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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ北部バフィン島のイカルイトの街に出没するホッキョクグマたち ~ 自然保護官の安易な選択

カナダ北部バフィン島のイカルイトの街に出没するホッキョクグマたち ~ 自然保護官の安易な選択_a0151913_045785.jpg
イカルイトの街に出没したホッキョクグマ Photo(C)CBC

カナダ北部ヌナブト準州のバフィン島南部にある人口6千人ほどの街であるイカルイト(Iqaluit)には今年の7月頃からホッキョクグマが出現していました。
カナダ北部バフィン島のイカルイトの街に出没するホッキョクグマたち ~ 自然保護官の安易な選択_a0151913_0391838.jpg
まず7月13日の朝にこの街付近のキャンプ場付近で一頭のホッキョクグマが目撃されたためこの街の自然保護官が街とは反対方向の川の方向へとこのホッキョクグマに威嚇弾(“Scaring Cartridge”をこう呼んでおきます)を発射して追い払い、さらにそのホッキョクグマを追跡して街の方向には戻らないことを確認したそうです。

ところがその翌日の火曜日の早朝もまだ早い時間にこの街の民家近くでホッキョクグマの姿の目撃情報何件か寄せられたため複数の自然保護官が出動してホッキョクグマを発見したわけですが、そのホッキョクグマが自然保護官の一人に6メートルほどの距離まで迫ってきたために身の危険を感じた自然保護官がそのホッキョクグマを射殺したそうです。この射殺されたホッキョクグマが前日のホッキョクグマと同じ個体なのかどうかはカナダ放送協会(CBC)の報道では別の個体であることが示唆されていますが、同じだという地元の別の報道もあります。さて、この自然保護官のとった射殺といった処置については「追い払えたはずだ」という批判もかなりあったそうです。

さて、それからなんと二日後の木曜日にまたホッキョクグマが街に現れ、比較的人家の多い場所に姿を見せたそうです、多くの住人がその姿を目撃し、自然保護官は町の住民に対して「決して家から出ないように」と呼びかけ、ホッキョクグマに対する警戒態勢を強めました。そしてホッキョクグマを探したものの、どうしたわけかなかなか発見できないまま時間が過ぎていったようです。今度のホッキョクグマはいつの間にか街から姿を消したようですが、また戻ってくる可能性が大きいと判断した自然保護官の警戒態勢は継続されたようです。
カナダ北部バフィン島のイカルイトの街に出没するホッキョクグマたち ~ 自然保護官の安易な選択_a0151913_054168.jpg
Photo(C)CBC

さて、それから二か月以上が経過した昨日になって自然保護官はまた街に姿を見せた一頭のホキョクグマを射殺したというニュースが入ってきました。今回射殺された個体が7月に一度街に出現した個体と同じなのかについては報じられておらず、また射殺に至った具体的な状況も明らかではありません。ともかく7月以降に四頭のホッキョクグマの姿が確認され、そのうち三頭は街を徘徊し、そしてそのうち二頭が射殺されたという事実がこの街でのホッキョクグマ出現を継続して報じているカナダ放送協会(CBC)の報道では読み取れます。

しかしこのイカルイトの自然保護官はマニトバ州あたりの自然保護官と比較するとやり方が荒っぽいといいますか稚拙な印象を与えます。ネット上で批判が出てくるのも無理からぬところのような気がします。「最後の手段」というものが比較的最初から自然保護官の頭の中にあるのではないでしょうか。これと比較すると昨日投稿したロシアのネネツ自治管区の例などは非常に悠長と言う感じを持ちます。「追い払ってもどうせまた必ず戻ってくる」という考え方をロシア人はあまりしないようですが、カナダではそれが非常に先鋭的に意識され過ぎている感じもします。また、狩猟枠のある国(カナダ)と認めない国(ロシア)では「最終手段」という意識に違いがあるのだという考え方もできるかもしれません。

このイカルイトの街近くで撮影されたホッキョクグマの映像をご紹介しておきますが、これが今回の一連の事件とは関係のない映像です。



(資料)
CBC.ca
(Jul.13 2015 - Iqaluit conservation officers chase polar bear away from city)
(Jul.14 2015 - Advancing Iqaluit polar bear fatally shot by wildlife officer)
(Jul.16 2015 - In Iqaluit, another polar bear spotted, this time in town)
(Jul.17 2015 - Polar bear wanders into Iqaluit, sparks social media frenzy)
(Jul.20 2015 - Polar bear who visited Iqaluit last week still at large)
(Sep.15 2015 - Wildlife officers kill polar bear near Federal Road in Iqaluit)

(過去関連投稿)
カナダ北部、ヌナブト準州の村落近くでホッキョクグマ親子3頭が射殺される ~ 経験と科学の相克
ワシントン条約(CITES)第16回締結国会議とホッキョクグマの保護について ~ 賛成できぬWWFの見解
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by polarbearmaniac | 2015-09-17 01:00 | Polarbearology

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