長するしかない状態であるということだ。
a0151913_0581736.jpg
北海道からあまりに離れた土地に来てしまったこのマルル、そして徳島のポロロである。 そこにある種の悲哀感を感じてしまう。 そしてそれはおおむね、日本のホッキョクグマ界のおかれた厳しい状況に対する悲哀感とほぼ同じである。
a0151913_0582496.jpg
そもそも飼育下のホッキョクグマは生まれた土地、そして母親から離れて全く別の土地に行くのは当然である。 イワンやホクトや豪太やカイ(ラダゴル・メンシコヴィチ)やゴーゴ(クライ・ユーコノヴィチ)やロッシー(ピョートル・メンシコヴィチ)はアンデルマやウスラーダやシモーナやムルマに別れを告げてロシアから遠い日本にやってきた。 マルルやポロロの父親であるデナリもシヌックに別れを告げて遠い日本にやってきたのである。 だからマルルやポロロが北海道から遠く離れた土地に移動すること自体に何らの特別な感情を持つ必要はないということ自体は当然ではあるが、しかし現在の日本のホッキョクグマ界の現状を考えればこのマルルや徳島のポロロが生まれた場所から非常に遠い場所にいること自体に非常に見通しの定まらない状況を象徴している存在として私は彼女たちを眺めているのである。 だからそこに悲哀感を感じてしまうのだ。
a0151913_0583373.jpg
とにかく実際の温度以上に暑く感じる今日の熊本である。 生ビールが飲みたくなってきた。

Nikon D5300
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR
(Oct.25 2014 @熊本市動植物園)

(過去関連投稿)
とくしま動物園でのポロロ歓迎式、そしてポロロの自信に溢れた徳島での公式デビュー
ポロロ、その優れた適応性、そしてその執着力が予感させる器の大きさ ~ 大輪晩開の花
熊本市動植物園での、いささか精彩に欠いたマルルの熊本公式デビュー ~ "Marle of Our Time"
マルル、その「正統派ホッキョクグマ」 が克服を期待される試練 ~ 「我らが時代」のホッキョクグマの姿
熊本市動植物園でマルルの歓迎会が開催される
大きく成長を遂げつつあるポロロ ~ クーニャよりもシヌックの影を強く感じるララファミリーの子供たち
冷雨の日曜日、間近に見るポロロの表情 ~ 亡きシロー爺さんに見守られているポロロが優位に立つ
マルルの "Perpetuum mobile" ~ 公開後、約一か月が経過したマルル
マルルに当分の苦境は続くか? ~ "Every cloud has a silver lining."
マルル、まどろみの日曜日
ポロロとマルルが暮らす徳島と熊本の二つの動物園の印象 ~ 「組織の徳島、人の熊本」
マルルが取り戻した快活さの裏側 ~ 多大な労力で「幻影」の維持を強いられる飼育員さんへの同情
熊本の夏の入り口の暑さにも動きが鈍らないマルル ~ in/outdoorの扉開放方式の試験的導入が成功
夏の暑さの到来した徳島にあっても、立ち止まることなく前進するポロロの「快進撃」
ポロロこそララの後継熊なのか? ~ マルルを突き放し姉のアイラに肉薄する稀有の逸材の歩む道
真夏日の徳島、ポロロのゆったりとした日曜日
「正統派・アポロ的ホッキョクグマ」であるマルルの逆襲の条件を探る ~ 精神の自由の付与で「快適さ」へ
ポロロの二つの「動と静」のドラマ (前) ~ 水中での避暑と遊びとを共存させ 「痛みを経ての快感」 へ
ポロロの二つの「動と静」のドラマ (後) ~ 休息と外界よりの刺激(おもちゃとおやつ)が無理なく共存
猛暑の熊本に見たマルル ~ 失わない爽快な動き
ようやく自分の世界を確立したマルル ~ ポロロへの追い上げ態勢に入る
蒸し暑い曇天の日曜日のマルル ~ 飼育員さんからの刺激を日常生活の重要な部分に取り込み糧とする
「雨ニモマケズ雷鳴ニモマケズ...」 ポロロの悠然とした台風接近の日の土曜日
確固とした存在感を確立し、さらに進化を遂げつつあるポロロ ~ その非凡なるホッキョクグマの姿
豪雨の日曜日にポロロの奏でる遊びのファンタジー
尊重されるポロロの自由意思、そして有益な死角の存在 ~ 日本で一番大事にされた個体となったか?
爽快な秋晴れの徳島、二ヶ月半振りのポロロとの再会 ~ 持久力と集中力の増した輝かしい成長
ポロロ、その行動と思索 ~ 「哲人的ホッキョクグマ」 という前人未到の領域への進化・発展を目指す
連日の秋晴れ、ポロロの日曜日 ~ ポロロとマルル・ミルクを隔てるものは 「伸びしろ」 の大きさか?
秋の熊本に到来した札幌の夏、そしてマルルのハロウィン ~ "Make-believe Halloween" の楽しみ
by polarbearmaniac | 2014-10-25 23:45 | しろくま紀行

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ロシア・カザン市動物園のテル..
at 2019-08-23 23:45
アメリカ・ソルトレイクシティ..
at 2019-08-22 23:55
ロシア・ヴォルゴグラードでの..
at 2019-08-21 23:45
ロシア・クラスノヤルスク動物..
at 2019-08-20 23:45
オランダ・ヌエネンの「動物帝..
at 2019-08-19 23:45
デンマーク・コペンハーゲン動..
at 2019-08-19 03:47
ベルリン動物公園のトーニャと..
at 2019-08-17 23:50
カザフスタン・アルマトイ動物..
at 2019-08-16 23:45
ウクライナ・ムィコラーイウ動..
at 2019-08-15 23:55
ロシアのニジニ・ノヴゴロド、..
at 2019-08-14 23:55

以前の記事

2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Lenin's Tomb: The Last Days of the Soviet Empire


Resurrection: The Struggle for a New Russia


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag