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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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今シーズンに出産の有無が注目される雌(1)~ カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの双子姉妹

今シーズンに出産の有無が注目される雌(1)~ カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの双子姉妹_a0151913_19585982.jpg
オーロラとニキータの双子姉妹 Photo(C)Toronto Zoo/Sun News

今シーズン出産が期待されている雌は世界の動物園では何頭もいるわけですが、そういった雌たちの中で注目すべき何頭かを取り上げ、その出産(そしてその後の育児)の有無がもたらす意味合いを考えてみたいと思います。 そういったことから、「大物」とか「本命」とか言われる実績のある雌については対象とはしません。 まずはカナダ、トロント動物園の野生出身である13歳のオーロラとニキータの双子姉妹です。 このうち特にオーロラについてはその出産(そしてその後の育児)の有無に関して今シーズン世界でも最も注目しておかねばならない雌であると言っても過言ではありません。 なぜかといいますと、このオーロラはすでに詳しく報道されているだけで三回、その他の情報によれば四回出産しているわけですが、問題は彼女の出産後の育児にあるからです。
今シーズンに出産の有無が注目される雌(1)~ カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの双子姉妹_a0151913_2061573.jpg
オーロラ Photo(C)Toronto Zoo

一回目のオーロラの出産は2010年秋で、彼女は三つ子を出産したものの全て虐体を含む食害という形で赤ちゃんは死亡しています。 二回目のオーロラの出産は翌年2011年10月11日でした。 この時も三つ子の出産だったわけですが一頭は食害、残る二頭は育児放棄という形だったわけです。 この二頭については一頭に対しては彼女による虐待があり、虐待を免れた残る一頭についてはトロント動物園は人工哺育を行ったわけで、それが現在アシニボイン公園動物園で飼育されている三歳の雄のハドソンです。 三回目の彼女の出産は翌年2012年12月6日で、この時もまた三つ子の出産でしたが、一頭は誕生直後に死亡、残る二頭に対して彼女は授乳を試みたものの二頭とも衰弱死という結果となりました。 四度目の出産は翌年の2013年11月9日であり、またもや三つ子を出産し彼女は今度は三頭に授乳を行ったわけですが誕生後48時間経過しないうちに二頭は死亡し、残る一頭も衰弱を見せたためトロント動物園は人工哺育に踏み切ったわけです。 これが現在もトロント動物園で飼育されている雄のハンフリーです。

この四回の出産を通じて彼女は12頭を出産したものの生き残ったのは二頭だけであり、それも人工哺育という形であり彼女自身が育児に成功したのは一頭もいないという悲惨な状態です。 こういった過去の実績のもとで今年またオーロラは出産に挑戦するわけです。

このオーロラの度重なる繁殖への挑戦に対してはカナダでも疑問の声があるようです。 このオーロラは出産はするものの育児に問題があるわけで、ではそういった場合にはこれからも何度も人工哺育を行うのかという疑問が湧いてきて当然です。 ましてやカナダという国は自国領土内に広大な野生のホッキョクグマの生息地を有しているわけで、飼育下での人工哺育に違和感を持つ人が多くて当然です。 つまり、人工哺育してまで飼育下でホッキョクグマの繁殖を行うのかという違和感です。 トロント動物園はこのオーロラが回数を重ねた出産(そして育児)の失敗から一回一回と「習得」してきたものがあるので次回には成功するだろうという考え方を採用しているわけです。 確かに最初の一回目は全て虐待を含む食害だったものの、だんだんとそういったことがなくなっている傾向が示されています。 では今年はどうなのかが問題です。仮にまた今までのようなことが起きれば三度目の人工哺育を行うのかという問題が出てきます。 トロント動物園は人工哺育の技術に関しては非常に優れていますので、いざやるとなれば高い確率で成功するでしょう。 しかし今回も本当にやるかについては私はやや疑問も感じます。 というのも、このオーロラの双子姉妹のもう一頭であるニキータにも今回は出産の期待があるからです。
今シーズンに出産の有無が注目される雌(1)~ カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの双子姉妹_a0151913_2065121.jpg
ニキータ Photo(C)Toronto Zoo

このニキータは報道によれば過去にもイヌクシュクとの間で繁殖行為があったわけですがまだ現在に至るまで出産にまで至っていません。 仮に今回、このニキータがオーロラの前に出産し、そして育児を続けられれば私はトロント動物園はオーロラへの三度目の人工哺育の決断は下さないような気がします。 このあたりは実に微妙なのですが、今まで人工哺育を行ったケースと同じ状況が生じたにもかかわらず過去二回は人工哺育を行い今回は行わないという選択が本当に倫理上正しのかという問題も出てくるわけです。

いずれにせよこのトロント動物園のオーロラの出産に大きく注目せねばならないでしょう。 つまり、ホッキョクグマの出産(そして育児)の成否に経験が本当に要素として寄与するのかどうかという点と、同じ雌の個体に度重なる人工哺育を行うことへの是非という点についてトロント動物園の判断が試されている点、この二点に注目すべきであるということです。

(過去関連投稿)
カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの物語 ~ 双子姉妹と繁殖との関係
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース
カナダ ・ トロント動物園でホッキョクグマの三つ子の赤ちゃんが誕生するも全頭死亡!
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by polarbearmaniac | 2014-10-31 20:00 | Polarbearology

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